■各種コンテンツ ■サービス・キャンペーン ■逸品館運営・外部ショップ ■Twitter・Facebook ■試聴機レンタルサービス ■オーディオ逸品館 MI事業部 オフィシャルサイト |
Triode トライオード Luminous ルミナス 84 真空管プリメインアンプ TRX-88S パワーアンプ 音質 比較 評価 レビュー 試聴静電(コンデンサー)型 ヘッドホン、専用アンプ 音質比較テスト 2017年4月、STAX(スタックス)から、STAX社製イヤースピーカー専用ハイエンドアンプ「SRM-T8000」が発売されました。 この製品は、初段に高音質で定評の双三極管6922、出力段にはAクラス動作の半導体を採用したハイブリット構成のSTAXイヤースピーカー専用アンプです。 初段に使われる真空管には、防振ダンパーとシールドカバーを装備する独立基板が使われ、振動やノイズを徹底的に排除できるように配慮されています。また、大容量大型トロイダルトランスをはじめ、厳選した高品質パーツが細部にまで投入され、フラッグシップモデルにふさわしい豪華な内容です。 新採用された機能としては、SRM-T8000のボリュームをパスして外部機器での音量調節を可能し、SRM-T8000をパワーアンプとして使うためのEXTERNAL(BYPASS)機能の採用が上げられます。 SRM-T8000の試聴に使うのは、2014年6月に発売された、イヤースピーカーのフラッグシップモデル「SR-009」です。 この製品は、SR-007を凌駕する最高峰のイヤースピーカーとして、繊細にして重厚に、楽曲にこめられた多彩なイメージを表現するために様々な新技術が投入されています。 ※下記の特徴は、STAX社ホームページを編集して転載しています。 ・新固定極を採用した発音体 振動板の両側に配置される、固定電極の厚みは限りなく薄い方が空気の抵抗が減り音の透過性が向上します。反面、強度不足となり電極そのものが振動してしまい、音を濁らす要因となっていました。SR-009は、現在の技術の集大成として、熱拡散結合という技術によって、高温度・高圧力の環境で複数枚の電極を一体化することができました。これによって 強度と音(空気)の透過性を実現しました。 ・DIAPHRAGM( 振動膜)を更に極薄化 SR-009には新規開発のサウンドユニットが搭載されています。発音体となるダイアフラムには従来のエンジニアリングプラスティックをさらに高性能化したスーパーエンプラという新しい高分子極薄フィルム素材を採用。特に「音質」に優れた素材をセレクト。低域から超高域まで極めて優れた周波数特性と広大なダイナミックレンジを達成しています。 ・ELECTRODES(
固定電極) ・CABLE(ケーブル) STAX(スタックス) SR-009 メーカー希望小売 370,000円(税別)メーカーホームページ
今回の試聴では、SRM-T8000と比較するため、AIRBOWから発売しているSTAXイヤースピーカー専用アンプ「SRM-253S」とその専用電源「PAC-253」を組み合わせて聞き比べました。 AIRBOW SRM-253S SRM-253Sは、スタックス・イヤースピーカー専用高音質アンプとしてSTAX SRM-252Sをベースとして開発しました。 STAX製のアンプとしては、最も廉価なSRM-252Sをベースに選んだのは「ストック(無改造)の状態でも、上級モデルを超える音質を発揮すること」です。 それもそのはずSRM-252Sには、ハイエンドオーディオアンプにしか使われない、入力から出力まで一切のカップリングコンデンサーを使わない、純A級ディスクリート・トランジスターDC直結回路が使われ、高域の再生周波数こそ35kHzまで(ヘッドホン用アンプとしては十分以上のスペック)ですが、低域の再生限界は、SRM-T8000を上回るDC(0Hz)から可能で、その実質的なスペックはSRM-T8000をわずかに上回るほど優秀なのです。 この優れた資質を持つSRM-252Sの音質を最大限高めるため、音質に重要なパーツをほぼすべて交換しているのがRM-253Sです。すでに生産完了になった「ブラックゲート」をはじめとして、フィードバック(位相補正)に使われる極小容量のコンデンサーは、1個数千円近いマイカコンデンサーに交換するなど、その音質を高めるAIRBOWらしいこだわりに満ちたカスタマイズが実施されています。 この徹底したカスタマイズの結果、小さな外観や価格とは裏腹に、ダイナミックレンジの広さや音の細やかさはSTAX最高級ヘッドホンアンプSRM-T8000にも引けを取りません。AIRBOW製品らしく、楽器や人間の声の再現性に優れた、自然でストレスのない音は、ヘッドホンの存在を完全に消してしまいます。 SRM-T8000との最も大きな違いは、音量がそれほど大きくならないことですが、よほどのことがなければ(難聴でない限り)SRM-253Sの音量が不足することはありません。 付属するACアダプターに変えて、AIRBOWから発売している高音質電源ユニット「PAC-253」をお使いいただくと、SRM-253Sは低域の力感や中高域の密度感が大きく向上し、パワー感や躍動感がSRM-T8000に匹敵、あるいはそれを上回る程にアップグレードします。 応答性に優れたノイズの少ない特別なインバーター電源を採用したSRM-253専用強化電源ユニットがPAC-253です。非メッキ電源プラグ、AIRBOWオリジナルの導体表面を鏡面仕上げした高純度OFC導線採用極太電源ケーブルを採用しています。DC出力線も電源ケーブルと同じ高純度OFC導線を採用し、さらにテフロン絶縁体を奢ったオリジナル品を使うなど、あらゆる部分に手抜きない高音質化を行いました。付属のACアダプターと交換するとパワー感と明瞭度感を大幅に向上させられる、SRM-253から高音質を引き出すためになくてはならないパートナーです。
試聴環境 AIRBOW HD-DAC1 Special 販売価格 180,000円(税込み)(現金で購入)・(カードで購入)
音源は、AIRBOW HD-DAC1 Specialにipod TouchをUSB接続し、CDからリッピングしたWAVファイル(44.1kHz/16bit)を使いました。 試聴ソフト (CDからリッピングしたWAVファイルを使用)
音質評価 SRM-T8000
水の音は柔らかく、鳥の声はくっきりしています。
バイオリン、チェロ、コントラバスのパートは、音の端っこがわずかに混濁しますが、弦楽器の数は非常に多く、情報量は圧倒的に豊富です。
ギターの音は、とても細かく、ギタリストのつま弾く弦と爪の音と、エコー(たぶん電子的に付加されたもの)が見事にに分離します。
ピアノは右手と左手の音が完璧なバーンスで再現され、ペダルを踏む音もはっきりと聞こえます。
冒頭の管楽器、打楽器の分離感
とコンビネーションは抜群です。
イントロのハープがかなり電子的に聞こえます。人間が弾いているのではなく、自動演奏されているように感じます。 低音の量感とパンチ力は圧倒的です。これは、従来のSTAXのどのモデルよりも優れているでしょう。 けれど「ガガ」ならではの圧倒的な原色を思わせる色鮮やかさ、始めるようなエネルギー感が伝わりません。
左右への音の広がりの大きさ、このソフトならではの音の細やかさの再現は見事です。 試聴後感想 SR-009とSRM-T8000の組み合わせは、とてもよくできた素晴らしいヘッドホンシステムですが、波形の頂点(アタックの先端)がわずかに丸くなっている影響で、躍動感や色鮮やかさが少しオブラートにくるまれているような感じがします。 音質評価 SRM-253S/PAC-253
SRM-T8000では物足りないと感じた、水の音の切れ味、鳥の声の鋭さがきちんと出ます。 音の輪郭がくっきりするので、SRM-T8000では聞き取りずらかった遠くの鳥の声がはっきりと聞こえます。透明感もより高く、T8000では聞こえなかった細部まではっきり聞こえ、音場もより大きく広がります。
コントラバスのパワー感も増大し、気になっていたバイオリオンとチェロ、コントラバスの分離も向上、ステージ袖で演奏を聴いている雰囲気です。 弦楽器の切れ味(切れ込みの鮮やかさ)が向上し、音の角がきりりと立って、生の弦楽器を聞いているのとほぼ等しい感覚でこの曲を聞けます。 こういう、パワー感あふれる、圧倒的な表現力でSTAXのヘッドホンは鳴らして欲しいと思います。
ギターの色彩感が全く変わりました。これでこそギターの音です。 録音に癖があるこのソフトでは、そういう「うまくいっていない部分」が特定できるほど、明確な分離感と細やかさが実現します。 この点に、よい音を再現する目的で作られたSRM-T8000と、良い音楽を再現する目的で作られたSRM-253S/PAC-253の違いが感じられます。
イントロの管楽器のハーモニーが圧倒的に自然です。この演奏らしい静かな感じ、厳かな感じもとてもよく伝わります。
イントロのハープの音がT8000の電子音から、生楽器の音に変わりました。 一分ほど聞いたところで、ヘッドホンを外しました。 イヤホンや普通のヘッドホンでしか音楽を聞いたことがない人たちに、この音を聞かせてあげたいと思いました。
ドアが開いたときに「空気が揺れる」様子まで再現されます。逆に言うならスリラーには、それほど低い音(周波数)まで録音されているということです。 ドアが閉まる、バシッ!という音で切り替わるシーンが、驚くほど鮮やかです。 その素晴らしさは絶対に聞いてみなければ、信じられないと思います。 試聴後感想 SR-009とSRM-253/PAC-253の組み合わせは最高です。 SR-009以外のイヤースピーカーでは、ダイナミック型ヘッドホンのような「力強さ」が不足して感じられる事があります。細かい音が出るのでクラシックやバラードなどのゆったりとした曲は得意ですが、パンチが必要なロックやジャズなどの激しい曲はやや苦手です。 その原因は、AIRBOWが振動板をクライオすることで、振動板の強度を高めたカスタムモデル(SC1/11/21・生産完了品)と聞き比べれば、膜の強度(張り)が不足だとわかります。材質を大きく変えずに振動板を薄くした「SR-007」も、同様に力強さ(パンチ力)が不足して感じられる事があります。 SR-009は、振動板の材質を変えた(おそらく硬くなっていると思います)ことで、他のモデルで感じられるこの問題を完全に払拭しまし、フラッグシップにふさわしい音質を実現している素晴らしい製品です。 このSR-009に匹敵する。あるいは、それを超える製品を発売するためにSR-007の振動板とケーブルをクライオ処理しましたが、SR-009には及びませんでした。この点からも、SR-009の振動板が特に優れていることがわかります。SR-009こそが、STAXのハイエンドを極めたイヤースピーカーです。 けれどSRM-T8000は、SR-009の能力を十分に発揮しているとは言いがたい仕上がりです。特に、SR-009で大きく改善された「音の芯の強さ」や「低音のパワー感」が十分に出せないのは,問題です。 今回比較に使った、AIRBOW SRM-253S/PAC-253の組み合わせ価格は、SRM-T8000の1/7以下ですが、音質は明らかにそれを上回ります。 STAXイヤースピーカーの構造変更により、クライオに耐えられなくなったためAIRBOWからイヤースピーカーは発売できなくなりましたが(2017年8月現在)STAXを鳴らすアンプはAIRBOWがベストです。 SRM-253SとPAC-253をSR-009と組み合わせれば、敵なしのヘッドホン・システムが完成します。 「価格が高い方が良い」、「新製品が良い」と思い込まずに、一度このセットを聞いてみて欲しいと思います。ヘッドホンを超え、最高級のスピーカーで音楽を聞いているのに近い音で音楽を存分に楽しめます。 2017年7月 逸品館代表 清原裕介
|
|