ターンテーブル・シートは、レコードと直接触れる部分だけに「音質に大きな影響」を与えます。ターンテーブルシートとレコードの音質の関係は、オーディオ機器とオーディオボード(インシュレーターやボード)などの関係とまったく同じです。
従来のターンテーブルシートと言えば「ゴム系の柔らかい材質」、もしくは「石英ガラスなどの堅い材質」がほとんどで、「レコードをシッカリ支える確かな強度」と「レコードの不要な振動を吸収する緩衝性」を併せ持った製品は非常に少なく、私が愛用している「リングマット/生産完了(紙とコルクを組み合わせたもの)」のような「考えられた構造になっている製品」は希でした。
しかし、ターンテーブルシートも「インシュレーターやボード」と同じく「強度」と「適度な制振性」がバランス良く両立しているのが理想です。今回テストした「セイシン ADS−3005」は、そのバランスを考えて設計された、ある意味では画期的と言って差し支えない製品です。
レコードプレーヤーには「ノッティンガムのインタースペースHD ・ NOTTINGHAM INTER-SPACE/HD」を使用し、付属の発泡ウレタン製のターンテーブルシートと音質を比較しました。
付属のシートでも十分によい音で何ら問題ないように感じますが、シートをADS−3005に換えると「まるでプレーヤーをワンランクアップした」かのように、透明度と解像度が増加します。低音のしっかり感や透明度も大きく改善され、インタースペースがスペースデッキになったと感じるほど「低音が充実」し「音の透明な広がり」が実現します。
制振合金(ブラックメタル)というと制振効果が大きすぎて「音の微細なひげのような成分が消えてしまう」・「音楽の躍動感が殺がれる」・「生気が殺がれて鬱々としてしまう」などの弊害が感じられましたが、このターンテーブルシートでは、その弊害はまったく感じられません。
ポリカーボネイトとは「強度の大きな材質」で内部損失が小さく「ターンテーブルシートに使うには泣きが多すぎる」と感じる素材ですが、ブラックメタルの「制振性」がそれを上手くコントロールし、ポリカーボネイトの良さだけを引き出しているようです。また、こんかい制振合金(ブラックメタル)を微粉末にしたことが、奏効しているのでしょう。
悪い部分はと言えば、演奏がやや「無機質」に感じられることですが、効果の大きさに比べればほとんど問題とならないでしょう。
レコードを載せる表側には、レコードのラベルを避けるための凹が設けられるなど、きちんとした作りになっているのも好感が持てますし、何よりも「音の良さ」がその成功を物語っています。