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Scepter SC3 音質テスト
音響が15年ぶりに、本格的なホーンを使った2wayブックシェルフ型スピーカーで「Scepter」の名前を復活させました。 Scepter SC3 600,000円(ペア・税別) 専用スタンド AS-3 120,000円(ペア・税別)
Scepter(セプター)と聞いて頭に浮かぶのは、なんといっても"あの!"「GS-1(Grand Scepter)」です。 グランドセプター GS-1は、オーディオが花形だった頃の1984年、オンキョウがメーカーの「顔」として販売を開始した、「Wウーファーを搭載する2ウェイ・オールホーン型スピーカーシステム」です。GS-1の再生周波数帯域は、2wayでありながら「20-20,000Hz」と非常に広く、一本100万円!の当時としては破格で重量も一本が117kgと超重量級のスピーカーでした。 GS-1は、ホーン型の特徴である高能率をねらうのではなく、「時間を正しく再生する」という考えから、徹底した低歪みかがはかられていました。このスピーカーを設計した「吉井氏」は、その後独立し「タイムドメイン社設立」を経て、現在富士通テンから発売されている、「ECLIPSE(イクリプス)」と言う卵形のスピーカーの設計も行っています。ECLIPSのあの卵形キャビネットは、GS-1が求めた「時間軸を正しく再生する(タイムドメイン理論)」を現代に再現するための形状だったのです。 当時の「最高音質」を目標としたGS-1のウーファーは、「ダンプドFRP積層ホーン」というサンドイッチ型の積層コーンを使用し、共振を徹底的に排除、高域ホーンユニットにもボイスコイルからボビンまで一体成型した窒化チタン材の65mm径ダイヤフラムを採用するなど、当時として最新の素材と技術が投入されていました。しかし、GS-1に使われた「Scepter」の名称は、しかしこのモデルが初めてはなく、1968年オーディオ産業が未来に大きく花開くと考えた「大阪音響(現オンキョウ)」が、生み出したホーンユニット搭載の「E-83A」に最初に使われた名称です。この「E-83A」が高く評価されたことから、その後オンキョウといえば「ホーン型スピーカー」オンキョウといえば「Scepter」のポジションが築きあげられたのです。 私は逸品館を始めて間もない頃に中古でGS-1を買取り、店の看板としてそれをしばらく聞いていた時期もあって、私にとってもこの「Scepter」は、思い入れのあるあこがれの名前です。 新発売される「SC-3は、本体が300,000円(1台・税抜)、専用スタンド「AS-3」が60,000円(1台・税抜)と時代を反映した価格になっています。ウーファーには、オンキョウがCNF(セルロースナノファイバー)と名付けたパルプを配合する200mm口径ウーファーが使われ、その特徴となるホーンには、25mm口径リング型マグネシウム振動板を採用するコンプレッションドライバーが使われています。もちろん、ホーンにはオンキョウ伝統の「スーパー楕円形状」が採用され、「Scepterの系譜」を引き継ぐモデルであることが一目でわかります。 2Way・バスレフ型スピーカーSC-3の再生周波数帯域は、最近のトレンドに沿い「28Hz〜50kHz」と、このサイズを超えた低域と、ハイレゾ音源に対応する高域の再現性が実現しています。 その他の特徴は、すでに様々なメディアがWEBに掲載していますので、早速「実物」をレポートしましょう。 仕上げが雑でこんなにちゃちなスタンドに「12万円、ペア」という価格つけられているのに、驚きを通り越してあきれたからです。 本当にこのスタンドはひどい。「高級オーディオのロマン」を語ってきた菅野氏などのオーディオ界重鎮がこのスタンドの評価を依頼されれば、「おまえたちは、高級品をどう考えているのか!」としかり飛ばされたでしょう ※溶接後がそのまま処理されず、塗装されたスタンドの根元部分。通常は溶接後を研磨し、パテなどで表面をなだらかにした後に塗装します。支柱と底板を止めるねじも、化粧ねじが使われません。これがフラッグシップモデル「Scepter」のスタンドとは、あまりにもお粗末すぎます。 SC3と専用スタンドに付属する、スタンドと本体を接続するねじと6画レンチ、スパイクと受け皿。 ひどい評価なら書きたくないと考え、音を聞く前に試聴機を黙って返却しようと考えたほどです。 けれどお客様に「本当のこと」を伝えるのが「責務」だと考え、いつものようにセッティングを行い、ウォーミングアップをかねて、AIRBOW
HD-DAC1 SpecialにiPod Touchを接続してリピート再生にセットしました。 長時間再生のため、iPod Touchに収録している音源は、ほとんどが「MP3 320bps」に圧縮したものです。音源を圧縮すると音の輪郭が丸くなり、明瞭度や分離感が低下するのですが、その弱点をホーンが醸し出すキリリとした輪郭が見事に補っています。 さらにホーンならではの「音色の良さ(色彩感の鮮やかさ)」も加わって、圧縮音源を聞いているとは思えないほど、きめ細やかで楽しい音が出ます。これは、なかなか良い音です。 YouTubeで高音質音声の音質テストが見られます。 試聴環境 まず、3号館の手前側の部屋(リビングコンサートルーム)にAIRBOW ウェルフロートボードHD「WFB-4449/H HD」を設置、その上にScepter SC3をスタンドに乗せ(ねじは止めず)て置きました。左右のスピーカーの距離(ツィーターとツィーターの距離)は1.5mにして、スピーカーを結ぶ正三角形の頂点で試聴しました。 音源は、AIRBOW
HD-DAC1にJitterBugを併用してUSBメモリーを組み合わせ、CDからリッピングした「44.1kHz/16bit
WAVデーター」を再生しました。アンプには、AIRBOW PM11S3
Ultimateを使っています。
AIRBOW
HD-DAC1 Special (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す)
試聴したソフトは、試聴用に短く編集した5曲です。EDMやROCK、ライトなJAZZなどを交え、このクラスに見合った楽曲を聴きました。
Spoons バスレフ型とは信じられないほど低音の収束が早く、ホーンの歯切れ良さに負けないレスポンシブルな低音が実現しています。 この曲で感じるのは、「ホーンの高音に遅れない低域が実現している」ことです。フラッグシップモデル「Scepter」の名に恥じない良質な低音です。 中音域は、ホーンならではの明瞭度が発揮されて、メインボーカルの抜け感(分離感)とその後ろ側にコーラスが位置する立体的な関係性が心地よいムードを醸し出します。その下側に低域(ベースライン)が定位し、響(間接音)が体を取り巻くように広がり、SC3の定位感と立体感は完璧です。 We Will Rock You このソフトでもウーファーの収束は早く、低音は歯切れ良いのですが、イントロ部分の「足踏みの音」に若干「紙臭さ(パルプ臭さ)」を感じられます。スプーンズでは気にならなかったこの「紙臭さ」は、多分素材の共振が原因でしょう。しかし、少し続けて聞いていると、紙臭さに慣れてきたのか、それがあまり気にならなくなりました。 スプーンズの評価にも書きましたが、バスレフポートによる低音の遅れや膨らみをまったく感じさせないのは、素晴らしいと思います。量感は、28Hzというスペックほどは伸びている感じがしません。TADのモデルに比較するなら、ME1以上、CE1以下でしょう。サイズ以上の低音は出ますが、最新スピーカーなら、このサイズでこれくらいは出るのは当然という感じです。 声は相変わらず素晴らしく、肉声を少しドライブした強めの感じが「ライブ感」を上手く演出しています。高音はクッキリしていますが、嫌な刺激感は一切ありません。 良質な低音と近づいて聞いても、きつさのないホーンの音。SC3は、6-8畳の狭いスペースでも無理なく鳴らせそうです。 LOOK Of LOVE 他のスピーカーでこの曲を聞く、ほとんどの場合ウッドベースの低音がかなり過剰に持ち上がって聞こえるのですが、SC3ではその部分がまったく膨らみません。だから低音が少ないのかといえば、そうではなく、ウッドベースの量感はしっかり感じられます。 低音が遅れたり、膨らんだりしないので、ウッドベースの奏でる「リズム」と「音階」がとても明瞭に聞き取れます。SC3の弾みある低音は、低音のリズムセクションが骨格をなす音楽、ジャズやロックにベストマッチします。 定位や立体感にも優れ、ボーカルが最前方でべースとピアノがその後ろ、最後部に弦楽器が展開する理想的な立体感が演出されます。良い感じで、ジャズが鳴りました。 シェーラザード(第2楽章) バイオリンはきめ細かく、切れ込みが鮮やかですが、キツくなるのではなく甘さが伴い、とても良い感じで鳴ります。2台のバイオリンが重なる部分でも、それぞれの音が綺麗に分離するのは立派です。バイオリンソロのパートの音は、格別なのでバッハソロなどを聞くと、ハマると思います。 ピッチカートで演奏される、弦楽器の弾力的な感じと押し出し感は抜群です。 弦楽器が多数奏でられる部分では、ほんの少し解像度が物足りなく感じられることがありましたが、概ね不満のない音でこの曲が鳴りました。 低音はよく出ています。高音は切れ味、色彩感共に優れています。 けれど、そういう「問題点」よりも、今からまさに冒険に繰り出そうとする「期待感」や「躍動感」の表現が素晴らしく、胸が躍るような音が出ます。 こういう楽しい鳴り方をするスピーカーが、最近少なくなっているだけに、SC3の個性的な明るい音を高く評価したいと思いました。 試聴後感想 専用スタンドの「仕上げ」は、はっきり言って最悪です。こういう「未完成品」をそのまま市場に出してしまう、現在のONKYOスピーカー部門の姿勢には、疑問を通り越して、憤りさえ感じます。 けれど、幸いスピーカー本体の仕上げは日本製品らしく綺麗でした。 SC3の良さは、小口径のウーファーから出てくるとは、思えない量感のある低音と、小口径のウーファーならではの「レスポンスの両立」。そして、ホーン臭さは一切感じさせないにもかかわらず、ホーンらしい切れ味の良さや、きりりとした引き締まった定位感、さらに色彩感の豊富さと躍動感に優れていることです。 楕円形のホーンは特徴的ですが、指向性が広く、ウーファーとの繋がりも完璧です。 ホーンの良さを持ちながら、その欠点を一切感じさせないSC3に、オンキョウのホーンスピーカー作りのノウハウと伝統が感じられます。価格は少し高いですが、同じ2wayホーン型スピーカー「ダニエルヘルツ
M8」の良きライバルになるでしょう。 2016年12月 逸品館代表 清原裕介 |
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