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TriodeがWestern 300Bを精密に復刻した中国製真空管「PSVANE 300B」の取り扱いを開始しました。早速、復刻された300Bを300Bシングルプリメインアンプ「Triode TRV-A300SE」を使ってオリジナル Western 300Bと音質を比較しました。
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TRV-A300SE標準価格¥160,000(税別) サイドウッド別売 ¥5,000(税別) 生産完了 (TRV-A300SERに変わりました) TRV−A300SEの主な仕様 ■最大出力:8W+8W(8Ω) |
Triode(トライオード)製品のご購入お問い合わせは、経験豊富な逸品館におまかせください。 |
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TRV-A300SE純正装着 300B(Triodeブランド)との比較
外観
先ず最初にTriode TRV-A300SEに純正で装着されているTriode 300Bと比較して見ました。横から見た上の写真では、二つの真空管はよく似ていますが上から見た下の写真から、グリッド、カソード、プレートの形状とそれを固定している上部の薄い板の形状が全く違うことがわかります。
真空管を指で弾いたときの音も、Triode-300Bにやや濁りがあるのに対し、PSVANE-300Bは澄んだ音で美しく響きました。
音質
Mellow / Double / FLCF-4325 (このCDソフトのお求めはこちらからどうぞ)
DoubleのアルバムMellowから、高域の響きの美しさが判断できるウインドベルの音、中域の滑らかさや艶っぽさのわかる女性の声、低域の量感や膨らみがわかるエレキベースの音がバランス良く収録された、1曲目のStrangerを選び音質比較に用いました。
Triode 300B (You Tubeで音を聞く)
300Bのシングルアンプらしい澄み切った高域と滑らかなボーカルが魅力的です。低音は少し膨らんでいますが、これはカソードがフィラメントで形成される直熱三極管はカソードが金属板で形成される某熱管に比べカソードの物理的な強度が不足するため低域が膨らみやすからです。大型の三極管(送信管)などは、同じ3極管でもフィラメントの強度が高く低域の膨らむが少ないものが多いようです。
PSVANE 300B (You Tubeで聞く)
出だしのチャイムの音がさらに美しく透明感が増します。金属音のエッジ(立ち上がり)も明瞭度が増しています。膨らんでいた低音が引き締まり、伴奏とボーカルの分離も向上します。無駄な響きが減少して、落ち着いたHiFiサウンドになりました。PSVANE 300Bは指で弾いたときTriode 300Bよりも硬質で透明な響きをします。また響きの減衰も早く、真空管の強度がTriode 300Bよりも高いことがわかります。それがそのまま音に出た形です。り回しが少し違いますが、この写
Western 300B(1988年製)との比較
外観
オリジナルWestern300Bを精密に復刻したという主張通りに外観(形状やサイズ)はほぼ同じです。上の写真では、プレートを固定している板をガラスに止めている上部雲母の形状がWE-300Bが長方形でPSVANE-300Bが楕円形という違いが見て取れます。また、真空管(株)の配線部分の取り回しが少し違いますが、この写真ではよくわかりません。
上の写真ではわからなかった、配線の取り回しの違いがわかります。プレートの色も少し違っています。
音質
Western 300B(1988年製) (You Tubeで聞く)
出だしのチャイムの音はPSVANE 300Bよりもさらに硬質で美しく響きます。指打ちの音もリアルでWestern 300Bの方がPSVANEよりもさらに余計な響きが少なく、音と音像が引き締まっています。低域に力がみなぎり、女性ボーカルにも説得力が出ます。PSVANE 300BとオリジナルWestern 300Bは、構造も音質も似ていますが、響きの美しさと品位がWestern 300Bにはわずかに及ばないようです。以前アメリカ製で復刻されたWestern 300Bは今回テストしたPSVANE 300Bよりもよりオリジナルに近かったように記憶しています。真空管を指で弾いたとき、PSVANE 300BもWestern 300Bも余計な響きがなく、各部の取り付け強度には差がないことが分かります。しかし、真空管そのものの響き(ガラスの響き)がWesternの方が硬質で美しく、やや柔らかくわずかな雑味を感じるPSVANEのガラス響きの微妙な違いがそれぞれの音質差を生み出しているように感じました(Western 300Bのガラスはクリスタルガラスで、PSVANE 300Bのガラスは普通のガラスのように響きました)。
VAIC VALVE VV 300B(300B互換球/生産完了品)との比較
外観
すでに生産は完了していますが、以前 VAIC VALVEから300Bの上位互換球(プレート電圧を上げると300Bよりもパワーが出る)VV300Bが発売されていました。新品のVV300Bが手元にありましたので、興味があり比較して見ました。外観やサイズも構造は、ご覧の通り全く違います。
を精密に復刻したという主張通りに外観はかなり似ています。
音質
VAIC VALVE VV300B (You Tubeで聞く)
VV300Bは、PSVANEやWesternと違って指で弾いてもほとんど響きません。各部の構造や取り付け強度は、真空管としては例外的に高く作られているようです。音質も無駄な響きがなく引き締まっており、真空管と言うよりは良くできた純A級シングルトランジスターアンプに近くなっています。情報量が多くストレートなサウンドは非常に魅力的ですが、真空管らしい響きの良さが減退します。しかし、これはこれでよい音だと思いました。
試聴後感想
真空管アンプは、真空管の差し替えで音が変わります。最近私は真空管アンプに注目していますが、それは音源がPC/ネットワークオーディオになると、ますます潤いや音を作る楽しみが小さくなってしまうからです。たしかに、PC/ネットワークオーディオでもケーブルを変えたり、再生ソフトを変えると音が変わるのですが、カートリッジの交換だけで1枚のレコードがまるで違う歌のように雰囲気までがらりと変わってしまったアナログ時代の音の変化とは、何かが根本的に何か違うように感じています。デジタル時代の音の変化は、音の細やかさや透明感、立体感など「音質」に関わる部分で、音楽の雰囲気つまり「情緒」に関わる部分での変化が少ないように思います。また、アナログ時代には「再生時の音作り」で生演奏よりも素晴らしい雰囲気で音楽を楽しめたのに対し、デジタル時代ではどう頑張っても生演奏を超えられないように思うのです。このアナログとデジタルの根本的な違いは、「響きの差」から生まれていると考えています。
音楽は響きの芸術です。音楽は、音の響きが多いか少ないかで情報量が変化します。良い例が「クラシック・コンサート」で、響きの美しいホールでなければ情緒深く美しい演奏が奏でられません。演奏をより美しくするためには、楽器そのものの響きをさらに「響かせる」ことが必要です。音源がアナログオーディオの場合、再生プロセスではレコード盤そのものの響き、カンチレバーの振動など録音されていない「響き」が盛大に発生します。それを「味方」に付けることで音楽的な情報量を増やしたり、演奏の味わいを深められるのだと私は考えています。
ところが音源がデジタルになると、この「響き」が生み出されなくなります。アップサンプリングやビット伸長を行うことで音の細かさは向上しますが、響きが増えることはありません。これが再生プロセスの芸術性でデジタルがアナログを超えられないと考える理由です。デジタルの音はアナログよりもあっさりしている、アナログのような暖かさや情緒深さが感じられない、立体感に乏しい、これらはすべて「響きが足りない」からだと考えられます。
このデジタルで不足する「響き」を補えるのが、真空管アンプです。今回のテストから明らかなように、真空管が音楽信号に呼応して響き、音楽の味わいを深めます。プレーヤー(音源)で響きを作るすべを封じられた今こそ、真空管アンプに注目すべきだと私は考えています。
逸品館代表 清原 裕介
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