D-Dコンバーター 音質比較
Gataway 7430JPはモデルがやや古いですが、パイパワーなCPUを搭載するWindows搭載パソコンとして選びました。HP
Mini 5101は、低消費電力CPUのATOMと可動部分のないSSDを搭載することで、7430JPよりも「ノイズ」が少ないだろうという理由で選んでいます。OSは、両機ともXPで統一しました。Mac
Book ProはハイパワーなCPUとMac
OSを搭載するPCとして、Windows搭載機(7430JP)との比較対象として選びました。
PCテストの前にUSB出力を同軸デジタル出力に変換するために必要な「D-Dコンバータ」として、オーディオショップでよく売られている「LINDEMANN USB-DDC」とパソコンショップで人気の高い「RATOC
RAL-2496UT1」の2機種を選び、その音質を比較しています。ただし、今回試聴したLINDEMANN
USB-DDCは試聴機の関係で、旧型の16/48です。新型の24/96は搭載されるチップが異なるため、音質は違っているはずです。
音源は平井堅のCDソフト、“Ken's
Bar”をWAVファイル形式でPCにリッピングして用いました。その音源をPCからUSBで出力し、LINDEMANN
USB-DDC/RATOC
RAL-2496UT1で同軸デジタルに変換、AIRBOW AV8003
Specialへデジタル入力して音出ししました。
LINDEMANN USB-DDC
RATOC
RAL-2496UT1 (この製品のご注文はこちら)
LINDEMANN
USB-DDC と RATOC RAL-2496UT1の音質比較
LINDEMANN USB-DDC
1.前後左右への音の広がりが浅く平面的。音質も少し幕が掛かったようで情報量が少ない。
2.ピアノの音が混濁する。弱音部がノイズ?に埋もれたような感じで、ピアノの響きが伸びない。質感も曇っている。
RATOC RAL-2496UT1
1.リンデマンに比べると明らかに音の数が多く、前後左右への広がり(立体感)にも優れている。靴音もかなりリアルで、リンデマン=偽物、RATOK=本物、くらいの差が感じられる。
2.ピアノの弱音部の美しさ、音色の良さ、楽器としての表現力は数割アップする。アクリルとガラスのような質感の違いが感じられる。
総評
LINDEMANN
USB-DDCとRATOC
RAL-2496UT1の「情報量」の差はかなり大きく、さらにRATOCの方が音楽的な表現にも優れている。 |
PC音質比較
PC音質比較テストに先立って、7430JPでAC電源を繋ぐ、繋がない(完全バッテリー駆動)の音質を比べました。結果は、ACを繋ぐ方が明らかに音に力があり明瞭度も増加しました。「AC有りがよい」という結果になったので、すべてのPCはAC電源で動作させて音出ししています。
まず最初に7430JPとMini
5101を比較しました。事前に、Windows搭載機同士でも「CPUとデータストレージ」のノイズが小さいMini
5101が7430JPを大きく超えるだろうと予想していたのですが、結果は大ハズレ!「有意義な差が聞き取れません」でした。驚いたことに、これほど環境が違う2台のPCにも関わらず、再生される音質にはほとんど差が聞き取れなかったのです。たった2機種のテストでは確実ではありませんが、Windows搭載機ノート同士ではPCによる音質差はあまり大きくない可能性があります。
次に7430JPとMac
Book Proを比較しました。
結果は、Mac
Book
Proが7430JPよりも透明感、細かい音の再現性共に高く、「デジタルノイズの影響が減少し情報が増えた」ことが確認できました。これは、Mac
Book
Proが、デジタル回路に使用すると音の良い「SANYO OSコンデンサー」を使用しているのと関係があるのかもしれませんし、WindowsとMacというOSの違いなのかもしれません。とにかく、Windows搭載機同士ではほとんど変わらなかった音が、Macでは明らかに良くなりました。
再生ソフト音質比較
最後にPCオーディオで話題に登ることが多い、「再生ソフト」による音質差を比較しました。
今回は、Windows
Media Player、i-Tunes、Roxio Creatorの3種を比較しました。結果は、「Windows
Media Player < i-Tunes < Roxio
Creator」となりました。再生時にi-Tunesを選ぶとWindws Media
Playerにくらべ高域の透明感、雰囲気の濃さなどが明らかに向上しました。Roxio Creatorでは、i-Tunesよりも更に音質は向上しました。
Windows
Media Player と Roxio Creator の音質比較
Windows
Media Player
1.雑踏の音の数が少なく、靴音と雑踏の音の分離が甘い。
2.ピアノの音の響きに濁りがあり、高音が霞んだように感じる。
Roxio
Creator
1.WINに比べ明らかに音の数が多く、雑踏の雰囲気が生々しい。靴音と雑踏の音の分離も改善する。
2.Pianoの高音の透明感が向上し、低音も厚みも増す。無音部最寄り静かで、ピアノの余韻もリッチで長い。
総評
Windows
Media Playerを100とするとRoxio Creatorは110くらい。i-Tunesはその中間くらいだが、再生ソフトで音質が明らかに変わることが確認できた。 |
PC、i-POD音質比較
PCのテストの次に、PCよりも多く音楽のデータストレージとして普及しているi-PODの音質を検証することにしました。手元には、i-PODがなかったので代わりにi-Phoneをトランスポータとして使っています。
i-PhoneとAV8003/Specialは直接デジタル接続できないため、D-D変換器として、Wadia
170i Toransportを使いました。結果は素晴らしく、PCよりもデジタルノイズの悪影響が遥かに小さい、透明感の高く情報量の豊富な音質が得られました。
Wadia
170i Transport (この製品のご注文はこちら)
さらにD-D変換器による音質差を確認するため、最近発売されたaudio-technicaのAT-HA35iと比べてみました。
audio-technica AT-HA35i (この製品のご注文はこちら)
逸品館とは古くから馴染みの深いaudio-technicaの製品だから高く評価したいのは、山々でしたが残念ながら音質はWadia
170iに及びませんでした。音色や音色が変わるのではなく、PCや再生ソフトでの比較とまったく同じように「高域の曇り(ノイズで何かが消えているような感じ)」が、Wadiaよりも強く感じられました。
※今回はi-Phoneで動作しましたが、公式にはi-Phoneでの動作保証はありません。
ヘッドホン出力音質テスト
RATOC
RAL-2496UT1、audio-technica AT-HA35iには、ヘッドホン出力があります。そこで“いつも”のヘッドホンを使って、接続器機のヘッドホン出力との音質を比べてみました。
ヘッドホン
SENNHEISER HD25-1
2
RAL-2496UT1は、Mac
Book
ProのCヘッドホン出力に比べて中高域の透明感が高く、繊細な音色の変化まで良く再現しました。若干低音が足りなく感じますが、女性ボーカルなどを聞くと心地よいと思います。
AT-HA35iは、i-Phoneのヘッドホン出力に比べてエネルギー感が大きくアップし、低音の量感力感も比べものにならないほど向上しました。元気が良く、i-Phoneのヘッドホン出力の音質とは比べものにならないほど音質が向上します。D-D変換器としては、WADIA
170iに及ばなかったAT-HA35iですが、D-D変換に加え、DAC、ヘッドホン出力も搭載するi-POD用の多機能ドックとして考えると、かなり魅力的な商品に見えてきました。
UD8004/Special、i-POD音質比較
テストの締めくくりとして、UD8004/SpecialからダイレクトでCDのデジタルアウトをAV8003/Specialに入力し、PCやi-Phoneの音質と比較しましたが、“情報量的”には、驚くほどの差は聞き取れず、i-Phone+170iは、ピュアオーディオ用のデジタル出力機として20万円前後の機器に相当する実力を持つことが証明されました。
総合結果
一連の比較試聴で興味深いことに気付きました。それは、従来のCDプレーヤーの比較試聴とは違って、PCやi-PODをデーター・トランスポーターとして使った場合、音の変化は「音質(音色や雰囲気)の差」としてではなく、単純な「情報量の差(音がどれくらいまで細かく聞こえるか、ハッキリ聞き取れるか)」として表れることです。
CDプレーヤーでは搭載されるアナログ回路で音声“信号”が変調され、再生機によって「特徴的な音質」が生み出されます。これに対し、アナログ回路をほとんど持たないPCやi-PODでは、音声“データー”読み出し〜転送中にデーターが損なわれることがなく、音が大きく変化することがありません。
つまり、PCやi-PODでは機器によって「読み出せるデーター量(精度)」には差がなく、音質が変わる(損なわれる)原因は「機器が発生するデジタルノイズの総量に起因している」可能性が非常に高いと思われます。
PCやi-PODでは、このように「機器による個性の少ない音」が再現されるのが特徴です。それが音楽を聞く時にどのように影響するか?は、このリポートの終わりにまとめています。