・スクランブル音質テスト
CX-A5000の能力をさらに詳しく探るため、パワーアンプをYAMAHA
MX-A5000からAIRBOW RMB-1506 Specialに変えてみました。
AIRBOW
SSS-2013
Ethernet(LAN)でAIRBOW
SSS-2013に接続し、収録した楽曲を聴いてみました。
Original
Sound Track "TITANIC" 1曲目「Never An Absolution」 / リッピング形式:WAV(44.1kHz/16bit)
モード:疑似サラウンド(Scene1)
パワーアンプをYAMAHA RX-A5000からAIRBOW RMB-1506
Specialに変えると、高域の伸びやかさ、色彩の美しさ、透明感がさらに向上しました。
AIRBOWのカスタムアンプらしい色彩感の豊富な艶を感じる音でRMB-1506
Specialは、タイタニックをさらに深く鳴らします。きめ細やかさやデリケートな表現力が向上し、目をつむっていても映画のワンシーン・ワンシーンが走馬燈のように脳裏に浮かびます。
最大出力こそ50Wに過ぎませんが、低音の量感は確実に向上し、ず〜〜〜んという音の深さと低さがより鮮明になります。海の底からの響きが立ち上ってくる、タイタニックのサウンドトラックらしいリアリティーをより強く感じます。
楽器の音もより明確です。使われている楽器の種類や銘柄までも感じ取れるような「楽器から出ている音がそのまま」に聞こえます。ピアニシモからフォルテシモへの変化の鮮やかさにも曇りがなく、スパッと音色が鮮やかに切り替わるのは聞いてきて気持ちが良いです。
プリアンプをYAMAHA
CX-A5000から変えず、パワーアンプだけをAIRBOW RMB-1506
Specialに変えるだけで、出てくる音はほぼ完全にピュアオーディオのそれになりました。私はシンプルな回路に純度の高いパーツを組み合わせた製品がだけが持つピュアな音、デリケートでニュアンスが深いこの音の方が好きですが、「クオリティー」の点でも誰が聞いても違いが分かるくらいの差は十分にあると思います。
音が磨かれ、感動がより鮮やかに伝わりました。
次にパワーアンプをYAMAHA
MX-A5000に戻し、AIRBOW SR6008
Specialをプリアンプとして使ってみました。
※SR6008
SpecialのプリアウトにMX-A5000をRCA(アンバランス)で接続しています。
AIRBOW
UD7007 Specialと接続 (audioquest HDMI diamond使用)
最初にCX-A5000とMX-A5000をYAMAHAが試聴用に準備していたバランスケーブルで接続して音質をチェックしました。
Carpenters
Greatest Hits 10曲目「Jambalaya」 / CDソフト
モード:
ステレオ・ダイレクト
カーペンターズのCDを聞く度に、このソフトのカレンの声を暗く、重くならないように鳴らす事が難しいと感じます。しかし、A5000
SETで気になっていた中高域の曇り感が消えました。カレンの声も少し太くなり、元気が出てほっとしました。
高域はAIRBOWカスタムアンプと聞いて感じるほどは伸びていませんが、YAMAHA
CX-A5000で聞いた時と比べ濁りが解消し透明感が向上しています。中域の躍動感や楽器それぞれの音色の違い、人間の声色の違いはSR6008
SpecialがCX-A5000よりも鮮やで分離感も上々です。霧が晴れたように音場の見通しが良くなると共に、中域が暖かくなって人間らしい血の通った音に変わりました。
SR6008
Specialは一体型のAVアンプですがそのプリアウトの音質も素晴らしく、YAMAHA
MX-A5000との組み合わせでCX-A5000よりもさらにきめ細かく、バランスの良い音質でカーペンターズを楽しく、情緒豊かに鳴らしてくれました。
モード:疑似サラウンド(dts)
疑似サラウンドを使うと、音がひときわ大きく広がります。しかし、YAMAHA
CX-A5000が搭載するDSPの緻密で自然な音を聞いた後では、SR6008
Specialのエコーがやや人工的に感じられることも事実です。
AIRBOW単体のテストでは、その「不自然さ」にはほとんど気がつかなかったので、SR6008
Specialを責めるよりはYAMAHA CX-A5000を褒めるべきだと思います。やはりYAMAHAはDSPが優秀です。
SR6008/SP+PWで聞く2chとYAMAHAで聞くDSPのサウンドは結構拮抗していると思います。楽しさや楽音の色鮮やかさではAIRBOWが、緻密さや密度感ではYAMAHAが勝るように思います。
Original
Sound Track "TITANIC" 1曲目「Never An Absolution」 / CD/SACD/SACD
Multi(3層録音)
レイヤー:SACDマルチ(DSD
Surround)
ディスクをSACDに変えても高域の透明感、伸びやかさでSR6008
Special(プリアウト)がYAMAHA CX-A5000を上回ります。
高域の頭打ちをまったく感じさせずどこまでもクリアに伸びて行く高域と、十分な量感と力感を伴う低域。そして、低音が高音よりもほんの僅かに遅れることで、それぞれの存在感が増す印象です。
YAMAHA
A5000 SETを高画質TVに例えるなら、AIRBOWのサウンドはフィルム映画です。絶対的な濃さでなく、淡さの質感やグラデーションの高さを感じさせるピュアオーディオ高級機を彷彿とさせる、より本格的でマニアックな音に仕上がっています。
YAMAHAは良くできています。以前ならAIRBOWカスタムモデルとメーカー製品の間には「絶対的な音質差」が感じられましたが、それはすでに過去のものとなり、少なくとも表面的な音質の範囲でAIRBOW
SR6008 SpecialとCX-A5000に大差はありません。
しかし、フィルムとデジタル映像の違いを求めるのであれば、本物の質感や表現の深さを音質に求めるなら、やはりAIRBOWしかないと感じるのも事実です。
どちらを選ぶか?好みだと思いますが、映画館で上映されるフィルム映像を見る良さがAIRBOWに感じられました。
試聴後感想
高価なセパレートAVアンプA5000/SETがRX-A3030に勝るのは中低域の厚みと力感ですが中高域の緻密さや音の細かさに大差があるわけではなく、音質の違いはそれほど明確でないかも知れません。また全体のバランスでは一体型のRX-A3030にA5000/SETを上回る部分を感じます。コストパフォーマンス、スペースファクターを考えるなら、RX-A3030が間違いのない選択です。
しかし、DSPの精度の高さ、ハイレゾ(BD)DSD(SACD)のようなCDよりも上位のフォーマットを入力するとA5000/SETはその真価を発揮します。CDとSACDの音の違いは結構ありますし、またDSPを使ったときの音質改善幅も非常に大きく、これらの点ではRX-A3030を確実に凌ぎます。
今回の音質テストの結果を踏まえて考えると、通常のご家庭で5.1-7.1chの範囲でサラウンドを楽しまれるならば、一体型のRX-A3030が最適で、最大11.2chまでスピーカーの数を積極的に増やすことをお考えならば、セパレートのA5000がお薦めと言うことになります。
YAMAHA
MX-A5000とAIRBOW RMB-1506 Specialの比較では、文句なく後者が高音質でした。MX-A5000がサラウンド用パワーアンプという音質の範囲を出ないのに対し、RMB-1506
Specialは明らかにピュアオーディオの音質に仕上がっています。パワーが少ないにもかかわらず、低域の力感もRMB-1506が上回ります。さらに、中高域から高域にかけての滑らかな質感、豊富な色彩感ではRMB-1506
SpecialがMX-A5000を圧倒しました。ただし、MX-A5000が11ch、RMB-1506
Special
が6ch(つまりパワーアンプの数が半分)という理由も大きいと思います。あえて、11chまで必要がなければ10万円を切る価格で販売している「Rotel RMB-1506(AIRBOW
RMB-1506のベースモデル)も相当良くできたアンプなので価格を抑え音質をキープするためそちらを使うという手もあります。CX-A5000を5.1chもしくは6.1chの範囲でお使いの予定であれば、パワーアンプにはMX-A5000よりもチャンネル数の少ないRotelやAIRBOW
RMB-1506 Specialが有利なようです。価格も安く、MX-A5000以上の音質が得られるはずです。
YAMAHA
CX-A5000とAIRBOWとSR6008 Specialの「プリアウト音質」の比較では、パワーアンプほど圧倒的・決定的な大差はないと言う結果になりました。音の緻密さや密度感ではCX-A5000がSR6008
Specialを上回りますが、それはデジタル回路にAIRBOW
SR6008 Specialよりも高性能(高価)な素子が使われているからでしょう。
それに対し、出てくる音の伸びやかさ、自然な広がり感、ニュアンスの深さやデリケートさではSR6008
SpecialがCX-A5000を凌駕します。それは、SR6008 Specialのベースモデル、SR6008にmarantzが採用しているピュアオーディオ機器と等価のプリアウト回路HDAMのパーツをSR6008
Specialは、すべてピュアオーディオグレードの高音質品に交換し、ピュアオーディオと同等の音質感をAVアンプで実現しているからでしょう。
アナログ回路の良さで勝るSR6008
Specialに対しデジタル回路の良さで勝るCX-A5000という感じです。出てくる音もAIRBOW=フィルム的、YAMAHA=デジカメ的と製品が持つ特長をそのまま反映していました。
フィルム映像的な質感を音に求められるのであればAIRBOW。デジタル映像的なわかりやすさを音に求められるのであればYAMAHAという選択で正しいと思います。
AIRBOW
SR6008 Special(内蔵アンプを使って音質をチェック)
AIRBOW
UD7007 Specialと接続 (audioquest HDMI diamond使用)
Carpenters
Greatest Hits 10曲目「Jambalaya」 / CDソフト
低音の量感や力感は及びませんが、中高域の明瞭度、濁りの少なさ、カレンの声の元気の良さでSR6008
SpecialがCX/MX-A5000/SETを上回ります。
しかし、その低音も量感や押し出しこそA5000/SETには及びませんが、リズムカルに弾む感じはこちらの方が上回ります。
フルートの音色も切れ味が良く、音楽全体が楽しく躍動します。
密度感やレンジ感も思ったほど低下せず、リッチな中域を中心に上下がやや下がった「かまぼこ形のバランス」で音が見事にまとまっています。
スピーカーからよほど離れなければ高音も低音もシッカリ聞こえますから、15畳を大きく超えるような広い部屋でなければAVアンプはSR6008
SpecialやRX-A3030のような一体型で十分な音質が得られると思います。今回テストした中で、SR6008
Specialの単体使用が音楽を最も安心して楽しめました。
Original
Sound Track "TITANIC" 1曲目「Never An Absolution」 / CD/SACD/SACD
Multi(3層録音)
レイヤー:SACDマルチ(DSD
Surround)
音を耳で聞くのではなく、音が作るイメージが身体の中に浸透するような鳴り方をします。SR6008
Specialでタイタニックを聞いていると、映画のワンシーンワンシーンが脳裏に鮮やかに蘇ります。これ以上何が必要なのか?そういう完成された良さを音に感じます。
確かに絶対的な音質を云々するのであれば、内蔵アンプと外付けパワーアンプには確実な差があります。しかし、音楽に浸る、映画に没頭するという意味であれば、両者にはそれほど大きな差はありません。そればかりか、音の整った感じや音場に溶け込める一体感では、CDと同じくSACDマルチを聞いても、SR6008
Special単体での試聴がベストでした(※SR6008
SpecialとRMB-1506 Specialの組み合わせなら、SR6008
Specialの単体音質を凌ぎますが)。
感動を伝えるう能力では、SR6008
Special単体使用が今回試聴した中で最良です。
音が良くなれば、すなわち感動が深まるというわけではないことをAVアンプでも再認識する結果となりました。音はバランスです。
試聴後感想
CX/MX-A5000/SETとRX-A3030との比較でも感じましたが、AVアンプをわざわざセパレート(2台/筐体)にするメリットはそれほど大きくないと思います。確かにAVプリアンプは、パワーアンプと分離することで大幅に音質がアップします。しかし、数十万円程度で売られている多チャンネルのパワーアンプはやはりコスト面や一つの筐体に多数のパワーアンプを収納しなければならない限界か、プリアンプ部と分離しても内蔵アンプとさほど大きな差が感じられないからです。
MX-A5000も30万円÷11ch=27,000円/chと考えると、驚くべきコストパフォーマンスを感じさせるアンプです。しかし、私達オーディオマニアが聞いているパワーアンプは、最低でも10万円オーバー/chのコストで作られています。CX-A5000が一体型AVアンプに備わる「プリアウト」を大きく超える音質を実現していることを考えるならば、AVセパレートアンプを高音質で楽しむには、可能なら高音質ステレオパワーアンプを使うべきでしょう。しかし、すべてを高音質パワーアンプで購おうとすれば予算や置き場所にかなりの余裕が必要になります。それなら、MX-A5000をステレオパワーアンプ×2、もしくはモノラルアンプ3台を組み合わせて、フロントとセンターは高音質パワーアンプで、その他のチャンネルはMX-A5000という使い方が理にかなっていると思います。また、そのような発展した使い方をして頂くことで、CX-A5000の高音質がぐっと生きると思います。