音が出た瞬間!これは良いと思った。
ギターは切れ味鋭く音色はクリア。空間も透明感が高く解像度が高いと感じたからだ。
低音も小型で軽量な筐体から想像される「軽さ」がほとんど感じられない。
中音は透明で見通しがよい。
高音は少し硬いが、切れ味はよい。
総じて欠点の少ない音だ。しかし、しばらく聞いていると「プラスアルファ」が心にもたらされないことに気づいた。音は美しく鳴るが、心にぐっと来るものが少ないのだ。その理由を考えてみた。
今回テストした151
Power DAC Miniを始めとする最近の低価格デジタル製品は、「音が細かく」、「音場に雑味が少なく透明」、「低音がしっかりしている」など共通して感じる美点が多い。しかし、その反面で「メーカーによる音質格差が非常に小さい」とも感じられる。それには明確な理由がある。
小型で低価格なオーディオ製品は、ほとんど例外なく「IC」や「LSI」のような「集積回路のチップ」で構成される。音が良いのは、近年のデジタル技術の進歩により低価格で入手できる汎用音響デジタル素子(音響IC)の音質が優れているからに違いない。しかし、過度の価格競争は部品メーカーと部品を淘汰し、結果として「選べる部品の数」を激減させてしまった。さらに技術の進歩が素子のメーカー格差をなくしてしてしまい、「悪い音」や「ずば抜けて良い音」が無くなってしまった。今のデジタル製品の多くは、外観は違っても回路は同じ部品で構成されることが多い。それが性能の均一化を生み出した。
Wadia
151 Power DAC Miniは、そのような最新デジタル製品の例に漏れず平均的に良くできた製品だ。価格対性能比も高い。もし、この製品が5年以上前に発売されたなら、画期的と思えたはずだ。しかし、他社の製品も同様に大きく進歩しているから、151
Power DACは良くできてはいるが「平均以上」ではない。特徴的な筐体のデザイン、ブランドとして通用するWadiaのロゴを消してしまえば、音を聞いてもどこのメーカーが作った製品か分からなくなるだろう。
151
Power DAC
Miniは「欠点のない良品」には違いないのだが、同時に「抜きんでた長所」も感じられない。同じ用途でアンプを探す友人には、サイズは大きくなるがより多機能で少し音も良いPIONEER PDX-Z10を薦めるだろう。
では機能も性能も優れて価格も安いPDX-Z10の存在を知りながら、なぜ151
Power DAC Miniを販売するのか?
それは、目を開けてデザインとロゴを見て、Wadiaの製品と思って納得するお客様がいらっしゃるからだ。Wadiaと言うブランドにシンパシーを感じ、ロゴを信じて音を聞けば納得できる。151
Power DAC
Miniはその期待を裏切らない。Wadiaという名前のもたらす安心。それを信じることが“ブランドを選ぶ”ことなのだと思う。