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Sonus faber / ソナスファベル より 新世代のスピーカー “ Guarneri−evolution ” が発売されました。
希望小売価格 2,400,000円(ペア・スタンド付き・税抜) ・価格はレッド・ヴァイオリン仕上げ、グラファイト仕上げ共通です。
GUARNERI Evolution(ガルネリ・エヴォリューション)の主な特徴 (内容はNOAHのホームページを編集しています) |
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いにしえの弦楽器作家への頌歌として、GUARNERI Homage(ガルネリ・オマージュ)と名付けられたスピーカーが、制作されたのは1994年(平成6年)でした。名楽器の名を冠したこのスピーカーは、いち早く現代スピーカー・キャビネット設計の代表的な手法であるリュート・シェイプ・デザインを採用し、その外観と音質はブックシェルフ型スピーカーのマイルストーンとも言うべき存在になりました。そのガルネリ・オマージュはおよそ10年の時を経て、2006年(平成18年)に2代目であるGUARNERI Memento(ガルネリ・メメント)として生まれ変わり、更に2011年 evolution(ガルネリ・エヴォリューション)の名を冠し、新たなる進化を遂げることとなりました。 今回試聴する「GUARNERI Evolution(ガルネリ・エヴォリューション)」はソナスファベール伝統の設計手法とも言うべきリュート型デザインを採用、キャビネットの木部には、マホガニーに似た風合いの得られるカンラン科広葉樹「オクメ(Aucoumea)」材を採用し、木目の角度を交互に90度ずつ変えて積層してゆく手法によるプライウッドを自社生産します。プライウッドを積層する工程の中で、プレス機により徐々に加圧しながら面を曲げることで、無理なくリュート・シェイプ型デザインの柔らかな曲線を描くキャビネットを造り上げています。 |
最新設計のソナス・ファベール製品は、最新のテクノロジーと測定技術を駆使して音決めされています。ガルネリ・エヴォリューションに採用されたスピーカー・ユニットは、他のソナス・ファベール製品と同様にスカンジナヴィア半島に本拠を構える専業メーカーに拠りソナス・ファベール独自のスペックに基づき生産されています。 2800Hz以下の帯域を受け持ちスピーカーシステムの中核となるウーファーは、自然な音質を重視した180mm口径コーン型。自然乾燥による表面に凹凸を持つ風合いが独特な、非圧縮ペーパーパルプ振動板を採用し、口径43mmのボイスコイルを使用した強力な磁気回路により渦電流の発生を最小限に抑えています。ウーファーもツイーターと共通のサブバッフルに取り付けた上で適度なコンプライアンスを持たせた粘弾性素材にて、フロントバッフルからデカップリングされています。 |
ガルネリ・エボリューションのネットワークは、「クレモナM」や「リュート」シリーズから採用された「プログレッシブ・スロープ」構成により、振幅・位相特性を最適化するだけでなく、帯域内に共振点を持たせない設計となっています。 クロスオーバー周波数は2ウェイ小型ブックシェルフ型スピーカーとしては比較的高めの2800Hzに設定され(ガルネリ・メメントは2500Hz)、音楽再生の中核をなす帯域を極力単一ユニットで再生することで、極力自然で違和感の無い再生音に近付けるようにしてあります。また、ネットワーク素子にはドイツ・ムンドルフ社製「シュープリーム」コンデンサーやデンマーク・ジャンツェン・オーディオ社製コイルなど、最良の音響性能をそなえたパーツが使われています。 入力ターミナルはクレモナMなどと同様に、片手だけでも容易に締め付けることができる形状のものが採用され、バイ・アンプ駆動にも対応するように、高音域用と中低音城用が独立されます。この入力端子はバナナプラグに対応するばかりではなく、スペードラグ(いわゆるYラグ)も使用できる便利なものです。 |
ソナス・ファベールは付属の専用スタンドも音作りの一環として必要不可欠なものと考え、ガルネリ・エヴォリューションでは新たに専用スタンドである「エヴォリューション・スタンド」が開発されました。 台座部分には従来のイタリアン・マーブルに代わり新たに花崗岩が採用されています。花崗岩は大理石に比べ内部組成が比較的均質であり、硬度が高く研磨するとすばらしい輝きを放ち、リスニング・ルームでのご使用に適した物理特性と外観を兼ね備える素材と言えます。 スタンドにはスピーカー本体を固定するためのネジが付属しており、本体を強固に一体化することが可能。地震などの際にも、スピーカー自体が落下して破損するような不測の事態を防ぐように配慮されています。 |
形式 | 2ウェイ・2スピーカー/リアバスレフ・ブックシュエルフ型 |
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周波数特性 | 40Hz〜30000Hz |
クロスオーバー周波数 | 2800Hz |
定格インピーダンス | 4Ω |
出力音圧レベル | 86dB/W/m |
推奨アンプ出力 | 25W〜200W(最大許容入力は公表されておりません) |
本体寸法・重量 | W235mm×H410mm×D412mm・18.5kg |
スタンド寸法・重量 | W320mm×H795mm×D423mm・36.0kg (スタンドは標準付属につき製品価格に含まれています) |
+ iPod Touch(MP3/320bps)AIRBOW NA7004/Special
まずいつも聞いている簡単な音源とアンプを組み合わせて試聴を行いました。3号館で使っているiPodには様々なジャンルの音楽を2000曲以上収録しています。音源フォーマットのほとんどはMP3/320bpsですが、中には非圧縮のWAVやApple losslessで収録している楽曲も含まれます。それらのすべてがシャッフルされランダムにAIRBOW NA7004SpecialでDA変換され再生されます。
好むと好まざるに関わらず、あるいは意図するしないに関わらず、あらゆるソースが再生され続けるこの方法で数日間テスト対象のスピーカーを聞き続ければ、その製品が持つ「本質」が聞こえてきます。
Evolution(エボリューション)と名付けられたこの新型スピーカーは、まさしく「Evolution(進化)」した音を聞かせてくれます。高音は従来のようなロマンティックな響きとは決別し、歪みの少ない澄み切った音に仕上げられています。低音はさらに劇的に改善され引き締まって伸びのある音質で、スピーカーサイズが信じられないほどパワフルにぐんぐん前に出てきます。キャビネットの木質的な響きを生かしていた初代ガルネリの面影はそこにはありません。まるでB&W製品のようにHiFiで歪みの少ない音質です。マッチする音楽のジャンルもアコースティックな音源で構成されるクラシックから、より現代的なpopsやrock、あるいはフュージョンのように電気楽器を多用するソースに変わっています。
歪みと響きの少ない音質は非常にドライで乾いています。この点でも従来のガルネリとは全く異なる音質になっていることが聞き取れます。測定器を重んじず人間の耳を頼りに楽器的に音を作り、その柔らかい外観と音質が高く評価された初代のSonusFaber社の製品とは全く異なるサウンドです。個人的にはこの音は悪くないと思いましたが、従来のSonusFaberファンに受けいれられるかどうかは、大きな疑問を感じずにいられません。クロームメッキが採用され、現代的に生まれ変わった外観に合わせて音質も一気に近代化されたように感じした。
Evolutionモデルのおおよその音質はわかりましたので、ここでCDプレーヤーとアンプのグレードを上げて音がどのように変化するかをチェックしました。想像通りEvolutionはB&Wが作るモニタースピーカーのように、入力される音質に対し敏感で厳しく反応します。その原因は「スピーカーに響き(遊び)」が感じられないからです。初代ガルネリは吸音材を極力抑えるなどの方法で「キャビネットの響き」を積極的に利用する方向で音が作られていました。Evolutionは現代のスピーカーらしく「無駄な音」は厳しくチェックされ、排除されているように聞こえます。そのため、入力されるソースに「何も足さない」感覚と、「何も損なわない」感覚があります。
音は細かく透明でスピーカーの位置がわからないほど「立体感(定位感)」に優れています。その特性は最新スピーカーのトップに位置すると言っても過言ではないほどです。B&WやMAGICOに代表されるような、現代的なサウンドに仕上げられたEvolutionは、従来の特性より音質感を優先していたSonusFaberの製品と明らかに一線を画します。
記憶にあるGuarneriとの音の違いに戸惑いながら聞き続けていると、やがて「音の細かさ」と「透明感の高さ」に引きつけられている事に気付きます。新しい音には、新しい魅力があるからです。これでもう少し「情緒的な響きや艶があれば」と思わせる音質です。
この点では初代ガルネリがそうであったように「鳴り始める」までに、非常に時間がかかるのかも知れません。今はまだ、できたての「酒」の趣です。時間と年次を重ねれば、きっと「芳醇な香り」が出てくるはずです。少なくともそれまでの長い間、この美しいスピーカーを手元に置いて眺めるのは楽しい時間になるでしょう。
その外観の美しさが設置するリスニングルームのインテリアを選ぶように、Evolutionは240万円をいとも容易く捻出できる「余裕」のある人を選びます。プレーヤーやアンプにもそれ相応の製品を奢り、試行錯誤のコストと時間をかけなければ良い音を出せそうにないからです。征服するまでの時間に浮気して聞ける「サブシステム」があればさらに理想です。
完璧な美人を自分のものにするためにそれなりの努力を強いられる骨っぽさを持つスピーカー、それがEvolutionのように感じました。
(Guarneri Evolutionのテスト動画はこちらからご覧いただけます)
2012年1月 逸品館代表 清原 裕介
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