Cambridge iD100 Hegel HD20 CEC TL-3N 音質 評価 試聴 価格 販売 価格

CEC TL3N 、 Cambridge iD100 、 HEGEL HD20

音質比較テスト

PMC PB1i Signatureの音質テストに続き、ナスペックから届けられたCambridge AudioのiPod ドック iD100とCECの新製品ベルトドライブ方式CDトランスポーター、TL3N Hegel HD20のテストを行いました。

製品の概要

Cambridge iD100 メーカー希望小売価格 オープン(生産完了) お薦めPCオーディオ製品はこちらから

フロントパネルはアルマイト仕上げのアルミ製で高級感があります。(仕上げは、ブラックとシルバーの2色)

出力は、同軸(RCA)光(TOS)のS/PDIFとAES/EBU。
USBはPCで操作するためでデジタル入力は出来ません。

マウスのような形をしたACアダプター、iPod(iPad)をコントロールできるワイヤレスリモコン(多機能で便利です)、ビデオ出力ケーブル(ビデオコンバーターは搭載されていません)。

手前の黒いものは、前面パネルの端子にかぶせてiPodとの隙間を埋めるためのゴムスペーサー。

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Hegel HD20 メーカー希望小売価格 \180,000(生産完了) 逸品館お薦めPCオーディオ製品はこちら

カード型のリモコンが付属します。

右はCamblidge iD100のリモコン。iPodのほぼフルコントロールが可能です。

AIRBOW NA7004/Specialとのサイズの違い

入力は同軸(RCA)デジタル2系統、USB(96kHz/24bit対応)出力はRCA/XLR各1系統。電源ケーブルは着脱可能。

CEC TL3N メーカー希望小売価格 \190,000(税別) 生産完了 CEC製品のご注文はこちらから

TL3Nは、当初のCECと同じ「日本製」に変更となり、仕上げの美しさ(高級感)と動作の安定性が飛躍的に向上しました。リモコンのコードは従来品と同じですので、これまでのリモコンを使えます。

TL3Nでは、従来のベルトドライブ方式のウィークポイントであった、読み込みや選曲の遅さは完全に解消され、ダイレクトドライブと変わらない早さになっています。

新たに外部クロック入力が設けられ、世界で唯一のクロックジェネレーターが使えるベルトドライブCDトランスポーターとなりました。

デジタル出力は、同軸(RCA)光(TOS)のS/PDIF、AES/EBUとCEC独自のスーパーリンク(BNC)が備わっています。

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音質比較テスト

スピーカーにPMC PB1i Signature、アンプはAIRBOW PM15S2/Master、Cambridge iD100の比較テストのためiPodを直接繋げられるAIRBOW NA7004 Specialをつかいました。後半では、DACをHegel HD20に変えて音質をテストしています。

iPod対応ネットワークDAC

AIRBOW'CDトランスポーター・D/Aコンバーター'TL51SP

AIRBOW NA7004/Special

アンプ

AIRBOW PM15S2/Master

スピーカー

PMC PB1i Signature

メーカー希望小売価格 ¥1,100,000(ペア・生産完了)

ウーファー

170mm×2

スコーカー

75mm(ソフトドーム)

ツィーター

27mm SOLONEX

再生帯域

24Hz-25KHz

音圧レベル

87dB

インピーダンス

8オーム

クロスオーバー

300Hz&3.8KHz

寸法(H×W×D)

1084×204×401(mm)

重量

26.0Kg

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試聴ソフト

Come away with me

Norah Jones

CD

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 + 

AIRBOW NA7004/Special + iPod Touch(MP3/320bps)
接続ケーブルは、iPod付属品

この組み合わせでノラ・ジョーンズを一聴して分かる良さは「立体感(音の広がり)」です。一昔前の圧縮音声(音声圧縮ファイル)の音は細かいところが全く出ていない、のっぺりとした立体感に乏しい「良い音」とはほど遠いものでした。しかし、デジタル技術の進歩は著しくNA7004 Special+iPodの音は、オーディオ機器としてきちんと音が作られていない低価格のCDプレーヤーやDVDプレーヤー、HDDレコーダーなどのレベルを遙かに超え、一昔前の高級CDプレーヤーに肉薄するほどの音質でノラ・ジョーンズを再生します。直前のテストではSA15S2/Masterをプレーヤーにこのノラ・ジョーンズを聴きましたが、“それ”と知らされなければ音質がグレードダウンしたのか?にわかには聞き分けられないほど上手くノラ・ジョーンズが鳴ります。

ボーカルはニュアンスに富んで柔らかく、心地よい色艶があります。ギターやピアノは高次倍音こそわずかに曇りますが、高域の減衰が非常に自然(生演奏でも楽器から離れると高域が減衰するが、そういう感覚の自然な減衰感)なので「何かが足りなくなった感じ」を持ちません。

ギターも左手(右手ではない)の操作までよく分かり、ボトルネック奏法で演奏されていることがきちんと伝わります。それぞれの楽器の分離も自然ですし、楽器の質感も高く、何かさらに良い音と比べない限り、全く問題のないいい音でノラ・ジョーンズを聞けました。ソフトを整理するために高価なPCオーディオやネットワークオーディオを購入する前に、iPodの実力を確認して欲しいと思います。きっと、想像を大きく超えていると思います。

 + 

AIRBOW NA7004/Special + iD100/Pod Touch(MP3/320bps)
同軸デジタル接続ケーブルは、AIRBOW MSD-090V

Cambridge iD100にiPod Touchをセットし、同軸デジタル入力でNA7004 Specialに信号を入力してNA7004/SpecialとiPodのダイレクト接続と音質を比較します。接続に使ったデジタルケーブルは、AIRBOW MSD-090Vです。

NA7004 Special+iPodダイレクト接続でも十分な音質だと思ったのですが、iD100を使うことでベールが一枚剥がれたかのように細部がハッキリとし、音の鮮度がぐっと増します。

ノラ・ジョーンズの声は、子音がクッキリとして発音がアメリカンな英語からブリティッシュな英語へと近づきます。声の強弱の変化も数割大きくなり、ウッドベースは腹に響き、ドラムのブラシワークやピアノの音もアクセントが付いて実に良い感じに鳴ります。

この変化は、iD100を使った事によるものなのか?あるいは接続ケーブルをiPod付属の白い華奢なケーブルから、AIRBOW MSD-090Vに変えた事によるものなのか?その比較は、今秋にも発売が予定されているaudioquestのiPod対応高音質USBケーブルの発売を待たねばなりませんが、とにかくiPodを直接NA7004/Specialに繋ぐよりも格段に音が良くなりました。この音ならかなり高級なCDプレーヤーで聴いているのとほとんど互角の表現力です。しかも音源ファイルは、iPod(MP3/320bps)なのです。

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CEC TL3N + AIRBOW NA7004/Special
同軸デジタル接続ケーブルは、AIRBOW MSD-090V

音が出た瞬間にiPodとの“格”の違いを感じます。音の細やかさや解像度など「耳にハッキリと聞こえる部分」に大きな変化はありませんが、声の出始めの瞬間や消え入る部分、楽器のアタックの再現性やリリースの響きなど「細部の質感」に大きな違いが感じられます。

同じ透明な物質でもアクリルとガラスの質感の違い?と申し上げれば伝わるでしょうか?楽器の質をワンランク以上上げたように音そのものの質が改善し、ボーカルもアマチュアがプロになったように、より本格的で聴き応えのある音質に変化します。曲が進むと最も大きく違うのが「低音」だと気づきます。ウッドベースの押し出し感や、空気がお腹をずしんと響かせる感じが全く違います。スピーカーのグレードをワンランク上げたように良質な低音が出てきます。

この音楽的に高度に完成された「大人の雰囲気」はオーディオ専用機、それもベルトドライブという掟破りな方式でしか出せないものでしょう。CECのトランスポーターはひと味違います。TL3Nはそれを確実に聴かせてくれます。

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Antelope Audio OCX + CEC TL3N + AIRBOW NA7004/Special
同軸デジタル接続ケーブルは、AIRBOW MSD-090V クロックケーブルもAIRBOWを使用

私のたっての希望が叶えられ、TL3Nには外部クロック入力が備わりました。原理的に音質を損ねるジッターが少ない(ジッターが少ないのではなく、発生するジッターが音質を損ねにくい)ベルトドライブCDトランスポーターの出力を、さらに高音質クロックジェネレーターの力を借りて極限まで磨き上げたら「どんなに素晴らしい音が出せるだろう?」という私のリクエストにCECが全力で応えてくれました。

TL3Nの外部クロック入力は、44.1kHzのみとなっていますが、CDをデジタル出力する場合に必要な搬送波の周波数は「44.1kHzのみ」なのでこれが正解です。88.2/176.4が入力できないから規格が古い(お粗末)と考えるのは、間違いですからご注意下さい。

外部クロックを接続するとスピーカー比較でのBeethoven Concert Grand(T3G)とPB1iの音質の違いが再現されます。細部がさらに細やかになり、結果として粒子感を全く感じない滑らかさ、生音を聞いているような有機的な感覚(肉感といえばいいのでしょうか?)で音楽を聴くことができます。

ボーカルは天井知らずにのびのびと歌い、楽器はこれ以上ないほど美しく響きます。トランスポーターがよほど素晴らしいのでしょう。これほどグレードの高い音質がNA7004 Specialから得られるのは正直舌を巻かされます。

ベルトドライブ+高音質クロックジェネレーターは、デジタルオーディオの達するべき一つの頂点を聞かせてくれました。この音は完全にレコード(あるいは高音質アナログ)に匹敵すると言っても過言ではありません。素晴らしく透明で、素晴らしく滑らか。そして、空気が見えるほど細やかなサウンドです。

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CEC TL3N + Hegel HD20
同軸デジタル接続ケーブルは、AIRBOW MSD-090V

最後にトランスポーターをTL3N(クロックは外しました)にしたまま、DACをHEGEL HD20に変えて試聴を行いました。Hegel HD20には、2系統のRCA同軸デジタル、1系統のUSB(96kHz/24bit対応)とTOS光デジタル入力と各1系統のRCA/XLRアナログ出力が備わっています。実売価格はAIRBOW NA7004/Specialとほとんど同じですが、AIRBOW NA7004/SpecialがiPodやDLNAに対応するデジタル入力を備え、インターネットチューナを搭載するなど機能面でかなり大きな違いがあります。

音が出たときにNA7004/Specialよりも「低音が力強い」と感じましたが、高音はやや硬く広がりにも欠けた感じがありました。試聴に使ったHD20は「まっさら」だったのでとりあえず48時間エイジングを行ってから、もう一度聴くことにしました。
ノラ・ジョーンズには響きが豊かで色つやが濃く、空気感のような細かい部分まで再現されるAIRBOW NA7004 Specialが魅力的だと感じましたが、HD20の癖のない音もそれはそれで魅力的です。NA7004 Specialと比べると高音がカチリとして、音の芯がしっかりしている感じです。低音も膨らみが少なくタイトです。楽器の音色は美しいですが色彩はややあっさりした傾向、ボーカルも端正ですがやはり少しあっさりとした感じです。直接音と間接音(響き)のバランスは、直接音が強く間接音がやや少ない感じす。このバランスが音楽を端正でさっぱりした方向に聴かせるのでしょう。音の細かさは、NA7004 SpecialがHD20を上回りますが、その差はさほど大きなものではありませんでした。

単機能の使いやすさ、バランスアウトを装備するなど、よりプロっぽい傾向が感じられるHD20ですが、音質も良い意味でモニター的な癖のない音に仕上がっていました。この価格帯には様々な製品が混在しますが、HEGEL HD20は音も十分細かく、透明感も高く、低音もしっかり出ます。音楽表現力はあっさりとしていますが、その薄い味付け不愉快なものではなく、逆に好ましいと思えるものでした。このクラスのUSB入力を装備するDACをお考えならHegel HD20は要チェックです。

総合評価

NA7004 Specialは搭載するインバーター電源のノイズの処理などに苦労し、完成するまでにかなりの時間がかかりましたが、今回のテストでこの価格帯で平均以上の音質を持つ多機能ネットワーク対応DACに仕上がっていることが確認できました。中低音に厚みがあり、響きが豊かで音に艶があるリラックスできる音質は、AIRBOWらしい高い音楽性を発揮します。iPodやPCと繋いでCDプレーヤーのような立体的で滑らかな音が出せるのも特徴です。

HEGEL HD20はNA7004 Specialに比べるとややさっぱりとして音数もやや少なく感じますが、その整理された端正な感じ、余計な音や癖のないモニター的なサウンドには、ある種の「磨かれた美しさ」が感じられます。HD20の特徴である「低ジッターのUSB入力」の音質を確認するため、NA7004 SpecialとHD20にPCを繋いでUSB入力の音質を比較しました。最初、USBケーブルにaudioquest forestを使い、NA7004/SpecialとPCを繋いだのですが、音源が非圧縮のWAVEにも関わらず、「iPod(MP3/320bps)ダイレクト接続よりも音が悪かった!」のでケーブルをaudioquest carbonに変えると、ようやくiPod(MP3/320bps)細かく、雰囲気の良い音が出ました。しかし、その差はほんのわずかです。DACをNA7004/SpecialからHD20に変えると音がさらに細かくなり、ノイズ感も少なくなって「音質の改善」を実感できたことから、USB入力ではHD20がNA7004 Specialを上回りることがわかりました。

最後にトランスポーターをiD100+iPod(MP3/320bps)に戻して同軸デジタル接続でノラ・ジョーンズを聴きましたが、PC(WAVE)との音質差はかなり小さく、最近の経験からある低度さが小さいことを予想していたとは言え、あまりの差のなさにかなり驚きました。PC+WAVEは音こそ細かいのですが広がりや潤いが少なく、音の響きのふくよかさ、ニュアンスの柔らかさなどiPod+MP3/320bpsの方が好ましいと感じられる部分さえありました。

PC/ネットワーク・オーディオの分野は日進月歩です。最近のテスで感じるのは「PCを使うことによる、かなり大幅な音質劣化が無視できない」ことです。こんなに小さく簡単で、しかも音源がMP3/320bpsでしかないiPodが本格的な最新ノートパソコンから出力するWAVE(非圧縮)ファイルとほぼ同等の音を出せるのは、PCが最高音質に達していない(音質を劣化させている)としか考えられません。

PCオーディオが再生ソフトや本体の種類で音質が大きく変わるのは、「PCが不完全」だからです。まるで時代の寵児のようにもてはやされる、PCオーディオを過信せず従来のピュアオーディオ機器の音質を正しく再評価すべきだと思いました。

ピュアオーディオ機器の音がよい!この思いを実感させてくれたのが、CEC TL3Nです。スピンドルとピックアップを「ベルト(遊びがある)」で駆動し、音を出すのはデジタルの常識からはかけ離れています。正常に音が出ることが不思議なくらいローテクですが、あえてそれを採用したTL3Nは過去のこの価格帯のどんなCDトランスポーターよりも音が良い製品だと確信します。アナログ的な雰囲気の良さ、ストレスのない音の広がりとベルトドライブ方式(アナログ・レコードプレーヤーも同様な傾向があります)ならではの滑らかで体を包み込むような豊かな立体感、空気感。そのどれをとってもTL3Nでしか醸し出せない、CECのベルトドライブでしか醸し出せない世界があります。さらに適切な音の良いクロックジェネレーターを追加する事で、その音はさらに「アナログレコード」に近づきます。

今回の試聴を音の良い順に書き上げましょう。文句なしに良かったのがTL3N+OCX/NA7004 Special(HD20)、TL3N/NA7004 Special(HD20)の組み合わせです。

次がPC(WAVE.USB)/HD20、iD100+iPod(MP3/320bps)/NA7004 Specialですが、この差はかなり近く楽曲や好みによっては逆転する可能性があります。個人的には、PC(WAVE.USB)/NA7004 SpecialよりもiPod(MP3/320bps)/NA7004 Specialの方が良かったと思いますが、これも好みで逆転するかも知れません。iPod(MP3/320bps)/HD20はNA7004 Specialに明らかに及びませんでした。

PCはCD初期のデジタルの悪癖を思い出させます。PCから出力される音は、かなり工夫しなければ硬くノイジーです。PCには発展途上の面白さがあり触っていると時間を忘れますが、低価格の製品との組み合わせで高音質を望むのはまだ難しいように感じました。

AIRBOW NA7004/Specialはさておき、今回のテストで注目するのはCamblidge id100+iPod(MP3/320bps)の音の良さとTL3Nの素晴らしさです。最新のデジタルの粋を集めたiPodとベルトドライブという超アナログ的技術から生み出されたCDトランスポーターの音の双方が優れていたのは、それぞれが「オーディオ用途専用に作り込まれたマシン」だからでしょう。iPodはデジタル臭さを見事に感じさせず、実に良くできたバランスで音楽を過不足なく鳴らします。TL3Nは年月を経て磨き込まれた銘酒のように滑らかで芳醇なサウンドを聴かせてくれます。暖かく血が通った、心が熱くなる音で音楽を聴きたいとお考えなら、お薦めはiPodとTL3Nです。

2011年 4月 逸品館代表 清原 裕介 

 

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