音質テスト
AIRBOW
SA11S3/Ultimate
AIRBOW
PM11S3/Ultimate
今回の試聴機は午前受け取り、午後返却という限られた時間でした。組み合わせるCDプレーヤーとアンプには問題のない製品を選びましたが、Olympicaの実力を上手く引き出せなかったかも知れません。
井上陽水 Golden
Best : 長い坂のフレーム
音が出て感じるのは、レンジが広いこと。低音はサイズを超えてとても良く出ますし、高音も良く伸びます。ピアノは重厚で響きが美しく、陽水の声もエコーが長く綺麗です。わかりやすく雑味のない綺麗な音です。
しかし、音を上下に伸ばしすぎた弊害なのか、従来のSonusFaber製品の特長であった中域の濃さや粘りが薄まっています。Venereにもそういう傾向は感じられるのですが、Olympicaはさらにその傾向が強く感じられます。従来のSonufaberのイメージとは異なる、B&WのようなHiFiでスッキリしたサウンドです。
ユニットに取り付けられた金属製のプラグの影響なのか、ボーカルの特定帯域に強調感があり、人間の声と少し違う硬質な感じを覚えます。
エージングで解決すればいいのですが、SonusFaberの「濃厚な音」を想像して聞かずにオリンピコを購入なさると、ちょっと面食らわれるかも知れません。
Holly
Cole Trio : Don't Smoke in Bed
高音は美しく伸びやかです。ピアノもプレゼンス・高域の響きが良く出ます。全体的に響きは美しいのですが音の厚みと色彩が薄く、木製ではなくまるでアクリルで作られたピアノを聞いているような感じがします。ホーリー・コールもダイエットしてしまったかのように、声が痩せて聞こえます。
確かに低音の押し出し感と量感は、このサイズのスピーカーの標準を上回るでしょう。高音も切れ味が良く、明瞭です。しかし、音が美しくてもSonusFaberが得意とする情感が薄まっています。オリンピコは今まで聞いてきたSonusFaberとは、全く違う音です。
亡きフランク・セブリンに師事しOlympicaの音決めを担当したパオロ・テッツォン氏はSonusFaberの音をどのように理解しているのでしょう?若いという年齢のせいもあるのでしょうか、新しいものを生み出そうとする余計な力が入りすぎているような気がします。
ここで標準のジャンパープレートをAET
SIN Jumperに変えると、驚くほど音が変わりました。高音がきめ細かくなって、デリケートな表情も出てくるようになりました。デジカメ画像で400万画素が一気に1000万画素になったくらいの大変化です。もともと良く伸びていた低音も、さらに伸びやかになりました。
ジャンパーの交換でオリンピコの音質は俄然向上しました。しかし、当初から感じている中域がやや薄いエネルギーバランスと、アクリル絵の具で描かれたようなあっさりした色彩感は変わることがありませんでした。
試聴後感想
私が知る(私が愛好した)従来のSonusFaberの製品とOlympicaは、まるで正反対の性格を持っているようです。
Olympicaの長所はスッキリ伸びた明瞭な高域と、押し出し感と量感のある低域です。欠点は中域のエネルギー感と色彩感が浅く、情緒に欠ける嫌いがあります。以前の試聴テストで高く評価したSonusFaber
VenereもOlympicaと同じ傾向が感じられましたが、少なくともVenereには血の通った暖かい情感が感じられました。しかし、上級モデルであるにもかかわらずOlympicaは感情がより薄く、理が立ち過ぎるような音に聞こえます。
仕上げは確かに美しくデザインも秀逸ですが、私が抱くSonusFaberと言うイメージにより近いのは、OlympicaよりもVenereだと感じます。