ウイーンアコースティック T-2G VIENNA ACOUSTIC T2G

 ウィーンアコースティック/Vienna Acoustics T2G

比較評価による試聴テスト

2005年、秋に輸入が開始されたウィーンアコースティック“T−2G”の比較試聴を行いました。

テスト環境と使用ソフト

リスニングルーム 逸品館3号館、リビングリスニングルーム

使用機器
ユニバーサルプレーヤー AIRBOW DV15/Black Special
アンプ             AIRBOW CU80/Special 、 MU80/Fine tuned

使用ソフト
MUSIC FROM
THE MOTION PICTURE

TITANIC

Format:CD (PCM 44.1KHz/16Bit)

輸入盤 : SRCS 8529

1997年録音

このCDが作られたのは、もう8年も前だが、地を揺るがすような重低音から、突き抜けるような高音、消え入るような小さな音から、爆発するような大音量まで今も輝きを失わない高音質で収録されている。

癖のない音質でスピーカーの基本的な特性のチェックには最適な一枚。

Ken Hirai / 平井堅

Ken's Bar

Format:CD (PCM 44.1KHz/16Bit)

DefSTAR RECORDS : DFCL 1122

2003年録音

バーチャルなBar(バー)のをイメージして選曲構成を行い、アコースティックな楽器のみで構成され、驚くほど録音の良い「大人」のJ−POP。

素晴らしい音色で収録された楽器と美しくセクシーな平井堅のボーカルの絡みが聞き所のアルバムでスピーカーの「色気/表現力」をチェック。

MIDORI

French violin sonatas

Format:SACD(DSD Recording)

輸入盤 : SS89699

2002年録音

カーネギーホールでのライブから10年を経て「MIDORI」は、堂のように成長したのか?また、CDからSACDになってオーディオはどのように進化したのか?各機器のCDとSACDの音質の比較に選んだ一枚。ピアニストはライブの時と同じロバート・マクドナルド。

Vienna Acoustics (ウィーン、アコースティック) T2G

形式 2ウェイ、2スピーカー
(リアバスレフ)
ユニット 2.5cmツィーター
14cmミッドバス
14cmウーファー
インピーダンス 4オーム
再生周波数帯域 32〜20,000Hz
音圧レベル 90dB
許容入力 30W〜200W
カラー 標準色:ローズウッド
受注生産色:メイプル、
ピアノブラック、チェリー
寸法(mm) 170×940×295(W,H,D)
本体サイズ
215×977×340(W,H,D)
スタンド付き
質量 18Kg、1台

T2G (MOZART GRAND)

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メーカー標準価格

生産完了

総評
ウィーンアコースティックのスピーカーは、伝統的にツィーターの音が良いと思う。
典型的なテキスタイル製ソフトドームの音で、更に言うならスキャンスピーク製ツィーターの音色を踏襲している。
美しく、透明度が高く、繊細。だが、時としてデリケートすぎてダイナミックさに欠けることがある。
流れるような音楽や、静かな室内楽には非常に向いているが、たたきつけるようなダイナミックな表現は苦手だ。
中音は透明なユニットから想像されるとおりの、透明で柔らかな音。特徴的な音色のツィーターとの繋がりにも一切問題はない。
低域はサイズから想像するよりの遙かに量感が豊かなのは、相変わらずの美点だが、T2Gになって従来よりも引き締まり低域の透明度が高まったのは非常に好ましい改善だ。各ソフトでは、GRAND PIANOとの比較で評価しているが、ある意味それはフェアとは言えない。なぜなら、T2GはGRAND PIANOの半分の値段で買えてしまうからだ。
あまった予算で、AIRBOWの波動ツィーターを購入し奢ってやれば、GRAND PIANOを凌駕するほどの表現力を実現するだろう。PMCと波動ツィーターのマッチングが抜群なように、ウィーンアコースティックと波動ツィーターのマッチングも非常に優れているはずだから。
良質なサブウーファーとの組合せも大いに試す価値があると思う。

タイタニック
前にも一度聴いているが、その時の印象と同じくT2Gは良い。何よりも透明度が高く、繊細なツィーターの音が良い。
低域も量感と深みがあり、GRAND PIANOよりも出ているくらいに感じる。一曲目のド〜ンという音で、音量をそんなにも上げていないのに部屋の壁が震えた。
声や楽器の表現力にも深みがあり、浸透力が非常に高い。心に音がしみてきて、心の琴線を震わせてくれる。
GRAND ピアノよりもややクールで淡泊な印象。PMCに近いが、それよりはやや色彩感が濃い。
家庭で聴くには、これくらいの音のバランスがベストなのではないだろうか?
タイタニックが透明で深い海に、抱かれるように帰って行く、そんなイメージに聴かせてくれる。
理知的な感動。名前の通りウィーンという街を想像させる音。
バランスや繋がりなどに注文を付ける部分は一切無い。ただただ、この音で静かに音楽を聴いていたい。
この一瞬は誰にも邪魔されたくない、そういう深く静かな集中に心を誘ってくれる。

Ken's Ber
出だしの雑踏の音は、空気が澄んでいる。靴の音の響きも美的。
ピアノの音はやや細いが美しい。ボーカルは女性的に聞こえる。
平井堅がやや痩せて、女っぽくなるが、本来そういう部分を持っている人なのでこちらの方が正解に近いと思う。
ギターの音は、響きが美しく良いギターの持ち味をきちんと出している。
平井堅のブレスは、ややウェット。子音は弱くはないが、タッチがソフトでややウェットなので気にならない。
GRAND PIANOが男性的で厚みのある音なのに対し、T2Gは女性的で線がやや細いが、透明な深みがある。
例えは適切ではないかも知れないが、GRAND ピアノはボディー(体)に訴え、T2Gはハート(心)に訴える。
どちらも感動的だが、響いてくる部分が明らかに違う。好みがはっきり分かれそうだ。

ミドリ
このソフトに関しては、GRAND PIANOの勝ちだと思った。ダイナミックさが違う。
T2Gは、中域の線が細くピアノにもバイオリンにも厚みと押し出すようなエネルギーが足りない。
ちょっと、口先だけで嘘をついているような感じ。音自体は悪くないし、響きの美しさも相変わらず。
でも、GRAND PIANOで感じた、溢れてくるようなダイナミズムがない。
GRAND PIANOは、躍動感溢れる油絵。T2Gは、緻密な水彩画。
そういうイメージでこの曲を再現する。静かな場所でゆったりと聴くならばT2Gも良いけれど、躍動する音楽の息吹を味わいたいならGRAND PIANOがお薦めだ。

2005年 11月11日 清原 裕介