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Mcintosh MA9000 MA8900

mark-levinson No.5805 ・ PASS INT-25

アメリカ製 高級プリメインアンプ、4モデル聞き比べ

Mcintosh ma9000 Mcintosh ma8900 mark levinson no.5805 PASS INT-25

趣味の製品の購入は、「自分へのご褒美」だから、愛用してきた製品を買い換えるとき、買い増すときには必ず「より良いものを」と誰もが考えます。男の趣味と呼ばれる、カメラ、車、時計、そしてオーディオ。購入しようとする製品の価格は、定年を迎えようとする頃には「最高潮」に達します。

人によって考える「最高潮」の価格はまちまちですが、オーディオメーカーが想定する「ハイエンド製品」は、単品で100万円程度だと思います。数十万円だと「ハイエンド製品を作るにはコストが不十分」で満足な製品は作れないですし、かといって数百万円では売れ行きが極端に落ちてしまいます。100万円もするような製品に「コストパフォーマンス」という考え方が通用するかどうかはわかりませんが、市場価格で60万円〜100万円程度の製品が、実質的「お買い得」に思います。

この価格なら「中国生産」でなくでも成立しますし、「輸入コスト」を差し引いても、海外製品と国産製品の価格格差が小さくなってきます。そこで、今回は過去数多のハイエンド・オーディオメーカーを排出してきた「アメリカ」に注目し、Maid in Americaの歴史ある3ブランドから4台のプリメインアンプを選出して、音質を聞き比べることにしました。

4モデルの仕様比較

Macintosh(マッキントッシュ)

Frank H. McIntoshによって1949年にワシントンで創立された専業オーディオメーカーで、製品造りのポリシーを「音楽への愛情」を背景とし、最先端技術を実用的に精錬、恒久的な信頼性、安定性を得ることに定めています。視認性の高い伝統的な漆黒のガラスとフルグラスのイルミネーションが組み合わせられたフロントパネル。グリーンとブルーのメーター表示は時代を超越した美しさを持っています。的確にデザインされたスイッチの配置、多バンドトーンコントロールに代表される便利な多機能、スピーカーを損傷から守るパワーガードなど、あらゆる方向から家庭用アンプとしての完全さが追求されています。

日本では、ステレオサウンド誌の評論家「故 五味康祐」氏が、真空管プリアンプ C22と真空管パワーアンプ MC275とTANNOY Autographを愛用したことから、人気が高まりました。

今回は、Mcintosh伝統のパワートランスフォーマー(出力トランス)を装備する高級プリメインアンプから、最大出力 300WのMA9000と200WのMA8900を聞き比べ対象に選びました。

製品の概要

MA9000の最大出力は、300W+300W。MA8900の最大出力は、200W+200Wの「フルトランジスター回路搭載」のフラッグシップ・インテグレーテッドアンプです。”Mc"ロゴをあしらった新デザインのマッキントッシュ・モノグラム・ヒートシンク(McIntosh Monogrammed Heatsinks?)を採用するデザインは、伝統的なMcintoshです。

どちらのモデルもDA1デジタルモジュールを採用し、Mcintosh独自のデジタルリンク「MCT:16bit/44.1kHz(CD)、DSD64(SACD)」、「COAXIAL:24bit/192kHz」、「OPTICAL:24bit/192kHz」、「USB:32bit/384kHz、DSD256、DXD384kHz」のデジタル入力に対応します。これらのデジタル入力は、全て一つのスロットイン・モジュールに統合され、モジュール交換でアンプを買い換えることなく、将来の新フォーマットに対応します。

MMとMCのフォノ回路は、完全にセパレートされて極めてフラットな周波数レスポンスを達成、誤差の少ない抵抗およびコンデンサーの採用により、ノイズ及び歪みを最小限に抑えられ、高音質なレコード再生を実現します。

Mcintosh伝統の多バンドトーンコントロールは、8バンドイコライザー(25、50、100、200、400、1,000、2,500、10,000Hz)を装備し、Macintosh独自のテクノロジー(オートフォーマー、パワーガード、セントリーモニター、パススルー、HXDヘッドフォン出力、パワーコントロール)が採用されています。

Mcintosh MA9000 メーカー希望小売価格 1,500,000円(税別) (現金で購入)・ (カードで購入

Mcintosh MA8900 メーカー希望小売価格 980,000円(税別) (現金で購入)・ (カードで購入

mark levinson(マーク レビンソン)

オーディオファンなら誰もが、一度が憧れるブランド「Mark Levinson(マークレビンソン)」。ブランドの創始者「マーク・レビンソン(Mark Levinson)」氏は、スタジオミュージシャンとして活動しながら、最新の電子回路を取り入れたプロ用レコーディング機材の開発を始め、1973年のAESで19"ラックマウント式の巨大な業務用プリアンプ「LNP-1」を発表します。

この「LNP-1」に続いて、その音質の要であった超高精度ボリュームを搭載し、特徴的な2つのメーターを小型化デザインを持つ、高さ約1/2の「LNP-2」が実現した、他メーカー製品の追従を許さない画期的な高S/N性能がもたらす静寂感が一気に注目を集め、高級オーディオブランドとしてMark Levinson」の名前が確立しました。彼はその後、優秀な技術者にも恵まれ歴史的な名機を多数発表しましたが、1984年に社を去り「Cello」を設立します。

設立者を失ったMark Levinson社は、開発の中心をスタジオモデルからコンシューマモデルへと変え、ハーマングループの一員としてその後もプリアンプやパワーアンプを主軸に独自の白と黒のツートンカラーを基調とするデザインと音質を継承しながら、高級オーディオを次々と世に送り出し、1980年頃には不動のハイエンドブランドに成長しましたが、2000年頃から始まったハイエンドオーディオ市場の衰退と共に徐々に往年の神通力を失って行きました。

しかし、国産高級車「レクサス」の純正オーディオとして採用されたことをきっかけに力を取り戻し、ハイエンドオーディオの世界でも再びその輝きを取り戻そうとしています。

その復活の証として、狼煙として2020年に発売されたのが、意欲的な新型プリメインアンプ「No.5805」なのです。

製品の概要

アナログ部

No.5805には、回路を出来るだけ短くシンプルにすることで信号の純度を高めるという思想をベースに、フルディスクリート、ダイレクトカップリング、デュアルモノラル・ラインレベルプリアンプ回路が採用されています。
ボリュームには、ハイエンドアンプで最近の主流となっている、デジタル制御レジスターアレイによるアッテネーター式・電子ボリューム回路が使われ、ステップが細やかで長寿命な音量調節を可能としています。信号が混じり合わないようにそれぞれ独立したスイッチングリレーを備える、3系統のアナログ入力(XLRバランス1系統、マークレビンソン専用設計のRCA端子を備えたRCAアンバランス2系統)のライン入力に加え、No500シリーズで好評を得ているPure Phono思想を継承し、CR型とNF型を組み合わせたRIAAフィルターを採用する、MM/MC切り替え式のフォノイコライザーも装備されます。

コンデンサーを信号経路から排除したフルディスクリート、ダイレクトカップリングを採用するAB級パワーアンプは、8Ω負荷時125W/ch(4Ω負荷時≒250W/ch)の出力を発揮し、2Ω負荷でのドライブにも対応しています。

デジタル部

最新のESS Sabre 32bit D/Aコンバーターと独自のジッター低減回路を組み合わせたフルバランス、 ディスクリート電流-電圧コンバーター部が中核をなす高音質デジタル回路を搭載。4系統のデジタル入力(光S/PDIF 2系統、コアキシャルS/PDIF 1系統、非同期 USB 1系統)を備え、PCM(384kHz/32bit)とDSD(2.8, 5.6, 11.2MHz)の再生に対応しています。さらに.No5805ではMQA(Master Quality Authenticated)にも対応しました。AptX-HD再生にも準拠するBluetoothレシーバーも搭載されます。

デザインが一新された新設計のリモコンが附属するほか、本体とPCを直接接続することで専用Webページから各種の設定やソフトウェアのアップデートなどが可能(一般的なウェブブラウザーソフトが使用可能)で、さらに他の機器との連携とリモート操作並びに各種の設定を行えるよう、Ethernet、USB、RS-232、IRリモート入力および12Vトリガー入出力を備えます。日本ではほとんど使われないと思いますが、ホームリモートシステムのCrestron、RTI、Control4、Savant、AMX、URCに対応する専用ドライバーもそれぞれ準備予定とされています。

Mark Levinson(マークレビンソン) No. 5805 メーカー希望小売価格 850,000円(税別) (現金で購入)・ (カードで購入

PASS(パス)

Passラボラトリーズは、カリフォルニア大学で物理学の学位を取り、アンプの設計に関して、多くの特許を所有するNelson Pass(ネルソン・パス)によって1991年USA、カリフォルニアに創立されたオーディオメーカーです。

Nelson Passは、Passラバラトリーズを設立する以前に最初の会社スレッショルド・コーポレーションを1974年に設立し1991年まで社長を務めると共に20年間にわたりインプルーブドAクラスのステイシス回路など数多くのセンセーショナルな回路デザイナーとして活躍したアンプ設計の鬼才です。

Pass社の開発スタッフは、全員が音楽フリークで、ネルソンの監修のもと何が聴こえなければならないか、何が聴こえてはいけないかを理想的に実現すべく努力しています。彼らの設計に対するフィロソフィーは、簡素で自然な特性を持たせるということです。現在のPASS製品の多くは、ネルソンはじめスタッフのこうした製品が欲しいという必然がその開発動機になっています。

製品概要

複数のパワーMOSFETを並列動作させることで実現する大出力、それを動作させるための強力で大規模(マッシブ)な電源回路、発生する熱を処理するための巨大なヒートシンク、それらがPASS Labs インテグレーテッドアンプ/パワーアンプに共通するデザインポリシーです。

「INT-25」は、Passラバラトリーのデザインコンセプトと、2017年に発売されたFirstWattの思想を融合させ、出力を最小限(純Aクラス25W)に抑えることによって、パワーMOS FETを一対(シングルプッシュプル)で使用する、究極にシンプルなシングルエンド回路構成を特徴とするプリメインアンプです。
 PASS Labs. 製品共通のヘアライン仕上げの重厚なアルミフェイスプレート採用の頑強なシャーシ構成を持つINT-25は、プリアンプ部のドライバー段に採用された高入力インピーダンスJFET によって6dB のゲインが与えられた、歪み0.001%以下の精密なボリューム回路と、2組のコンプリメンタリーFET(NOS = New Ols Stock)をカレントフィードバック(CFA)構成のコモン・ソース・モードで動作させ、ダイレクト・カップル方式の採用でDC サーボと周波数補正を用いないパワーアンプ段が組み合わされ、入力もラインレベルRCAのみ3系統のみと、信号経路のパーツ数の削減を実現したシンプルな回路が最大の特徴です。

実際に聞こえてくる音もそれを裏付ける、色づけのほとんどない高解像度でストレートな音質と、純A級ならではの滑らかさと暖かさが両立した、オーディオアンプとしての理想的な音質が実現しています。

PASS(パス) INT-25 メーカー希望小売価格 900,000円(税別) (現金で購入)・ (カードで購入

試聴環境

今回はそれぞれのアンプの能力を正確に比較するため、現在逸品館で準備できる最高の音源「AIRBOW MBN-N54 LTD、TAD D1000 Mark、D600」と最高のスピーカー「TAD R1-TX」を使い聞き比べました。さらにR1-TXでは「プリメインアンプには荷が重すぎる(スピーカーが大きすぎる)」と考えて、Focal Sopra No.2でそれぞれのアンプをじっくりと鳴らしてみました。

音源の接続は次の通りです。

USB接続 → 同軸デジタル接続→

AIRBOW MBN-N54LTD 販売価格 385,000円(税別) (現金で購入)・ (カードで購入

TAD D1000 Mark2 メーカー希望小売価格 1,800,000円(税別) (現金で購入)・ (カードで購入

TAD D600 メーカー希望小売価格 3,500,000円(税別) (現金で購入)・ (カードで購入

TAD R1-TX メーカー希望小売価格 12,000,000円(ペア・税別) (現金で購入)・ (カードで購入

「4アンプ聞き比べ」

スピーカーに「TAD R1-TX」を使い、4台のアンプを聞き比べました。No.5805には、R1-TXはやや荷が重すぎたように感じましたが、Macintoshの2台のアンプはさすがの台パワーでR1-TXをしっかりと鳴らしました。驚いたのは、出力がたった「25W」敷かないINT-25が、R1-TXを十分な音質と音量で鳴らしたことです。

最近、スピーカーのカタログに「推奨アンプ出力」なるものが出てきました。それを信用するなら「出力の大きなアンプを組み合わさなければ良い音が出ない」ように思いますが、それが全くのでたらめであることが今回の聞き比べで証明されました。

もちろん、そんな証明をしなくても、そういう数値がまったく何の指標にもならないばかりか、間違ったアンプ選びを推奨しかねないのは最初からわかっていたことです。こういう「間違い」は、オーディオメーカーとしての自負を持つのならば、直ちに修正して欲しいと思います。

動画では、「せせらぎ / DELLA」、「The Water is Wide / Karla Bonoff」、「甘いワナ / 宇多田ヒカル」、「French African Queen / Gregory Porter」、「L.O.V.E. / Diana Krall」、「地獄へ道ずれ / QUEEN」の6曲を鳴らしながら、それぞれのアンプの特徴を解説しています。

「各アンプ鳴らし比べ」

スピーカーを荷が重すぎる「TAD R1TX」から、よりドライブしやすい「Focal Sopra No.2」に変えて、それぞれのアンプをじっくりと鳴らしてみました。聞き比べたのは、「せせらぎ / DELLA」、「The Water is Wide / Karla Bonoff」、「甘いワナ / 宇多田ヒカル」、「French African Queen / Gregory Porter」、「L.O.V.E. / Diana Krall」、「地獄へ道ずれ / QUEEN」と「ロドリーゴ アランフェス協奏曲 / ぺぺ ロメロ」の7曲です。

  Sopra NO.2 メーカー希望小売価格 1,560,000円(ペア・税別)

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Mcintosh MA9000

Mcintosh MA8900

mark-levinson

Pass INT-25

TAD Reference System

今回聞き比べに使った、TAD R1-TXは、それぞれのアンプの「最大性能」を引き出してくれましたが、それぞれのアンプは「R1-TX」から最高の音質を引き出すことは出来ませんでした。スピーカーとアンプの価格差を考えれば当然です。

そこで、R1-TXの最高音質をご紹介するため、アンプをTAD ReferenceのC600、M700に変えて同じ曲をR1-TXで鳴らしました。

TAD C600 メーカー希望小売価格 3,800,000円(税別) (現金で購入)・ (カードで購入

TAD M700 メーカー希望小売価格 3,500,000円(1台・税別) (現金で購入)・ (カードで購入

 

試聴後感想

アンプとスピーカーの「組み合わせ=相性」は、オーディオで一番頭を悩ませるポイントだと思います。さらに、組み合わせるソース(プレーヤー)、スピーカーセッティングやルームアコースティックの影響も受けますから、ご自宅以外の場所でそれを「正しく評価する」ことは、かなり難しいと思います。

そこで、逸品館ではスピーカーを鳴らすための最適な環境(3号館メイン試聴室)で実際にならした音を高性能マイクで収録し、YouTubeにアップロードすることで参考にしていただければと考えています。

今回、最も気に入ったのは「Pass INT-25」です。きめ細やかでレンジが広く、オーディオ的に高く評価できる音質ですが、同時に音楽を楽しく聞かせる能力にも長けています。メーカーの主張通りの音質でした。出力もR1-TXを十分に鳴らすほどなので、ご家庭での使用であればまず問題ないと思います。記憶している、上級モデルINT-60よりも音が良かったのは純A級動作と無関係ではないはずです。

時点は、Mcintosh MA8900です。上級モデルMA9000も悪くないのですが、すこし「脂っこすぎる」のが気になりました。よほどの大会場、大音量でなければ、MA8900の方がバランスの良い音を鳴らしてくれるでしょう。デジタル入力の種類も豊富、将来的なバージョンアップにも対応するなど、一般的なオーディオマニアにベストマッチすると思います。

mark-levinson No.5805は、どちらかというともう少し小さな部屋、小型のスピーカーと組み合わせて、それほど大音量ではなく音楽を聞くときに向いています。このアンプの最大の長所は「嫌な音を出さない」ことです。ソースや組み合わせるスピーカーを選ばず、一定以上の音質と、音楽に聴き惚れさせてくれるような艶のある鳴り方は、古くからのオーディオマニアが知る「マークレビンソン」そのものとい音質です。もう、あまり機械に振り回されたくない。おしゃれに音楽を楽しみたいとお考えの方にベストマッチしするでしょう。MQAデコーダーが搭載されているので、高音質ストリーミングサービスとの相性も抜群です。機械の存在を忘れさせて、音楽に浸らせてくれる製品だと思います。

 

2020年9月 逸品館代表 清原 裕介

 

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