+
AIRBOW
NA7004/Special + iPod Touch(MP3/320bps)
接続ケーブルは、iPod付属品
この組み合わせでノラ・ジョーンズを一聴して分かる良さは「立体感(音の広がり)」です。一昔前の圧縮音声(音声圧縮ファイル)の音は細かいところが全く出ていない、のっぺりとした立体感に乏しい「良い音」とはほど遠いものでした。しかし、デジタル技術の進歩は著しくNA7004
Special+iPodの音は、オーディオ機器としてきちんと音が作られていない低価格のCDプレーヤーやDVDプレーヤー、HDDレコーダーなどのレベルを遙かに超え、一昔前の高級CDプレーヤーに肉薄するほどの音質でノラ・ジョーンズを再生します。直前のテストではSA15S2/Masterをプレーヤーにこのノラ・ジョーンズを聴きましたが、“それ”と知らされなければ音質がグレードダウンしたのか?にわかには聞き分けられないほど上手くノラ・ジョーンズが鳴ります。
ボーカルはニュアンスに富んで柔らかく、心地よい色艶があります。ギターやピアノは高次倍音こそわずかに曇りますが、高域の減衰が非常に自然(生演奏でも楽器から離れると高域が減衰するが、そういう感覚の自然な減衰感)なので「何かが足りなくなった感じ」を持ちません。
ギターも左手(右手ではない)の操作までよく分かり、ボトルネック奏法で演奏されていることがきちんと伝わります。それぞれの楽器の分離も自然ですし、楽器の質感も高く、何かさらに良い音と比べない限り、全く問題のないいい音でノラ・ジョーンズを聞けました。ソフトを整理するために高価なPCオーディオやネットワークオーディオを購入する前に、iPodの実力を確認して欲しいと思います。きっと、想像を大きく超えていると思います。
+
AIRBOW
NA7004/Special + iD100/Pod Touch(MP3/320bps)
同軸デジタル接続ケーブルは、AIRBOW
MSD-090V
Cambridge
iD100にiPod Touchをセットし、同軸デジタル入力でNA7004
Specialに信号を入力してNA7004/SpecialとiPodのダイレクト接続と音質を比較します。接続に使ったデジタルケーブルは、AIRBOW
MSD-090Vです。
NA7004
Special+iPodダイレクト接続でも十分な音質だと思ったのですが、iD100を使うことでベールが一枚剥がれたかのように細部がハッキリとし、音の鮮度がぐっと増します。
ノラ・ジョーンズの声は、子音がクッキリとして発音がアメリカンな英語からブリティッシュな英語へと近づきます。声の強弱の変化も数割大きくなり、ウッドベースは腹に響き、ドラムのブラシワークやピアノの音もアクセントが付いて実に良い感じに鳴ります。
この変化は、iD100を使った事によるものなのか?あるいは接続ケーブルをiPod付属の白い華奢なケーブルから、AIRBOW
MSD-090Vに変えた事によるものなのか?その比較は、今秋にも発売が予定されているaudioquestのiPod対応高音質USBケーブルの発売を待たねばなりませんが、とにかくiPodを直接NA7004/Specialに繋ぐよりも格段に音が良くなりました。この音ならかなり高級なCDプレーヤーで聴いているのとほとんど互角の表現力です。しかも音源ファイルは、iPod(MP3/320bps)なのです。
+
CEC TL3N + AIRBOW
NA7004/Special
同軸デジタル接続ケーブルは、AIRBOW
MSD-090V
音が出た瞬間にiPodとの“格”の違いを感じます。音の細やかさや解像度など「耳にハッキリと聞こえる部分」に大きな変化はありませんが、声の出始めの瞬間や消え入る部分、楽器のアタックの再現性やリリースの響きなど「細部の質感」に大きな違いが感じられます。
同じ透明な物質でもアクリルとガラスの質感の違い?と申し上げれば伝わるでしょうか?楽器の質をワンランク以上上げたように音そのものの質が改善し、ボーカルもアマチュアがプロになったように、より本格的で聴き応えのある音質に変化します。曲が進むと最も大きく違うのが「低音」だと気づきます。ウッドベースの押し出し感や、空気がお腹をずしんと響かせる感じが全く違います。スピーカーのグレードをワンランク上げたように良質な低音が出てきます。
この音楽的に高度に完成された「大人の雰囲気」はオーディオ専用機、それもベルトドライブという掟破りな方式でしか出せないものでしょう。CECのトランスポーターはひと味違います。TL3Nはそれを確実に聴かせてくれます。
+ +
Antelope
Audio OCX + CEC TL3N + AIRBOW NA7004/Special
同軸デジタル接続ケーブルは、AIRBOW
MSD-090V クロックケーブルもAIRBOWを使用
私のたっての希望が叶えられ、TL3Nには外部クロック入力が備わりました。原理的に音質を損ねるジッターが少ない(ジッターが少ないのではなく、発生するジッターが音質を損ねにくい)ベルトドライブCDトランスポーターの出力を、さらに高音質クロックジェネレーターの力を借りて極限まで磨き上げたら「どんなに素晴らしい音が出せるだろう?」という私のリクエストにCECが全力で応えてくれました。
TL3Nの外部クロック入力は、44.1kHzのみとなっていますが、CDをデジタル出力する場合に必要な搬送波の周波数は「44.1kHzのみ」なのでこれが正解です。88.2/176.4が入力できないから規格が古い(お粗末)と考えるのは、間違いですからご注意下さい。
外部クロックを接続するとスピーカー比較でのBeethoven
Concert Grand(T3G)とPB1iの音質の違いが再現されます。細部がさらに細やかになり、結果として粒子感を全く感じない滑らかさ、生音を聞いているような有機的な感覚(肉感といえばいいのでしょうか?)で音楽を聴くことができます。
ボーカルは天井知らずにのびのびと歌い、楽器はこれ以上ないほど美しく響きます。トランスポーターがよほど素晴らしいのでしょう。これほどグレードの高い音質がNA7004
Specialから得られるのは正直舌を巻かされます。
ベルトドライブ+高音質クロックジェネレーターは、デジタルオーディオの達するべき一つの頂点を聞かせてくれました。この音は完全にレコード(あるいは高音質アナログ)に匹敵すると言っても過言ではありません。素晴らしく透明で、素晴らしく滑らか。そして、空気が見えるほど細やかなサウンドです。
+
CEC TL3N + Hegel
HD20
同軸デジタル接続ケーブルは、AIRBOW
MSD-090V
最後にトランスポーターをTL3N(クロックは外しました)にしたまま、DACをHEGEL
HD20に変えて試聴を行いました。Hegel HD20には、2系統のRCA同軸デジタル、1系統のUSB(96kHz/24bit対応)とTOS光デジタル入力と各1系統のRCA/XLRアナログ出力が備わっています。実売価格はAIRBOW
NA7004/Specialとほとんど同じですが、AIRBOW NA7004/SpecialがiPodやDLNAに対応するデジタル入力を備え、インターネットチューナを搭載するなど機能面でかなり大きな違いがあります。
音が出たときにNA7004/Specialよりも「低音が力強い」と感じましたが、高音はやや硬く広がりにも欠けた感じがありました。試聴に使ったHD20は「まっさら」だったのでとりあえず48時間エイジングを行ってから、もう一度聴くことにしました。
ノラ・ジョーンズには響きが豊かで色つやが濃く、空気感のような細かい部分まで再現されるAIRBOW
NA7004 Specialが魅力的だと感じましたが、HD20の癖のない音もそれはそれで魅力的です。NA7004
Specialと比べると高音がカチリとして、音の芯がしっかりしている感じです。低音も膨らみが少なくタイトです。楽器の音色は美しいですが色彩はややあっさりした傾向、ボーカルも端正ですがやはり少しあっさりとした感じです。直接音と間接音(響き)のバランスは、直接音が強く間接音がやや少ない感じす。このバランスが音楽を端正でさっぱりした方向に聴かせるのでしょう。音の細かさは、NA7004
SpecialがHD20を上回りますが、その差はさほど大きなものではありませんでした。
単機能の使いやすさ、バランスアウトを装備するなど、よりプロっぽい傾向が感じられるHD20ですが、音質も良い意味でモニター的な癖のない音に仕上がっていました。この価格帯には様々な製品が混在しますが、HEGEL
HD20は音も十分細かく、透明感も高く、低音もしっかり出ます。音楽表現力はあっさりとしていますが、その薄い味付け不愉快なものではなく、逆に好ましいと思えるものでした。このクラスのUSB入力を装備するDACをお考えならHegel
HD20は要チェックです。