atc scm-11 SCM11 elac エラック bs203a 音質評価 比較テスト

ATC SCM-11

ELAC BS203A

音質 比較 テスト


BS203A(ブラック)

BS203A(ホワイト)
専用スタンド
LS-STAND-70HB LS-STAND-70HW

ATC SCM-11

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ELAC BS203A  生産完了

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方式 2Way 密閉型
ツィーター 25mm(ソフトドーム)
ネオジウムマグネット
ATC精密ウェーブガイド
ウーファー 150mm
特殊コートポリエステル織りコーン
最大入力(RMS) 300W
インピーダンス 8(オーム)
感度(出力音圧レベル) 85dB/1W/1m
周波数帯域(−6dB) 56Hz-22KHz(-6dB)
クロスオーバー周波数 2.8KHz
外形寸法(スパイク15mm含む) H380×W211×D250mm
質量(逸品館にて計量) 11.4Kg(1本)
メーカー標準価格 ¥200,000(ペア・税別)
生産完了
方式 2Way バスレフ型
ツィーター JET3(ハイル・ドライバー)
ウーファー 150mm
パルプ、アルミハイブリッドコーン
最大入力(RMS) 80W
インピーダンス 4(オーム)
感度(出力音圧レベル) 86dB/1W/1m
周波数帯域(−6dB) 42Hz-50KHz
クロスオーバー周波数 2,6KHz
外形寸法(スパイク15mm含む) H285×W170×D232mm
質量(逸品館にて計量) 5.2kg(1本)
メーカー標準価格 ¥150,000(ペア・税別)
外観や構造の詳細
SCM-11 BS203A

ネオジウムマグネット採用
ユニットが少し奥まっているのは

ATC独自の精密ウェーブガイドが

採用されているため
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繊細で滑らかな最上級のテキスタイル(ソフトドーム)ツィーター特有の限りなく透明な音色が特徴

強力マグネット(下図参照)を採用した

ポリエステル織りコーンウーファー
パワーが入ります

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弾けるような力強く

ダンピングの良い引き締まった

低音が持ち味

ハイル・ドライバーを採用した
JET3型ツィーター

アルミのカバーが美しい

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中域から高域に掛けての音色の
表現が多彩
ただし、指向性はかなり強い

パルプの表面にアルミをコーティング

した独自のウーファーを採用
センターキャップがないのが特徴
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一見アルミに見えても軽くて強い
クルトミュラー紙を薄いアルミで強化
軽くて早い低音が出る

付属のジャンパープレート

スピーカー端子部

付属のジャンパープレート

テストでは、AET SCRを使用した

自作のジャンパー線を使用

強力マグネット採用の

CLDウーファー

バッフルはツィーターの部分が

ラウンドしている丁寧な作り

補強リブが入ったエンクロージャーは

軽いが強度が高い

低音コントロール用に付属する

バスレフポートを塞ぐためのスポンジ

専用スタンドが設定されていないので底面は平ら

突き板の仕上げは、丁寧で美しい

3カ所にゴム(黄色矢印)、金属脚(赤色矢印)がつく

緑矢印は、別売の専用スタンドに固定するためのねじ穴

音質テスト

使用機材

CDプレーヤー

AIRBOW SA8400/Special

ストレートで歪み感がなく癖をほとんど感じさせない、良い意味で音楽をモニターする方向のサウンド。音質が非常に細やかで明瞭度、透明度が高く、体全体で音楽を感じるというよりも聞こえてくるから音楽を精密に感じ取るというイメージの鳴り方をする。AIRBOWのプレーヤーの中では、少し分析的でオーディオ的傾向がやや強いのが特徴。

アンプ

(1)AIRBOW PM4001/KAI

廉価だがトランジスタープリメインアンプとして、音楽を聴くのにまったく過不足のない標準的な鳴り方をするアンプ。
もし、このアンプで「不満」が感じられるようなら、相当上質なアンプで鳴らさなければ、そのスピーカーを鳴らすのは難しいということになる。
特に電源がプアな低価格トランジスターアンプでは鳴りにくいとされる低能率のATCが上手くならせるかどうか?を試す絶好の試金石になるはず。

(2)AIRBOW TRV−35SE/Dynamite

EL34(45W×2)の真空管アンプ、TRIODE TRV−35SEを徹底的にチューンナップして誕生した、私の理想に近い真空管アンプ。トランジスターアンプに比べてダンピングファクター(ウーファーの制動力)が弱い真空管アンプでATCの低音がきちん鳴るか?低音が遅れたり、膨らまないか?低音の鳴らし易さを探るために選んでみた。
真空管アンプで重いATCのウーファーからどんな音が出るか?興味がある方も多いのでは?

(3)SST AMPZILLA 2000 + AMBROSIA 2000

  

このアンプで鳴らせないスピーカーなら、どんなアンプを持ってしても鳴らないと断言できるほど、私が今最も気に入っているトランジスター方式のセパレートアンプ。最高のアンプを奢って、スピーカーを鳴らし切れた時にどんな音が出るのか?スピーカーの性能の限界を知るために選んでみた。
同じスピーカーを最高級のアンプと、低価格のアンプで鳴らし比べた時にどれくらい音に差が出るのか?そこにも大きな興味がある。

ソフト

TITANIC (オリジナル サウンドトラック / SRCS8529)

試聴ソフトは、久しぶりに引っ張り出した「TITANIC」。お金をかけて作られたソフトらしく、超低域〜超高域まできちんと収録され、高品位で精度の高い録音は、スピーカーの限界を知るにはもってこいだ。それにPMCのテストでさんざん聞いたソフトなので、記憶にあるPMCとの比較もできると考えて選んでいる。

SWING FOR JOY (EGO−WRAPPIN’ / RDR−1024)

最近お気に入りの一枚。30分という短いソフトだが、何度聞いても不思議と聞き飽きない。

参加しているミュージシャンと知り合いなので、一緒に音を聞いたり、ディスカッションをしながら「現場の雰囲気」との違いを探ることができる。音楽的なレベルも高いと思うが、なによりも一生懸命が伝わってくるのがイイ!

ATC SCM−11

前書き

エレクトリ(ATCの輸入代理店)の逸品館担当者から連絡があった。

担当者:ATC SCM−11をやってくれないか?(取り扱って、拡販してくれないかという意味)。
私:昔はATCが好きだったけど、PMCを聞いてから、やっぱりATCよりもPMCという思いが強いしどうしようかなぁ。
担当者:清原さんが嫌いだったら無理にとは言わないので、この話なはなかった事にしておきましょうか?
私:ちょっとまって。PMCも随分値上がりしたし、SCM−11っていくらなの?
担当者:ペア20万円(税別)です。
私:それなら、TB2+も値上がりしたことだし、ダメ元と言うことで一度聞かせてもらって良い?
担当者:分かりました試聴機を送っておきます。

と言うことで、翌日には試聴機が手元に届いたのでした。(いつもながらにエレクトリは、仕事が速い)

早速、SCM−11を開封して聞いてみると、やはり昔の悪いイメージを引きずっている。中高域は、マアマアなのだが、低域がどんより重いのだ。聞いていて、心が弾まないし、気分が重くなる。「やっぱりね」と思って、試聴を打ち切ろうとしたのだが、幸か不幸か忙しくなってしまって、そのまま一日中鳴らす羽目になってしまった。

夕方頃、「なんだか雰囲気が違ってる」ことに気付いた。中高域の透明度が圧倒的に向上している。試しに3号館に設置しているPMC IB1Sと比べても遜色ないくらい質が高く、透明で繊細な高域が出てきている!
それに、あれほど嫌いだった低域の重さも許容範囲内に収まっているではないか!

翌日、エレクトリの担当者に連絡した。
私:送ってくれた試聴機は、どれくらい鳴らしていたの?
担当者:う〜ん、新品かも知れない。
私:ところでSCM−11って、どれくらい前のモデル?
担当者:新製品ですよ〜。
私:・・・。(不勉強で言葉も出ない)

と言うことで、SCM−11の本格導入するための事前テストを徹底的に行うことになった。

今回の接続は、逸品館推奨の「シングルワイヤリングたすき掛け(プラスを高域にマイナスを低域に接続)」

ジャンパープレートは、付属の金色のプレートで十分納得できる音が出ているので、珍しく変更なし(付属のプレートをそのまま使う)と言うことでテストをスタートする。スタンドは、天板の小さいAIRBOW STAND11-Sにちょっと無理して乗せているが、音質的には問題はなさそうだ。

PM4001/KAI

まず初めにPM4001/KAIでSCM-11を鳴らしてみる。ボリュームは、10時でやや大きめの音だ。

TITANIC

1〜3曲目

中高域は澄み切って濁りが無く、空間が広い。QUAD 11Lクラスよりは、明らかに質が高い。繊細でニュートラルな音調は、PMCの美点と非常に良く似ている。PMCのTB2+、GB1、FB1+とほぼ同等の質感が実現しているのではないだろうか。試聴機で最初に気に入った中高域の透明感は間違いではなかった。音の抑揚もきちんと出る。

私がPMCを好んだのは、ATCはスピーカーの周辺に音がまとわりついて、質感は高く音は細やかでも、どこか開放感に欠けたり、音色が暗く感じられたからなのだが、その悪い印象はSCM-11で完全に払拭された。SCM-11は、私の記憶にあるSCM-10やSCM-20よりも明らかに音が軽く、ATC独特の「暗さ」が消えているのが嬉しい。この製品の従来モデルとの一番の違いは、「音が軽い」、「音離れがよい」と言うことだ。しかし、現ラインナップのすべてのATC製品がこのような音で鳴る訳ではないと思うので、その点はご注意願いたい。

12曲目

出だしのズ〜〜ンという音は、さすがにこのサイズの密閉型スピーカーの限界を感じるが、PM4001/KAIでも十分に鳴り切っている印象がある。これも、ウーファーが動きにくかった印象のあるSCM-10/20とは、かなりイメージが違う。

ただし、PMCのような伸びやかで開放的な低音ではなくて、もっと固まり感のある「面で押してくる」ような、圧迫感のある低音は相変わらずだ。嫌な音ではないが、そこにATC特有の癖が感じられる。

ただし、低域の量は少ないが質は非常に高い。質感には、高い評価を与えられる。

SWING FOR JOY

3曲目

一応、スピーカーの基本性能は十分であると理解できたので、スピーカーの“鳴り”の楽しさをテストする目的で、お気に入りの「EGO-WRAPPIN' / SWING FOR JOY」3曲目、「A LOVE SONG」を聞いてみる。ボリュームは、ややしぼって9時くらい。普通より、ほんのちょっとだけ大きめの音だろうか。

パーカションの切れ味は抜群。ウッド・ブロック(木魚のような音)の木質的な響きは、とても心地よい。

ボーカルの声は、透明で美しく、伸びやかだが、ほんの少し細身になるようだ。

ベースの音は、量感こそ少な目だがリズムや音階はバッチリ!位置関係は、やや前寄りだ。

サックスは、丁寧に吹いている感じ。良い楽器を使っている音色の良さや、選ばれた良いリードを使っている感じが良く出ている。

多重録音のハーモニーの重なりも美しい。体で感じて楽しむと言うよりは、鑑賞に堪える美しく完成された音楽というイメージに聞こえる。十分に音楽を楽しめる音だが、どちらかと言えばほんの少しだけ分析的な感じがしなくもない。

私の体は、動き出さなけれど、心の奥底にリズムはハッキリと刻まれる。曲のリズムが歯切れ良く弾むというイメージよりも、レガートやスラーで躍動が繋がっているという感じ。知的なサウンドだ。このまま聞いていたい気持ちはあるが、時間の関係でアンプをTRV-35SE/Dynamiteに変える。音量はほぼ同じにする。

TRV−35SE/Dynamite

TITANIC

1〜3曲目

AIRBOW TRV-35SE/Dynamiteは、そのサブネーム通りに鬱憤を爆発的に吹っ飛ばせるような、底抜けのパワフルさが特徴だ。アンプを変えて一聴した瞬間に、TITANICが圧倒的にドラマティックで泣けるサウンドになっているということを感じる。この表現力の大きさこそ、私が真空管アンプに求めたい音なのだ。

懸念された低域は、PM4001/KAIとほとんど変わらないくらい出ている。真空管アンプでも低音不足は、まったく感じられない。

中域の透明感と力感、厚み感、色彩感は大きく向上し、音楽の流れがダイナミックかつ流麗になる。空気感が出て、体が音で包み込まれるような立体感が実現する。音楽の質感と躍動感が一気に高まったような感じだ。

このアンプの組合せでSCM-11は、アンプの音を正確に変換するトランスデューサーとなる。精度が高く、よどみが無く、まったく癖が感じられない。音楽が本当にドラマティックに鳴る。それもモニター的正確さ、客観性をまったく犠牲にしないままに。まるでPMCのお株を奪うようなサウンドだ。記憶にあるTB2+との違いを探る。中高域の透明感と繊細さは、ややSCM-11に分があるように思う。低域の伸びと開放感は、TB2+がその構成(トランスミッションライン)の有利さで圧倒するはずだ。

KRIPTON KX-3と聞き比べる。中高域の繋がりの良さと滑らかさでは、SCM-11の圧勝だった。バランスが良く、癖がなく、音が深い。逆に低域の歯切れ良さ、素晴らしい切れ味はKX-3がSCM-11を大きく上回る。KX-3は、ウーファーのハイレスポンスな鳴り方が魅力的なスピーカーでSCM-11とは好対照だ。両者の比較は難しく、評価は好みの範疇に入るだろう。KX-3は歯切れ良く、SCM-11はバランスが良い。それが互いの持ち味だ。

12曲目

出だしのズ〜〜ンという音が、深く静かに感じられる。SCM-11の低音が真空管アンプだとトランジスターアンプより劣るのでは?と言う心配は全くの杞憂に過ぎなかったことが確認できた。

そればかりか、逆に真空管アンプのアウトプット・トランスの低域遮断特性とSCM-11の密閉箱の低域遮断特性のカーブ?が上手くマッチしているのか、密閉箱独特の閉鎖的な低域の癖が完全に消えてしまい、低域の量感は足りないものの、すごく自然な減衰で、低域不足をまったく意識しなくなってしまったから不思議だ。

TITANICのような、やや鳴りにくいニュートラルなソフトでさえ、PM4001/KAIに比べて、圧倒的にドラマティックで情緒的に鳴る。映画のワンシーンが一つ一つの曲に合わせて脳裏に浮かんでは消えてゆく。まるでラベルやドビュッシーのように、体の中で音が映像に変化して行くようだ。

これは、もう圧倒的としか言えないドラマの世界にはまってしまう。音の広がりは、プラネタリウムのよう。煌びやかな色彩感は、万華鏡のよう。非の打ち所がないほど素敵な音だ。TRV-35SE/DynamiteとSCM-11の組合せにやられました!という感じ。

ディスクを最後まで聴いていたい気持ちを押して、ソフトを変える。

SWING FOR JOY

3曲目

曲全体のまとまり感が違う。各楽器のパートとボーカルの絡みは絶妙だ。ベースがややゴムまりのように弾む感じで「クン、クン」と押し出してくるが、それはそれで全然悪くない。中高域の透明度、広がり感が素晴らしく、音色が美しい。特に音色の美しさと煌びやかさは、従来のATCではあまり感じられなかった部分だろう。ギターの音色の透明感、色彩感は素晴らしい。

低域の閉鎖感、詰まり感が、ほとんど解消されて(TRV-35SE/Dynamiteとの組合せではほぼ皆無)、中高域、とくに高域の色彩の鮮やかさまで実現してしまって、ペア20万円(税別)は、すごく安いのではないだろうか?この音を価格にするなら、30〜40万円(ペア)でも十分通用すると思う。このお手頃価格?のスピーカーは、従来モデルの倍価格の製品と十分に比較できるだろう。

それにしても、最近(最新)のスピーカーは、コストパフォーマンスが抜群に高い。スピーカーのみならず、近年特に実売20万円強程度までのオーディオ製品の音質向上が著しいと感じられる。それに比べると高級品は、価格ばかり高くなっているような気がするから、50万円を越えるオーディオ製品をお考えの場合でも、このクラスの製品を同時にチェックされることをお薦めする。 

最後の締めに、アンプをAMPZILLA+AMBROSIAに変える。SCM-11の持てる力を解き放つために!

AMPZILLA 2000 + AMBROSIA 2000

TITANIC

1〜3曲目

耳に聞こえる音の細やかさや広がり感という部分では、はっきり言ってTRV-35SE/Dynamiteと価格ほどの差があるとは感じられない。しかし、音の細やかなエッジ部分や「佇まい」的な、聞こえない部分の質感には大差がある。車に例えるなら、速度は同じでも片方は「ただ走っているだけ」、もう片方は「走っている過程にドラマ(質感)がみっちり詰まっている」といった具合に音が違う。なんだか、SCM-11というスピーカーではなく、アンプの批評になってしまっているが、それこそがSCM-11の高い実力のなせる技なのだ。つまり、己の個性を際だたせず、アンプを選ばず、アンプの持っている本来の音を再現する。それがSCM-11というスピーカーなのだ。

目差す方向は、PMCと似ている。

AMPZILLA+AMBROSIAの組合せは、完全にSCM-11を鳴らし切る。ユニットを動かし、即座に止めて次の信号を再現する。その反応が見事だ。一糸乱れぬというか、スピーカーの影響をアンプがまったく受けていないかのようにユニットを駆動する。送られてきた音楽信号のままにユニットを駆動し、電気信号を音声に変換する。アンプもスピーカーも素晴らしい!音の純度は、あきれるほど高い。

もちろん、スピーカーのサイズがあるから低音の量感は、足りないし中高音の質感も、もっと上のスピーカーはあるだろう。しかし、ある種「鳴りきった!」、「鳴らし切れた!」という喜びにおいて、この組合せは、絶対的にいい音だし、なにより、私にとってはとても心地よい音だった!

12曲目

最初のズ〜〜ンという音が、ズシ〜〜ンと言う音に変化する。音量的には小さい(少ない)のだが、かなり低いところまで低音が伸びている。スピーカーの低音限界を超える音をアンプが引き出しているのだろう。しかし、不自然な感じはまったくない。鳴りきっているという、オーディオ的な喜びと、自然に鳴っているという高い音楽的な評価が融合し、素晴らしい世界へと昇華して行くイメージ。ニュートラルで美しい。

ややオーディオ的に過ぎる嫌いはあるかも知れないが、私はこういう「やや無機的」な音は嫌いではない。感情に流されすぎることなく、音楽の持つ論理面を深く引き出している。そんな美しい、磨き込まれたサウンドだ。

SWING FOR JOY

3曲目

ボーカルの艶やかさ、声の質感の美しさ、瑞々しさでは、TRV-35SE/DynamiteがAMPZILLA+AMBROSIAをハッキリと上回る部分がある。ギターもTRV-35SE/Dynamiteの音色が魅力的だ。でも、それは音の「一つ一つのパート(部品)」としての評価に過ぎない。音楽全体のSWING感、まとまり感は、AMPZILLA+AMBROSIAが素晴らしい!さすがにSSTのトップモデルだ。製作者のボンジョルノが人生をつぎ込んで出す音は、やはり違う。完全に完成された芸術作品の域に達していると感じさせる。

このソフトによる評価もSCM-11ではなく、AMPZILLA+AMBROSIAの評価になってしまったのだが、どうしても耳がそっちに行ってしまうのだから仕方がない。SCM-11は、それほど寡黙なスピーカーなのだ。このスピーカーで鳴らすと、時にAMPZILLA+AMBROSIAでさえ饒舌だと感じられなくなるときがある。精度は落ちても、もっと饒舌なTRV-35SE/Dynamiteの音をちょっぴり懐かしく感じることもある。絶対的に真面目な音だ。しかし、真面目を極めたある種の素晴らしさに到達している。日本刀に似ているといったら褒めすぎだろうか?

まとめ

アンプやプレーヤーは饒舌でも、スピーカーは、無口な方が良い。原音忠実再生をことごとく駄目だという私だが、やはり「生に近い感覚の音」を望んでしまう。それは、やはり良い生演奏が記憶に残っているからであるし、良い楽器の生の音を知っているからでもある。ただし、誤解を招かないように付け加えたいのだが、私が聞きたいのは音楽であって断じて音ではない。そう断っても、SCM-11の音の純粋さは魅力的だ。そして、その上に音楽までもきちんと再現してしまうのだからすごい。このスピーカーは、安い。そして、ATCにしてはとても鳴らし易い。もし、文句を付けるとしたら、あまりにも無口であることだけだろう。

音楽の表現力においてSCM-11は、ATC特有の低音の癖を除けば、PMCとの差は非常に小さい。強いて言うなら、PMCのほうが音楽に対して寛容で饒舌かも知れない。しかし、ATCやPMCのように研ぎ澄まされた音の頂点に立っている製品だからこそ、少し無口か?やや饒舌か?というほんの少しの差が互いにハッキリ違う個性を与えることも確かなことだ。確実に言えることがあるとすれば、SCM-11のコストパフォーマンス(価格対性能)は、PMCのTB2+よりも明らかに高いと言うことだけだ。結局、音質は好き嫌いで選ぶしかないのだが、このクラスだからこそ、まずは、財布の中身と相談なのである。 少しでも安い方が、ありがたいことは間違いない。

ELAC BS203A

前書き

引き続いて、ELAC BS203Aをテストする。

ELACは、ATCと同じく逸品館ではこれまで積極的に展開していなかった。それは、音量を絞ったときに細かい音が出なくなったり、ある音量を境に途端に無表情に感じられることがあったからだ。アルミの冷たい外観も好みではなかった。

今回テストするBS203Aは、ウーファーこそ銀色で金属的だが、外観はしっとりと上質なピアノブラック塗装で仕上げられている。それで音が良ければ、私も文句はない。

CDとアンプ、そしてソフトもATC SCM-11と同じ条件でテストを行った。スタンドも同じスタンドを使い、鳴らす場所も同じ。これ以上にイコールコンディションな比較はできないほど、揃った条件でのテストとなった。

PM4001/KAI

TITANIC

1〜3曲目

スタートして圧巻に感じたのは「低域の量感」と「力感」。SCM-11よりもサイズが小さいにもかかわらず、圧倒的に量感があり、吹き出してくるかのような低音が再現される。同じサイズのトールボーイ型スピーカーと聞き違えるほど豊かで、エネルギッシュな低音が出てくることに、まず度肝を抜かれた。

話は変わるが、何の変哲もないこのサイズのバスレフ型2Wayスピーカーからこれだけの低音が出るのなら、トランスミッションラインを採用しているTB2+からは、どれほどの低音が出るのだろう?先ほどSCM-11をPMCのTB2+と聞かずに想像だけで比較したのは、すこし早計だったかも知れない。やはり、SCM-11の密閉型では低音の量感は、少なかったのだ。SCM-11が救われるのは、比較をしなければその少なさに気付かなかったことである。それがある意味SCM-11の旨さであり、同時に密閉型スピーカーの限界なのだろう。

話をBS203Aの評価に戻す。低域は圧倒的な量感を持つBS203Aだが、SCM-11に比べると中高域の繊細さは、明らかに劣っている。もちろん、SCM-11が凄すぎるのだから劣っているという評価は相対的なものであって、絶対的ではないから注意して欲しい。音の精度や、細かい部分のエッジの緩さなどは、SCM-11の比ではないかも知れないけれど、BS203Aの本分はそんなところにはない。何よりもこのスピーカーが奏でる音楽は、開放的でエネルギーに満ちている。

細かい部分まで深く追求し、染み込んでくるようなSCM-11が切れ味の鋭い北風だとすれば、BS203Aは穏やかに、そして時には力強く心を吹き抜ける南風のようだ。聞いていて、心地よい。SCM-11で聞くTITANICが暗い映画館で静かに涙に暮れるそれなら、BS203Aで聞くTITANICは、明るい太陽の下の劇場で演じられているように感じられる。

TITANICという映画の雰囲気には、SCM-11がふさわしいと思えるが、この開放的で明るくエネルギッシュなBS203Aも全然悪くない!SCM-11でやや内向的に傾きかけた心が、晴れ晴れしくなって行くのを感じるほどだ!

12曲目

出だしのズ〜〜ンという音は、PM4001/KAIでさえ空気をきちんと掴んで、部屋の空気を揺るがすような感覚で鳴る。やはり、低域は凄い!

中高域の透明度は、SCM-11には敵わない(くどい!)が、バランスは全然悪くない。不自然な感じもしない。ただ少し、ちょっと緩い?大雑把かな?と感じられる。しかし、ほとんどの場合、私が聞くような「分析的な聴き方」は、されないだろうから一般的に音楽を楽しむという目的でスピーカーを選ばれるなら、SCM-11よりもBS203Aをお薦めしたいと思う。

黒くしっとりした、ピアノフィニッシュの外観の仕上げはQUAD 11Lに似ているが、外観だけでなく音質もQUADに似ている。見かけがよいのと、サイズが少し小さい(それと価格が少し高いこと)を除けば、QUAD 11Lとの差は大きくないかも知れない。ただし、中高域の質感はハイル・ドライバーを搭載しているBS203Aが11Lを上回るのは、たぶん間違いない。

SWING FOR JOY

3曲目

TITANICでは、素晴らしいと思った低域だが、この曲ではベースがすこし引きずってしまう。低域が、ほんの少し重く感じられる。SCM-11よりも低域が弾まない。アンプとの相性か?それともソフトとの相性か?

ウッド・ブロックのアタックが若干弱々しい。ボーカルもちょっと弱々しい。「よっちゃん(ボーカル)」が、か弱い女の子のように感じられる。(本物は、強い方のようです。)

上手くまとまっているが、SWING感がちょっと足りないか?直前にAMPZILLA+AMBROSIAでSCM-11を聞いた強烈なイメージを引きずっているのと、この曲は切れ味良くエネルギッシュに聴きたい!という私自身の希望が大きすぎる事もあるだろうが、この曲に関してはTRV-35SE/Dynamiteに期待したくなった。

TRV−35SE/Dynamite

TITANIC

1〜3曲目

スタートから感じるのは「空間の広さ」と「空気の高い密度感」。多くの場合、トランジスターアンプと真空管アンプで同じスピーカーを鳴らし比べると、真空管アンプの方が楽器の音色が豊富で透明度も高く聞こえるが、BS203Aはそうではない。アンプを換えたことで中高域の質感と透明感は飛躍的に高まったが、色彩の鮮やかさが失われ、音色が単調になったように感じられる。これは、BS203Aが搭載するハイル・ドライバー特有の癖と見て間違いがないだろう。

原因は、ハイル・ドライバーが「薄膜」を振動させて中高音を出しているからだろう。QUADのコンデンサー型スピーカーや初期のINFINITYのEMITのように、面積の広い薄い膜で空気を駆動する場合には、瞬間の圧力が不足して「楽器のアタック」が弱くなってしまいがちなのだ。ギターやバイオリン、ハープなども聞こえないくらいの音量だが、音の出始めのごく初期段階(1/1000〜1/100秒程度?)に過渡特性の非常に激しい衝撃音にも似たアタックを生じている。ハイル・ドライバーは、そのアタックを十分に再現できないため、楽器の音色や色彩感の再現性が悪かったのだろうと想像する。その弱点が真空管アンプとの組合せで増長されたのだろう。(波動ツィーターの併用は、お薦め)

意外であったが、理由を考えると少し納得できる。単なる相性的な問題だが、BS203AとTRV-35SE/Dynamiteの組合せは、それぞれの能力を十分に発揮できない場合があるようだ。出てくる音が絶対的に悪いのではない。十分に楽しめるし、いい音である。しかし、それぞれの持ち味を十分に引き出しあっているとは言いがたい部分が感じられた。

SWING FOR JOY

3曲目

PM4001/KAIで鳴らしたときよりもボーカルは格段にエネルギーがあって良い。

しかし、ベースはSCM-11のような「クン、クン」という感じではなく、「ボン、ボン」という、ややふくらんだ音になってリズムと音階の明瞭さが足りなく感じられる。切れ味が弱く、ベースとしての圧力が足りない。この部分、TITANICではBS203Aに比べて量感が不足したSCM-11と評価がまったく逆転する。バスレフ型、密閉型という違いと共にBS203Aの重量がSCM-11よりもかなり軽い(約半分)ことも影響しているはずだ。

ウッド・ブロック(パーカッション)もアタックが弱く、切れ味が足りない。パーカッションとベースの「やる気!」が足りない。ボーカルも、もっと元気が欲しい。滑らかで、艶やかで、聞きやすいが、SWINGしていない。もちろん、これは非常に高い部分での評価であって誰が一体今聞いている音に不満を言うのか!と言い切れるくらいの音は十分出ているので誤解はしないで欲しい。悪く言うと「緩い」。良く言うと「柔らかい」。そんな評価だ。ただし、すでに柔らかいと感じられるシステムとBS203Aは、組合せない方がよいかも知れない。

AMPZILLA 2000 + AMBROSIA 2000

TITANIC

1〜3曲目

意外にPM4001/KAIに比べて良くならないというのが正直な印象。アンプの持ち味に正確に反応したSCM-11との差はずいぶんと大きい。アタックの切れ味は少し足りない。エコーの透明感、浮遊感もSCM-11の方が良かった気がする。音楽的な表現力もSCM-11が深み、ダイナミックさ共に勝っていたように感じられる。

BS203Aは、PM4001/KAIと最も相性が良かったのだろうか?これでは到底納得できないので、付属のジャンパープレートをAET SCRで作った物に換えて聞く。

少し良くなったが、根本的な部分はあまり変わらないという印象だ。やはり、SCM-11の印象が強烈すぎたせいだろうか。なぜなら、BS203Aを今回の試聴の前にさらりと聞いた時は、もっと好印象だったからだ。

SWING FOR JOY

3曲目

当たり前だが3種類のアンプの中では、一番いい音に聞こえる。低音の膨らみもほぼ問題ないレベルに収まっている。ボーカルは、非常に滑らか。パーカッションは、やはりやや柔らかい。曲全体としてはまとまっているし、SWING感も出てくるが、良い意味でも、悪い意味でも刺々しさや、荒々しさがない。薄皮一枚、薄いベールを纏ったようなこの音は、好みが分かれるかも知れない。よく言えば、とても滑らか。悪く言えば、音の過度が少し丸い。雰囲気は良い。音楽も楽しい。でも、私にはほんの少しスパイスが足りないようだ。

まとめ

HPに製品の評価レポートを載せるのは難しい。悪く評価すると輸入元や製造メーカーにいい顔をされないのは当然だが、それはまだ良い。すでに購入しているお客様の夢を壊す事は、できればしたくないからだ。それは、人の彼女の悪口を言うようなものなのだ。

当然、レポートを書く前に製品は慎重に選んでいる。BS203Aは、その時点でOKの太鼓判を押したスピーカーなのだ。それが、今回のテストで思ったほどではないというのは、何か特別な理由がある。そこで思い当たるのが、直前に聞いたSCM-11の影響だ。あの圧倒的な切れ味を知ってしまったから、BS203Aの高域がややまろやかに感じられるのだろう。そこで、ジャンパー線を換えた後、しばらく聞いていると。耳が慣れてきたのか?高域の切れ味の不足感がほとんど気にならなくなってきた。そしてBS203A本来の持ち味である、明るさや楽しさが伝わってくるようになった。これはこれでよいスピーカーに違いはない。

ただし、注意しなければならないのは「アンプの差」が、ほとんどと言っていいほど感じられなかったことだ。アンプに対し非常に正確に反応するSCM-11に対し、BS203Aは良い意味で、アンプの粗を出さない。悪く言うと、アンプで音を変えられないスピーカーだと言えなくもない。外観は美しく、音は中庸。見た目の趣味性は高いけれど、音は思ったよりもずっと普通。それがBS203Aというスピーカーの個性なのだろうか? (後ほどその原因はすべて明らかになるのだが!

AURA note

 

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(驚くほど多機能なCDレシーバーです。詳細は、ユキムのHPをご覧下さいませ)

 

AURA note 登場

最後に、このスピーカーの推薦システムの一つであろうAURA noteを組み合わせて聞いてみた。 

AURA noteに関しては、付属の電源ケーブルがあまりにも貧弱で、恐ろしく音が悪いのが分かっていたので、最初からAIRBOW TRV-35SE/Dynamiteに採用しているベルデンの電源ケーブルを使ってテストを行った。

SWING FOR JOY

3曲目

TITANICも少々聞き飽きたので、SWING FOR JOYを頭から聞いてみた。

驚くべき事にSA8400/Special+AMPZILLA+AMBROSIAよりも音が良く聞こえる。どうしても足りないと感じられていた「スパイス」の部分が、AURA noteではきちんと出てくる。もちろん、欲を言えばそれでも切れ味と低音の締まり感はちょっと足りないのだが、なぜか見事に「音が決まって!」聞こえるではないか!!

SCM-11+AMPZILLA+AMBROSIAで感じた「鳴りきっている」という印象とは少し違うが、とても良くまとまったバランスの良い音でBS203Aが鳴る。とても27万円の小さなレシーバーで鳴らしているとは思えないほど、この組合せは素晴らしい。

開放的だが、緩かったり、大雑把に感じることはない。低域もやや膨らむがベースの音階、リズム感はきちんと出る。ボーカルも正確に出る。ギターの刻みやパーカッションのリズムも正確だ。事前テストでは、AURA noteで鳴らすよりもSA8400/Special+TRV-35SE/Dynamiteとの組合せが遙かに良かった(メーカーの担当者も舌を巻いていた)はずなのに、今日は立場が逆転している。日時が違うだけでテスト条件はほぼ同じなだけに理由がよくわからないが、それにしてもいい音で鳴っている。SCM-11も良かったが、音楽的な開放感、弾むリズム感という意味では、BS203A+AURA noteの組合せの方が良い。

どう考えてもおかしいし、本当に頭が混乱しそうだ。違うスピーカーが鳴っているのではないかと思えるほどだ。思い当たる唯一のポイントは「音量」?テストの音量は、BS203Aには大きすぎたのかも知れない。STAND11-SもBS203Aには、小さすぎたし、そういうセッティングの問題も絡んでいたのだろうか?

アンプを再びTRV-35SE/Dynamiteに戻してみる!驚くべき事に、いきなりすごい音で鳴る!わかった!謎がすべて解けた。ポイントは、ハイル・ドライバーの指向性 にあったのだ。ジャンパー線を換えて、スピーカーを置き直したとき、スタンドの位置に合わせて「スピーカーをきちんと置き直した」つまり、レーザーセッターセッティングしたように「正確な位置」にスピーカーを設置し直したことが奏功したのだ!それでこんなに音が変わってしまうなんて・・・。絶句!

はっきり言ってPM4001/KAIとAMPZILLA+AMBROSIAを鳴らし比べたときの差を1とすると、セッティングによる音の差はそれよりも遙かに大きく、3〜5くらいあるだろう!ちょっとダメなスピーカーが、いきなり大変身する。さえない彼女が、着替えて化粧したら、いきなり飛びつきたくなるような美人に生まれ変わった!それくらいの大差がある。

この音なら、自信を持ってお薦めできる!SCM-11と比べて、勝るとも劣らない素晴らしいサウンドだ!ヌケが良く、明るく、低域も量感があり、膨らまない。さっきの音は何だったんだろう?無駄な時間を過ごしてしまった。

でも、このレポートは無駄にはならないだろう。スピーカーは、セッティングでまったく別物になる。レーザーセッターで展開した主張をこれほど鮮やかに再確認できたのだから。

AURA note で聞く PMC IB1S + AIRBOW CLT−2/CRYO

TITANIC

締めくくりとしてAURA noteでPMC IB1S+AIRBOW CLT-2/CRYOの組合せを鳴らしてみる。

AURA noteの音は、周波数レンジが広大というわけではないし、解像度や透明度が極端に高いという印象もない。でも、この音は素晴らしくまとまりがよい。あらゆる方向への相対感覚に優れていると言えばよいのだろうか?落ち着いた、大人の質感を持っている。チューニング担当者がまだ30才だと言うことが信じられないほど、まとまりのある音だ。

滑らかで、ハイセンス。ちょっと、よそ行き、大阪弁で言う「ええかっこしい」な所はあるけれど、そんなことよりも音楽の流れ、躍動感の対比が、非常にまとまって、なおかつ正確に再現されることに舌を巻く。滑らかで上質なシルクの質感。限りなく透明に近い白いシルクの質感。私には、そう感じられる。ELAC同様、外観通りのお洒落な音だ。

CANTATE DOMINO (PRCD7762)

AURA noteの音質テストの締めくくりには、CANTATE DOMINOを選んだ。逸品館でも販売しているが、録音がとても自然で音の広がり(各音源の定位、位置関係)が分かりやすい。パイプオルガンと合唱、金管楽器が入っているのでダイナミックレンジ、周波数レンジ共に非常に広い。つまり、音楽再生に必要な要素をこれ一枚聞くことで、ほぼ完全にと判断できるのだ。

1曲目のパイプオルガンの低域は、はっきり言って物足りない。IB1Sならもっと深く量感のある低域が出るからだ。高域の切れ味や明瞭度も物足りない。CLT−2/CRYOなら、もっと芯のあるカチッとした倍音構造が出せるはずだ。

しかし、やはりこんな評価はAURA noteにふさわしくない。その昔、長岡鉄男さんが「40万の法則」と言う、再生周波数レンジのバランス論を展開されていたことがあった。40万という数字を高域の上限再生周波数で割ると低域の下限再生周波数が導かれるというのが、その論拠である。つまり、高域が20KHzまで再生できるなら、低域は40万割る20=20Hzまで出せば、バランスが取れるという考え方である。AURA noteの周波数バランスは、正にこの「40万の法則」を地で行く音なのだ。小型のボディーに納められる電源容量は限られているから、重量級の大型アンプに比べると低域は相対的に不足する。だからこそ、高域はあえて伸ばさず、帯域バランスを整える。それがAURA noteの持ち味だと感じる

CANTATE DOMINOを最後まで聞くとAURA noteの“美点”に気付ける。その“美点”とは、あらゆる方向の「相対感覚」が見事に揃っていることである。高域と低域のバランスのみならず、声の明瞭度と音色、音源の音量と位置関係、そう言った音楽を構成するパーツのベクトルの方向と長さが見事に揃っているのである。CDを一枚聞き終わる頃には、IB1Sが鳴っていると言うことも、そしてAURA noteの存在さえも消えてしまう。そこに現れるのは、サイズが少し小さくなった「コンサート(ライブ)」ステージそのものである。実際の1/2か?1/4か?それは、組み合わせるスピーカーと部屋の大きさで決まるのだが、とにかく非常に精密なミニチュア楽団がリスニングルームに出現する。それは、見事なほどに!そして、何の引っかかりもなく、音楽を楽しめる。音楽に浸りきれる。

このレポートをHPにコンバートしている間中、AURA note + PMC IB1S with AIRBOW CLT−2/CRYOでいろんな音楽を聴いてみた。むしゃぶりつきたくなるほど!劇的な魅力はない。もちろん、たった!27万円ぽっちの多機能小型CDレシーバーでそこまでの音が出てしまったら、オーディオメーカーがつぶれてしまう。AURA noteは、その主張のある外観とは違って、音質に癖がまったくない。なによりも「オーディオ」をまったく感じさせない。音楽を聴くためだけに存在する、究極のプライベート・オーディオ・システム!それを目差したとすれば、AURA noteの目的は、完全に達成されている。

USB端子を利用すれば、PCと接続して音を出せるし、USBメモリーを使えば、CDをメモリーに録音して音を出すこともできる。ラジオも聴ける。「ええかっこしい」とコストの低減にこだわりすぎたため、本体のボタンもリモコンのボタンも直感的に分かり辛く、操作しにくい部分はある。しかし、noteのコンセプトとそれを実現した努力、そして27万円という良心的な価格(LINNなどと比べると遙かに安い!)を好きになれば、欠点すら許せてしまう。

AUDIO-ANALOGUEのENIGMAは、真空管というデバイスを使って、小型でお洒落な音を作り出した。AURA noteは、生産完了したMOS-FETにこだわり、メーカーを口説き落としてそれを再生産させるという「古き物へのこだわり」とUSBを使って、PC/メモリーオーディオを再生できるようにした「古き物へのこだわりを捨てた先進性」を一つのボディーに凝縮させられたことが素晴らしい。デザインもAURA noteに一票を投じたい。ある意味では、現状のHI-ENDオーディオに背を向け、未来を信じ割り切ったからこそできたパッケージであり、この音である。

プライベートで素晴らしい音をお洒落なデザインのオーディオセットで聞きたいとお考えなら、AURA noteがその望みを叶えるだろう。唯一だと断言しても良い。 ただし!電源ケーブルだけは、絶対によい物に交換してから音を出して欲しい。それだけは、絶対に!絶対に!守って欲しいお約束だ。今まで私が知る中で最高のCDレシーバーが誕生した。

惜しむらくは、任天堂 Wiiのように、5才から90才まで簡単に使えるようになっていれば、パーフェクトだったのだが!

(使い勝手を考えた大型リモコンが、後日発売される予定です)

後書き

ATC SCM−11

最初は、SCM-11というスピーカーを評価しようと思っていたのですが、後半は徐々にそれぞれのアンプの評価へとレポートの内容がシフトしてしまって申し訳ございません。言い換えれば、それくらいSCM-11の完成度が高かったのです。スピーカーの存在感、スピーカーの個性を感じさせない、それがSCM-11というスピーカーなのです。

ATCは、鳴らしにくい!という評判を裏切ってSCM-11は、アンプの素性さえよければ、トランジスタープリメインアンプであろうが、セパレートアンプであろうが、真空管アンプであろうが上手く鳴らせます。電気信号を空気の振動に変換する。たったそれだけのことを、黙々とそして正確にやってのける希有なスピーカーです。

しかし、その反面アンプの持ち味を正確無比に描き出す性格故に、アンプの回路に問題があったり(スピーカーによって音がころころ変わるようなアンプとの組合せ)、アンプの音質が無個性であったり(国産アンプにありがちな無機的な音のアンプとの組合せ)、プレーヤーの音がやはり、無機的であったり、いわゆるデジタル的な音であったりすると、SCM-11はその「問題点」をハッキリとあぶり出し、即座に音楽を楽しく聴けなくしてしまうと言う「ナイフエッジ」的な一面も持っています。

密閉型と言うことでエアーダンピング(ウーファーが動くときのエンクロージャ内部の空気のバネ性)による、ウーファーの過剰なダンピング(ウーファーの動きが空気のバネ性で抑えられる)が若干気になりますが、うるさい人でなければ、まず問題にはならないと思います。SCM-11を上手く鳴らすには、このウーファーの動きを上手に制御することが、このスピーカーを上手く鳴らすためのポイントとなるはずです。

価格を考えれば、精度は非常に高く緻密です。PMCよりは安く、B&Wよりは瑞々しく、DYNAUDIOよりは、明るく楽しい。私の考えるSCM-11のポジションはそんな感じです。

ELAC BS203A

ELACもATCと同じく、従来まで逸品館は積極的に展開してこなかったメーカーです。その理由は魅力的な中高域に比べて低域が重く、また音量を絞ると中低域が痩せがちで、高域よりの突っ張ったバランスになるからでした。

しかし、BS203Aは違います。

輸入代理店担当者の、「清原さんはハッキリしているだけで、アンフェアじゃなかったんですね。今回は、気に入っていただけて良かったです」という率直な言葉が、このスピーカーへの私の評価を端的に表現していると思います。 

それほど第一印象は、非常によいスピーカーでした。でしたというのは、今回のテスト結果で私好みでない部分が散見されたからです。しかし、テストの後半でスピーカーセッティングをやり直すとその理由が判明しました。考えていたよりもずっとツィーターの指向性が強かったため、レーザーセッターを使うような、精密なセッティングを施さなければ、このスピーカーは本来の良さを発揮できなかったのです。

きちんとセットして聞き直した結果、音量を絞ると音が痩せるという、過去ELAC全般に私が感じていた問題点は、このモデルでは完全に払拭されていました。と言うよりもBS203Aは、大音量より小音量の方がリニアリティーが高い(音が良く聞こえる)ほどなのです。

滑らかで、艶やかに、音楽を聴きたいと考えるなら、BS203Aを試される事をお薦めします。そのお洒落な外観に違わない、センスの良いお洒落な音を聞かせてくれるでしょう。ただし、セッティングには十分気を使ってください。

追記
このBS203Aのテスト結果を踏まえて考えると過去ELACに対する私の印象が悪かったのは、スピーカーのセッティングが不十分だっただけかも知れないという可能性すら浮上してきました。メーカーや輸入代理店は、こういった大事なことをもっときちんと説明して欲しいと思います。少なくとも、セッティングに非常に敏感であるという説明くらいは、事前にして欲しかったと思います。

AURA note

AURA DESIGNのデビュー作“VA−50”は、生産完了から10年以上を経た今も数千人のユーザーに恵まれているそうです。それほど愛された、廉価輸入アンプが他にあったでしょうか?

AURA noteは、この名器“VA−50”に搭載されすでに生産完了となっていたMOS−FETをメーカーに交渉して再生産するというこだわりを持って製品化されています。それは、AURA社が持つVA−50とそのユーザーへの愛情の証ではないでしょうか?

USBを介してPCと接続し、PCに収録された音源を再生できたり、USBメモリーに直接CDを録音したり、デジタル出力を持たないi−pod以外へのシリコンオーディオとの親和性を考えた現代的で便利な多機能が備わっています。それも、やはり音楽ファンへの愛情の証であると私は思うのです。

話は変わりますが、日本で最も有名なオーディオブランドは“BOSE”だそうです。そして“BOSE”が販売している“WAVE RADIO”それが、一般人にとっての最高のオーディオというアンケート結果を前に、私の気持ちは複雑です。あんなチープで、あんな薄っぺらい音しかしない“WAVE RADIO”で聴く音楽が最高だなんて、絶対に思って欲しくないからです。それは、オーディオ専門店の店主としてではなく、一人の音楽ファンとしての想いです。“WAVE RADIO”で、ディニュ・リパッティーの本当の良さを知ることができるでしょうか?フルトベングラーの真髄は聴こえるのでしょうか?“EGO−WRAPPIN’”が“コブクロ”とどう違うのか?知ることができるのでしょうか?

良い音楽は、いい音で聴かなければなりません。決して高い音でなくても良いのですが、音楽をきちんと鳴らし分けられる音で聴かなければなりません。それが、命がけで音楽を作っている、演奏しているミュージシャンへの最低限の礼儀です。それすら分からないような、音楽を商売としてしか考えていないようなメーカーが作るオーディオで、すぐに消えてしまう流行歌を聴くことを音楽鑑賞だなんて思って欲しくありません。その程度で「音楽を聴くのが趣味」だなんて言って欲しくないのです。

歌謡曲からスタートしてもかまいませんが、すべてのジャンルの音楽をフェアに評価できる耳と心を養って欲しいのです。音楽を聴くことで、人生に触れることが出来ます。良い図書があなたの目を開くように、良い音楽はあなたの心を導きます。オーディオは、そのための寡黙な、同時に饒舌な語り部でなければならないのです。

AURA noteは、その仕事を見事にこなします。このレシーバーが“WAVE RADIO”より沢山売れることがあったとしたら、今の日本の音楽シーンはまったく違う物になるはずです。

オーディオの世界でも人に優しい製品が、エンジニアリングだけを誇示するような製品を打破する日が遠くない未来に訪れることを、心から願っています。 PS3がWiiに敵わなかったように!!!

2007年6月17日 逸品館 代表取締役 清原 裕介

 

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