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QED スピーカー ケーブル Profile Performance Reference Signature AIRLOC AET EVO-F125 Belden 9497 音質 比較 レビュー 価格 試聴 販売
スピーカー ケーブル 音質比較テスト
Profile
42 Strand , Profile 79 Strand
Perfomance Ruby
Anniversary Evolution , Perfomance Original , Perfomance Micro Silver ,
Perfomance XTC
Reference Silver
Anniversary XT , Signature Genesis Silver Spiral , Signature Revelation
AET
EVO-F125 ・ BELDEN 9497 (YM2
9294)
(その他の音質テストはこちら )
AET
F125
QED Strand47・Original
Performance・Ruby Anniversary・Silver Reveretion
音質比較をYouTubeで見る
VIDEO
VIDEO
ケーブル音質比較
1973年設立のイギリス・ケーブルメーカー「QED 」をご存じですか?
QEDのケーブルは、Harbeth、Spendol、Rogersなど著名なイギリス製スピーカーと音質がよく似ています。皆様がよくご存じのケーブルメーカーでは、Audioquestと音質が似ていますが、それよりは少しスイートでリスナーを聴き疲れさせず、音楽を色彩感豊かに再現します。
QEDのケーブルは、ここ10年ほどは輸入代理店が決まらず、日本国内での販売は行われていませんでしたが、2015年「Thorens
アナログプレーヤー」などの輸入でおなじみの「イースタン・サウンド・ファクトリー 」が輸入を行うことになりました。私の手元には、それ以前に輸入されたQEDのPerfomance Originalが低価格スピーカーケーブルのリファレンスとして残してあります。
今回入荷したQED
切り売りスピーカーケーブルから8機種、AET EVO-F125、さらに20年以上前から持っているBELDENのスピーカーケーブル、「FOR
AUDIO MY2 9294(と印字されていますが、Webでも詳細を見つけることができませんでした。観や仕様はBELDEN
9479や497MK2に酷似していますので、今後は9497と表記します)」を加えた10モデルを、ケーブルの音質を伝えやすくするために次のような7つの評価軸を使って聞き比べることにしました。
高音・中音・低音・躍動感は、BELDEN 9497をおおよその基準として5点(普通)として、次のように採点を行いました。
高中低音の採点、躍動感の採点
1:少なすぎる ・ 2:とても少ない ・ 3:少ない ・ 4:やや少ない
5:普通
6:やや多い ・ 7:多い ・ 8:とても多い ・ 9:多すぎる
色彩感、広がり感、生々しさの評価も同じで、5点を普通として色彩が濃い、広がりが豊か、生っぽい(自然な音に聞こえる)と採点を増やし、そうでない場合(不自然に聞こえる、違和感を感じる)は点数を減らしました。
色彩感とは、楽器の音色の濃さ、色彩の変化の量を表します。色彩が豊かだと、音が大きく変化するように感じられます。広がり感は、音の広がりの大きさやステージ奥行きの深さを表します。生々しさの採点は、生演奏(ライブ)を聴いているイメージに近いと点数を高めていますが、この項目は特に個人的な感覚の違いが大きいので、あくまでも参考に留めてください。この採点が、それぞれのケーブルの音質傾向を感じ取っていただくための参考になれば幸いです。
再生機材
今回の再生機材には、比較的廉価なスピーカーケーブルの聞き比べと言うことで、スピーカーとアンプのセットで約20万円の製品を選びました。しかし、その実力は十分に高く、ケーブルの評価に十分な音質です。特に「癖の無さ(違和感のない自然な音質)」では、かなりのレベルに達していると考えています。
プレーヤーにAIRBOW
NA11 S1 Ultimateを使ったのは、iPod
Touchに収録したMP3/320bpsの音源から一般的な高音質CDプレーヤーに匹敵する音質を引き出すためです。
AIRBOW
NA11 S1 Ultimate
AIRBOW
PM7005 Applause
audiopro
FS20 Piano Black
音質テストの概要
各ケーブルの評価時には、WAVで収録したテスト用の音源を使いましたが、それまでにiPod
Touchに収録した2000を超える曲(MP3/320bps)をランダムに再生し、少なくとも半日以上鳴らし込み(聞き込み)を行い、その印象もケーブルの評価に加えています。
各ケーブルは。切り売りを逸品館で端末加工したものを使いました。
上級モデルのQED
Signature Genesis Silver Spiral(\19,800/1m)とSignature
Revelation(¥6,680/1m)の端末処理には、QEDの純正端末を用い、専用工具で「冷間溶接処理(極めて高度な圧着接続)」を行いました。
専用圧着工具
スリーブ
メタル バナナプラグ
ABS スペードプラグ
AIRLOC CRIMPING TOOL
AIRLOC METAL 4mm BANANA
AIRLOC ABS STANDARD SPADE
OPEN(\85,000)
付属品
\12,800(4個)
\11,000(4個)
それ以外のケーブルには、AIRBOWのクライオ処理済み端末を用いました。ケーブルと端子は圧着した後、接続部分にオーディオ専用高音質ハンダを流して強度を高めています。ハンダを使わないと接続部分でケーブルが千切れて断線し、端子が外れます。
このように端末処理を行うことで、ケーブルの酸化や断線が予防できるだけではなく、確実に音質が向上します。
BELDEN 9497 メーカー希望小売価格 ¥430(1m・切り売り・税別) ( 取り扱っていません )
※比較に使ったのは、20年以上前から持っているケーブルで「FOR
AUDIO YM3 9294」と印字されています。外観と仕様は、9497や497MK2と同じです。
BELDEN
9497 総評
業務用途を中心によく使われているBELDENは、信頼できるケーブルメーカーだ。今回はスピーカーケーブルの9497をテストしたのだが、このケーブルにかかわらず、BELDENの低価格(消耗品価格帯)のケーブルは全般に良くできている。しかし、オーディオ用途の高級ケーブルとしては、BELDENの性能はそれなりでしかない。それは、BELDENの音が「あるがまま」を超えないからだ。
輪郭がクッキリしている、元気の良い音。音がくっきりしているので、楽器のリズムはしっかり刻まれるが、響きが少なめで低音に粘りが少なく、低音の押し出しもやや弱い。楽器の音は歯切れ良くて心地よいが、ボーカルは艶が少なくやや硬め。
楽器の音色は単調でやや硬く、少しメタリックなイメージが付く。ピアノ線が鳴っているような付帯音を感じる。
生演奏に使われるスピーカーのケーブルとしては適しているが、オーディオ機器では少しあっさりして感じられるかも知れない。
小編成のアップテンポな曲に向き、ムーディーな曲、大編成の曲はあまり得意ではない。ShureのMMカートリッジのような音。
ケーブルが柔軟に曲がるので取り回しはとても良い。
AET
EVO-F125 総評
低音もかなり出ているが、高音が明らかに強すぎる。エネルギーが両端に寄っているので、中域の厚みが少なく音が硬い。
ケーブルの強度が高いのはよいのだが、振動の収束が早過ぎるため、楽器の音に響きがなく、ボーカルにも艶がない。
EVO-F125は音調がハードで、長時間聞いていると疲れてくる印象がある。
ケーブルは硬いが、細いので取り回しは悪くない。
ケーブルによって音が「鈍る」ことがないので、サラウンドのリアスピーカー用、あるいは音を少し引き締めたいとき(真空管アンプとのくみ合わせや、レコードプレーヤーなど)に使うと良さそうだ。合わせる機器やソフトを選ばず、楽しく音楽を躍動的に聞かせてくれるケーブルだが、AETの低価格モデルは、最近音が変わってきたように思う。高域と低域が伸びて、音がクッキリするのだが、音楽のファンダメンタルな部分が以前よりも薄くなったように感じられるので、個人的には、EVO以前のモデルのバランスが気に入っている。
QED
Profile 42 Strand 総評
ほぼ同じ価格のBELDEN 9497と比べると、ケーブルの柔軟さがそのまま音に反映されて、音に響きがあり滑らかでやわらかい。
中音には適度な響きがついて、楽器のドライブ感が演出される。低音は量は出ているが、押し出しがやや弱い。
導体の純度が高いのだろう、BELDEN
9497よりも高音が細かく、楽器の色彩感が鮮やかで、音が大きく広がる。密度感はやや薄い。
音が少し遅れて来る感じがある。
Tannoyのビンテッジモデルのスピーカーのような、真空管アンプのような音。システムの音を少しソフトにして、ムードを出したいときによさそう。耳あたりがソフトなので、聞き疲れない。高域がキンキンとうるさくなりがちな、廉価なAVアンプとの相性も良さそうだ。
ケーブルは柔らかく、取り回しはよい。
QED
Profile 79 Strand 総評
42 Strandで不足がちに感じられた、低音の押し出し感や楽器やボーカルのエネルギー感が一気に高まる。細かい音の変化(デリケートな表現)も大きく向上する。
QED
Profile 42/79 StrandとBELDEN
9497の音の方向性は似ているのだが、業務用途のために堅牢性が優先されるBELDEN
9497では、導体にも頑丈な錫メッキ線が使われているのだろう、そのため響きが少なく、楽器の音色の再現がモノトーン気味で、音が少しあっさりしすぎる印象が強い。QED
Profile 42/79
Strandは良くできた真空管アンプのように、柔らかく、色彩が濃く、音が立体的に広がる。ただ、42
Strandは、エネルギー感が希薄だ。
AET
EVO-F125は、音は細かいのだが響きが少なく、中域が薄いので、マイクの音を録音せずそのままヘッドホンでモニターしている様なイメージに聞こえる。確かに音はよいが、会場の雰囲気や臨場感が不足しているように感じられた。
QED Profile 79 Strandの音は、HarbethやRogersにとても近く、ウェルバランスなその音で演奏を聞いていると「機器(スピーカー)の存在感」が見事に消える。
そのチューニングは見事で、アンプやスピーカー、あるいはソースと言った「オーディオ的」な部分を全く気にすることなく、自然体で音楽がスッと身体に入る、心地よい音があっけなく実現する。
オーディオで聞く音を「生演奏に近づけたい」とお考えなら、このケーブルをお薦めしたい。かなり細かい音までキチンと出るので、高価なシステムに組み合わせても問題なくマッチするだろう。
高価なケーブルに疑問を感じる、ケーブルにお金はかけたくないとお考えなら、このケーブルを使って欲しい。バランスが良く、編成の大きさや音楽のジャンルも選ばない。あらゆる音楽が等身大で再現される。910円という価格を疑ってしまう。
ケーブルは柔らかく取り回しはよい。
QED
Performance Original 総評
Perfomance OriginaとProfile 79 Strandは、基本的な音色はとても良く似ている。けれど、Originalではケーブルの強度が高くなった分(ケーブルが硬くなった分)音像がキリリと引き締まる。輪郭も適度にクッキリして、79
Strandよりも一つずつの音がハッキリ聞き取れるようになる。
また79
Strandでは少し膨らんだ低音が、Performance Originalでは引き締まり、リズム楽器が入るタイミングが僅かに早く感じられる。
同じ演奏を聞き比べると、Performance
Originalは79 Strandよりも少し音が明るく、演奏の速度が速い。Profile
79 Strandを少し現代的にしたようなイメージ、バランスの取れた高性能ケーブルという言うイメージで鳴る。
音の収束が79よりも早く、響きが若干少なくなるので、79が持っていた独特の「ドライブ感(音のタメ感)」は薄くなっているが、それはPerformance
Originalのドライブ感が少ないのではなく、79がやや多かった(良い意味でやや過剰気味)からだ。
響きの良い79
Strandは木質的な音が魅力的に聞こえ、輪郭のキリリとしたPerformance
Originalでは金属的な音が魅力的に聞こえる。
濁りが少なく、透明感が高いので、音が良くなったという満足感がある。それでいて、AET
EVO-F125のように不自然ではなく、演奏の自然さをほとんど損なわない。高性能スピーカーケーブルのお手本のような音だ。
価格は驚くほど安く、2〜3倍価格の国産スピーカーケーブルの音質に十分匹敵する。オーディオ的魅力と音楽の雰囲気を両立させる音に仕上がっている。
ケーブルは硬いが、あまり太くないので取り回しは悪くない。
QED Performance
XTC 総評
XTCは、導体が円筒状の編線構造になっている。今まで編み線のオーディオケーブルは、ピントが甘く音が濁るのであまり良いと思ったことがなかったのだが、Performance
XTCは、Originalと比べ音の細かさや輪郭のクッキリした感じがほとんど変わらない。じっくり聞けば、高音の芯が少し弱くなっていることを感じるが、逆に中低音は厚みが増してタメ感や押し出し感が強くなっている。
今まで聞いたQEDのケーブルは、音調が見事に整っていた。もちろんXTCも例外ではなく、その音調はOriginalとほとんど変わらないのだが、XTCにはOriginalで薄くなったProfile
79
Strandの独特な響きの良さが蘇っている。そして、Profile
79
Strandにはなかった、スッキリと透明に伸びた高音と開放的に広がる音場が、演奏にライブっぽさを演出する。
同じ演奏ををOriginalとXTCで聞き比べると、Originalはステージに近い客席で、XTCはそれよりもやや離れた客席で聞いているようなイメージだ。OriginalはJAZZやROCKにマッチし、XTCは交響曲やライブ録音盤にマッチするだろう。
ケーブルは柔らかく、重量が軽い(中空)ので、取り回しはよい。
QED Performance
Micro Silver 総評
Performance Micro Silverには、銀メッキされた導体が使われている。外皮は比較的硬く、ケーブルの強度は高い。
音のしっかりした輪郭感のイメージや濁りの少なさは、Performance Originalに近いが、銀の音なのだろう。高域の抜けが良く華やかな音に仕上がっている。
中低音は普通に出ているが、厚みがもうすこし欲しい。
エネルギーバランスが高音よりに感じられたAET EVO-F125に似ている、ややドンシャリ傾向の強い音だが、Micro
Silverはそれより色彩感が濃く、中低音に厚みがある。
クリアで鮮やかな高域が印象的なメリハリの効いた音。音量は大きい方が良さが出る。音をクッキリさせたいとき、高音を華やかに、伸びやかにしたいときにお薦めだ。
ケーブルは硬いが細いので、取り回しはよい。
QED
Performance Ruby Anniversary Evolution 総評
このケーブルは、低音が驚くほど良く出る。スピーカーのウーファーが大きくなったように錯覚するほどだ。
Rubyは、低音から高音にかけてエネルギー感と質感が見事に揃っている。同じ音量で同じ曲を聴いていても、音量がかなり大きく感じられるのは、楽器の音がハッキリ聞こえて、しかもパワー感があるからだ。
曲のパワー感、躍動感が素晴らしく、おもわず身体が動き出すような楽しい音が出る。音の密度も高い。楽器のパワー感や躍動感、ボーカルの力強さが全然違ってくる。あらゆる音に力がみなぎっている。
アンプやスピーカーをワンクラス以上あげたのではないだろうかと感じるくらいの、音質改善をこのケーブルは実現する。
硬くて取り回しが悪いことを除けば、まったく欠点が見当たらない素晴らしいスピーカーケーブルだ。それがこの値段で買えるのは、信じられない。
1mあたり5千円以上しても、まったく不思議でない。普通に音楽を聞くのであれば、これ以上のケーブルは不要とさえ思える。これは素晴らしいケーブルだ。
QED
Reference Silver Anniversary XT
Silver
Anniversary
XTには、銀メッキされた円筒構造の編線が採用されている。同じ構造のPerfomance
XTCでも同じように感じたが、円筒構造+編線のQEDケーブルは、開放的な鳴り方をする。Silver
Anniversary XTの 採点的は、Performance
Ruby Anniversary Evolutionとそれほど変わらないが、あきらかに音質が開放的で音が軽い。また、銀線の特長で楽器の音色が鮮やかに感じられ、音が明るい。
パワー感はほどほどだが、音楽が軽快に弾み聞いていて楽しい。
音の輪郭がクッキリしているが、それがほどほどで不自然にならない。中低音の出方も軽やかで、リズミカル。広がり感があり、ライブ感覚で音楽が鳴る。開放的に音楽を鳴らしたいときにベストなケーブル。アコースティック楽器の再現性が、特に優れている。
ケーブルの取り回しはよい。
QED Signature Revelation 総評
Performance Ruby Anniversary EvolutionやReference Silver Anniversary
XTと比べ耳に聞こえる音はそれほど変わらないが、音の質感が大きく向上している。
高音は細やかで滑らか。そして下位のケーブルでは感じられなかった品のある「艶」が醸し出される。うまく表現出来ないが、通常の清酒が吟醸酒に変わったようなイメージだろうか。音の不要な雑味が取れ、それぞれの音の良さが鮮やかに引き出されている。
Performance
Ruby Anniversary Evolutionは音質をワンランク上げてくれるが、Signature
Revelationは演奏の質をワンランク上げてくれる。音楽好きにお薦めしたいケーブル。ケーブルで音を良くする、ケーブルで「助ける」と言う意味がわかるような音。
ケーブルが硬く、太いので取り回しは良くない。
Signature
Genesis Silver Spiral 総評
Signature Revelationと比べ、Genesis
Spiralの音はすべての項目で少しずつ良くなっているから、バランスや音質などの評価は、ほぼ完全に一致する。
Signature
Revelationと同様に、Genesis
Spiralの音は細やかで艶があり、ハイセンスなバランスでまとめられている。
音場の広がりに優れ、音と音の間にきちんと隙間が生み出される。しかも、その隙間がスカスカになるのではなく、その間にもきちんと響きがある(真空中で楽器が鳴っているような感じにならない)。
透明感は驚くほど高く、濁りのないスッキリした音調だけれど、音が冷たくならず、血の通った暖かい音が出る。そこがQEDの優れたところだ。
Genesis
Spiralが、他のモデルと大きな差を感じさせるのが、空間密度の高さ。こんな安価なシステムで聞いているにもかかわらず、高級システムのように音の中身がぎゅっと詰まってくる。密度が高くなるから、実在感が高まり、生演奏を聴いているような錯覚を覚える。
ケーブルで音が良くなったという印象ではなく、システムを2倍以上高級なものに買い替えたようなイメージ。オーディオ的にも音楽的にも素晴らしいケーブルだ。
ケーブルが極太で硬いので、取り回しは非常に悪い。またケーブルが重いので、端子の弱い機器、重量の軽い機器には向かない。
スピーカーケーブル試聴後感想
オーディオケーブルのメーカーのほとんどは、「同じ構造」を反復して用います。AETだけではなく、WireworldもAudioquestも高級品と低価格品(普及価格帯製品は除く)で同じ構造が使われます。けれどQEDは、それぞれのケーブルでかなり異なる構造を持っています。特に普及価格帯の製品にはそれぞれ特長があります。QEDの構造バリエーションの豊富さは、「可能な限り低コストで音の良いケーブルを作るため」の工夫だと思います。
QEDは低価格帯の製品を得意とするイギリスのメーカーです。創業から40年以上ケーブルを作り続けているだけあって製品の音はよく練られており、すべてのモデルの音色が統一されています。また、かなり近い価格帯に複数の製品が存在するにもかかわらず、ケーブル毎にきちんとキャラクターが作り分けられているところもさすがだと思います。けれど、生産性やコストを考えた場合、このような作り分けはあまり良いことではありません。低価格帯の製品でそれを実現しているのが、QEDのケーブルメーカーとしてのこだわりの姿勢なのだと思います。
今回テストした中では、次のモデルが特にお薦めです。
Profile 79 Strand
HarbethやRogersのように、柔らかく滑らかな高域と、同じく滑らかで厚みのある中域。少し膨らむ、ウォームな低域が絶妙にバランスし、ソフトやシステム、音楽のジャンルを問わず「美味しい音」で音楽を聞かせてくれます。初心者から上級者まで、お使いいただけるケーブルだと思います。
Performance Original
79の音を少し引き締め、キリリとした音質に仕上げられたケーブル。ケーブルで生じる余分な響きが少なく、スッキリと見通しの良い音質と適度な輪郭感が音の良さを際立たせ、「良い音」を聞かせます。システムの音が良くなったように感じさせます。わかりやすい高音質ですが、深みもあります。現代的な高音質。
Performance Ruby Anniversary Evolution
価格が信じられません。低音の力感、中域の厚み、高域の切れ味と芯の強さ。音楽をパワフルに躍動させるために必要な要素が、このケーブルにはすべて詰まっています。特に魅力的なのは、低域がしっかり弾むことです。低域が充実すると音楽の雰囲気が俄然濃くなり、表現が大きく躍動するようになります。Rubyの素晴らしい音楽表現に下手な1万円/mオーバーの高級ケーブルは、足下にも及ばないでしょう。5千円/1m以下の予算で最高のケーブルをお求めなら、これ以外見つけられないはずです。
Signature Revelation
音楽の魅力を引き出す音質に仕上げられています。いたずらにケーブルの存在感を誇示することなく、演奏が上手くなったように、あるいは使われている楽器の質感が向上したように感じられます。Wireworldのように出しゃばらず、Audioquestのように自然だけれど、聞き込むほどに深みを増す音質が魅力です。
Signature Genesis Silver Spiral
システムの音質を一気に引き上げる魅力があります。今回テストしたアンプとスピーカーの価格合計は、約20万円程度ですがSignature
Genesis Silver Spiralを奢ると、その価格が2倍から3倍に感じられるようになりました。1.5mペアなら約6万円の投資。それで、20万円が40万円に感じられるのなら、悪い取引ではないでしょう。Signature
Genesis Silver
Spiralのシステム音質改善能力の倍率は、システムの価格が上昇しても変わらないと思いますから、システム総額が高くなればなるほどその魅力も比例して大きくなるはずです。
もちろん各社から発売されている驚くほど高いケーブルには、高価な材料が使われ、やはり普通の材料では出せない音が出ます。けれどマイクが捉えた音楽は、ある意味で抜け殻です。元々の演奏にあった「熱気」が失われ、「分析的」な細かい音になってしまうからです。その抜け殻に「再び命を吹き込む力」をオーディオ機器は持っています。けれどそれを実現するためには、高性能な測定器や理論を振りかざして機器の音質を高めるよりも、人の力(良い音を作り出そうとする情熱)が大切です。なぜならば、機械には音善し悪しがわかっても、音楽の善し悪しは人にしかわからないからです。
最近私は音の評価に「アナログ的」と言う言葉をよく使います。それは「曖昧さを持っている」と言う意味です。銀塩フィルムやアナログソースが使われていたとき、それらが醸し出す「ぼけ味」が大きな魅力を醸し出していました。すべてをさらけ出すのではなく、「含み」を持たせることで表現力を大きくする。これは、芸術作品全般に用いられてきた重要な手法です。けれどデジタル記録は、アナログのような「曖昧さ」を持たないため、「ある」か「ない」かをあまりにも露骨に表面に出し過ぎ、「味わい」や「深み」を損ないます。これは、画像だけではなく音声にも当てはまり、「スペックに頼りすぎるオーディオ製品」は、ともすると音楽から色気や精気を奪います。良い音は出ているけど、心に響いてこない。それが、最新オーディオ機器の抱える大きなジレンマです。こういう趣味性の薄い音を「デジタル的」と表現するならば、QEDのサウンドはまさしく「アナログ的」です。世界中で愛されているイギリス製品(食器や洋服など様々なブランド品)には、伝統に培われた本物の味わいがありますが、QEDのケーブルにもそれを強く感じます。
多くのブランド品は高価ですが、QEDの製品は良質な材料と加工法を組み合わせ、さらに量産することで高級ケーブルとしては他に類のない低価格・高音質が実現しています。常識的な価格帯で高音質を実現していることが最大の魅力だと思います。「安くてうまい」それが、QEDのケーブルです。
QEDのケーブルを繋ぐだけでオーディオ機器から流れ出る音が、音楽に変わります。その言葉の意味は、QEDのケーブルを使えばすぐに伝わると思います。
2015年6月 逸品館代表 清原裕介