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Sennheiser Bluetooth(ブルートゥース) ヘッドホン、イヤホン Apple EarPods 音質比較テスト

 MOMENTUM Wireless、MOMENTUM IN-EAR/ON-EAR Wireless

HD 4.50 BTNC

  

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スマートフォンで音楽を聞くときは、煩わしいケーブルのないBluetooth(ワイヤレス)で接続するイヤホンやヘッドホンが流行です。けれど、ハイエンド・オーディオ市場では「Bluetoothは音が悪い」と言われています。

それは本当でしょうか?

sennheiserから発売されている、Bluetoothのヘッドホンとイヤホンを聞いてみました。

しかし、それぞれの製品だけを比べるのでは、音質が伝わりにくいと考えて、今回は「Apple純正付属品 Ear Pods」と聞き比べてみました。

聞き比べた楽曲

比較試聴には、次の7曲を選びました。

     

聞き比べのポイント

・せせらぎ
音の自然さ(違和感の少なさ)、音の広がり(立体感)、水の音の細やかさと水量(解像度と情報量)、鳥の声のバリエーション(音色/色彩感の再現性)を比較します。

・弦楽セレナード
構造が同じでサイズの異なる弦楽器を聞き比べることで、楽器の倍音構造の再現性を比較します。

・モナリザ
ギターとボーカルのマッチング(コンビネーションの再現性)、ライブ感の演出(リアリティーの再現力)を比較します。

・500Miles
ダイナミックレンジが圧縮されたソフトの再現性を比較します。

・新世界より
アコースティックなサウンドの再現性、数多くの楽器の分離力、弱音と大音量の再現性などを比較します。

・テレホン
近代的なPops(Rock)の鳴り方を比較します。

・スリラー
録音の良いPops(Rock)の鳴り方を比較します。

音質比較

比較試聴には、iPod Touch(第6世代)を使いました。CDからリッピングしたファイルを非圧縮のWAVで収録した音源を聞き比べました。

Apple(アップル) EarPods(純正付属品) アップルストア価格 3,200円(税別)

Apple純正のイヤホン「EarPods」は3,200(税別)ですが、簡単なリモート機能も装備され、汗や水にも強い、なかなかの優れものです。けれど「付属品=おまけ」のイメージが強く、「どうせたいしたことはないだろう」と決めつけて、聞いていませんでした。そこで今回は「いつでも聞けるのに、実はあまり聞いたことがない」。この「純正ヘッドホン」をiPod Touchに「ワイヤード接続」して、それを基準にそれぞれの製品を比較することにしました。

遮音性能
このイヤホンは、カナル型ではなく、耳に掛けて?使うタイプです。
そのため、耳とイヤホンが密着せず、隙間から外側の音が盛大に入ってきます。
遮音性能は期待できないので、あまり騒々しいところには向かないと思います。

水の音が実に滑らかで、実際のせせらぎの音を聞いているように自然な音に驚かされます。

鳥の声も「生音」を聞いているように自然ですが、このせせらぎの録音されている「鳥の声」は、少しでもバランスが崩れると、とたんに人工的な声(電子バードのよう)になってしまうので再生が実は難しいのです。しかし、「EarPods」から出てくる鳥の声は、音色がきちんと再現され驚くほど生々しいのです。
鳥たちがどういう「意図」をもって鳴いているのかが、伝わってきます。
いつまでも聞いていたくなるような、暖かい自然の息吹を感じさせる音で「せせらぎ」が鳴りました。

耳と密着しないこういうタイプのイヤホンは「低音が出にくい」のが普通ですが、Apple純正品は特殊な方法により重低音までしっかりと再現出来るように作られているようです。この曲でも、コントラバスの低音がしっかりと出てきていきなり驚かされました。「Ear Pods」の低音はかなり大きなヘッドホンで聴いているように思えるほどのボリューム感があります。
バイオリンとチェロ、コントラバスの分離もきちんと再現され、思わず涙腺が緩みそうになるほど、感動的にこの曲が鳴ります。
ワンダフル!

ギターの音は音量を上げすぎると少し中音が膨らみますが、適正な音量で聞いている限り、澄み切った美しい音で鳴ります。
ボーカルは艶っぽく、かなり細かい部分まで聞き取れます。
電子的に付加されたエコー、マイクの位置、ボーカルの口元の動きなど、かなり細かい部分まで伝わるほど情報量が多いです。
ギターとボーカルの絡みは、もう少し官能的なら文句はありませんが、少しだけあっさりとしています。

ピアノの音は、低音が少し膨らんで濁ります。音量を少し下げてみましたが、濁りはあまり変わりません。
低音の量感は十分なのですが、その低音がハウジングに響きが共鳴し少し濁りを感じるのです。
けれど、それは「評価しよう」という気持ちが前に出ているからで、音楽を聞こうとすれば、その濁りはほとんど気になりません。

音楽を聞くとき、それを正しく伝えようとするときに最も大切な、ピアニストのタッチの表現力、ボーカリストの伝えたいこと、この演奏が何を表現しようと意図しているのか?

それは正しく、そして十分伝わります。

「EarPods」で驚かされるのは、先に聴いた弦楽セレナードや、今聞いている「新世界」のような、本格的なクラシック(シンフォニー)が、耳の肥えた私が聞いても、何の問題もなく「きれいに鳴る」ことです。繊細な音が重なり、微弱な音から大音量までが使われるクラシック、特に交響曲はなかなか上手くならないことが多いのですが、「EarPods」は、比較的音が単純なPOPSやJAZZよりも、むしろクラシックでその音の良さが際立っています。
イントロ部分のコントラバスと金管楽器が奏でるハーモニーの重厚さが、きちんと再現されます。ティンパニーも、等身大の大きさを感じます。曲間の静寂、楽譜に書かれた休符、それらが見事に再現されています。
ハイライトは、音が重なった部分での「ハーモニーの鳴り方」です。
それぞれの楽器が重ならずに分離しながら、まとまったハーモニーを形成する。
良い演奏の「良さ」がなんであるかが、きちんと伝わります。
驚くほど、素晴らしい音で「シンフォニー」が鳴ります!

イントロのハープの音が、きちんと「生のパープの音」に聞こえます。一本ずつの弦の美しい響き。ハーピストが弦を弾き、弦が撓んで元に戻りながら、音が出る様子。その時間軸の正確な流れが、実に見事です。だから、パープの音が生々しく聞こえるのです。
ガガの声も、きちんとした抑揚と変化が感じられます。
低音が入ってくると、やはり響きが少し膨らんでしまいます。それはハウジングの共鳴するからですが、同じ理由で音場が少し濁ります。う〜ん。これで、濁りがとれれば完璧なのですが。まあ、価格が価格なので、それは仕方がないでしょう。
けれど、音の広がりと立体感は抜群で、頭の中で電話の音がころころと駆け回ります。思わず踊り出したくなるような、楽しい音です。口笛を吹いてハモってみると、見事に決まりました!

楽しい!楽しい!!、まるでガガとセッションしている気分です。

ドアが開いて、部屋の空気が揺らぐ様子。その空気の揺れが伝わります。
狼の鳴き声が「人間が演じている声」だと、きちんと伝わります。
PPからFFと音が大きくなりながら、空間も大きくなって行く。音楽の表現として最も大事な部分が、きちんと再現されます。
数多くの楽器が使われ、それぞれが完璧なパートを形成する。

そして、それらが融合したとき、奇跡のように深みと表現力のあるハーモニーが生まれる。
聴いている曲はPOPSですが、この曲は限りなく「シンフォニー」に近いと思います。

いろいろな音が重なるところでは、その隅々まで「マイケルの完璧主義」が生かされていることが聞こえます。
「EarPods」でThrillerを聞いて、涙が出るとは思いもかけませんでした。
録音の良い演奏、心のこもった演奏が一番良い音で鳴る。
これが、本当のオーディオ製品です。

総合評価

エントリーモデルとは、文字通り「最初の出会い」を提供する製品です。一生の友となるかもしれない「音楽」との出会いだから、それが「ハッピーなもの」であって欲しいと心から願います。だから価格が安くても、むしろ価格が安い製品ほど「正しい音」で「良い音楽との出会い」をきちんと提供すべきだと、私は考えています。
その点でAppleの製品は、これまでも一本筋が通っていると今まで感じていました。

けれど、「EarPods」が付属する以前の、iPod Touchに付属するイヤホンの音と装着感は、お世辞にも「良い」とは言えませんでした。だから、「お気に入りのイヤホンを別売りで購入して」音楽を聞いていました。iPod Touchの世代が進み、付属するイヤホンが変わってもそれを聞くことなく、お気に入りのイヤホンを繋いでいました。

しかし、今回「ケーブル付きイヤホン」の基準とするのは「やはり純正だろう」と考え、目もくれなかった「Apple純正のイヤホン EarPods」をじっくり聞いて驚きました。なんて素晴らしい音なんでしょう。

iPod TouchとEarPodsで音楽を聞いていると、音楽のそのものの善し悪しや演奏家の伝えたいことが、手に取るように分かります。今までなんとなく聞いていた演奏が、驚くほど感動的に鳴るから、試聴中何度も涙腺が緩んだのです。
ハイレゾにご執心で、最近レコードをプレスし始めた、日本のメーカーの製品とは雲泥の差です。

いつしか、「ふざけるな! 音楽はおまえ等の私物じゃない。商売のための道具ではない」心の中で、そう叫んでいました。

このレポートを読んで、「EarPods」が良い音だと気づくことができれば、あるいはすでにそれが素晴らしいと気づいていらっしゃるなら、是非「1950年前後のクラシックやジャズ」を聴いてみて下さい。ステレオ録音されていなくてもかまいません。第2次世界大戦という大きなストレスから解放された音楽家と民衆が一体となり、春と初夏が一緒にやってくる「北国の春」のように、すべての抑圧から解放された「命の輝き」が伝わるはずです。
生きることに疲れたら、是非その時代の音楽を聞いてみて下さい。
生きるという大変なストレスから、嘘のように心が解き放たれるでしょう。

なぜならば、彼らこそ「生きる喜び」を誰よりもよく知っているからです。

高級品・高額品で「EarPods」よりも音の細かいヘッドホンやイヤホンはたくさんありますが、EarPodsほどバランスの良い製品はまず見つからないでしょう。少なくとも、iPodTouchとEarPodsの組合せなら、音源がMP3(できればWAVがおすすめ)でも、音楽の必要な要素はほとんどすべて伝わるはずです。この価格でそれをなし遂げているのは、驚くべきことです。
エントリーモデルにして最高。ゼネラルオーディオにして究極。Appleが生み出した「EarPods」は、スティーブン・ジョブスと彼を信じてついて行くエンジニアの情熱が宿っています。

魂の抜けたような音しか出ない製品にスペックをこじつけてばかりいる、某国産メーカーは「iPod TouchとEarPods」を聞いて猛省して下さい。あなた方がつぶしてしまった「若者の感性」は、もう二度と戻らないかも知れないのです。

Sennheiser(ゼンハイザー) MOMENTUM IN-EAR WIRELESS OPEN価格(23,328円/税込)(メーカーホームページ

なぜイヤホンをわざわざ、Bluetoothで使うのか?それはケーブルの煩わしさと、タッチノイズから解放されるためでしょう。
MOMENTUM IN-EARのアンプ部と電源部は、首の後ろに回せるようになっていて、装着感はなかなかのものです。

軽いと言うことは、それだけでうれしいことです。
「TV」を見るときにワイヤレス・ヘッドホンを使うと重くて肩が懲ります。けれど、同じワイヤレスでもIN-EARのように軽く小さなBluetoothイヤホンだと、そういう心配がありません。Bluetoothが搭載されているTVはまだ少数派ですが、小型のBluetooth送信機は3千円から5千円くらいで売られていますから、それを組み合わせれば、IN-EARをTVと組み合わせて使えるようになります。
それでは、どんな音がするのか?
聞いてみましょう。

遮音性能
EarPodsと違って、イヤープラグが耳道に密着するカナル型の「IN-EAR」は、遮音性が高くEarPodsのように外の音は入ってきません。イヤホン自体の遮音性能もまずまず高く、これなら、あまりうるさくない場所だと邪魔されずに音楽が聴けるでしょう。
けれど、意外なことに頭を動かすと、ケーブルのタッチノイズがかなり盛大に聞こえるではありませんか?ケーブル・レズはメリットがあると思いますが、ケーブルのタッチノイズが聞こえるのは残念です。

通常のケーブルによる接続と比べると、少し密度感が低い感じがしますが、音は自然です。
近くの水面で水泡がはじける音と、鳥の声の距離感も上手く出ますが、全体にやや高域が強く、鳥の声も少し輪郭が強められるようです。また、EarPodsから比べると川幅がやや狭く、鳥の数も少し少ないように感じられます。

Bluetooth・ワイヤレスは、音が悪いという印象はなく、音質にはほとんど悪影響を及ぼしていません。
これならば、十分だと思います。

EarPodsでは、一糸乱れぬ美しさが再現された、演奏の鳴り始めの「ハーモニー」に乱れが感じらるようになりました。
また、勢いよく引かれている弓を止める瞬間、音の終わりの部分が少し「雑」に感じられます。
バイオリン、チェロ、コントラバスのハーモニーの整合性も、EarPodsには劣ります。
音は細かくバランスも適正ですが、整然としているはずの演奏に、少し「雑味」が出るのが残念です。

ギターの音は濁りもなく綺麗です。ボーカルも艶やかで表現力も十分です。
EarPodsと比べると、ギターとボーカルの絡みがすこし希薄になったように感じますが、不足するということはありません。
EarPodsで不満を感じた、中低音の濁りは解消しています。これで、音場の見通しがもう少し良ければ完璧です。
良いバランスで違和感なくこの曲が鳴りました。

ピアノの音は、低音の一部だけが膨らんで、少し奇妙な音です。
ボーカルは、完全にどこかの帯域がハウジングと共鳴し、わ〜んと鳴いています。
もちろん、それは「特定の音程」だけですが、この膨らみ方、酷い共鳴は容認できません。

録音と演奏が良いこの曲では、EarPodsが俄然有利です。
もちろん、IN-EARの音が悪いのではありませんが、美しいハーモニーの美しさをそのまま伝えるという能力に関しては、EarPodsが上をゆきます。良い音ですが、ハーモニーがわずかに濁っています。その濁りが、この曲のテーマである「静寂感」の再現を邪魔しています。この音は、ぎりぎり及第点です。

もし、EarPodsを聞いていなければ、十分良い音だと感じたでしょう。けれど、聞いてしまった後では、やはりその差はあると感じるのが正直な印象です。

低音は良く出ます。少し膨らみますが、まあ許容範囲内です。
ハーモニーの部分では、少し音が濁りますが、それも許容範囲内です。
けれどハープの音が濁り、高域が硬いので、その生々しさはEarPodsに及びません。
ガガの声も少し電子的で、肉声のように聞こえたEarPodsとは、あきらかに差があります。
電話のベルは、EarPodsのほうが抜けが良く、伴奏と明確に分離しました。
十分楽しく聞いていられますが、EarPodsよりは音質は劣ると感じます。

イントロのドアの開く音、部屋を歩き回る靴音がEarPodsよりも「人工的(わざとらしく)」に感じられます。けれど、それはIN-EARが「悪い」のではなく、ほとんどのイヤホンやヘッドホンは「こういう音(人工的)」で聞こえます。言い換えるなら、EarPodsの音があまりにもリアルすぎただけです。
低音は力強く、パンチがあります。ハーモニーの部分でも、特定の楽器が大きく聞こえたり、リズムが乱れることはありません。
マイケルの声は、少し伴奏に埋もれていますが、それも許容範囲内です。
無難な音です。比較しなければ、十分に満足できるでしょう。
総合評価

スマートフォンとケーブルが繋がっていないのは、素敵です。タッチノイズも、頭を大きく動かさなければ、気になりません。
音質は中庸ですが、価格とデザイン性(かっこよさ)を考えれば、価格は妥当だと思います。
ワイヤレスという弊害をほとんど感じさせず、いろいろな音楽を楽しむのに十分な音質を持っています。

Sennheiser(ゼンハイザー) HD 4.50 BTNC(ノイズキャンセル)OPEN価格(23,328円/税込)(メーカーホームページ

遮音性能
ノイズキャンセリング機能が有効なためか、シーンという耳鳴りが聞こえるほど遮音性は高いのですが、キーボードを打つような急に立ち上がる音はキャンセルされず、「そういう音」は、通常のヘッドホンやイヤホンとあまり変わらない印象です。
緩やかに立ち上がり、消えるような音はキャンセルされますが、ノイズキャンセルが機能しないような急に立ち上がる音はキャンセルされず、すべての音が均一に消えるわけではありませんから、その点は注意が必要です。

過去の経験から、ノイズキャンセルは音質に悪影響を及ぼすことが分かっていますが、こういう製品を購入して、その機能を使わずに音楽を聞く人はまずいないと考えて、ノイズキャンセルをONにして試聴を行いました。

せせらぎの音は高域寄りです。低い音はそれほど出てきません。
音のバランスや出方は、IN-EARとよく似ていますが、鳥の声は高域がより固く、バリエーションがさらに少なくなっています。
圧迫感が少なく、広がりが感じられるのは良いと思います。
試しに、付属ケーブルを使って、iPodTouchと直結してみましたが、音質はそれほど変化しませんでした。

アンプを内蔵するこのヘッドホンは、ノイズキャンセルを使っていると、音量を最大にしてもそれほど大きな音が出るわけではありません。

弦楽器の音が高域寄りで、低音は明らかに少なめです。また、高域が硬く、弦楽器の音がうるさく聞こえます。
弦楽器の音に、小さなエコーがつきまとう感じがしますが、ノイズキャンセルの悪影響でしょう。弦楽器の音の立ち上がりと立ち下がりは早いので、キャンセルするために作られた音が遅れて、それが「エコー」として聞こえるようです。
試しにノイズキャンセルをオフにすると、弦楽器の高音が伸びてほぐれ(解れ)ました。

ノイズキャンセルを切ることで、かなり音は良くなりますが、それでも高音は硬くキツいです。

再び、ノイズキャンセルをONにして「モナリザ」を聞きます。ギターの高域が明らかに不自然です。外部からのノイズはキャンセルされるようですが、音楽信号に含まれるノイズは、逆に大きくなっています。高域が強く硬く、ボーカルも子音が荒れています。
ちょっと耐えられないほど、アンバランスな音です。
個人的には、これほどバランスが崩れた音は、長時間聞き続けられません。

度の合わない眼鏡をかけて、本を読んでいるようなイメージです。頭がくらくらして、痛くなります。

ノイズキャンセルをOFFにすると気持ちがスッキリしました。初期に発売されたノイズキャンセル・モデルは、それを有効にして音楽を聞くと気持ちが悪くなりました。けれど最新モデルでも、それは変わっていないようです。

ノイズキャンセルをONにしていると気分が悪くなったので、ここから先の試聴はノイズキャンセルを切って行うことにしました。

見違えるように音が良くなりました。高域の倍音の伸びやかさが改善し、バランスが自然になりました。

ピアノの音は、立ち上がりが少し遅く、そのため細かいところまでは聞き分けられませんが、一般的には十分な音で鳴っています。
ボーカルもなかなか艶っぽく、良い感じです。
ピアノとボーカルのバランスもきちんとしています。
演奏のテーマが違わずに伝わる、まずまずきちんとした音で鳴りました。

イントロは低音のボリューム感が少し足りないので、盛り上がりに欠けます。
音の広がりもやや不自然で、いかにもヘッドホンで聴いているという聞こえ方です。
楽器の音色の描き分けが不味く、それが原因で楽器の数か少なくなってしまいます。
演奏の感覚は伝わりますが、それは良い音でこの曲を聴いた「記憶」があるからで、それがなければこの演奏の良さを聞き逃すでしょう。
大甘採点で、ぎりぎり及第点でしょうか?

イントロのパープの音が、おもちゃのようです。薄っぺらく、色彩の変化が皆無です。
ガガの声は、まあまあです。
低音の量感と力感は十分です。全体的なバランスも悪くありませんが、明らかに「安い音」です。

録音の良いこの曲が、普通の録音に聞こえます。
超高域の再現性が不足しているので、高域の質が悪く、それが音を安っぽく感じさせる原因になっています。
本当は素晴らしい曲なのに、他の曲との違いがハッキリしません。
悪くない音ですが、音楽の良さが伝わってきません。
総合評価
ノイズキャンセリングを使って音楽を聞くと、とても不自然で頭がくらくらして気分が悪くなりました。
しかしそれはあくまでも、私が「絶対的に自然な音の感覚(経験)」を持っているため、「絶対的な記憶と現実のずれ」が大きくなった結果です。絶対音感を持っている人が、音程の外れた音に絶えられないのと同じです。

だから、生音をしっかりと記憶していない人(多くの人が該当します)には、この感覚は伝わらず、分からないかも知れません。

それを回避するためにノイズキャンセル機能を切ったとしても、このモデルは高音の質が悪く、あまり良い音ではありません。
自分の子供には、買い与えたくない製品です。

Sennheiser(ゼンハイザー) MOMENTUM ON-EAR WIRELESS OPEN価格(34,020円/税込)(メーカーホームページ

遮音性能
キーボードを打つ音の漏れは、HD4.50BTNCよりも小さく、外の音もほとんど聞こえません。ノイズキャンセル機能が付いていなくても、付いているモデルに比べて遮音性能が大きく劣らないと感じられます。

装着感には問題ありです。耳当ての部分が小さく、耳がつぶれます。圧迫感も強く、金属のヘッドバンドを使うなど、上の方が重いのでバランスも良くありません。
折角のWirelessでもこの重さとバランスの悪さでは、メリットはあまり感じられないでしょう。
長時間の試聴では、疲れそうです。

音量がやや不足気にだったHD 4.50BTNCと違って、音量は十分に大きくなります。
高域が強く鳥の声がやや引きつっているように聞こえますが、鳴き声のバリエーションはHD4.50BTNCよりも多く感じられます。
水の音は切れ味が良く、近くの水泡がはじける音は良く聞こえます。遠くの鳥の声も良いバランスで聞こえ、立体感はなかなか良好です。
ただ、低音は明らかに少ないのは、バランスを崩すので問題です。

イントロの弦楽器が、ほぐれずにかたまりになってしまいます。
空間も広がらず、ホールで奏でられているはずなのに、頭の中に弦楽器が押し込まれたような鳴り方です。
高域もかなりキツく、これでは弦楽器は聞いていられません。

ギターの音は、本体の音もやや電子的ですが、付加されたエコーは電子的に聞こえて、本体の音と完全に分離します。

高域が強調されるギルので、スピーカーやEarPodsでは気にならない、いろいろなノイズがやけに大きく聞こえます。

ボーカルは、お腹から声が出ている感じが薄く、お腹にずしんと響きません。
ギターとボーカルのバランスは良好ですが、高域があまりにも強すぎます。

ピアノは立ち上がりが早く、打鍵感(タッチ)がきちんと出ますが、ピアノの中でハンマーが動く余計なノイズがかなり強く聞こえます。
ボーカルもマイクに当たる息がわかるほど、高域が強められています。
音の質感や密度感は高いのですが、まるで耳のそばで怒鳴られているようにうるさく聞こえます。
デリカシーが感じられません。

金管楽器の音が薄っぺらく感じられるのは、高域が強いからです。相対的に中低域の量感と質感が低下しています。
ハーモニーも特定の楽器だけが前に出すぎて、バランスが崩れています。
ベランダ席の最前列から身を乗り出して聞いているようなバランスです。

イントロのハープは、ボディーがプラスティックで作られているようにチープな音です。
打楽器は、高域が強く、頭の中にたたき込まれるような鳴り方です。
ボーカルは悪くありませんが、高域が強すぎて、伴奏が電子的でノイジーになって聞いていられません。
しんどすぎます。

部屋の天井付近にマイクを設置して録音しているようなバランスで、全部の音が上ずっています。低音が出ないからです。

あらゆる音の輪郭が強くなり、ハッキリと聞き取れますが、綿密に計算されて作られたハーモニーの美しさは再現されません。
はっきりいって「伝わらない音」です。マイケルファンが怒りそうです。
総合評価
このヘッドホンの音は、私の心をささくれ立たせ、気分をイライラさせます。
ストレスを消すはずの音楽鑑賞が、逆にストレスの元になってしまいました。

Sennheiserには優れた音質の製品がたくさんラインナップされています。誤解を避けるためにも、こういう音のヘッドホンに「Sennheiser(ゼンハイザー)」の名を冠して売って欲しくありません。

Sennheiser(ゼンハイザー) MOMENTUM WIRELESS OPEN価格(43,740円/税込)(メーカーホームページ

遮音性能
ヘッドホンの本体が大きいためか、音の漏れが大きく、遮音性能はMOMENTUM ON-EARに劣るだけではなく、HD 4.50BTNCと比べても、遮音性能は劣ります。カナル型イヤホンに比べて、明らかに外側の音がハッキリと聞こえ、遮音性能はあまり期待できません。しかし、耳当ての部分が大きくなったので、装着感はMOMENTUM ON-EARよりも優れています。

ケーブルがなくなっているのに、アンプとバッテリーが追加されたためヘッドホンが重く感じ、また上の方に重心が偏っているため、余計に重く感じられます。

高域寄りのバランスはあいかわらずですが、ON-EARよりもかなりましな感じです。
けれど、水の流れる音と、鳥の声の色彩(音色)の変化は、EarPodsとくらべて単調です。
音の広がりはまずまず。少なくとも、MOMENTUM ON-EARほど極端にバランスの崩れた音ではありません。
まあ、これならよしとしましょう。

イントロ部分でバイオリンとチェロ、コントラバスがきちんと鳴り分けられ、ほっとします。
ハーモニーの分離感と、構造の正しさはまずまず及第点。これなら、聞けます。
MOMENTUM ON-EARがあまりにも酷いバランスだったので、MOMENTUMを聞くことを躊躇したほどですが、この音なら聞いていられます。
弦の音はもう少しウェットで艶やかな方が好みです。少しぱさついています。
ハーモニーの分離感は、まずまず。低音の量感も、まずまず。
価格を考えるともう少し頑張って欲しいですが、この音ならなんとか音楽の善し悪しが伝わるでしょう。

バランスは良好で、気になっていたノイズの強調感も緩和されました。

ギターの音は適切。本体の音とエコーのバランス、ボーカルも良いバランスで鳴っています。
しかし、残念なことにギターの音とボーカルが「魅力的」ではありません。ありきたりのギターと、どこにでもいそうなボーカル。それは、音の「質感の再現性が不十分」だからです。

高域もマスキングされたように、少しもやがかかって聞こえます。
価格を考えると、残念です。

ピアノは立ち上がりが遅く、倍音は幕がかかっているようにもやもやします。
ボーカルも中音部分に共鳴が発生し、かなり濁っています。
全体にベールがかけられたように、不明瞭です。
不満です。

イントロ部分では、低音の分解能が不足し、楽器の音が団子になっています。また、コントラバスの音と金管楽器の音の違いも不明瞭です。ティンパニーは、もっと小さな太鼓を叩いているようにしか聞こえません。
バイオリンも分解能が足りないので、楽器の数が少なく感じられます。
この演奏ならではの静寂感と透明感が再現されず、やはり不満な音です。

イントロのハープの音は、プラスティッキーでおもちゃのようです。
耳に綿栓を入れられているように、すべての音が鈍く、濁っています。
低音が入ってくる部分では、ハウジングの共鳴が過大で音が混じってしまいます。
いろいろな音を一つの容器に詰め込んで、適当に混ぜ合わせたような音で、無秩序です。

イントロ部分の空気の動く感じは良く出ますが、ドアの開く音と靴音は、高域が強すぎで距離感が不明瞭に近くなっています。

PPからFFに変化する部分では、空間のサイズがあまり大きくならないので、大音量部がうるさくなってしまいます。
この音なら聞いていられますが、すべての音は音がベールに包まれたように濁っています。
総合評価
ヘッドホンが、Bluetoothかどうかという以前に、この製品は本格的な音楽鑑賞には向いていません。

50年以上に渡って研究開発が続けられ、映画が台頭するまでは「最高の娯楽」だった「オーディオ文化」は、イヤホンやヘッドホンに比べると、歴史だけではなく音も熟成しています。そしてそれを販売する「オーディオ専門店」には、それなりに音と音楽を理解する「アドバイザー」が在籍します(すべてのスタッフ、すべてのお店がそうではありませんが)。

けれど「スマホ」の普及で、イヤホンやヘッドホンの需要が爆発的に高まると「そういう歴史と経験がないメーカー」の製品は「流行に乗って」乱造され、それが音楽を正しく聞き分ける経験が不足しているスタッフが不足しがちな家電量販店やイヤホン・ヘッドホン専門店を頼らざるありません。今では、イヤホンやヘッドホンは、音ではなく「見かけの格好良さ」が、ヒットの決め手となっています。

けれど、「売れている製品=良い製品」だとは、限らないことを知っていて下さい。

インターネットであふれるほどの知識が得られる最近の人たちは、経験者が伝えようとする「深い話」を面倒だといって嫌がる傾向があります。けれど音楽の「なんたるか?」を知らない人たちが表面的な聞き方で流行を作り、何も知らない人たちがそれに乗っかる形で「メインストリーム」が作られて行く。時代の流れかも知れませんが、音楽という歴史ある文化の継承を考えると、それはあまりにも心許ありません。

別に、良い音楽を聞いて、良い人間になりなさいなどと、それこそ「うるさいこと」を言うつもりはありません。

けれど連綿と継承されてきた文化の中には必ず、人間にとって重要な示唆が含まれているのです。

今回のSennheiserのBluetoothモデルの試聴では、かなり「ゆがんだ音」を聞き続けなければならなかったので、正直疲れてくたくたになりましたが、私の不勉強もさることながら、Apple純正付属品「EarPods」の素晴らしさを知ったことは、それを補って余りある喜びを私に与えてくれました。

スマートホンを世界で初めて開発し、誰もが気楽に音楽を聴く楽しみを享受できるようになったのは「Apple」のおかげです。

その「Apple」が付属しているイヤホン「EarPods」がこれほど素晴らしい製品だったとは、大反省です。

ヘッドホン・イヤホンメーカーは、「EarPods」の音をどのように感じているのでしょう?

聞いた事、比較したことがないのでしょうか?

それとも、企業がでたらめに作り上げた流行に乗り遅れず、「売れれば良い」と考えているのでしょうか?

けれどもしそれらのモデルが、「今の若者の欲しい音」に作られているのだとすれば、それは恐ろしいことです。

これから「音楽」を楽しみたい。音楽で「癒やされたい」と考えていらっしゃるなら、やはり「良いもの」をきちんと選ぶべきです。音楽的に優れたイヤホンやヘッドホンを使えば、今まで聞いていた音楽がより意味深く心の奥底に届きます。今まで気づかなかった、感動と出合うために、より良い音のイヤホン・ヘッドホンを選びましょう。

音楽を楽しむためならば「EarPods」から、今回テストしたSennheiser製品に買い換えるメリットは皆無だと、私には思います。

Sennheiserは、その伝統を継承する素晴らしい製品を今もラインアップしているのですから、「売上」だけに執心せず、「きちんと音楽が伝わる製品」を開発して欲しいと思いました。

2017年9月 逸品館代表 清原裕介

  

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