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  Tannoy (タンノイ) Mercury (マーキュリー) 7.1/7.4 音質試聴レビュー

その他の音質テストはこちら

1982年に登場し、ベストセラーを続けているのがTannoy Mercury Seriesです。逸品館も開放的で明るく楽しい、Mercuryシリーズの鳴り方を高く評価し、これまでもお薦めしてきました。今回発売されたMercury 7は、トールボーイ型の7.4(\61,000/1台、税別)ブックシェルフ型の7.1(\44,000/ペア、税別)、センター型の7C(\38,000/1台、税別)の3モデルで、1世代前のモデルから、やや1割ほど値上がりしています。

 Tannoy Mercury 7.1

 バスレフポートを塞ぐためのスポンジと、傷つけ防止用のゴムが試聴機に入っていましたが、製品には付属しません。

メーカー希望小売価格 \44,000(ペア・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ

 Tannoy Mercury 7.4

  小型のスパイクベースが付属します。

メーカー希望小売価格 \61,000(1台・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ

Mercury 7 Seriesの特長(Esoteric ホームーページより抜粋)

新ドライバーの卓越した音楽表現力

・ツィーター
新設計の28mm (1.1 インチ)ツイーターには、マーキュリー伝統のソフトドーム振動板が復活。強力な高磁束密度マグネットと特殊なニトロウレタンコーティングの採用により、ソフトドームならではの豊かな音楽表現力そのままに、高能率と32kHz までのワイドレンジを実現しています。
・ウーファー
コンピューターによるFEA(Finite Element Analysis:有限要素解析)を導入して新たに設計されたウーハー磁気回路は、パワーハンドリング性能が更に向上し、より大音量再生に対応できるのみならず、通常のリスニングレベルにおいてもクリアな音質に貢献。センターキャップを持たない、軽量かつ高剛性のマルチファイバーペーパーコーン、ロングストロークに対応した新設計のラバーエッジを採用し、ハイスピードで引き締まったパワフルな低域と艶のある中域を両立させ、音楽に豊かな奥行きを与えます。

高品位クロスオーバーネットワーク
タンノイ独自のDMT*防振コンパウンドを加え、リードワイヤに銀を採用したカスタムフィルムコンデンサー、低損失ラミネート鉄芯インダクターなど、数々のオーディオグレードパーツを採用し、高品位な再生能力を支えます。
*Differential Material Technology = 素材差動技術。スピーカーシステムを構成する個々の部品が必要とする素材特性を解析し、共振モードの異なる素材同士の組み合わせにより、不要共振を効果的に低減する技術。

低域がきわだつ堅牢なエンクロージャー
コンパクトながら優れた低域再生能力を獲得。綿密に設計された内部ブレーシング(添木)とチャンバー構造により、高い堅牢性を獲得し、カラーレーション(共振による音色の変化)を低減。ドライバー背面は、DMT防振コンパウンドを介して内部ブレーシングにも固定することで、ピストンモーションを安定的に支え、空間表現力やダイナミクスを向上させています。

高品位な金メッキ仕上げの大型スピーカー端子採用
大型スピーカー端子 極太の高級スピーカーケーブルも確実に接続できる大型スピーカー端子を採用(7.4 はバイワイヤリング接続対応)。

愛着を深める高品位な仕上げ
リスニング空間にさりげなく調和する端整なルックスも7シリーズの魅力のひとつです。6箇所でリジッドに固定されたウーハー、ツイーターフェイスプレートなど、7シリーズで新たに獲得した強力なドライブ能力を象徴するメカニカルな造形と、落ち着いたウォルナット木目調の仕上げが美しく調和し、リスナーの愛着を深めます。

スピーカーベース標準装備の7.4、壁掛け・天井吊りも考慮した7.1

Mercury 7.1と7Cは、シングルワイヤリング。7.4のみバイワイヤリングに対応します。

スピーカーベース 壁掛け・天井吊り フロア型の7.4はスピーカーベースを標準装備。設置の安定性を高め、低域をクリアに再生します(スパイク、スパイク受けも付属)。7.1は背面に市販のスピーカーブラケットに対応したマウント用ネジ穴を装備し、壁掛けや天井からの吊り下げなど、幅広い設置方法に対応しています。

試聴環境

オーディオ機器が所定の音質に達するには、ある程度の時間が必要です。この慣らし期間をエイジングと呼びますが、この初期馴染みが完了すると、音の粒子がより細かく滑らかになり、音の広がりもまったく変わります。また、低音から高音まで、しっかりと聞こえるようになります。たいていの場合、このエイジングが終わると、電源を入れてから数分〜10分程度のウォーミングアップでで最良の音質に達します。しかし、機器をしばらく(1ヶ月程度)使わなかった時には、電源を入れてもしばらく音が購入直後の状態に近くなります。このような時には、機器を数時間〜10時間程度鳴らすと最良の状態になります。

逸品館オリジナル製品のAIRBOW製品は、寿命と音質に優れるパーツを使っているため、音質が一定の水準に達する前と、達した後での音質がかなり違い、また所定の音質に達するまで、新品から約100時間程度の音出しが必要です。今回試聴に使ったNR1606 Specialも、新品直度と100時間程度鳴らした時の音質は全く違っていました。この現象は主に電解コンデンサーが通電されることで「性能が改善する(通電により自己修復機能が働きます)」ためですが、購入直後、あるいはしばらく使っていなかったオーディオ機器の電解コンデンサーは、使わない間に劣化していますから、鳴らし始めに「あれ?」と思っても、慌てずしばらくそのまま聞き続けると音質が改善します。スピーカーのように電気回路がほとんど使われていない機器でも、音を出し始めると「各部が動く」ことで動きがよりスムーズになり、音が良くなります。

今回試聴に使った、AIRBOW NR1606 Specialは、エイジング終了後も音質確認のため、Vienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)との組み合わせで、連続して1週間以上聞き続けていました。音源はCDではなく、i-Pod Touchを付属USBケーブルで、AIRBOW NR1606 Specialに繋いでいましたから、CDプレーヤーのように微妙に音質が変わることもありません。この状態でスピーカーだけを、「Mercury」に変更して試聴しました。

Apple

iPod Touch(第5世代)

AIRBOW NR1606 Special
売価 \165,000(税込)
この商品のお問い合わせはこちらから

試聴ソフト 

 Grace Mahya Last Live at DUG
 “Root 66” 

 Time Warp
 “ASCENT” 

Super Fly Box Emotion
 “誕生” 

 

Tannoy Mercury 7.1 メーカー希望小売価格 \44,000(ペア・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ

 ルート66

トランペットの高音、ドラムのシンバルの抜けは今一歩物足りないが、中低音には驚くほどの重量感と密度感がある。ボーカルはややハスキーに聞こえる。

低音が太く充実している割に、中音がやや引っ込んでいる。高音もやや苦しげ。低音が良く出る比較的口径の大きな、フルレンジユニットでこの曲を聞いている感じ。高域の暴れが抑えられ、おとなしい感じがするが「録音の悪さ」はうまく隠してくれる。

 ASCENT

曲が始まる部分での低音の炸裂感には、サイズを超える重量感と密度感が感じられる(サイズが一回り大きい Focal 905の低域再生限界周波数が60Hzなのに対し、Mercury 7.1は53Hz。

シンセサイザーの高音は少し曇っているが、前後、左右方向への音の広がりは自然。キャビネットの不要な響きが少なく、S/N感が高い。

スピーカーからやや離れて位置で聞いていると高音が少し不足気味だが、スピーカーの近く(2m以内)で聞くと高音のエネルギーが強くなりバランスが改善する。遠距離で聞くよりは、近くで聞いた方がバランスの良い楽しめる音になる。

 誕生

低音は驚くほどの量感と重量感がある。しかし、ギターの中音とボーカルの抜けは、ハッキリ悪い。

細かい音が出ているが、耳に綿を詰めて音楽を聞いている雰囲気で、演奏が弾みにくい。また広がりも不足気味。

音の広がりが不足し、混濁する。こじんまりとなっている感じになり、このソフトとの相性はあまり良くない。
Mercury 7.1 試聴後感想

届けられた製品がまだ「馴染み」が終わっていなかったためか、全体的にやや音の深みが浅い感じがしました。特にウーファーの高音が重く、Mercuryの従来モデルに比べると中域がやや鈍く感じました。

高域は良く伸びてスッキリした良い音ですが、ウーファーの音色がやや鈍いので、繋がる周波数帯域(クロスオーバーの周波数帯域)に若干の違和感がありました。ただ、それらの感覚は非常に高度(完全)なスピーカーとの比較なので、一般的には聞き分けられない程度のに軽微ではあります。

DALIなどこのクラスのライバルと比べると、中低音の密度は高く感じますが、中音〜高音がやや鈍い感じです。ウーファーを指で叩いても、ひびきが少し柔らかすぎる感じです。そのため、歯切れ良く激しい音の再現はあまり得意ではありません。逆に、人間の声や弦楽器などは、トゲトゲすることなく滑らかに鳴らしてくれます。このウーファーに、もっと穏やかな高域ユニットを組み合わせれば、BBS Monitorのようにウーファとツィーターの繋がりに優れたバランスになったのでしょうが、クロスオーバー周波数がやや高すぎるのと、ツィーターの音が鋭すぎるため、アンバランスな感じになっているのでしょう。

低音の収束はかなり早く、低音がだらしなく膨らむことがありません。ややウェットですが、重量感と密度感の高い、このクラスではあまり他に類のない良質な低音が出ます。良い音ですが、従来モデルと比べると、中低音がややおとなしく、表現もやや抑えられています。荒れた音のコンポネントとの組合せや、録音の悪いソフトを上手く鳴らしてくれる感じです。

Tannoy Mercury 7.4 メーカー希望小売価格 \61,000(1台・税別) (このスピーカーのご注文はこちらからどうぞ

 ルート66

このサイズ、この重量のスピーカーとしては、Mercury 7.1 と同じように低音帯域は驚くほど充実し、バスドラムの重量感、ウッドベースの野太い響きなどがきちんと再現される。けれど、中域から高域にかけてはやはり音が鈍く、広がり感や空気感も不足気味に感じられる。

丁寧な演奏に聞こえるが、JAZZらしい躍動感はかなり抑えられてしまう。演奏に、今ひとつ元気が感じられない。

 ASCENT

曲が始まる部分での、低音の量感と再現力にはやはりこのクラスの水準を大きく超える物がある。けれど演奏を躍動させ、音を広げるための、高音がやや渋い。

そのため、楽器の音色も若干くすんで感じられる。私はもっと鮮やかな音の方が好みだ。

 誕生

ギターの力感は、Mercury7.1よりも若干改善している。ボーカルの抜けも良くなった。けれど、スーパーフライらしいパワフルな感じは、まだたりない。

また、中音の特定帯域に共鳴が感じられ、この帯域がブーミーに聞こえる。

Mercury 7.4 試聴後感想

確認のため、直前まで聞いていたBeethoven Concert Grand(T3G)と「周波数特性」をスマホで測定して比較して見ました。

厳密に同じ部分を比べていないので、厳密とは言えませんが「私が聞いた感じに最も近いグラフ」を撮影しました。Mercury 7.4は黄色で囲んだ部分の山谷の差がBeethoven Concert Grand(T3G)よりも明らかに大きくなっています。この部分の形状は「Super Fly 誕生」を聞いている間、大体同じだったので、Mercury 7.4は、90Hz付近に共鳴があるのがわかります(たぶん、バスレフポートのチューニングの関係でしょう)。また、250Hz付近の音がやや小さくなっているのもお酒の瓶を吹いたような「共鳴」をより強く感じさせる原因になっていると思います。結果として私には、Mercury 7.4の音は、やや「ドンシャリ(低音と高音が強く、中音が抜けている)」に感じられました。すべてのソースで、中音が引っ込んで、低音がやけに前に出る感じです。

しばらく聞いていると、耳が慣れてきて癖はあまり気にはならなくなるのですが、中音が前に出ないイメージはやはり残ります。直前までBeethoven Concert Grand(T3G)を聞き続けていたために、その感覚をあまりに引きずりすぎているのかも知れませんが、同じような条件でテストした他のスピーカーと比べても、Mercury 7.4のバランスはやや「ドンシャリ」だと思います。低音重視ならば、このスピーカーの音を気にいると思いますが、バランス重視だとお気に召さないかも知れません。

ここまで書いて来たら、Mercury 7.4のバランスは、私があまり好きではない、低音と高音がやけに出すぎて気になる「最新イヤホン」に酷似していることに気づきました。もしかすると、私が時代遅れで、Mercury7.4が流行の音なのかも知れません。

Mercury 試聴後感想

この価格帯には、DALI ZENSOR1(\43,800/ペア、税別)、ZENSOR7(\69,000/ペア、税別)がライバルとしてラインナップされています。

今回は、双方を直接比較試聴することはできなかったのですが、Mercury 7.1に比べてZENSOR 1は、明るく元気で鳴りっぷりの良いスピーカーだったと記憶しています。少なくとも、今回聞いたMercuryとは明らかに鳴り方が違ったように思いますので、可能であれば購入前に聞き比べられることをお薦めいたします。

2015年12月 逸品館代表 清原裕介 

 

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