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Wharfedale ワーフェデール Diamond ダイヤモンド 11 シリーズ スピーカー 音質 比較 評価 レビュー 試聴

 AIR TIGHT(A&M) ATM-300 Anniversary TA-300B/WE-300B音質テスト

  

2016年8月、大阪高槻市に所在する「A&Mエイ・アンド・エム」から、AIR TIGHT(エアータイト)ブランド30周年記念限定モデル「ATM-300 Anniversary 880,000円(真空管込み・税別)」が発売されました。

このモデルは、WE300B(ウェスタン エレクトリック 300B)を搭載するシングル増幅方式パワーアンプ「ATM-300」の後継モデルで、出力管に国産・高槻電器工業製の国産真空管「TA-300B」を採用し、この真空管の性能を活かすため、300Bのプレート(トランスの1次側)からのフィードバックによる帰還構成を採用したことが最大の特徴となっています。

また最適化された新規電源トランスをはじめ、チョークコイルを新調し、基板サブシャーシには肉厚の純銅レザーカットの採用に食加え、信号回路の要となる結合コンデンサーにはオイルコンデンサーを使うなど、徹底した高音質化が計られています。

 

 

AIR TIGHT (エアタイト) ATM-300 Anniversary メーカー希望小売 880,000円(税別) (メーカーホームページ

ランニングコスト

・出力管 TA-300B 165,000円(ペア・税別) 推奨交換:10,000時間

・整流管 5U4G 6,000円(AIR TIGHT純正球・税別) 推奨交換:2,500-3,500時間

・ミニチュア管 12AU7×2、12BH7×2 推奨交換:5,000時間

AIR TIGHT(エアタイト) 製品のご購入お問い合わせは、経験豊富な逸品館におまかせください。

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・高槻電気工業 TA-300B

TA-300Bは、2010年に35年ぶりの国産真空管としてデビューしました。選び抜かれた素材、厳格な品質管理、国内の自社工場でひとつひとつ丁寧に組み上げられる、国産メーカーだから出来る究極の真空管クオリティを実現します。

・WE300Bとの比較

TA-300Bには、オリジナルのWE-300Bには施されていない「金メッキ」が脚に使われるなど、そもそも「オリジナルの音質」を精密に再現しようとする意図が感じられません。あくまでも、300Bを模倣した「より高品位な真空管」を目指しているのだと思います。また、WE-300Bそのものも年代によって音質や構造が異なるため「何を持ってオリジナルの300B」とするのかも明確ではありません。今回は、私が所有している88年後期(WE300Bが生産された最終品)のWE300Bと比べてみることにしました。

真空管を上から見たところです。カソードの構造や固定方法が、違っています。

球の形(ガラスの部分)もわずかに違っていますし、固定ワイヤーの数や引き回しも異なります。脚のメッキも違っています。プレートの色も違います。今回は、このTA-300BとWE-300B(88年後期製造)を比較しましたが、記憶している「PSVANE-300B」のほうが、オリジナルの音により近いと感じました。

試聴テスト

 AIRBOW MNP-i5 Roon 販売価格 460,000円(税別)現金で購入)・(カードで購入

 AIRBOW HD-DAC1 Special 販売価格 175,000円(税別)現金で購入)・(カードで購入

較試聴には、USB-DAC"AIRBOW HD-DAC1 Special"にAIRBOWネットワークプレーヤー「MNP-i5 Roon」をUSB接続し、標準搭載アプリ「HQ Player」を起動して、CDから取り込んだWAVファイルを「88.2kHz/24bit」にアップサンプリングして音源としました。

今回の比較試聴は、YouTube 逸品館チャンネルでもご覧いただけます。

音質テストに使ったソフト

リザ・フェルシュトマン演奏のバッハ・無伴奏バイオリンソナタ。SACDハイブリッドソフトのCD層の音声をリッピングして使いました。

録音に優れるXRCDで「ボーカルソフト」を集めたベスト盤。Vol3.から、セーラKが弾き語りで歌う「ビンセント」を聞きました。

シンセサイザーも伴奏に使われるPOPS系のソフト。アマンダさんの独特な声の太さや甘さ、シンセサイザーの音がどのように再現されるかがポイント。

アナログレコード後期の優秀録音盤がCD化されて発売されたディスク。美しい峰純子さんの歌声とジャズトリオの伴奏のマッチングが聞き所。

オーディオマニアなら誰もが知る「ノイマン+チェコフィル」の「新世界より」から、第2楽章を聞きました。

 

バイオリンの音は、生音と比べると高音の鋭さの再現が少し弱く感じられます。けれどそれは悪いことではなく、むしろ写真の雰囲気をより良くするために使われている「ソフトフォーカス」のように働いて、本来聞こえなくても良い刺激的な成分を上手に漉しとって、澄み切った「出汁」だけを音に残してくれるような鳴り方をします。だからリスナーは、ソフトの録音の善し悪しや、機器のセッティングの成否などに煩わされず、演奏だけに集中して音楽が聞けます。
リザ・フェルシュトマンさんは、それほど大きくないホールのステージの前縁近くに立って、リスナーはそこから少し離れた場所で演奏を聞いている雰囲気です。カメラのレンズで言うなら、ちょうど標準レンズ「55mm」の画角に収まるような感じでステージが見えます。
1〜4弦の音色の違や、バイオリンの胴に弦の音が強く共鳴した「鳴り」と弓を返したときの鋭い音の対比などが、あるがままより「少し柔らかいイメージ」で鳴っています。音質は癖がなく自然で、演奏は着色されずに伝わります。

ギターの音は少し膨らんで太くなりますが、胴の柔らかい響きと、弦の金属的な鋭さは、綺麗に分離して美しい対比を描きます。

ボーカルも口元が少し大きいですが、これはバイオリンでも感じた「輪郭の柔らかさ」が影響しているのでしょう。

音の輪郭の鋭さと定位感は比例します。例えば、テレビ映像でエッジを効かせれば、解像度は上がります。けれど、エッジを立たせすぎると「ぼけ味」がなくなって、映像の奥行きが失われます。音もそれと同じです。エッジの柔らかいATM-300Bは音のピント(定位感)が少し弱いですが、体が包み込まれるような音場の広がりと、真空管アンプらしい「艶やかさ」が演出されます。
平均的な300Bシングルのアンプと比べると、高域はややまろやかで甘い感じです。中低域はプッシュプルアンプと変わらないほどたっぷりとした量感がありますが、制動力が少し弱く低音がわずかに膨らみます。
個人的には、フォーカスがもう少しシャープな音が好きですが、こういう柔らかな音を求める方が多いでしょう。
生演奏を彷彿とさせるとは言いませんが、目を閉じれば生演奏を聞いている雰囲気は十分に醸し出されます。

エレキ・ギターのアンプは、未だに真空管が主流ですが、それは「真空管の生み出す響き」がギターの音をより良くするために欠かせないからです。同じ理由で、ATM-300B Anniversaryは、シンセサイザーの音を生楽器のように柔らかく、ムードのある響きで包み込みます。物理的な共鳴部を持たない、引き締まった響きのシンセサイザーの音にこのアンプは実に良くマッチします。

ボーカルはこの曲では、センターにびしっと定位しています。
「合いの手」のように入る木製のパーカッションの音は、シンセサイザーと綺麗に分離し、叩いている木の材質や場所が特定出来そうなほどリアルに鳴ります。

ただし、EAR V12やAIRBOW Stingray Ultimateと比べると、高域の立ち上がりが遅めなので、抑揚の大きさや感情の「ハットするような表現力」では、それらに及びません。ややナローなレンジで、上手くまとめられた音です。

ピアノの音は打鍵音(アタック)が少し不明瞭ですが、奏者のタッチの違いはしっかり聞き取れます。

ピアノの音色は真空管・300Bのシングルアンプらしく、透明で豊かな色彩感で再現され、グランドピアノらしい「ゴージャス」な雰囲気がうまく出ます。
ボーカルも子音がやや不明瞭ですが、リップノイズやブレスはきちんと聞こえるので、唇の動く感じ、ぬれている艶っぽさは、上手く醸し出されます。
私はもう少し高域が聞こえないところまで真っ直ぐに伸びている音が好きですが、こういう「柔らかい音」を望まれる方が一般的です。逆に最高域まで音が伸びると、それに比例してセッティングがどんどん難しくなって行くので、こういう音の方がコントロールしやすいのも事実です。

生演奏の現場を目標とするのではなく、オーディオがそれをさらに心地よく再演奏するものだとするなら、300Bに「上品さ」を求められるなら、このアンプの音をとても気に入られると思います。

低音が良く出るので、ティンパニーが小さくならず原寸大のイメージで鳴ります。
イントロ部分の「静寂なイメージ」は上手く出ます。また、ホールの暖かい響きの再現も得意分野です。
金管楽器と木管楽器の音色の違い、バイオリンとコントラバスの音色の違いも、綺麗に再現されそれぞれの楽器の音が分離しながら、美しいハーモニーを奏でる様子が手に取るように分かります。
気になったのは、EARやAIRBOWで聞くと「バーツラフ・ノイマンの存在感」がとても強く、奏者の緊張感まで伝わるのに、ATM-300Bだとそういう「表現の強さ」があまり伝わってこないことです。
この曲は、ホールで聞く生演奏とほとんど変わらない雰囲気で上手く鳴りますが、すべての音は薄いオブラートにくるまれて、苦さや辛さは消えています。欠点や傷は露呈させない。そういう傾向が感じられました。

再現される演奏に「厳しさ」まで求めるなら、このアンプは合わないかも知れません。

 

気になっていた高域のレンジの狭さが解決して、バイオリンの音がスッキリと伸びました。輪郭がハッキリしたことで、バイオリニストの「指使い」までもが明確に伝わるようになります。
TA-300Bでは少し離れた位置から全体をややぼんやりと見ているようなイメージでしたが、Western 300Bだとホールの透明感が大きく向上し、見たいところがクッキリと見渡せるようなイメージになります。
弱音部のデリケートな響きの再現性が向上し、演奏に深みが出ます。
音質的な差はわずかですが、雰囲気の深さ、情緒の細やかさ、静寂感が変わりました。

ギターの胴鳴りの膨らみが抑えられ、音像が引き締まりました。ギターの弦をリリースした瞬間の断弦音も明瞭です。本来はこういう「避けられないノイズ」も計算して演奏に取り入れられているので、やはり隅々まで聞こえる方が臨場感は高まります。けれど、そこまでのリアルさ(生っぽさ)を求めないのであれば、TA-300Bの柔らかな音に魅力を感じられるでしょう。
輪郭の再現性が向上したことで、全体像がクッキリと再現され、ミュージシャンの表現したい部分がより正確に、深みをもって再現されるようになりました。セーラKさんの発音も、英語らしく子音がクッキリとしてきました。
パッと聞くと中低音の量感が減った用にも感じるのですが、じっくり聞くと高域が伸びただけで、中低音が減っているのではないことに気がつきます。球を変えてもATM-300 Anniversaryのシングルとは思えない、豊かな中低音は変わりません。

TA-300Bでは感じられなかった「響きの揺らぎ」が再現されますが、響きの豊かさは少し減ったようです。

ボーカルは、余計な脂気や艶が取れましたが、あっさりしすぎるような感じもします。また、少し音が重く、暗いようにも感じます。
この曲では、TA-300Bの響きの豊かさ、メリハリの強さが、WE300Bよりもマッチしていたように思います。

ピアノは高域が伸びて、スタインウェイのような硬質で美しい響きに変わりました。

ボーカルも高域が伸びて、口元がきりりと引き締まり、ピアノとボーカルの寄り添うような雰囲気も俄然濃くなりました。
TA-300Bで聞くこの曲は、ホテルのバーやエントランスで演奏を聞いているカジュアルな雰囲気。WE-300Bで聞くと、それが本格的なJAZZクラブで熟練の演奏を聞いている雰囲気に変わります。
WE-300Bの音が「本来の音」にはより近いと思いますが、TA-300Bの「演出」もなかなかだと思いました。

イントロ部分での静寂感が深まりましたが、やはり響きは少し減ったように感じられます。弦楽器の解像度感もTA-300Bの方が高かったように思います。けれど、音が重なった部分の「スケールの精密さ」では、WE-300BがTA-300Bを上回ります。この曲本来の「精緻なイメージの再現性」では、WE-300Bに部があるように感じます。

TA-300Bでは「指揮者の存在感が薄い」と感じましたが、真空管をWE-300Bに変えても、まだ「指揮者の存在感」はやや希薄です。それはATM-300B Anniversaryのアンプ本来のダイナミックレンジに限界があるから、つまり最高域が抜けきっていないからです。だから音色は綺麗ですが、服の上から背中を掻かれているような、少し物足りない感じ、もう少し刺激が強くあって欲しい感じが、私には感じられます。

ATM-300 Anniversaryは、「日本的な音」のアンプです。

2017年10月 逸品館代表 清原裕介

  

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