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ベルトドライブ方式レコードプレーヤ-TEAC tn-570 和紙のターンテーブル・シート TA-TS30UN 使いこなし 音質 比較 評価 レビュー 試聴

 TEAC(ティアック) TN-570 / TA-TS30UN-BW 音質比較テスト

  

 

 

 

 

TEAC TN-570 メーカー希望小売 OPEN(税別) (メーカーホームページ

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TN-570の概要(メーカーHPを編集して掲載)

TL-570は、美しい音質で音楽を奏でるレコードプレーヤーとして誕生しました。

キャビネットには美しい模様と適度な内部損失を持つ人造大理石と高密度MDFを組み合わせた2層構造シャーシが採用されています。2つの素材をダンピング効果のあるラバーで貼り合せ制震性を高めると同時に、固有振動数の異なる素材を組み合わせることで、共振の発生を抑制し高いハウリングマージンが実現しました。

駆動方式には、コギング※を抑えるのに有利なベルトドライブ方式に、プラッターの回転速度のわずかな変化を光学センサーにより検出してモーターの回転にフィードバックすることで重量級のハイエンド向けベルトドライブ方式やダイレクトドライブ方式のターンテーブルに匹敵する高い回転精度を実現するための、ティアック初の回転数自動調整機構(PRS3:Platter Rotation Sensing Servo System)を採用しています。さらに、電子回路が発するノイズが微細なフォノ信号に与える影響を徹底的に排除するなど、ターンテーブルとして基本性能の妥協なき向上を目指しました。

※コギングとは
コギング(Cogging)とは、モーターを構成する電機子と回転子、つまりコイルとマグネットの磁気による吸引力と反発力が回転角度によって細かく脈動することです。例えば安価な模型用モーターの軸を手で回転させると「カクカク」と回転するのが手に伝わりますが、この現象がコギングです。ダイレクトドライブ方式ではこのコギングを抑えて滑らかな回転を得るため極数の増加と特殊な制御回路が必要となり、必然的に駆動系部品の構造の巨大化と複雑化、ひいてはキャビネット自体が大型化するというデメリットがあります。 一方、ベルトドライブ方式ではモーターが引き起こすコギングをベルト自体が物理的に吸収することができるので、シンプルな構成でより滑らかな回転を得ることが可能です。

回転の制御は電子制御スイッチによるスピード切替機構が採用され、長く使っても安定した回転の切り替えが可能となっています。

プラッターには、厚さ16mm、重さ約1.4kgのクリアアクリル樹脂製のプラッターが採用されました。滑らかな回転の決め手となる「スピンドル」は高精度な切削加工により削りだされ、軸受部にはカーボンコーティングを施すことで導電性と耐久性がを高められ、回転の摩擦により発生した僅かな静電気の帯電を防ぐと同時に安定した回転を実現します。

ベルトドライブ方式レコードプレーヤーの多くがacモーターを採用するのに対し、TL-570はより安定した回転を実現するために、回転トルクの大きいDCモーターを採用しています。駆動部はハウジングとラバークッションを介してシャーシに取り付けられたフローティング構造を採用しており、モーター自体が発する僅かな振動もシャーシに伝わらないような構造としました。

モーターの回転をプラッターに伝えるための「ベルト」には、伸びの少ないウレタン製のフラットベルトを採用。安定した回転を実現するだけでなく、静粛性と耐久性にも優れています。

本体の傾きを調整できるように、TL-570にはそれぞれの脚の高さを個別に調整することができる4点支持方式のアルミ削り出しフットが採用されています。

付属するトーンアームには、カートリッジ交換の容易なユニバーサル、スタティックバランス型S字アームが使われています。このアームは、正確なトラッキングを可能にするアンチスケーティング機構を備え、最大6mmの高さ調節機能が可能です。トーンアーム内部のフォノ信号用線材には、注目のPC-Triple C※導体を採用。レコード針がとらえた非常に微弱な電流のフォノ信号を損なうことなく伝えます。

※PC-Triple Cとは

古河電工系列のFCM株式会社がオーディオ専用に新たに開発したPure Copper - Continuous Crystal Construction(連結結晶高純度無酸素銅)で、銅の結晶が連続して同じ方向(長手方向)に並ぶよう特殊な鍛造方法によって誕生した導体です。同じ向きに規則正しく並んだ銅結晶を電気信号が流れるため電気的な損失が少ないだけでなく、外部からのノイズの影響を受けにくく、その優れた導通特性によって従来オーディオ用導体の代名詞であったPCOCC(Pure Crystal Ohno Continuous Casting Process:単結晶状高純度無酸素銅)の代わりになると期待されています。(日本製)
TN-570には、audio-technicaのAT-100E同等品のVM型カートリッジが標準装備されます。

TL-570には、カートリッジの信号をそのまま伝える「スルー出力」と、内蔵するMM対応高精度フォノイコライザーアンプにより、レコードの信号をLineレベルに増幅して出力する「Line出力」が備わり、フォノ入力の無いアンプに直接接続することが可能です。さらに、フォノイコライザーの出力をデジタル変換(48/96/192KHz・24bit)して出力する光デジタル出力および、48KHz/16bitのUSBデジタル出力が装備されています。USB接続で録音機能を持つPCと接続するだけで、レコードの音をデジタル録音することが可能です。
ダストカバーはヒンジ部から完全に取り外すことができ、レコードが回転する様子をダイナミックに見せる演出効果で、そこに集う人を楽しませることもできます。

和紙製ターンテーブル・シート(TA-TS30UN-BW)付属

和紙は楮(こうぞ)などの木の繊維から作られる日本の伝統的な紙で、その耐久性から浮世絵版画や紙幣などにも使用されています。付属するターンテーブル・シートに採用された『雲流紙』はその独特の繊維パターンが特徴で、熟練した和紙職人によって作られています。この和紙の特長を最大限に活かすため、核となる部分には十分な重さを持ち、反りにも強い炭酸カルシウムを主成分とする合成紙ストーンペーパーを芯紙として使用。その両面に和紙を貼り合わせることで、和紙だけではターンテーブル・シートとして不十分な条件をクリアしました。独特の美しさだけでなく、機能面でも優れたターンテーブル・シートです。

※TA-TS30UN-BWはリバーシブル使用が可能です。片面は白色、反対面は明灰色ですが、これはストーンペーパー表面の色の違いによるもので、オーディオに関係する特性は両面とも同じです。

試聴

今回の試聴は、内蔵するフォノイコライザーアンプを使わず、「スルー出力」にQUAD 真空管式フォノイコライザーアンプ「QC24P」を組み合わせて行いました。

  1. TL-570に付属のターンテープルシート(発泡ウレタン製)を装着し、付属のRCAケーブルを使ってQC24Pに接続して音質をチェック。

  2. ターンテーブルシートはそのままで、出力ケーブルを付属品から「AIRBOW MSU-Mighty」に変更して音質をチェック。

  3. 出力ケーブルを「AIRBOW MSU-X Tension」に変更して音質をチェック。

  4. ターンテーブルシートを和紙の「TA-TS30UN」に変更し、黒い側を上にして音質をチェック。

  5. ターンテーブルシートを裏返し、白い側を上にして音質をチェック。

今回の比較試聴は、YouTube 逸品館チャンネルで、ご覧いただけます。

試聴ソフト(アナログ・レコード)

シンセサイザーも伴奏に使われるPOPS系のソフト。アマンダさんの独特な声の太さや甘さ、シンセサイザーの音がどのように再現されるかがポイント。

鋭いパイプオルガンと金管楽器の音、柔らかい人間の声、男女混声コーラスの複雑な響き。
それぞれの音の分離と広がりをチェックします。SACDハイブリッドソフトのCD層の音声をリッピングして使いました。

音質評価

  

Thorens(トーレンス)のように楽器的な響きや艶やかさはありませんが、レコードらしい滑らかなサウンドです。

デジタルの音とは違いますが、アナログ・レコードと聞いて想像するほど甘い音でもありません。

TEACの製品らしく、癖の少ないストレートな音で、プレーヤーによる着色がほとんど感じられません。

再生周波数レンジは十分広く、低音も良く出ます。バランスは整っています。

  

イントロ部分のシンセサイザーの音に「色彩感」が出てきました。音の分離も向上し、ケーブルの交換により明らかに音が良くなっていることが聞き取れます。曲の合間に使われている「パーカッション」の音もクッキリしています。

ボーカルは厚みと艶が増しました。

いろいろな音が一斉になる部分では、分離と広がり感が向上しているせいでしょう。音量が大きく、より力強く鳴りました。

  

低音の量感と重量感が増しました。分離感もさらに向上し、ボーカルがクッキリと浮き出てきます。

エネルギー感も増大し、ボリュームは変えていませんが、音が少し大きく感じられます。

歌詞の発音、特に子音がハッキリと聞き取れるようになりました。

RCAケーブルを付属品からMightyに変えたときよりも、MightyからX Tensionに変えたときの方が、音質の改善幅が大きく感じられます。

  

ターンテーブルシートを交換すると、音の歯切れが向上し、音が明るくなりました。シンセサイザーの音の透明感とクッキリ感も向上しています。

ボーカルは少し濁りが出たように思いますが、全体的なバランスが向上し、訴える力が強くなりました。

パーカションの音がより「木質的」になりましたが、子音が少し荒れているようにも感じます。

ターンテーブルシートの交換で音の芯がしっかりとして、高音と低音が伸びました。

  

メーカーの説明によれば「黒い側」と「白い側」の音響特性は同じだと説明されていますが、私には「白い側を上」にする方が、一つ一つの音がよりハッキリと聞き取れるように感じます。

黒い側を上にしているときは、少し濁りのようなものを感じましたが、白い側を上にするとそれが解消します。

この状態でも、もう少し「アナログらしい艶が欲しい」と感じますが、基本的な性能が高いので「カートリッジを好みの製品に交換する」ことで、味付けが変えられるでしょう。

  

「レコードの録音(カッティング)」の違いによるものか、あるいは「マスターがDreaming=デジタル?」で「カンターテドミノ=アナログ」の違い(カンターテドミノがアナログなのは間違いありませんが、Dreamingがデジタルという確証はありません)によるものか、カンターテドミノはイントロから「いかにもレコードらしい音」が出てきて、ほっとします。

金管楽器とコーラスの音の違い、女声コーラスと男声コーラスの音の違い、曲間部分の「静けさの表現」などに、デジタルディスクとの違いを感じます。

金管楽器の伸びやかな鳴り方と低音の充実感、女声コーラスと男声コーラスの分離とハーモニーの立体感を味わうだけで「やはりアナログは良い!」と感じます。

結構、「これで満足」という音で、カンターテドミノが聞けました。

  

イントロの金管楽器の数が増え、奏者の「力強さ」が増しました。コーラスが始まるまでの部分を聞いていても、音の違いはアキラかですし、それから始まる主題に向けて、胸がどきどきします。

パイプオルガンの分離も大きく向上し、それぞれの「パイプの音の違い」が感じ取れるようになりました。

レコードの「汚れや傷」による「パチパチ」という音も高域が伸びてリアルです。

女声コーラスの「女らしさ」、男声コーラスの「男らしさ」がより強く再現されます。

曲間の「静けさ」もより深くなりました。

Dreamingよりも、RCAケーブルを付属品から、Mightyに変えたことに寄る音の変化は、遙かに大きく感じられました。

  

華やかなMightyの音に比べ、X Tensionは「力強さ」が前面に出て、すごみのある表現になります。パイプオルガンの低音のうなり、低音のパイプと中高音のパイプの音の分離感が、向上しています。金管楽器の力強さも増しています。

コーラスの部分では、静けさの深みが増しています。男女コーラスの音色の違いと、立体感はMightyの方が良かったようにも思います。

Mightyが「楽器的な鳴り方」なら、X Teisionは「モニター的な鳴り方」です。

カンターテドミノのレコードでは、製作者(私)が意図したとおりのケーブルの音の違いがきちんと再現されました。

  

低音部の深みと複雑さが増しています。けれど響きが増えたためでしょうか、倍音と倍音の隙間が小さくなって、音がほんの少し混濁しているようにも聞こえます。けれど、曲が進むにつれて、この音が「本物らしい」と感じるようになりました。本当の演奏は、オーディオ機器で聞くほど洗練されていませんし、洗練されて聞こえるのはむしろ「音が間引かれた結果」なのかも知れません。

女声コーラスの質感は、大幅に向上し生っぽくなりました。男性ボーカルとの分離感が向上すると同時に、ハーモニーの緻密さも向上しています。

複雑に重なり合う音が、綺麗な層状に聞こえます。そして倍音と倍音の間に「あるべきはずのやや濁った響き」まで、再現されます。相当いい音でなっていると思います。

  

Dreamingでは、黒面を上にした場合と白面を上にした場合で「音に違い」がでたように思いました。カンターテドミノでも、やはり「白面」を上にする方が、より音がハッキリして音の強弱(ダイナミックレンジ)も拡大しているように聞こえます。

特に「パイプオルカンの迫力」と「金管楽器の圧力」は、増しているように思えるのですがどうでしょうか?

コーラスのパートでも空間の透明感や、立体感に差があるように思います。白い面を上にした方が、音の分離に優れ、それぞれの音がどの方向から届いているかが、よりハッキリと聞き取れるように思います。

私はやはり、黒面上と白面上では、音に違いがあるように思いました。

試聴後感想
一枚目に聞いた「Dreaming」には、電子楽器(シンセサイザー)が使われています。アコースティック楽器のように「物理的に発生する響きを持たないシンセサイザー(一部には物理的に響きを発生しているシンセサイザーもあります)の音」は、倍音構造がはっきりして音がクリアですが、響きが少し少なめに聞こえることがあります。

こういう音をデジタルでなく、アナログで聞くと、適度に緩い響きが付加されて、より心地よい音に聞こえることがあります。

プレーヤーの響きを積極的に生かしている「Thorens(トーレンス)」では、そういう風に聞こえるのですが、TEAC TN-570で聞くとデジタルで聞いているときと、あまり大きな差を感じません。これは、プレーヤー自体のがたつきが少なく(組み立て精度が高く)、響きの発生が少ないからだと思います。

「響きの発生」が少ないTN-570でデジタルチックな音源のレコードを聞くと、デジタルとあまり変わらない印象でした。

しかし、次に聞いた「カンターテドミノ」では、その印象ががらりと変わります。

TN-570に付属RCAケーブルを組み合わせた音(フォノイコライザーアンプは高級品を使いましたが)でも、確実に20-30万円クラスのCDやSACDを上回るリッチでクリアな音が聞けました。

ケーブルを変えて行くとその音は、50万円クラスのCD/SACDプレーヤーを確実に凌駕する音に向上しました。

カートリッジを変えると、その音はさらに良くなるでしょう。

癖を感じさせない自然な音、付加される響きの少なさから、そのまま聞いても十分ですが、さらに使いこなして行く「素材」としての良さも感じさせてくれました。

けれど、今回の試聴で一番強く印象に残ったのは「レコードを選ぶ重要性」です。

デジタルマスターの音源をレコードにしても、デジタルを上回ることはほとんどありません(あったとしたら、それはデジタル再生機器の品質が足りないからです)。逆に良質なアナログマスターの場合は、デジタルとアナログでは大きな差が出ます。

レコードが流行っているからと言って、デジタルマスターからプレスしたレコードが作られています。けれど、それは本当の意味の「アナログ」ではありません。

余談ですが、最近TVのニュースで「アナログにはデジタルに収録できな周波数が収録できるから、デジタルよりも音が良い!」と言われることが多くなりました。けれど、そういう「決めつけ」は、所詮は素人の戯言でしかありませんす。こういう「おきまり文句」で報道されるニュースを見る度に、他のニュースソースもこの程度の見識で作られているのだろうかと、がっかりします。

今月は、週間文春が「世界的トランペッター、日野皓正師が中学生を往復ビンタ」と報じていますが、「外野が一部を切り取った映像(報道)」を見てとやかく言う資格はありません。本当のことは、そのライブを愛して演奏した子供たちと、リーダーである日野皓正氏にしか分からないことでしょう。日野氏が言ったように「いたずらに事件を大きく扱うことは、そこに参加した子供たちの心の傷を大きくするだけだ」という、意見がもっともだと思いました。

2017年9月 逸品館代表 清原裕介

 

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