■各種コンテンツ ■サービス・キャンペーン ■逸品館運営・外部ショップ ■Twitter・Facebook ■試聴機レンタルサービス ■オーディオ逸品館 MI事業部 オフィシャルサイト |
Triode トライオード Luminous ルミナス 84 真空管プリメインアンプ TRX-88S パワーアンプ 音質 比較 評価 レビュー 試聴Sennheiser Bluetooth(ブルートゥース) ヘッドホン、イヤホン Apple EarPods 音質比較テスト MOMENTUM Wireless、MOMENTUM IN-EAR/ON-EAR Wireless HD 4.50 BTNC
スマートフォンで音楽を聞くときは、煩わしいケーブルのないBluetooth(ワイヤレス)で接続するイヤホンやヘッドホンが流行です。けれど、ハイエンド・オーディオ市場では「Bluetoothは音が悪い」と言われています。 それは本当でしょうか? sennheiserから発売されている、Bluetoothのヘッドホンとイヤホンを聞いてみました。 しかし、それぞれの製品だけを比べるのでは、音質が伝わりにくいと考えて、今回は「Apple純正付属品 Ear Pods」と聞き比べてみました。 聞き比べた楽曲 比較試聴には、次の7曲を選びました。 聞き比べのポイント ・せせらぎ ・弦楽セレナード ・モナリザ ・500Miles ・新世界より ・テレホン ・スリラー 音質比較 比較試聴には、iPod Touch(第6世代)を使いました。CDからリッピングしたファイルを非圧縮のWAVで収録した音源を聞き比べました。 Apple純正のイヤホン「EarPods」は3,200(税別)ですが、簡単なリモート機能も装備され、汗や水にも強い、なかなかの優れものです。けれど「付属品=おまけ」のイメージが強く、「どうせたいしたことはないだろう」と決めつけて、聞いていませんでした。そこで今回は「いつでも聞けるのに、実はあまり聞いたことがない」。この「純正ヘッドホン」をiPod Touchに「ワイヤード接続」して、それを基準にそれぞれの製品を比較することにしました。 遮音性能 水の音が実に滑らかで、実際のせせらぎの音を聞いているように自然な音に驚かされます。 鳥の声も「生音」を聞いているように自然ですが、このせせらぎの録音されている「鳥の声」は、少しでもバランスが崩れると、とたんに人工的な声(電子バードのよう)になってしまうので再生が実は難しいのです。しかし、「EarPods」から出てくる鳥の声は、音色がきちんと再現され驚くほど生々しいのです。 耳と密着しないこういうタイプのイヤホンは「低音が出にくい」のが普通ですが、Apple純正品は特殊な方法により重低音までしっかりと再現出来るように作られているようです。この曲でも、コントラバスの低音がしっかりと出てきていきなり驚かされました。「Ear
Pods」の低音はかなり大きなヘッドホンで聴いているように思えるほどのボリューム感があります。 ギターの音は音量を上げすぎると少し中音が膨らみますが、適正な音量で聞いている限り、澄み切った美しい音で鳴ります。 ピアノの音は、低音が少し膨らんで濁ります。音量を少し下げてみましたが、濁りはあまり変わりません。 音楽を聞くとき、それを正しく伝えようとするときに最も大切な、ピアニストのタッチの表現力、ボーカリストの伝えたいこと、この演奏が何を表現しようと意図しているのか? それは正しく、そして十分伝わります。 「EarPods」で驚かされるのは、先に聴いた弦楽セレナードや、今聞いている「新世界」のような、本格的なクラシック(シンフォニー)が、耳の肥えた私が聞いても、何の問題もなく「きれいに鳴る」ことです。繊細な音が重なり、微弱な音から大音量までが使われるクラシック、特に交響曲はなかなか上手くならないことが多いのですが、「EarPods」は、比較的音が単純なPOPSやJAZZよりも、むしろクラシックでその音の良さが際立っています。 イントロのハープの音が、きちんと「生のパープの音」に聞こえます。一本ずつの弦の美しい響き。ハーピストが弦を弾き、弦が撓んで元に戻りながら、音が出る様子。その時間軸の正確な流れが、実に見事です。だから、パープの音が生々しく聞こえるのです。 楽しい!楽しい!!、まるでガガとセッションしている気分です。 ドアが開いて、部屋の空気が揺らぐ様子。その空気の揺れが伝わります。 そして、それらが融合したとき、奇跡のように深みと表現力のあるハーモニーが生まれる。 いろいろな音が重なるところでは、その隅々まで「マイケルの完璧主義」が生かされていることが聞こえます。 総合評価 エントリーモデルとは、文字通り「最初の出会い」を提供する製品です。一生の友となるかもしれない「音楽」との出会いだから、それが「ハッピーなもの」であって欲しいと心から願います。だから価格が安くても、むしろ価格が安い製品ほど「正しい音」で「良い音楽との出会い」をきちんと提供すべきだと、私は考えています。 けれど、「EarPods」が付属する以前の、iPod Touchに付属するイヤホンの音と装着感は、お世辞にも「良い」とは言えませんでした。だから、「お気に入りのイヤホンを別売りで購入して」音楽を聞いていました。iPod Touchの世代が進み、付属するイヤホンが変わってもそれを聞くことなく、お気に入りのイヤホンを繋いでいました。 しかし、今回「ケーブル付きイヤホン」の基準とするのは「やはり純正だろう」と考え、目もくれなかった「Apple純正のイヤホン EarPods」をじっくり聞いて驚きました。なんて素晴らしい音なんでしょう。 iPod
TouchとEarPodsで音楽を聞いていると、音楽のそのものの善し悪しや演奏家の伝えたいことが、手に取るように分かります。今までなんとなく聞いていた演奏が、驚くほど感動的に鳴るから、試聴中何度も涙腺が緩んだのです。 いつしか、「ふざけるな! 音楽はおまえ等の私物じゃない。商売のための道具ではない」心の中で、そう叫んでいました。 このレポートを読んで、「EarPods」が良い音だと気づくことができれば、あるいはすでにそれが素晴らしいと気づいていらっしゃるなら、是非「1950年前後のクラシックやジャズ」を聴いてみて下さい。ステレオ録音されていなくてもかまいません。第2次世界大戦という大きなストレスから解放された音楽家と民衆が一体となり、春と初夏が一緒にやってくる「北国の春」のように、すべての抑圧から解放された「命の輝き」が伝わるはずです。 なぜならば、彼らこそ「生きる喜び」を誰よりもよく知っているからです。 高級品・高額品で「EarPods」よりも音の細かいヘッドホンやイヤホンはたくさんありますが、EarPodsほどバランスの良い製品はまず見つからないでしょう。少なくとも、iPodTouchとEarPodsの組合せなら、音源がMP3(できればWAVがおすすめ)でも、音楽の必要な要素はほとんどすべて伝わるはずです。この価格でそれをなし遂げているのは、驚くべきことです。 魂の抜けたような音しか出ない製品にスペックをこじつけてばかりいる、某国産メーカーは「iPod TouchとEarPods」を聞いて猛省して下さい。あなた方がつぶしてしまった「若者の感性」は、もう二度と戻らないかも知れないのです。 なぜイヤホンをわざわざ、Bluetoothで使うのか?それはケーブルの煩わしさと、タッチノイズから解放されるためでしょう。 軽いと言うことは、それだけでうれしいことです。 遮音性能 通常のケーブルによる接続と比べると、少し密度感が低い感じがしますが、音は自然です。 Bluetooth・ワイヤレスは、音が悪いという印象はなく、音質にはほとんど悪影響を及ぼしていません。 EarPodsでは、一糸乱れぬ美しさが再現された、演奏の鳴り始めの「ハーモニー」に乱れが感じらるようになりました。 ギターの音は濁りもなく綺麗です。ボーカルも艶やかで表現力も十分です。 ピアノの音は、低音の一部だけが膨らんで、少し奇妙な音です。 録音と演奏が良いこの曲では、EarPodsが俄然有利です。 もし、EarPodsを聞いていなければ、十分良い音だと感じたでしょう。けれど、聞いてしまった後では、やはりその差はあると感じるのが正直な印象です。 低音は良く出ます。少し膨らみますが、まあ許容範囲内です。 イントロのドアの開く音、部屋を歩き回る靴音がEarPodsよりも「人工的(わざとらしく)」に感じられます。けれど、それはIN-EARが「悪い」のではなく、ほとんどのイヤホンやヘッドホンは「こういう音(人工的)」で聞こえます。言い換えるなら、EarPodsの音があまりにもリアルすぎただけです。 スマートフォンとケーブルが繋がっていないのは、素敵です。タッチノイズも、頭を大きく動かさなければ、気になりません。 遮音性能 過去の経験から、ノイズキャンセルは音質に悪影響を及ぼすことが分かっていますが、こういう製品を購入して、その機能を使わずに音楽を聞く人はまずいないと考えて、ノイズキャンセルをONにして試聴を行いました。 せせらぎの音は高域寄りです。低い音はそれほど出てきません。 アンプを内蔵するこのヘッドホンは、ノイズキャンセルを使っていると、音量を最大にしてもそれほど大きな音が出るわけではありません。 弦楽器の音が高域寄りで、低音は明らかに少なめです。また、高域が硬く、弦楽器の音がうるさく聞こえます。 ノイズキャンセルを切ることで、かなり音は良くなりますが、それでも高音は硬くキツいです。 再び、ノイズキャンセルをONにして「モナリザ」を聞きます。ギターの高域が明らかに不自然です。外部からのノイズはキャンセルされるようですが、音楽信号に含まれるノイズは、逆に大きくなっています。高域が強く硬く、ボーカルも子音が荒れています。 度の合わない眼鏡をかけて、本を読んでいるようなイメージです。頭がくらくらして、痛くなります。 ノイズキャンセルをOFFにすると気持ちがスッキリしました。初期に発売されたノイズキャンセル・モデルは、それを有効にして音楽を聞くと気持ちが悪くなりました。けれど最新モデルでも、それは変わっていないようです。 ノイズキャンセルをONにしていると気分が悪くなったので、ここから先の試聴はノイズキャンセルを切って行うことにしました。 見違えるように音が良くなりました。高域の倍音の伸びやかさが改善し、バランスが自然になりました。 ピアノの音は、立ち上がりが少し遅く、そのため細かいところまでは聞き分けられませんが、一般的には十分な音で鳴っています。 イントロは低音のボリューム感が少し足りないので、盛り上がりに欠けます。 イントロのパープの音が、おもちゃのようです。薄っぺらく、色彩の変化が皆無です。 録音の良いこの曲が、普通の録音に聞こえます。 だから、生音をしっかりと記憶していない人(多くの人が該当します)には、この感覚は伝わらず、分からないかも知れません。 それを回避するためにノイズキャンセル機能を切ったとしても、このモデルは高音の質が悪く、あまり良い音ではありません。 遮音性能 装着感には問題ありです。耳当ての部分が小さく、耳がつぶれます。圧迫感も強く、金属のヘッドバンドを使うなど、上の方が重いのでバランスも良くありません。 音量がやや不足気にだったHD
4.50BTNCと違って、音量は十分に大きくなります。 イントロの弦楽器が、ほぐれずにかたまりになってしまいます。 ギターの音は、本体の音もやや電子的ですが、付加されたエコーは電子的に聞こえて、本体の音と完全に分離します。 高域が強調されるギルので、スピーカーやEarPodsでは気にならない、いろいろなノイズがやけに大きく聞こえます。 ボーカルは、お腹から声が出ている感じが薄く、お腹にずしんと響きません。 ピアノは立ち上がりが早く、打鍵感(タッチ)がきちんと出ますが、ピアノの中でハンマーが動く余計なノイズがかなり強く聞こえます。 金管楽器の音が薄っぺらく感じられるのは、高域が強いからです。相対的に中低域の量感と質感が低下しています。 イントロのハープは、ボディーがプラスティックで作られているようにチープな音です。 部屋の天井付近にマイクを設置して録音しているようなバランスで、全部の音が上ずっています。低音が出ないからです。 あらゆる音の輪郭が強くなり、ハッキリと聞き取れますが、綿密に計算されて作られたハーモニーの美しさは再現されません。 Sennheiserには優れた音質の製品がたくさんラインナップされています。誤解を避けるためにも、こういう音のヘッドホンに「Sennheiser(ゼンハイザー)」の名を冠して売って欲しくありません。 遮音性能 ケーブルがなくなっているのに、アンプとバッテリーが追加されたためヘッドホンが重く感じ、また上の方に重心が偏っているため、余計に重く感じられます。 高域寄りのバランスはあいかわらずですが、ON-EARよりもかなりましな感じです。 イントロ部分でバイオリンとチェロ、コントラバスがきちんと鳴り分けられ、ほっとします。 バランスは良好で、気になっていたノイズの強調感も緩和されました。 ギターの音は適切。本体の音とエコーのバランス、ボーカルも良いバランスで鳴っています。 高域もマスキングされたように、少しもやがかかって聞こえます。 ピアノは立ち上がりが遅く、倍音は幕がかかっているようにもやもやします。 イントロ部分では、低音の分解能が不足し、楽器の音が団子になっています。また、コントラバスの音と金管楽器の音の違いも不明瞭です。ティンパニーは、もっと小さな太鼓を叩いているようにしか聞こえません。 イントロのハープの音は、プラスティッキーでおもちゃのようです。 イントロ部分の空気の動く感じは良く出ますが、ドアの開く音と靴音は、高域が強すぎで距離感が不明瞭に近くなっています。 PPからFFに変化する部分では、空間のサイズがあまり大きくならないので、大音量部がうるさくなってしまいます。 50年以上に渡って研究開発が続けられ、映画が台頭するまでは「最高の娯楽」だった「オーディオ文化」は、イヤホンやヘッドホンに比べると、歴史だけではなく音も熟成しています。そしてそれを販売する「オーディオ専門店」には、それなりに音と音楽を理解する「アドバイザー」が在籍します(すべてのスタッフ、すべてのお店がそうではありませんが)。 けれど「スマホ」の普及で、イヤホンやヘッドホンの需要が爆発的に高まると「そういう歴史と経験がないメーカー」の製品は「流行に乗って」乱造され、それが音楽を正しく聞き分ける経験が不足しているスタッフが不足しがちな家電量販店やイヤホン・ヘッドホン専門店を頼らざるありません。今では、イヤホンやヘッドホンは、音ではなく「見かけの格好良さ」が、ヒットの決め手となっています。 けれど、「売れている製品=良い製品」だとは、限らないことを知っていて下さい。 インターネットであふれるほどの知識が得られる最近の人たちは、経験者が伝えようとする「深い話」を面倒だといって嫌がる傾向があります。けれど音楽の「なんたるか?」を知らない人たちが表面的な聞き方で流行を作り、何も知らない人たちがそれに乗っかる形で「メインストリーム」が作られて行く。時代の流れかも知れませんが、音楽という歴史ある文化の継承を考えると、それはあまりにも心許ありません。 別に、良い音楽を聞いて、良い人間になりなさいなどと、それこそ「うるさいこと」を言うつもりはありません。 けれど連綿と継承されてきた文化の中には必ず、人間にとって重要な示唆が含まれているのです。 今回のSennheiserのBluetoothモデルの試聴では、かなり「ゆがんだ音」を聞き続けなければならなかったので、正直疲れてくたくたになりましたが、私の不勉強もさることながら、Apple純正付属品「EarPods」の素晴らしさを知ったことは、それを補って余りある喜びを私に与えてくれました。 スマートホンを世界で初めて開発し、誰もが気楽に音楽を聴く楽しみを享受できるようになったのは「Apple」のおかげです。 その「Apple」が付属しているイヤホン「EarPods」がこれほど素晴らしい製品だったとは、大反省です。 ヘッドホン・イヤホンメーカーは、「EarPods」の音をどのように感じているのでしょう? 聞いた事、比較したことがないのでしょうか? それとも、企業がでたらめに作り上げた流行に乗り遅れず、「売れれば良い」と考えているのでしょうか? けれどもしそれらのモデルが、「今の若者の欲しい音」に作られているのだとすれば、それは恐ろしいことです。 これから「音楽」を楽しみたい。音楽で「癒やされたい」と考えていらっしゃるなら、やはり「良いもの」をきちんと選ぶべきです。音楽的に優れたイヤホンやヘッドホンを使えば、今まで聞いていた音楽がより意味深く心の奥底に届きます。今まで気づかなかった、感動と出合うために、より良い音のイヤホン・ヘッドホンを選びましょう。 音楽を楽しむためならば「EarPods」から、今回テストしたSennheiser製品に買い換えるメリットは皆無だと、私には思います。 Sennheiserは、その伝統を継承する素晴らしい製品を今もラインアップしているのですから、「売上」だけに執心せず、「きちんと音楽が伝わる製品」を開発して欲しいと思いました。 2017年9月 逸品館代表 清原裕介
|
|