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製品の概要
先進のDigital Audio 製品で定評のある"wadia"からPC Audioと親和性の高いDAC内蔵デジタルプリメインアンプ"Intuition"が発売されました。
この製品はDSDネイティブ、384kHz/325bit PCM信号に対応するUSB入力とS/PIDFのRCA同軸入力×2系統、RCAアナログ入力×2系統を備える出力350Wのデジタルプリメインアンプです。
同梱される専用のドライバーのインストールを行うことで(Windows XP以上、Mac OS 10.64以上)DSD Over PCM(DoP)方式によるデジタル伝送に対応します。ただし、ダウンロードできるDSD音源が限られる、DSD伝送に対応するプレーヤーソフトが少ないなど、本格的なDSDシーンはまだ先のようです。
入力されたデジタル信号は"Delta Sigmaster"アルゴリズムによってオリジナル群遅延からの位相乱れやインパルス応答変形を発生させず、極限まで滑らかで自然な音が再現されると解説されています。
付属リモコン
音質評価
テストに使用したシステム
スピーカー:Beethoven Concert Grand(T3G)
デジタルプレーヤー:AIRBOW UX1SE Limited(with AntelopeAudio OCX + AIRBOW GPS-10MH)
DAコンバーター:AIRBOW DA3N Analogue
・Analogue入力(AIRBOW UX1SE Limited → RCA デジタル出力 → AIRBOW DA3N Analogue)
イントロのピアノはエコーに濁りがなく美しく響きます。陽水の声も透明感が高く繊細ですが、やや細く力が感じられません。
Beethoven Concert Grand(T3G)を組み合わせていますが、低域と高域のレンジが狭くブックシェルフの2Wayスピーカーでこの曲を聴いているような感じです。前後左右方向への音の広がりも薄く、綺麗な音ですが全体的に希薄なイメージです。
・Digital入力(AIRBOW UX1SE Limited → RCA デジタル出力 → wadia Intuition 01)
霧が晴れたように音が細かくなり、見通しが良くなりました。陽水の声の透明感が向上し、子音がクッキリとします。ピアノのアタック(打鍵感)も力強くなりました。低域と高域のレンジ感が狭いのは相変わらずですが、中域の濃さと音の細やかさは大きく改善し、音の広がりも大きくなりました。
・アンプをAIRBOW PM11S3 Ultimateに交換し(AIRBOW UX1SE Limited → RCA デジタル出力 → AIRBOW DA3N Analogue)を接続
Wadia Intuition 01をアナログ入力で3日以上聞き続けました。
聞き続けても嫌な音は出ず、音が細かく滑らかで雰囲気も悪くないのですが、音質性能が低いという印象がありました。低音が出ない。高音が出ない。空気感のような細かい音が出ない。など価格ほどの音質が出ていない印象が消えないのです。
確認のためアンプをAIRBOW PM11S3 Ultimateに変えてみました。音の数が一気に増えます。数倍くらい増えた感じです。スピーカーをBeethoven Concert Grand(T3G)からThe Musicへ変えたくらい一気に音質がアップしました。感じ続けていた印象が正しく、Intuition 01は私達の知るハイエンドオーディオ機器とは根っこから音質が違うことを確認できました。
試聴後感想
Wadia Intuition 01は、そのデザインとパッケージングで評価すべき製品です。嫌な音は出ずよくコントロールされた音なので、良い音のコンポと聞き比べなければ、それなりに満足できると思います。しかし、音質を求める製品ではありません。Wadiaは一度ならず行き詰まり、オーナーが変わった現在はすでに設立当初の会社ではありません。今の会社が引き継いでいるのは、Wadia
Digitalが持っていた先進的なムードです。Intuition 01は、初期のWadiaが持っていたデザイン性や先進性を上手く取り込んでいますが、初期のWadiaに感じた音の良さは持ち合わせていないように感じました。
Intuition 01の説明書に書かれている「滑らかな音」、「自然な音」という記述には間違いはありません。それは3日間以上聞き続けても、不満を感じずに音楽を聞き続けられた事から明らかです。しかし、音の細やかさやレンジ感はこのクラスの他社製プリメインアンプ(例えば HEGEL製品など)には、遠く及ばないことは事実です。比べなければ・・・。という思いはありますが、比べてしまえば音質がさほどでないことがすぐ分かります。
Intuition 01をあえてたとえるのであれば、BOSE 101(フルレンジスピーカー)のような音です。低音も高音も出ませんが、中域は滑らかで自然です。AIRBOW PM11S3 Ultimateにアンプを変えた瞬間に高域が少し暴れている(伸びすぎている)と感じましたが、それはIntuition 01の高域がなだらかにドロップし、気に触る音を一切出さないからです。
命令に100%服従する執事のように地味だけれど、タンタンを仕事を着実にこなす雰囲気。派手さも艶やかさもないけれど、羽目を外さない穏やかさを持ちリスナーをいらだたせない音質。富裕層のためのお洒落なモニュメントや調度品という感覚で捉えて頂ければ、この製品を正しく評価して頂けるのではないでしょうか。
2013年9月7日 逸品館代表 清原 裕介
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