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カナル型イヤホン ATH-LS200/300/400 音質 比較試聴逸品館おすすめ&好評発売中のaudio-technica高音質カナル型イヤホン「ATH-LS200」の上級モデル「ATH-LS300」と「ATH-LS400」を比較しました。 ATH-LS200 メーカー希望小売 オープン価格(推奨価格 24,880円税別) ATH-LS300 メーカー希望小売 オープン価格(推奨価格 39,880円税別) ATH-LS400 メーカー希望小売 オープン価格(推奨価格 59,880円税別) 各モデルの概要 ATH-LS200は、一つの振動板を高/低 2基のドライバーで駆動する「バランスド・アマーチュア」方式が採用され、入力信号はネットワークで高音と低音に分割されてからドライバーに送り込まれています。 ATH-LS300は、同じ「バランスド・アマーチュア」方式ですが、ドライバーが一つ増えて、入力信号はネットワークで高音と中音と低音に分割されてからドライバーに送り込まれています。 ATH-LS400は、ドライバーがさらに一つ増えて。振動板は高/中 各1基と低 2基の合計4つのドライバーで駆動されます。入力信号はネットワークで高音と中音と低音に分割されてからドライバーに送り込まれています。 通常のダイナミック型に比べると構造が複雑で、再生周波数帯域も狭くなる「バランスド・アーマチュア」方式ですが、ダイナミック方式よりも音が細やかで、透明感が高くより高音質なのでaudio-technicaだけではなく、各社の高級イヤホンに幅広く採用されています。私は、今までaudio-technicaの「バランスド・アーマチュア」モデルを愛用してきましたが、経験的には「ドライバー1基」のモデルは、バランスに優れる反面解像度が低くレンジが狭いという弱点がありました。ドライバーを増やしてゆくと、音が細かくなり高音が伸びますが、ドライバーの数が増えると共にバランスが崩れる傾向が感じられました。ATH-IMシリーズでは、3Wayの「ATH-IM03」や4Way「ATH-I/04」では高域が伸びすぎて音が細く感じられたり、中域が弱くなって「ドンシャリ」の傾向が感じられ、2Wayの「ATH-IM02」が最も聞きやすいと感じていました。 今回は、2Wayの「ATH-LS200」、3Wayの「ATH-LS300」、4Wayの「ATH-LS400」を聞き比べます。
試聴環境 今回は、AIRBOW HD-DAC1 Specialを使い、WAVファイルで収録した6曲をUSBメモリーに収録、audioquest JitterBugを使ってフロントのUSBスロットにメモリーを装着して再生し、それぞれのイヤホンを比較しました。 AIRBOW HD-DAC-1 Special 販売価格 180,000円(税込み)
今回は、比較グラフを作ってみました。ATH-LS200を「基準(10点)」として、パワー感:5項目、音質感:5項目でグラフ化しています。ただし、このグラフはあくまでも、リスナー(清原)の感覚によるものなので参考にする程度にとどめて下さい。
弦が少し粉っぽく感じられますが、弦の音が上ずることもなく、倍音と基音がバランス良く再現されます。 弦楽器の切ない感じはほどほどに出てきますが、カナル型イヤホンの限界なのか、間接音があまり聞こえず、閉鎖的な感じがします。ただ、前回のiPod Touchと組み合わせたときのテストでは、粉っぽさが感じられず、閉鎖的な感じもなかったので、今回の印象が前回と違うのは組み合わせるアンプの影響だと思います。 iPod
Touchは、イヤホンで聞くことを前提に、滑らかで広がり感が出るような、音作りがされているのでしょう。私が、アンドロイド・スマートフォンではなく、音楽を聞くときには必ずApple製品を使うのは、聞き比べるとApple製品の方が音が柔らかく、自然な雰囲気(気になるところがない)で音楽を聴けるからです。
チャンネルセパレーションが良すぎるので、右と左の音がバラバラになってしまいます。電子的に作られたエコーと、直接音も分離します。これは、iPod
TouchにくらべてHD-DAC1
Specialのチャンネルセパレーションが優れているからでしょう。 音場が少し曇っていて、コンサートホールの見通しが若干悪い感じです。本来はもう少しS/Nが良く、艶っぽい音だったと記憶しています。その不満を除けば、弦楽器の基音と倍音のバランスや色彩の再現は良好で、十分に交響曲を楽しめる音質に達しています。これで、S/Nがあと少し高くなれば、満足です。 イヤホンとは思えないほど低音が良く伸びます。高音も細やかですが、細くなりすぎないので神経質さとは無縁です。パワー感も十分で、いろいろな楽器の音が躍動して楽しく聞こえます。 イントロのハープの音がとても細かく、ボーカルはキツくならずに頭の中に定位します。低音はさすがにすさまじく、音量を下げないと圧迫感が生じるほど良く出ます。 このソフトを聞いて感じるLS200の長所は、音の分離が優れていることです。 イヤホンでの試聴を前提にマスタリングされているのか、「誕生」は今回試聴した6曲の中で最もまとまった音質で聞くことができます。このソフトでも、LS200の「分離の良さ」が発揮されます。それは、2Wayを採用している、バランスド・アーマチュア・ドライバーの効果に違いありません。
ATH-LS200と比べて、音質は驚くほど大きく変わりません。少し細かくなって、透明感も増したかな?という程度です。 けれど、従来モデルの2WayモデルIM02を3WayモデルIM103と比較したときは、高音が伸びると相対的に低音が不足して「音が細く」なりましたが、LS300は高音が伸びても細くなったとは感じません。 LS200では左右の音が明確に分かれて鳴っていましたが、LS300は少し低位が中央に寄って、バラバラな感じが緩和されました。たぶん、LS200では聞こえなかった細かい音、間接音まで再現されるからでしょう。 イントロ部分の管楽器の出るタイミングがLS200よりもピタリと揃います。LS200では聞き取れなかった、細やかな音まで再現され、エコーが消え入るまでの時間も長くなります。 弦楽器を奏でる奏者の弓の動きはより滑らかで、ゆっくりと丁寧に感じられます。ハーモニーの分離感も一段と向上し、かなり生演奏を聞いている雰囲気に近づいてきました。 イントロ部分での楽器の数が増えました。低音はLS300よりもさらに良く出て一段と量感が豊かになりましたが、安物のイヤホンのように低音が響きすぎて、膨らむことはありません。 耳がイヤホンになれてきたせいもあると思いますが、スピーカーとイヤホンの違いによる違和感が薄くなってきました。音色も鮮やかで、躍動感も十分です。 3Way化の効果なのでしょうか、弦楽器の音がスラーで結ばれているかのように、滑らかに繋がるのが印象的でした。
ハープの音の鋭さと、色彩感が一段と冴えます。レディー・ガガの声も細かくデリケートですが、しっかりとボディーも出ます。 低音はかなりの量感を感じさせた、LS200よりもさらに量感が豊かです。LS300は低音がしっかりと強化されたので、IM03のように音が細くならないのでしょう。ただし、コンプレッションが使われるこのソフトでは、小さな音がたくさん入っている交響曲に比べて、LS200とLS300の音の違いはあまり大きくなりません。 LS200とLS300で全然違って感じられるのは、「低音」と「低音楽器の音階変化」です。大型スピーカーで聞いているように、低音が体を包み込むように錯覚します。ベースラインを奏でる低音楽器の音階が、うねうねと頭の中で唸ります。やり過ぎると難聴になりそうですが、音量を上げても崩れない音像と、圧倒的な低音刺激は快感です。 この曲でも、LS200とLS300では高音よりも低音のパンチ感の強さに大きな違いが感じられます。 LS300は低音のパワー感が強いにもかかわらず、低音が膨らまないので中高音もきれいに分離して聞き取れます。 低音と中音、高音部がきれいに分離しながら、まとまりのあるハーモニーが形作られます。"テレホン"と同じように、ロック系の音楽を聞くとLS300は、LS200との差が大きく、癖になってしまいそうなパワフルなサウンドが耳の奥に残りました。 総合評価
弦楽器の数が多く、間接音もしっかり聞き取れます。けれど音の細かさに関しては、LS200と価格ほど差があるとは感じられません。また、LS300との差もそれほど大きくは感じられません。 LS400で褒めてあげたいのは、4Wayとシステムが複雑になっているにもかかわらず、音のバランスや音色が変わらないことです。この点で、LS400は従来モデルのIM04を大きく凌駕しています。価格差はともかく、音質と音楽の表現力は確実にアップしました。 LS400はLS300に比べ音が細かいためか、パンチ力ではLS300がLS400を凌いでいたように思います。LS400の良さは、やはり細かい音までしっかりと再現されることです。電子的に負荷されているはずのエコーですが、会場そのもののエコーのように聞こえますし、ボーカルとギターの間にもしっかりと濃密な空気があって、それぞれの奏者間の密接な関係性が醸し出されます。 ギターの音は、自分で弾いているギターを聞いているように細やかでリアルです。 ホールトーンがかなり豊かに聞こえるようになりました。けれど、各社から発売されている10万円を超えるカナル型のトップモデルとは、まだ差があるように感じます。 従来モデルのIM04の音質は、あまり高く評価しませんでしたが、新製品のLS400は、各社の同価格帯製品と比較して「価格なりの音」は、十分に出ていると思います。 もちろん、それぞれの音は確実に良くなっているので、予算が許すのであればLS400を買った方が音質的な満足度は高いと思います。 やや低音過多とも思えたLS300に比べると、LS400の低音は割と普通です。バランス的にはLS200に近く、それを細かくしたような音質に感じられます。バランスが変わらず、質感にも大きな差が無いので、音楽を聞き比べるときの印象もそれほど大きな違いがありません。スムースでスマートな音質です。 テレホン 透明感や明瞭感もLS300がLS400を超えていたように思います。 高音が少しヒステリックです。LS300は音量を上げると、気持ちが良くなりましたが、LS400は音量を上げるとうるさくてイヤホンを外したくなります。高音の刺激が強すぎるのでしょう。 総合評価 コストパフォーマンスでは、LS200。総合的な音質バランスでは、LS300。LS400は、少し偏った音のように感じました。 試聴後感想 人間の可聴帯域「20KHzを超える音波が精神に与える影響」については、CDの発売時から何度となく話題になっています。 この課題については「大橋 力(おおはし つとむ)」氏が第一人者でしょう。 ハーパーソニックエフェクトとCDを超える音源、SACDやハイレゾ、DSDとの関係についても何度となく話題になっていますが、最近オーディオ評論家の「朝倉礼治」氏が掲載したコラムが参考になりそうです。 また、この可聴帯域を超える高周波と人間の関係については、京都大学が以前からかなり本格的な研究を行っています。 しかし、この研究を進める課程で、人間は20KHz以上の高周波を「耳ではなく体で聞いている」ことがわかってきました。 ・生命誌ジャーナル 2006年: [音で探る関わり] 音は身体全体で感じている:大橋 力×中村桂子 全文は長いので、該当の文章を抜粋してみました。 【最大の問題点は、可聴域上限をこえる高周波を受容する入り口が何かということでしょう。そこで新しい実験装置を作って、可聴音と超高周波とをそれぞれ独立して再生できるとイヤホンを用意しました。可聴域音と超高周波の両方をスピーカーから出すと、ハイパーソニック・エフェクトが発現します。ところが、この両方をイヤホンから呈示してもこの効果は現れません。そこで、可聴音をイヤホンから、聴こえない超高周波をスピーカーから呈示すると、強烈なハイパーソニック・エフェクトが現れる。しかし、その状態で被験者の身体を遮音材で覆うと反応が消える。これらの実験事実は、超高周波の受容が、耳を介した気導聴覚系ではなく、体表面に存在するなんらかの未知の振動受容メカニズムによっておこなわれるということを示しています。】 ・人間は20kHzを超える高周波をどのようにして感じていたか? 上の実験は次のような方法で京大で行われました。被験者にヘッドホンを装着し、被験者の前にスピーカーを設置する。被験者の脳の状態をモニターするため「脳機能イメージセンサー」を被験者に装着する。 ・実験(1) ハイパーソニックエフェクト発現 前方のスピーカーから「20kHz以上の高周波を含む全帯域を再生」する。 ・実験(2) ハイパーソニックエフェクト発現しない! イヤホンから「20kHz以上の高周波を含む全帯域を再生」する。 ・実験(3) ハイパーソニックエフェクト発現 前方のスピーカーから「20kHz以上の音波を再生」し、イヤホンからは「20kHz以下の音波を再生」する。 つまり、イヤホンを使っている限り「ハイレゾ」であろうが「DSD」であろうが、CDを聞いているときと「脳の状態は変わらない」と言うことなのです。 だから、イヤホンから「20kHzを超える周波数を再生する必要はない」のです。 それを知らずに、大手メーカーですら「ハイレゾ対応イヤホン」を大々的に宣伝しているので、彼らの勉強不足(というか、電気技術以外は全くの無知)には、ほとほとあきれてしまいます。音と人間の関わりを調べずに、どうして人が感動できる音を再現出来る装置が作れるのでしょう? 結論 POPSやROCKを聞くならば、低音が抜群でパンチ力、瞬発力に優れる「ATH-LS300」でしょう。けれど、価格はちょっぴり高くなります。 「ATH-LS400」は、低音用のドライバーを2基搭載するにもかかわらず、やや高域が強すぎるように感じました。アコースティックな音楽では、LS300よりも繊細で透明感も高いのですが、高域が強めに録音されているROCK系の音楽では、高音が耳に突き刺さって、ちょっと疲れました。 「ATH-LS200/300/400」は、ケーブルの脱着が可能です。audio-technicaから純正の交換ケーブルが発売されていますが、社外品で交換用のケーブルも発売されています。ケーブルが断線したときの交換がやりやすく、ケーブル交換による音の調整ができるのもうれしいポイントです。 2017年4月 逸品館代表 清原裕介 |
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