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B&W社傘下で良質なオーディオ機器を生産する、ROTELからCD専用プレーヤーが発売されました。SACDに対応しないのは、欧州で最高のオーディオブランド"Burmester"の600万円オーバーの最高級モデルもCD専用機のように、欧州ではSACDの需要がなく高級プレーヤーはCD専用機が普通だからです。
このモデルは高級プレーヤーには珍しく"スロットイン"方式を採用します。CDを出し入れするときには、ギー、ガチャンと低級な音を出しますが、再生中の回転音は非常に低く、そういう所にCD専用機の良さが発揮されています(SACDはCDよりも回転速度が速いので回転音が大きくなりやすい)。
メーカー希望小売価格が\148,000(税別)のこのモデルは、少し前に発売されたRA-1570(\248,000/税別)と対になるモデルですが、この価格帯で入手できる本格的なCDプレーヤーはあまり発売されていない上に、今更CDプレーヤーにはあまりお金をかけたくないと考えるお客様にとって格好のモデルだと思います。後は肝心の音質がどうか?が問題ですが、今回はボードやインシュレーターの試聴も兼ねて徹底的に聞いてみました。
ROTEL RCD-1570 メーカー希望小売価格 ¥148,000(税別) (この製品のご購入はこちら) |
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音質テスト
Vienna Acoustics The Musicは、2011年に発売されたVieena Acousticsのフラッグシップモデルで、22.8cmのウーファーユニットを3個、株式会社村田製作所のセラミックツィーターを1個搭載し、22Hz〜100kHzという非常に広い周波数帯域を再現します。また、17.8cmのユニットの中央に2.5cmのツィーターを配置したスパイダーコーンを採用するオリジナルの「同軸ユニット」が特長で、大型スピーカーとは思えないほどアキュレートなサウンドを実現します。
AIRBOW PM11S3 Ultimateは、2013年に発売されたmarantz PM11S3を母体とするAIRBOWの最上級プリメインアンプです。100を大きく超える内部パーツを最適化することにより、marantzらしい中域の濃さを損なわずに、低域の力感、高域の透明感と繊細さ、音の細やかさを大幅に向上させています。同時に音楽の「濃さ」を大幅に改善し、ソフトを選ばず音楽を表情豊かに躍動させます。最近のAIRBOW製品の傾向として、エイジングが完了し高域が美しく伸びるようになるまでかなりの長時間(普通のご使用だと早くても3〜6ヶ月)がかかりますが、そこからの寿命は非常に長く15年以上にわたって初期性能を保つと考えられます。
接続に使用したNVSのケーブル「Copper2/RCA/1.0m 」は、特殊な金属パウダーをケーブルと外皮の間に充填することにより振動と外部からの電磁波の影響を取り除いた高級ケーブルです。制振性能の高いケーブルの多くが「アキュレートだけれど音が躍動しない」、「響きが少ない」などオーディオ的には良くても音楽を聞くと面白くないという製品が多い中、音楽が自らが起こしたブラントだけあって柔らかさ、立体感、響きの良さを兼ね備えています。音質を一歩譲っても、音楽的な雰囲気を色濃く出したいときに最適の製品です。
今回は、「オーディオボード」と「インシュレーター」の音質テストも兼ねているため、通常はまずしない「床のカーペット上に直置き」の状態から試聴を開始しました。電源ケーブルは付属品を使い、コンセントも「通常家庭品質」をやや下回る「最低条件」としています。電源関係はAIRBOWの開発に共通するセッティングですが、商業電源周波数が関東以北の50Hzに対し大阪は60Hzと高く、また3号館の電圧が「103V」とやや高めで、「一般家庭よりも音が良くなってしまう」可能性を考慮し、わざと「電源のクォリティーを落とす」ことで試聴テストの再現性を高める目的です。この電源で出る音なら、どこのご家庭でもそれ以上の音は出るだろうという考えです。
ボードなし(床のカーペット上に直置き)
・First
Love
イントロの高域が美しく、キラキラ輝いています。高域が伸びすぎるとこの曲では宇多田ヒカルさんのボーカルの子音がややキツイのくなりやすいのですが、鋭さはそのままにざらつき感だけがうまく緩和されています。
低音部分も膨らみやすいのですがきちんと制動され、高解像度感と情緒深さが見事に調和しています。欲を言えば中域の厚みがやや薄く全体的に音が少し希薄なのですが、付属品の電源ケーブル、カーペットの上に直置きでこれだけの音が出れば文句はないと思います。
・甘いわな
イントロの低音部が低い部分までシッカリ伸び、膨らまないのにクリアに広がります。この低音の出方にはちょっと驚かされました。
ボーカルは、驚くほど細やかで綺麗に分離します。シンセサイザーの音もきれいに分離しますが、若干安っぽい音に聞こえるのは元々録音されている音の質だと思います。
オーディオ、特にハイエンドオーディオを知らない人が聞いたらびっくりするくらい「質の高い音(HiFi)」ですが、しなやかさや艶やかさ情緒深さも兼ね備えた音です。
ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界より チェコ・フィルハーモニー管弦楽団, ノイマン(ヴァーツラフ)
・2曲目
イントロの弱音部の繊細さが半端じゃありません。音の広がり感も非常にリアルで、コンサートホールで音楽を聞いているような気持ちになります。
デリケートでエロティックな音ですが、同時に高い品位が感じられる「上品で上質」なサウンドでもあります。
とてもこのクラスのCDプレーヤーから出てくるとは思えない音ですが、それはThe
MusicとPM11S3 Ultimateのセットの力も非常に大きく関与しているはずです。
しかし、どれほどアンプやスピーカーが良くても入り口のCDプレーヤーが悪ければこんな音は出てきません。各社の50万円を超えるフラッグシップモデルに近いプレーヤーを聞いているのと同等以上の感覚で交響曲が再現されました。
音が良い製品は多いのですが、RCD-1570はこれだけのシステムと組み合わせているにもかかわらず「不満が感じられない」のが凄いと思います。
ボードやインシュレーター追加の必要性をまったく感じさせない完璧なバランスで交響曲が鳴りました。
AIRBOW 人造大理石ボード JDB444906 \2,800を追加 (オーディオボード販売ページはこちら)
・First
Love
ボードの追加によりイントロの高域の明瞭度感が改善し、一つずつの音の芯がしっかりします。ボーカルにも芯が出てHiFi感が強くなります。
声に張りが出て力強くなりますがややドライな傾向が強まり、適度に湿り気と柔らかさが感じられたボードなしの声もそれはそれで魅力的だったように思います。
しかし、ギターやシンセなど伴奏系の音は、クッキリ感と強さが出てボードなしの時よりも俄然魅力的になりました。特に低音の伸びやかさと、深みは大きく改善されています。高音に芯が出ると低音の膨らみが消えて低音に深みが出るのは、ふわりとした曖昧な低音を「高音の隈取りが包み込み」実在感が向上するからです。
ボードなしの情報量が100とすると、ボードを使うことで情報量は115(15%)程度まで増えたように感じます。器楽曲をメインにお聞きになるのなら、足下の強化は効果的です。
・甘いわな
イントロの低音部、高音部が大きく改善し、レンジが3割くらい広くなったように思います。
この曲はボードなしのとき「ボーカルが伴奏に負けている」感じがしたのですが、ボードを置くことで声が強くなり一歩前に出ます。
オーバーダビングで作られているハーモニー部分の分離感も向上し、この曲では「ボードあり」が圧倒的に楽しく音楽が躍動します。
弾力感とパワー感を兼ね備える、低音の「ズン」という力強さが印象的でした。
ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界より チェコ・フィルハーモニー管弦楽団, ノイマン(ヴァーツラフ)
・2曲目
導入部の管楽器の「圧力感(重さ)」が一段と向上します。
ティンパニーの音は少し乾いて、歯切れ良くなりました。ストリングスは分離感が向上し、コンサート会場の空気の透明感が向上するようなイメージです。弱音部の再現性が向上し、エコーが切れるまでの時間が長くなりました。
デリケートな音の再現性が向上したことで、演奏ニュアンスの深みが増しテンポが一段と緩やかに感じられるように変化します。またダイナミックレンジが拡大し、ピアニシモからフォルテシモへの変化の量が大きくなりました。
ボードの追加により、演奏の「骨格」が一段とシッカリしたように感じました。
Tiglon TMB-50 メーカー希望小売価格 \48,000を追加 (オーディオボード販売ページはこちら)
・First
Love
音調に癖がなく「オーディオ的な色づけ」を感じなかった人造大理石からTiglonにボードを変えると、良い意味での「人為的な音作り」を感じるようになります。
特にボーカルの変化が顕著で宇多田ヒカルさんが「訴えてくる感じ」が強くなります。伴奏も「ただ鳴っている」から「感情を持って人間が弾いている」へとイメージが変化します。
高域はキラキラした明るさの減退と引き替えに、しっとりとした艶が出ます。
低音は立ち上がりがほんの少し緩くなっていますが、余韻を弾く感じはかなり長くなります。
TMB-50の追加で音の芯や明瞭度感は僅かに後退し「パワー感」が若干削がれますが、それを上回る「弱音部の表現力の向上」が感じられました。
・甘いわな
イントロ部分の低音の「揺らぎ感」と「高音の変化」がより大きく再現されます。
ボーカルは息づかいが分かるほど「声の変化がリアル」になります。伴奏は一歩下がって、ボーカルをじゃましなくなります。オーバダビング部の声の重なりの分離も明らかに向上し、それぞれの声をハッキリと聞き取ることができるようになりました。
しかし、デリケートさ分離感の向上と引き替えに「薄いゴムを挟んだような」柔らかい感じが出てきます。この僅かな「緩さ」をどう感じるかが、このボードの評価を決めると思います。音が暴れている(うるさく感じる)場合には、その効果は絶大だと思います。
ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界より チェコ・フィルハーモニー管弦楽団, ノイマン(ヴァーツラフ)
・2曲目
宇多田ヒカルさんの曲で感じた「僅かなベール感」が、コンサート会場の空気の温度を上げ曲調を暖かくする方向に変化させます。人造大理石を敷いて聞いていたときの澄み切って冷たい空気ではなく、少し湿った暖かい空気の中で交響曲が奏でられているようなムードです。
曲調も替わります。人造大理石ボードを置いて聞く「新世界」は、まだ見ぬ未知の世界へ踏み込んで行く「恐れ」とそれに打ち勝つ「勇気」を感じさせましたが、Tiglonで聞く新世界は「故郷に戻ってきた」ような、ほっとしたイメージです。
TMB-50を敷いて聞く新世界は、スメタナの「我が故郷」を聞いているような感じです。そういう柔和な感じと暖かさが出ました。
Tiglon TMB-50 メーカー希望小売価格 \48,000の上に TMZ-4 メーカー希望小売価格 \44,000を追加 (インシュレーター販売ページはこちら)
・First Love
※今回のテストではTiglon
TMB-50とCDプレーヤーの間にTMZ-4を4点支持で追加しましたが、後を一点にしてTMZ-3でも良いと思います。
TMB-50にTMZ-4を追加すると、TMB-50単体での追加で「鈍った高音の角」が復活し、宇多田ヒカルさんの子音(高音で声がかすれるところ)が完全に再生されるようになりました。しかし、無闇に高音が伸びたのではなくきちんとコントロールされていますので、声にのざらつきやキツさはありません。
ボーカルはデリケートさを失わないまま、ぐっと力強くなります。声に力を入れたところ、力を抜いたところの変化の「量(つまり躍動感)」が一段と大きくなったように感じます。
ベースの音は太く密度も上がり、はらわたにずしんと響きます。ストリングスは切なく、心に切り込んできます。それらの表現が「人為的に拡大された感じ」がしないところがさらに良いと思います。
ボード単体では、すこし「?(疑問符)」を付けた部分がありますが、インシュレーターと組み合わせる事でTiglonの音は完成します。切なく甘い恋の歌が聴けました。これは良いムードです。
・甘いわな
イントロ部の低音の変化と低音方向への伸びやかさの改善が半端じゃありません。
低音が伸びると密度が低下したり、音が拡散して膨らんだりしがちですが、そういう悪い部分は全くありません。広がる部分はめいっぱい大きく広がり、前に出る部分はぐいぐい前に出てきます。それでも演奏がまったく「荒れない(雑にならない)」のが、Tiglonの音なのだと思います。
今の音をスパゲティーの茹で具合に例えるなら、この音は「芯がちょうど消えた瞬間のアルデンテ」だと思います。個人的には「芯が僅かに残るちょっと硬めのアルデンテ」が好きなので、ちょっと柔らかいかな?という印象です。個人的には、もう少し「雑」な感じがする方がこの曲には向くと思いますが、こういう「アーティスティックな鳴り方」も悪くないと思います。
音調の好みはともかく、音質は大きく改善され「ボードなし」を100とすれば、130ぐらいのグレードアップを実現しているのは立派だと思います。
ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界より チェコ・フィルハーモニー管弦楽団, ノイマン(ヴァーツラフ)
・2曲目
音の力強さ、パワー感が向上します。また最弱音部の音の変化もより細かくなり、演奏に引き込まれます。
日が落ちてあたりが静寂に包み込まれて行く、その細やかな変化が実によく伝わります。穏やかで暖かい春の日の夕暮れを感じさせるムードです。
ボードのみの設置で感じていた違和感が完全に消え、生演奏を聴いている気分で演奏に集中することができました。
AIRBOW JDB-444906 \2,800の上に TMZ-4 メーカー希望小売価格 \44,000を追加 (インシュレーター販売ページはこちら)
・First
Love
人造大理石の持つ明瞭度とインシュレーターの持つ響きの豊かさがマッチして、芯があって響きも美しい理想的なHiFiサウンドでFirst
Loveが鳴ります。
高音は澄み切って美しく艶やかに伸び、低音にはゆとりと量感があります。しかし、エネルギーレンジが上下に伸びた反作用で中域が若干薄くなります。
このさっぱりした鳴り方は誰もすぐに分かる良い音ですが、ほんの少し行き過ぎている(情緒よりも音質感が勝っている)感じがあります。
音質が良くなりすぎて情緒が置いてきぼりになりかけていますが、そしてその行き過ぎたHiFi感を出すのもオーディオの楽しみの一つだと思います。
人造大理石とTMZの組み合わせは、今回試聴した中でもっともHiFiなサウンドでした。
・甘いわな
イントロのズーン、ピロロロという効果音、シンセドラム、ギターの切れ味感は抜群。まるで目の前で映像が(映画が)流れているような明快な動きさえ音に感じます。
このソフトは宇多田ヒカルさんのボーカルと、ギター以外はすべて打ち込み(プログラム)で作られているのですが、人間が弾いている部分と打ち込まれている部分の音の違いがハッキリ分かります。
ハーモニー部分もそれぞれの声の録音の違いまで明確に分かりそうなほど、綺麗に鳴り分けられています。
人造大理石ボードとTMZの組み合わせで、TMBとTMZのライブサウンドがスタジオモニターサウンドに変化しました。
この明快な鳴り方も気持ちいいです。音楽を楽しめると同時に、エンジニアが良い仕事をできそうな音です。
ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界より チェコ・フィルハーモニー管弦楽団, ノイマン(ヴァーツラフ)
・2曲目
The MusicをPMCに変えたような精緻な音に変化します。AIRBOWとVienna
Acousticsの組み合わせから、こういうクール(良い意味で)な音が出るとは思いもしませんでした。
チェリビダッケが指揮する「ブルックナー」がこういうクールな鳴り方をするのですが、静かで細かいこの音は正に「精緻」という言葉がピタリと当てはまります。
驚くほど細かい音まで明確に再現され、それぞれの楽器の音色や奏法の違いも非常に明確に聞き分けられます。弦楽器は弦楽器らしく、管楽器は管楽器らしく鳴り、また木管楽器と金管楽器の質感の違いも見事に描き分けられます。
素晴らしく完成度の高い交響曲を聴いている感じです。
AIRBOW JDB-444906 \2,800の上に Tokkyokiki(co)から発売予定のWindbell(予価10万円/8個)を追加 (インシュレーター販売ページはこちら)
・First
Love
Tiglon TMZ-4の音にによく似ていますが、音色が微妙に違います。TMZ-4が内部損失の非常に大きなマグネシウム製で、Windbellがそうでない普通の金属という違いもあるのでしょう。高域が金属的に美しく響きます。試しにWindbellの本体を爪で弾くと「ピ〜〜〜ン」とい仏壇の鐘(例えが悪くてすみません)のように美しく響きました。
Windbellの名前通り、トライアングルのような金属の響きは異様にクッキリします。高域に堅い芯が出るので、低域の変化が強化されベース音がウネウネとうねる様子が一番強く伝わります。また高域の響きは明らかに金属的に変化しますが、不思議とボーカルの帯域やベースの帯域に金臭さはあまり感じられません。
宇多田ヒカルさんの子音は細く強く、かすれた声の感じが堅く強くなります。明らかに「高域フェチ」の音ですが、高域一本槍ではなく意外に中低音が薄くなりません。
高域をめいっぱい伸ばしながら、全体のバランスも破綻しない。ワイドレンジ感、HiFi感を出そうとするなら、Windbellは悪くないと思います。
・甘いわな
高域のパーカッションがやはり、異様にハッキリします。ドラムの切れ味、低域のリズムの早さは今回テストしたインシュレーターで一番です。
ボーカルは艶が少なく、なぜか声が途切れ途切れに聞こえます。もしかすると、マスターを作るときの「声のつなぎ目」まで再現されているのかもしれません。
アップテンポな器楽曲やRock、Club Musicには、非常によいと思いますがバラード系のしっとりした音楽には、行き過ぎた音のようです。
しかし、それでもこの切れ味の早さ、エッジのシャープさは、めっちゃ気持ちよく、オーディオ向き高音質ディスクを演奏したら、ど真ん中ストライク間違いなしでしょう。
ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界より チェコ・フィルハーモニー管弦楽団, ノイマン(ヴァーツラフ)
・2曲目
Tiglon
TMZ-4と同じように明快で細やかな音ですが、Windbellは音が明るいところが違います。
針葉樹の森の静けさを感じせたTiglon TMZ-4に対し、Windbellは明るい日差しが差し込む広葉樹の森のイメージです。空気は乾いていますが、太陽の日差しを感じる音です。
ベースやインシュレーターを変えても共通する(変化しない)楽器の良好な分離感、音色の変化の鮮やかさとグラデーションの豊かさは、ROTEL
RCD-1570そのものの持ち味なのでしょう。
10万円中頃のCDプレーヤーを聞いているとは思えないほど細やかでワイドレンジな音。音の良さという高級オーディオの基本はきちんと押さえながら、豊かな情緒も再現する。このCDプレーヤーは素晴らしい完成度です。
AIRBOW JDB-444906 \2,800の上に AET SH2014 メーカー希望小売価格 \3,600(4個/税別)を追加 (インシュレーター販売ページはこちら)
・First Love
AETのインシュレーターは本体の脚よりも高さが低く、直接使うと脚の方が高くなってしまうので脚の下に置いて使いました(小さい写真)。
今まで聞いたインシュレーターには「メーカーの音作り(作り手の意志)」を感じましたが、AETの製品にはそれが感じられません。
どこがどう変わったというのではなく全体的に少しずつかさ上げされ、オリジナルの音調はまったく変わらず精度や細やかさが向上しました。
癖がないのが最大の個性。そういう音ですが、優しさや艶やかさは確実にアップしてます。価格を考えれば十分な効果だと思います。
・甘いわな
インシュレーターを使わないときと音調はほとんど変わりませんが、パーカッションの立ち上がりの早さボーカルの表情の細やかさなどが確実に向上しました。
声の伸びやかさベースのリズム感が改善し、ハーモニー部の分離も改善しますが、Windbellのように「無理矢理拡大」したような感覚ではありません。出てこなかった音がよりでやすくなるイメージです。
上質の材料を精密に加工したAET製品全般に通じる、当たり前の良さを感じます。良い意味で「面白みがない」それがSH2014への褒め言葉です。効果も穏やかなので、あらゆる機器のベーシックなセッティングとして使えそうです。
ドヴォルザーク:交響曲第9番 新世界より チェコ・フィルハーモニー管弦楽団, ノイマン(ヴァーツラフ)
・2曲目
大きな変化を感じませんが、じっくり聞くと細かい部分の再現性が向上し、演奏の深みが増していることに気づきます。
オーディオ機器から音が出ているという「当たり前の感覚」を感じさせながら、その延長線上での音質改善が実現しています。機器の音、インシュレーターの音、そのどれもが主張しません。また、インシュレーターが何か音を変えるわけではないので、もともと持っている雰囲気はそのまま変わらず残ります。
インシュレーターなどによる「ハッキリした変化」を望まれるなら、肩すかしを食らわされると思いますが、今の音のままよくしたいとお考えなら、お望み通りの改善がもたらされると思います。音色を変えずに音をよくする。そういう印象の変化です。
追加でサンシャイン Sunsine V50を聞いてみました。
Sunsine V50 メーカー希望小売価格 \19,800(税別)(オーディオボード販売ページはこちら)
・First
Love
Sunsine V
Seriesには表と裏があり、音が違うのでまず「表」から聞いてみました。
基本的にはTiglon TMB-50と同じ音調です。音は整理されて美しくなりますが、振動抑制の影響で空気の細やかな振動が少し減ってしまいます。
TMB-50よりもV50はボードの制振性能がより高く、細かい響きが消えているようです。音の立ち上がりも丸くなり、エネルギー感や広がり感も若干削がれました。
「裏」
表上と音質は同じですが、効果が半減した感じです。その結果、取れすぎたと感じられる音が復活し、エネルギー感や広がり感も改善しました。
ボードの表裏で効果を調整できるのは便利だと思います。
Sunsine ST-1 メーカー希望小売価格 \9,500(税別)(オーディオボード販売ページはこちら)
Sunsine V Seriesは、機器の上にのせて制振効果を発揮するST-1を併用することで音質が最高になるとされています。そこでさらにST-1を追加して聞いて見ました。
「ST-1上乗せ
+ V50 正方向」
制振効果が高いボードを使い、機器の上にも製品材を乗せるとさらに響きが削がれてしまうのではないかと心配したのですが結果は、逆でした。
ボードを使わないときに比べ音の響きが整理され、立体感や定位感が向上します。人造大理石ボードに比べると、音の芯の強さ、立ち上がりの早さは若干大人しくなりますが、滑らかさや艶やかさが増してきます。
オーディオボードを使って音を整えたというのが、実感できる音質です。組み合わせての使用がお薦めです。
試聴後感想
・ボードとインシュレーター
最近私はTAD Reference Systemの試聴会を何度か開催し、以上に「入念なセッティング」にこだわったことで、再び「セッティング」にはまっています。
「セッティング」ではスピーカーの設置がもっとも音の変化が大きいので、まずスピーカーの位置と音調パネルの配置を最初に決めます。次に「ケーブル類」を選択しますが、TAD Reference Systemは例外的に「ケーブルを変えても音があまり変わらない製品」だったため、試聴会ではあまりこだわらなかった「ボード」、「インシュレーター」の精密セッティングを実験しました。
TAD Reference Systemの「置き方」に対する反応は凄まじく、「ボードとインシュレーターによる音質変化」が「ケーブル類」を大きく超えました。TADではAET入門クラスのスピーカーケーブル(メーター数千円)をSINクラス(メーター数万円超)に変えたときの変化よりも、インシュレーターを使ったときの改善が遙かに大きかったのです。
TAD Reference Systemのセッティングで最大の効果(変化)を与えたのが、D600/C600/M600への「AIRBOW Metal Base Lの追加」です。その効果は著しく、使わない時を100とすると使い方が成功したときの音は200を遙かに超えるほどです。普通の音が鳥肌モノの凄い音に「インシュレーターの使い方」だけで変化した経験はこれが初めてです。この変化を経験したTADのインストラクター(都留氏)は、その後のイベントで自費購入したAIRBOW Metal Base Lを使ってくださっています。Metal Base Lは安いですが、現在最強のインシュレーターの一つに間違いありません。
TAD Reference Systemのセッティング経験から、スピーカーセッティングが決まった後は、「ケーブル類によるチューニング」で詰めていたセッティングの仕上げに加え、最終段階で「ボード」や「インシュレーター」の変化も見直しています(スピーカーの足下は、必然的にスピーカーセッティングの前に行います)。
ボードやインシュレーターの効果は、今回テストしたように「プレーヤー(CD/アナログ/PC/NAS)で最も大きく反映されます。ただし、ベースやインシュレーターは、重ねすぎると何もしないときよりも音が悪くなることがありますから、慌てずに「一つずつ音を確認しながら追加」することがポイントです。
今回のテストでも各種のボードやインシュレーターの組み合わせにより、驚くほど多彩な「音のバリエーション」を生み出せる(作り出せる)ことが分かりました。
・RCD-1570
ROTELの新製品、RCD-1570は素晴らしい音質でした。音が細かく、定位感も抜群。高域はCDプレーヤーとは思えないほど伸びやかで、比較的軽量な筐体重量を感じさせないリッチでリジッドな低域が出ます。
CDの出し入れ時には、スロットイン式らしいガチャガチャ、ジーと言う低級で盛大な音がします。そこはちょっと興ざめですが、CDの回転音は非常に低く抑えられ、再生中は本体にかなり耳を近づけないと回転音が聞こえないほどです。このメカ音の小ささは、CD専用機ならではの美点だと思います。
CDを聞くためだけにまとめられたRCD-01570の音調はまったく癖がなく、その点でややクールに感じられることがありますが、細やかな音やニュアンスの変化がきちんと再現されています。日本製品らしく、油絵ではなく淡い色彩で描かれる水彩画のような音ですが、その水彩画は驚くほど繊細な階調で描かれています。
今更CD専用機?と思われるかも知れません。しかし、その水準は過去に例がないほど高く、PC/ネットワーク・プレーヤーでは未だに到達し得ない「透明で繊細な音色」と「深みのある音楽表現」が再現されます。外観の素っ気なさやメーカーの知名度の低さを良い意味で完全に裏切る、魅力の逸品です。先日テストしたRA-1570も良いプリメインアンプでしたが、RCD-1570はその何倍も素晴らしい、バリューな逸品だと思います。
2013年8月1日 逸品館代表 清原 裕介
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