評価の基準として
PHASE TECK P-3 Alexandrite
を試聴しました。
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Phase
Teck P-3 Alexandrite ¥85,000(税別)
ネオジウムマグネットと純鉄による強力な磁気回路を構成し、徹底したローインピーダンス化と高出力を実現しています。深い音楽表現と豊かな音色を持った漆黒のアナログディスクを表現する漆黒のカートリッジ
P-3 Alexandrite(アレクサンドライト)※は、音質重視の高品位なパーツを投入しアナログディスク再生の魅力をあますところ無く引き出します。部材の見直しと新たな設計により、より多くの方に大きな感動を体験頂ける製品に仕上げました。
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ややドライなサウンドだが、フルートの木質的に響く余韻が美しい。
ウッドベースも木質的な響き、音色の鮮やかさ、美しさにCDでは出せないサウンドテイストの素晴らしさが感じられる。
特に指が弦に触れるタッチノイズや弦をリリースしたときの切れ込みの再現性の生々しさが凄い。
フォーカスは少しソフトだが輪郭はボケずにはっきり出る方向。
音調は癖が少なくニュートラルなサウンドで、派手な表現をするような音作りではない。また温度感も特に高くはないが、充分に暖かいアナログ的なサウンドでレコードを鳴らす。
良い意味でオールマイティーで標準的なサウンドを求めるなら、とてもお薦めなカートリッジ。聞き込んでゆくと、じんわりと演奏が心に染み込んでくる。 |
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R50
Bloom ¥60,000(税別)
ZYXの製品の中では最も低価格にランクする製品ですが、リアルステレオ発電系、ラインコンタクト針を装備した本格派です(カンチレバーはブラックアルミ)。MCカートリッジをはじめて使う方からアナログ再生暦の長いベテランの方までご満足いただけるコストパフォーマンスに優れたモデルです。高出力型あり
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P3も分解能力や解像度は高い方だが、R50にはそれよりも高いポテンシャルが感じられる。P3に比べ響きが少なくクリアなイメージで、音の立ち上がり、立ち下がりが非常に早く、レスポンスがとても良い。フォーカスはP3よりもシャープで、輪郭はよりはっきりと出る。
ギターは弦がやや細くなった感じで、胴の響きはP3よりもタイト。
フルートは響きが少なく、よりストレートなサウンドに変化する。
ウッドベースの量感は控えめで、P3よりも低音の量感はほんの少し少ない。
高解像度で濁りのない爽やかなサウンドが魅力的で奏者の楽器のコントロールの細やかさが明快に伝わる。このクラスのカートリッジとしては性能は非常に高いが、決して音が硬くなりすぎたり、モニター的になりすぎたりしない。
P3に比べると音源との距離感が近くなるので、オフ・フォーカスな音を好む人には向かないだろう。味わいは非常にニュートラルでプレーヤーやトランス、イコライザーでの音作りがやりやすいはずだ。最も低価格のR-50でも、ZYXの持ち味は十分に発揮される。 |
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R100-02 ¥100,000(税別)
シリーズのベーシックモデル。リアルステレオ発電系を備えた左右均一音質、全帯域フラットなサウンドバランスを初めて実現している。振動系はシリーズ全て共通、現在得られる最良の素材を使用。極軽量、硬質のボロンカンチレバーとカッター針に近いトレースで100kHzをも再生するマイクロリッジ針にて極めてワイドな再生能力を得ている。 高出力型あり この製品のご注文はこちら |
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R50のワンクラス上級機とは思えないほど、大きく音が変わった。
分解能力や解像度感にはそれほど大きな差は感じられないが、楽器の質感がまるで違いギターなら50万円クラスの楽器から100万円クラスに持ち替えたのでは?と思えるほど音色の透明感と鮮やかさがぐんと増す。
フルートも、より澄みきって魅力的なサウンドになる。
ウッドベースは力強さを増し、その響きの美しさが再現され、バイオリンと同じ系譜の楽器だと理解できるサウンドが出る。
フォーカスはR50よりもシャープだが、無理矢理拡大したような嫌らしさが消えた。楽器との距離は以前近いが、リスナーとの間の空気の響きが再現され、個々の楽器がクローズアップされたような鳴り方をしたR50に比べ、演奏者が立つステージがしっかりと感じられるようになる。
R100の数倍の価格のカートリッジでもこれほど解像度が高く明快なサウンドの製品は少ないから、そのポテンシャルはあきれるほど高いと断言できる。
しかし、依然として5-50で少し気になったモニター的で客観的な傾向は残っている。演奏者は演奏を行い、リスナーはそれを鑑賞させて頂く。そういうイメージで演奏が緻密に展開する。音楽を聞く心地よさの点で音質は明らかに劣っても、P3の曖昧でいい加減なサウンドが懐かしくなる。
良い意味で日本的な、緻密で理知的なサウンドだが、暖かい血はしっかりと通っている。
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R100YATRA \140,000(税込)
「SUPER ZYXを!」という海外からの要望により開発したモデル。交流音声信号の原点ともいえるグランドラインを明確化するためR100の発電系の一部にグランドポイントを設定。音像の明確な定位感を表現。ドイツ・スイスのオーディオ誌にてベストワン評価。 高出力型あり この製品のご注文はこちら |
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R100の細部をブラッシュアップしたようなサウンド。R100-02の2倍の価格だが、その音質差はR50とR100ほど大きくなく、残念ながら価格差ほどの魅力は感じない。
中低音の厚みが増し、全体的に柔らかさが出てくる。
音が良くなって演奏の細部がより克明に"見える"のだけれど、奏者の頑張りまでが伝わって聞いているのがちょっとしんどい。
R50、R100-02が素晴らしかっただけに、期待が外れてなんだかちょっとがっかりした。 |
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R-1000 ZYX-4D ¥330,000(税別)
ZYX製品の再現する3つの次元の音再生に加えて音像の定位、輪郭を明確に際立たせ、立体音場を具現化。過去の音空間を何時でも、何度でも別の3次元空間に再現できることを目標として"4D"は開発されました。モデル名にブランド名である"ZYX"が付けられた意欲作、ZYX−4Dは最先端ZYXサウンドの結晶です。
6Nクリスタル銅コイルモデルの“X”と5N銀コイルモデル“S”さらに24金コイルモデルの“G”があります。ご注文の際はいずれかを選択してください 高出力型あり この製品のご注文はこちら |
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R100 YATRAと比べて、低音の厚みが増し、音のベールが少し剥がれたように鮮度が向上する。
明らかに音が良くなり、演奏もまた元の巧さを取り戻してくる。
しかし、音質の向上幅は小さく、もはや普通の耳ではR100シリーズとの明確な違いは聞き取れないかもしれない。
少なくとも3号館のテスト環境では、価格差をフォノイコライザーアンプや昇圧トランス、あるいはインシュレーターやボード、ケーブルなどに投資する方が、遥かに明快な音質改善が実現する。
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R-1000 OMEGA
¥380,000(税別)
究極のZYX・MCカートリッジ登場! R100から始まり、R1000-4Dに至る開発過程で得られた、情報、経験を具体化した製品が登場しました。MCカートリッジは物理的な動きを電気信号に変換する装置です。正確な変換機と考えたとき発電の方式が重要となりますが、その発電機を搭載するボディを突き詰める必要性があります。“いかに変調をかけずに音溝の情報をアンプにおくるか”その答えは“OMEGA(オメガ)”として形になりました。
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R1000
ZYX-4Dと比べると中低音の厚みがさらに増し、演奏の温度感も上昇する。
R100で感じられた、演奏のリズム感の鮮やかさ、ノリの良さも戻ってくる。
R1000
ZYX-4Dとの価格差を考えると、お薦めは断然OMEGAだ。
しかし、それでも絶対的な情報量はR100と比べて格段に向上しているとは言い難い。重箱の隅をつつくように、細部を煮詰めてリファインにリファインを重ねて作り出した音のようだ。そこから、作者がこのモデルに最終を意味するOMEGAと名付けた理由はよくわかる。
しかし、
これらを超える革新的なカートリッジを作ろうとすれば、何かを抜本的に変えなければならないだろう。
40万円に達する、その価格を考えると万人にお勧めできるとは言えないが、お金に糸目を付けず完成したものが欲しいとお考えなら、ZXYシリーズ中ではOMEGAが最もお薦めだ。
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総合結果 |
ZYXには、どれを選べばいいか?分からないほど多くの種類がある。今回はその中から代表的な5種類を聞くことができた。
今回テストした5種類の中では、R50
BloomとR100-02がお薦めだ。R-1000 OMEGAも悪くないが、それなりに価格が張る。また、その価格帯なら海外製品にも魅力的なモデルがある。
ZYX製品の全体的な傾向としては、高解像度を良しとするマニア向けな音作りの方向性が感じられる。
解像度の高さ,忠実どの高さから、楽器の音はその種類を言い当てられるほど克明に再現される。しかし、音の向こう側にある「演奏家の魂までの距離」は、音質ほどには近くない。
こちらから、尋ねてゆけば演奏家は答えてくれるが、向こうからはやってこないという印象だ。
テストを終えて、カートリッジを基準としたPHASE
TECK P-3 Alexandriteに戻してみた。
確かに解像度感はやや低いし、音の濁りも増した。しかし、その音は暖かく音楽が弾んで聞こえる。楽器のコンビネーション・バランスの良さ、リズムとメロディーの対比の鮮やかさから、演奏者同士の息のあった様子が伝わってきて思わず頬が緩む。多少音が悪くても、私はフェイズテックのこの暖かいサウンドが好みに合うようだ。
今回の音質比較テストから総合的に判断すると、ZXYの使いこなしはその高性能を生かしながら、音楽性を引き出せるかどうか?そこがポイントとなるように感じられた。 |
2010年2月 清原 裕介 |