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Triodeから待望の「リモコン付」プリメインアンプの試聴機が届けられた。形式はTRV-88SERで先行発売されているTRV-88SEにリモコンとMMフォノイコライザーを追加し、型式番号の末尾に「R」を追加しただけのように思える。しかし、フロントパネルの「型番貼り付けバッチ」が変更されるなど、小さな「予告無き変更」が加えられているようだ。オーディオメーカーやマニアの間では、「ボリューム」は音質に大きな影響を持つことが知られている。そこから判断しても、TRV-88SERは従来モデルとは異なる「新製品」と考えた方が良いだろう。 届けられた試聴機は、いつものTriodeカラー(メタリックレッド)に仕上げられている。個人的には、セパレートアンプ(プリアンプ)で採用された新色の焦げ茶色にして欲しかったと思うのでちょっと残念だ。しかし、フロントの意匠(バッチの貼付)が改められたためか、全体的に「質感が向上」して感じられる。たぶんパーツの工作精度や塗装、組み立てなどが一段と向上しているのだろう。とにかく、以前の製品に比べると質感、重量感が明らかに改善しているように感じられた。リモコンの仕上げも良い。このアンプが15万円(税別)というのは、見かけだけから考えても十分にお買い得な感じがする。 スピーカー出力の8/6Ω2系統や、標準ジャックのヘッドホン出力はTRV-88SEから引き継がれているが、MMフォノイコラーザーが追加された結果、リアパネルのLine入力は3から2に減らされた。前面に1系統あるとは言え、これは少し少なすぎる。このアンプの小さな弱点になる。消費電力は実測で約140W。エコとは言えないが、ぎりぎり容認できる範囲だろう。 ともかく論より証拠。実際に音を聞いてその仕上がりを確認することにした。 |
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TRV-88SER 試聴テスト |
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試聴ソフト
試聴機材
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スイッチを入れて音を出して驚かされたのは、TRV-88SEで気になった「高域のざらつき」が綺麗に無くなっていることだった。しかし慌てずにCDをリピートにセットして、音を出したまま(真空管アンプは電源を入れて音を出さない状態を続けるのは良くない)一晩暖機(約18時間)した。 出社して試聴室のドアを開けて漏れてくる音を聞いた段階で、TRV-88SEよりも「音が良い」とハッキリ感じさせられる。高域の「ざらつき」が完全に消え、高域の透明感と見通しの良さが大きく向上している。第一印象は正しかったのだ。どこか変わったのか確認するため、すぐにTriode代表の山崎氏の携帯に電話を掛けた。繋がらなかった。よく考えれば毎年この時期、山崎代表はラスベガスで行われている「CES」に出展されている。帰国されたら確認するが、間違いなくボリューム以外にも「何らかの改善」が行われているに違いない。 ※帰国された山崎代表に確認したところ、TRV-88SERはTRV-88SEのボリュームと小さなパーツを変えただけで回路などに変更は加えてないという返答だった。ただ、トランスのケースを「一体型」から「三分割」に変えたのが効いているかも知れないという返答を得られ納得した。TRV-88SEは、後部中央の電源トランスと左右のアウトプットトランスを「一体型のケース」で覆っている。TRV-88SERではこのケースを独立した三つのケースに変更している。ケースを分割すればトランス間の電磁誘導による混変調が大きく低減する。TRV-88SERの音がすっきりと伸びやかになったのは、トランスケースの分割に負うところは少なくないはずだ。 ←TRV-88SEのケースは一体型 ←TRV-88SERは分割型 高域の余計な「ざらつき」が取れたお陰で、中域の滑らかさと表現力の細やかさも向上している。TRV-35SEのカスタマイズモデルをAIRBOWから発売している(TRV-35SE/Dynamite、生産はTriode)が、カスタマイズで実現した「音質改善」に近いイメージの音質の向上がTRV-88SERで実現している。今回のテストでは、電源ケーブルにAIRBOW KDK-OFC/2.0m、ラインケーブルにAIRBOW MSU-Mighty/1.2mを使ったが、それだけでこれほど大きな音質改善は実現しないはずだ。音のバランスも良くなって、非常にナチュラルで心地よく音楽が聴ける。私が大好きなUnisonresearch Sinfoniaほどではないが、価格が倍を超えるluxman SQ-38uに匹敵するほど完成度が高まっていると感じられた。少なくとも、直接聞き比べしない限り「それらとの差」は体感できないはずだ。 トランジスターアンプに比べて真空管アンプは「嫌な硬さ」を出さないことと「自然な音の広がり」に優れていると私は思うが、逆に「低域の甘さ」、「アタックの弱さ」、「色づけの多さ」などは明かなウィークポイントだ。電気的に説明するならば、前者は「トランジスターアンプに比べて偶数次の歪みが少ない」ことと「真空管が響く」事で説明できるし、後者は「ダンピングファクターの低さ」と「増幅素子の強度の低さ」で説明できる。この説明は間違いではないが、数値だけですべてが語れないのがオーディオの常だ。 電気的な説明から考えると「ダンピングファクターが高い=低音が優れている」と思いつくし、トランジスターアンプは色づけが少ないから「音の純度が高い(デジタルアンプではもっと純度が高い)=音が良い」と考えられる。しかし、それは明らかに違っている。このようにオーディオは科学で語れないし、音の良さを数値化することもできない。現象のすべてを理論と数値で語りたいなら、パソコンの自作をもやってベンチマークだけを見ていればよい。しかし、それとて実際に使ったときのパソコンの快適さを説明できるわけではない。数字信仰による争いは、人を決して幸せにしない。曖昧さや間違いを許せる寛容さが、趣味や人生を面白くする。ファジーのない世界は、砂をかむほど味気ない。話を戻すが、突出した部分が少ないからコメントが書きにくく、つまらない蘊蓄を書いてしまったと言えるほどTRV-88SERの音は自然である。 ノラ・ジョーンズ ノラ・ジョーンズのボーカルは、聞き慣れた音で鳴る。ベースやピアノもいつもの音で鳴る。バランス良く、それぞれが主張しすぎない。絶妙の薄味で仕上げられた料理のようにそれぞれの音(味わい)が綺麗に分離し、音源の位置関係にも具合の良い距離がある。レンジが広く、定位も良い。とても15万円(税別)のアンプとは思えない。 エリック・クラプトン クラプトン ギターの響きは透明感があって美しい。ボーカルには適度な艶と張りがある。ハーモニーは綺麗に分離する。低音はわずかに遅いが、雰囲気は悪くない。真空管らしく「楽器の音色に分解能力」に優れ、それぞれの音が無理なくクリアに分離するが、演奏のスケールはさほど大きくない。音響に凝った小さめのライブハウスで演奏をお洒落に聴いている雰囲気でクラプトンが鳴る。 この音を真空管の音と言われれれば、そうかも知れないし、真空管と言われなければ、気づかないかもしれない。普通によい音でスピーカーを鳴らすプリメインアンプだが、その「おいしさ」を考えれば15万円(税別)という価格は驚異的に安い。音楽好きなら、この音に文句はないだろう。とにかく、今までに聞いたTriodeのアンプの中でも一番自然で無理のない音で音楽を鳴らす。ドラムの高域がわずかにざらつき、アタックがぺたぺたと低級に聞こえたが、価格を考えれば仕方のないことだ。 ヒラリー・ハーン バッハ協奏曲 ヒラリーハーン 大編成の交響曲を鳴らすとTRV-88SERは、遂に馬脚を呈した。ソロのパートを担当するヒラリー・ハーンのコンサートマスターの音色と伴奏のバイオリンの音色の差が小さく、それぞれのパーとが上手く描き分けられない。この演奏では、コンサートマスターはもっと「凜」とした鮮やかな音色で鳴って欲しいからだ。 さらに伴奏のバイオリンの音数が少なく、1/3くらいの団員が休憩しているように聞こえる。基本的な情報量(音の数)が不足しているから、CDとSACDの差が音に出ない。このソフトを最高のシステムで聞いたときの音を100人のオーケストラに例えるなら、TRV-88SERは精々30-50人程度の規模の演奏にしか聞こえない。 ただし、音色の分解能力や自然な再現性は非常に高いから、そういう「贅沢な音」を聞いたことがなければ、この音で十分に満足できるはずだ。だいたい“たった15万円(税込)のアンプ”にそれを望むこと自体間違っているではないか。これだけ本格的で癖のない音が出れば、納得しなければならないのは当然のことだ。音数は少なくとも、音楽的に正しい音が出るから「演奏が間違って伝わってしまう」ことは無い。癖のない十分な音が、このディスクから聞けた。 TRV-88SER、総合結果 TRV-88SERは最新モデルらしく、従来のTriodeの製品から確実に一皮向けているようだ。少なくとも日本のメーカーが中国で作るという、やや泥臭いイメージからは完全に抜けた。 デザインや色に好みはあるかも知れないが、質感と仕上げは全然悪くない。むしろ素晴らしいと感じられる。 音質は非常に良くチューニングされており、どんな音楽を聞いても大きく破綻することがない。情報量がわずかに少なく、CDとSACDの差が出せないことがあるかも知れないが、それでも15万円(税別)という価格を考えれば、その音質は望外に素晴らしいと感じられるはずだ。この音で納得できなければ、少なくとも数倍の投資をしなければその望みは叶わないと断言できる。 新採用されたリモコンは音量調節と消音の機能しか持たないが、通常の使用ではそれで十分だし、音量調節の動作もスムーズで良かった。TRV-88SEから「たった3万円の値上げ」でこれほどのリファインが実現するのは、にわかに信じ難い。Triodeらしい心のこもった良品。それが、TRV-88SERだ。 |
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DM 3/7 試聴テスト |
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SONOPRESSOでコラボレーション商品を発売するなど、DynaudioとTriodeは営業業務を共同で行うことがある。今回もDynaudioのDMシリーズ 3/7がTRV-88SERと同時に届けられた。資料によると、販売価格はOPENで推定販売価格が¥190,000と記されている。この価格はペアなのか?一本なのか?もし一本であれば俎上に上げずに返却しようと考えて、ネットで調べるとどうやら「ペア」の価格のようだ。 なぜ、そんなことを考えたかと言えば「キャビネット」や「端子」があまりにも安物だったからだ。ユニットには、確かにDynaudioの良品が使われているかも知れない。しかし、キャビネットは「塩ビ-シート仕上げ」だし「端子もYラグが使えない安物が使われる」などまったく褒められたものではない。いくら海外製品が割高だと言っても、このキャビネットと端子は、ペア10万円以下の製品にしか使われない。ペア20万円でも高すぎる。そう思ったが、ユニットはコストのかかった真面目なものが装着されているのでとりあえず音を聞いてみることにした。 アンプはBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)との比較もかねて、Triode TRV-88SERをそのまま使い、CD変えずにAIRBOW SA15S2/Masterを使って試聴を開始した。 ノラ・ジョーンズ ボリュームが過多なサブウーファーを繋いだように、低音が塊になってぐっと前に出た。圧迫感と実在感の高い低音が出る。高音はDynaudioのユニットらしく滑らかで繊細な音を奏で、分解能、解像度ではBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)を一部上回わるようにも感じられる。 しかし、キャビネットの強度が低いため「どことなくざわついた感じや質感が低い感じ」が完全には消えない。ペア20万円以下という価格を考えるなら、この音は決して悪くはないが、QUADやFocalなど逸品館がお薦めしている他のスピーカーと比べると、音質はともかく「見た目の質感」がワンランク以上劣るのは間違いない。また、ほぼ同じ価格でVienna Acoustics Bach Grandが購入できることを考えると、DM 3/7の価値観の判定は難しい。悪くないが、それ以上でも以下でもない。価格以上の音質をうまく引き出せるかどうか?そこがポイントになりそうだ。 エリック・クラプトン スピーカーがそろそろ温まって来たのか透明感が向上し、細かい音まですっきりと聞こえるようになってきた。 あいかわらず低音は少し膨らむが、前に出るバランスは演奏のエネルギー感、温度感を向上するからPOPSには向いている。しかし、フォルテでキャビネットが共振し、音が濁ってしまう傾向は変わらない。写真から見て取れるように、今回はカーペットの上にスピーカーを直接置いた簡易なセッティングで試聴を行っている。だから、スピーカーの固定方法を工夫することでこの濁りを低減させることは十分に可能だろう。また、使っているアンプが真空管方式だから響きや濁りが多くなっているとも考えられる。しかし、それでも同じ方法で試聴した他のスピーカーよりも濁りは大きいことは違いない。 中域〜高域にかけての細やかさや透明感、スムーズさにはDynaudioらしい高性能感がしっかりと感じられて心地よいが、中低域の音はやはり少し低級。過去試聴したスピーカーでは、Tannoy Fusion Seriesに傾向が似ている。 ヒラリー・ハーン バッハ協奏曲 BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)とTRV-88SERの組み合わせでは、このソフトがアンプに対して最もミスマッチに感じられた。しかし、Dynaudio DM3/7との組合せでは逆に、このソフトが最もうまくアンプにマッチする。 低音の遅れや膨らみは全く気にならないし、前に出すぎていた低音もスピーカー後方へ見事に展開する。このソフトに限定するなら、DM3/7はBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)とTRV-88SERの組み合わせより上手く鳴っている。コンサートマスターと伴奏の音色の違いも鮮やかに再現されるし、各楽器のパートも上手く分離する。 高域の切れ味は、DM3/7がBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)を上回るほど優れている。低音も悪くない。しかい、音の密度感ではBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)がDM3/7を確実に上回る。価格がかなり違うので直接比較するのはフェアではないが、BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)と比べられるほどレベルの高い音が出てはっとさせられることが何度かあった。 DM 3/7、総合結果 このスピーカーを見たときに「安物」と感じた。それはキャビネットの作りや端子があまりにも低級だったからだ。ただし、それは多くのスピーカーを見ているから分かることかも知れない。 仕上げの低級さに対して、ユニットの奏でる「音」はかなり本格的に感じられる。特に中高音の細やかさと透明感は、価格以上に優れている。ユニットの音でスピーカーを評価するなら、DM 3/7の満足度は高いはずだ。ただどうしても低音は、キャビネットの強度の悪さ(密度の低さや表面の塩ビシート仕上げ)が災いしてか、低級に聞こえることが避けられなかった。中低音をどのようにチューニングするか?それがDM3/7を上手く鳴らす上でのポイントになるだろう。 低音と言えば真空管よりもトランジスターアンプが上質だ。そこで中低音を引き締めるため、アンプをAIRBOW PM15S2/Masterに変えて、エリック・クラプトンを聞き直してみた。 エリック・クラプトン AIRBOW PM15S2/Master 中高域の透明感や滑らかさはそのままに、気になっていた中低音の質感の低さや膨らみが改善される。楽器のアタックの鋭さも改善され、シャープでクリアな音が出る。ただ、それと引き替えに魅力的だったギターの響きの美しさや、ボーカルのしめった感じが大きく後退した。スピーカーを軸に考えれば、アンプをTRV-88SERからAIRBOW PM15S2/Masterに変えたことで、音が明らかに悪くなってしまった。これは、想像とは全く逆の結果だ。 AIRBOW PM15S2/Master BEETHOVEN-CONCERT-GRAND 結果に納得できないのでスピーカーをBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)に変えて、エリック・クラプトンを聴き直してみた。音質は一気に向上し、今日聞いた中で最も良い音でクラプトンを聞けた。ひいき目ではなくTRV-88SERとDM 3/7の組み合わせで聴いた演奏とは、待った次元の違う音が出た。それぞれの楽器のパートが見事に描き分けられる。アマチュアライブからプロの音になる。何よりも演奏が上手さが比較にならない。 想像以上に音が違ったのに、我が耳を疑うほどだった。さっき「いい音」と思っていた音は、間違いだったのだろうか?この音を聞いてしまえば、TRV-88SER DM 3/7には戻れない。もちろん、価格が違うからこれが当然と言えば当然の結果なのだ。 |
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試聴後感想 |
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今回の試聴を振り返りながら、視点を変えてそれぞれの製品を評価してみよう。 Dynaudio DM 3/7 DM 3/7から見るとAIRBOW PM15S2/Masterは、TRV-88SERよりも「音が悪い」と見える。TRV-88SERを100点とすればPM15S2/Masterは、60点程度の音でしかない。価格が高いアンプの音が安い製品よりも圧倒的に悪いという、納得できない結果になる。 BEETHOVEN-CONCERT-GRAND しかし、スピーカーをBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)に置き換えてみると、TRV-88SERはPM15S2/Masterよりも明らかに音が悪い。PM15S2/Masterを100点としてTRV-88SERは75点ぐらいだろう。価格を考えれば十分に納得できる結果だ。 Triode TRV-88SER 今度はアンプからスピーカーを評価する。TRV-88SERでBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)とDM 3/7を比べると両者の音質はかなり拮抗している。BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)を100点とすればDM 3/7は80点以上を付けられる。価格差を考えれば、DM 3/7がBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)よりもお買い得という結果になるだろう。 AIRBOW PM15S2/Master アンプをPM15S2/Masterに変えて、BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)とDM 3/7を比較すると、両者の音質差は非常に大きく感じられる。BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)が100点ならDM 3/7は20点程度でしかない。購入を考えられないほどの大きな差が感じられるようになった。 今回のテスト結果をまとめよう。 Triode TRV-88SERは良くできた真空管アンプだ。仕上げの質感、リモコンが使える便利設計、15万円(税別)という低価格、そのどれをとっても推薦に値する優れた製品だと思う。 DM 3/7がアンプで評価が分かれたことは、割とたやすく説明できる。原因は「キャビネット(エンクロージャー)」の緩さにある。TRV-88SERとの組み合わせが良かったのは、真空管アンプがユニットを強制的に駆動しないので「ユニットの音」と「キャにネットの音」が上手く混ざったからだ。これはキャビネットを鳴らして(響かせて)音をまとめているスピーカーによく見られる傾向だ。例えばTannoyの大型スピーカーも性能の良いトランジスターアンプで鳴らすと、音がばらばらでまとまらなくなるが、それはユニットの音速とキャビネットの音速がずれてしまうからだ。つまり、キャビネットがゆったり響く「緩い質感の音(曖昧な音)」とユニットが素早く駆動されることで発生する「硬い質感の音(明瞭度の高い音)」がミスマッチを起こすからだ。このようなスピーカーは「真空管アンプのような緩い音のアンプ」を組み合わせると上手く鳴ることがある。DM 3/7はそれに当てはまる。このスピーカーにDynaudioで想像する「高性能」を当てはめて鳴らそうとすると、きっとうまくいかないはずだ。DM 3/7はキャビネットにきちんとお金を掛ければ、遙かに素晴らしい音で鳴るだろう。 少し前に行ったPMC TB2i/Signatureの試聴結果といい、今回のDynaudio DM 3/7の試聴結果といい、スピーカーの癖が大きいとアンプの評価ができなくなる。確かにスピーカー側から考えれば、アンプを変えて良い音で鳴らせばよいと言うことになるのだが、果たしてそれが正しいスピーカーの評価と言えるのだろうか? 今回のテスト結果からお解り頂けるように、製品の評価は「どこから見るか?」によって大きく変わる。 そういう経験から、逸品館のレポートは過去の例を踏まえ「できるだけ公平な視点」から製品を評価するように心がけているからこそ、信頼して頂ける方が多いのだと思う。また、AIRBOWも「様々な機器との組み合わせや、多くの製品との比較」から音決めをしているので、ご購入頂いたときの評価が安定している(満足度保証による返品はほぼゼロ)のだろう。 オーディオ機器のように曖昧な製品を評価するときには、経験による「補正」が必要とされる。テスターの主観や個人的な思い込みは、製品の評価を大きく損ねることがある。それらを踏まえてどれくらい情報の精度を高められるか?それがプロフェッショナルとアマチュアの差であるし、プロフェッショナルの責任なのだと私は思う。今回のテストは、その思いを新たにさせた。 |
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2011年1月 逸品館代表 清原 裕介 |
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