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カナル型イヤホン ATH-LS70/200、ATH-CK90PRO Mk2 音質 比較試聴audio-technicaから、高音質カナル型イヤホン「ATH-LS70」と「ATH-LS200」が発売されました。 私はジムの運動時や上京時の電車内でイヤホンで音楽を楽しんでいますが、普段から「とてつもなく良い音(一般の人から見れば)」のオーディオを聞いている耳には、あまりにチープな音は絶えかねます。かといって、外付けのDACやヘッドホンアンプや大型のヘッドホンなど、重くてかさばるものを持ち運びたいとは思いません。 軽く、音が良く、価格も適度。それが私が求める、理想の「ポータブルオーディオ・システム」です。 今使っているプレーヤーは「iPod Touch(第6世代 64GB)」です。音楽はたくさんの種類を持ち歩きたいので、MP3/320bpsに圧縮して保存していますが、それでも国産メーカーのハイレゾポータブル機で聞く、ハイレゾ音源より好ましい音質だと思います。 最初は容量が大きく、音源を圧縮しないで収録できる「iPod Classics」を使っていましたが、第3世代のiPod Touchが発売されたときに聞き比べると、Classicの非圧縮ファイルとTouchのMP3/320bps圧縮ファイルでほとんど音質差が感じられなかったこと、ClassicではHDDの作動音が気になること、操作性が飛躍的に改善されていたこと、で第3世代でTouchに乗り換えました。その後、第4世代、第5世代、第6世代とと4世代にわたって愛用していますが、世代が変わってもほとんど音質が変わらないのもすごいところだと思います。 普通、ハードウェアーが変わり、ソフトウェアーが変わると音質に大きい影響が出ます。それなのに「音を変えていない」というのは、初期モデルから完成度が高かったことと、ハードウェアーとソフトウェアーの両方を「自社開発」できる、Appleならではの強み、そしなによりも「音がしっかりわかっているエンジニアの存在と継承」ができているからだと思います。ここが、国産メーカーや新興メーカーとAppleの違いではないだろうかと考えています。 また、iPod Touchの世代交代中、何度か「Android OS」を使うハイレゾ対応ポータブルプレーヤーや、アイバッソなどの高音質を謳う音楽専用OS搭載プレーヤーも聞いてみましたが、総合的な音質バランス、自然で癖のない高音質で、iPod Touchを超える製品はまだ見つかっていません。 そんなお気に入りのiPod Touch高音質化のキーポイントは、「イヤホン」です。 オーディオショップを始める遙か昔、高校生の頃から、すでに「カセットウォークマン」で音楽を聞いていた私にとって、イヤホンやヘッドホンは、高級オーディオ以前からなじみの製品です。当時から良い音に興味を持っていたので、私はかなりの種類のイヤホンやヘッドホンを聞いてきました。さすがにここ10年ほどの「大発生状態」で、今は発売されている製品の一割もチェックできていませんが、それでも付き合いの深い老舗メーカーから発売される主要モデルは、だいたい聞いています。 そんな中から「自分用」として選んだのが、バランスド・アーマチュアドライバー搭載の「audio-technica ATH-CK90PRO」です。このモデルはその後、「ATH-CK90PRO mk2」にモデルチェンジして生産が終了しますが、バランスド・アーマチュアドライバーを搭載する後継モデルとして、「IMシリーズ」が発売されます。 IMシリーズでは、それぞれの数字の数だけドライバーが搭載される01、02、03、04の4つのモデルがラインナップされましたが、比較試聴の結果、私はバランスに優れた「IM-02」を選んで、現在も愛用しています。 今回は、愛用中の「IM-02」ではなく、バックアップ用として保管している「ATH-CK90PRO mk2 新品」2と、IM-02の後継モデルに該当する、新製品の「ATH-LS200」、廉価モデルの「ATH-LS70」を聞き比べてみました。 ATH-Ck90PRO mk2 メーカー希望小売 オープン価格 生産完了モデル(発売価格 19,000円税込) ATH-LS70は、一つの振動板を高低2基のドライバーで駆動する「デュアル・シンフォニックドライバー」方式を採用する「ダイナミック型」です。入力信号は、ネットワークを介さずに高低2基のドライバーに送り込まれ、一つの振動板から音を出します。イヤホンのような小型の振動板を駆動するのに、2Wayのドライバーが必要だとは思わなかったのですが、振動板だけではなく駆動系(マグネットとボイスコイル)も小型になり、ストロークが小さいのでそれぞれに専用の駆動系を割り振る方が、よりフラットで歪みの少ない再生音が得られるのではないだろうかと推測します。 ATH-LS70 メーカー希望小売 オープン価格(発売価格 14,000円税込) ATH-LS200は、一つの振動板を高低2基のドライバーで駆動する「バランスド・アマーチュア」方式を採用し、入力信号はネットワークで高音と低音に分割されてからドライバーに送り込まれています。構造が複雑で再生周波数帯域も狭くなる「バランスド・アーマチュア」方式ですが、聞いてみるとダイナミック方式よりも音が細やかで、透明感が高くより高音質です。 また、人間は20kHz以上の高い音は、鼓膜ではなく体で聞いていることが京大の研究などで明らかになっていますので、イヤホンやヘッドホンの再生周波数は、20Hz〜15,000Hz程度のスペックがあれば十分だと思います。それよりも人間が最も敏感な周波数帯域(日本人では、100〜5,000Hz程度)がよりリニアに再現されることが大切だと思います。 ATH-LS200 メーカー希望小売 オープン価格(発売価格 26,000円税込)
試聴環境 今回は、第4世代 iPod Touchを使い、WAVファイルで収録した5曲と、レディーガガの「テレフォン」を試聴してみました。
水の流れる音、鳥の声がとても自然で、かなり細やかに再現されます。 ホールのうなりの低い部分まで音がきちんと出ます。 バイオリン、チェロ、コントラバスの音色の特徴も良く出て、ハーモニーが美しく再現されます。 ギター本体の音と、電子エコー処理されたエコーの部分が、重ならずに分離します。 ギタリストが指に込めた力の加減まで聞き取れるほど、微妙な音の変化まできちんと出ます。 ピアノの響き、ボーカルが少し濁ります。モナリザでも感じたのですが、音量が上がると何かが共鳴しているように音が濁ります。細かい音もはっきり出ますし、デリケートな表現も得意ですし、音量を下げても音がやせないので、小音量での再生に向いています。ただし、遮音性は普通なので、静かな部屋などで、ゆっくりと音楽を聞きたいときに使うと良いでしょう。 ハーモーニーを形成する細かな音まで、ひとつひとつしっかりと聞き取れ、楽器の音色の特徴も良く出ます。 交響曲をイヤホンで再現するのは、なかなか難しいのですが、ATH-LS70はそれを完全にやってのけます。 指揮者の声も聞こえるほど解像度が高く、透明感も良好で、広がり感もあります。 この価格帯のイヤホンで交響曲が聴けるのは、素晴らしいことだと思います。 イントロのハープの音、ボーカルの透明感と表現力は抜群です。けれど、シンセサイザーの低音が入ると、低音の遅れと、ハウジングとの共鳴が気になります。 チューニングの悪いバスレフスピーカーのように低音が遅れて膨らみます。中高音は合格ですが、重低音はいまいちです。 総合評価 念のためバランスド・アーマチュアドライバー(フルレンジ一基)を搭載するATH-IM01と聞き比べましたが、IM-01はLS70に比べて音が緩く細かさが不足する、一聴して「価格が安いと感じる音」でした。IM-01では、付属品との音の差があまり感じられないかも知れません。「良い音」を求められるのであれば、IM-01よりも上級のイヤホンをおすすめします。 水の流れる音は、高域がやや強めですが、キツ過ぎるほどではありません。 ATH-LS70と同じ音量なら、音の細やかさ(解像度感)もそれほどは大きく変わりませんが、ネットワークを内蔵しているためか、音の分離感や濁りはLS200の方が良好で、音量を上げても透明感が維持されます。 低音はLS70に比べてわずかに少ないですが、中高音はやや強めでLS70よりもやや高音よりの音です。けれど、弦楽器のハーモニーは基音部分まできちんと再現され、低音がやせている感じもありません。 LS70では弱かったギターの音(アタック)に「芯」がでました。弱音の表現力も少し向上しています。 ボーカルも前に出て、スピーカーで聞くこの曲のバランスに近づきました。 濁りが少ないこと、明瞭度が高いこと、密度が上がることで、個々の音の実在感がぐっと向上します。 ギターの透明感、ボーカルの強弱、この曲の重要な部分の再現性が向上したLS200でこの音を聞くと、LS70には戻れなくなります。 ピアノの濁りが消え、ペダルを踏む音まではっきりと聞き取れるようになりました。 高音はやや伸びすぎているほど伸びますが、問題にはならない範囲です。 ボーカルは密度感が向上し、中低音の膨らみや共鳴が消えたことで、俄然質感が高まります。 調子に乗って音量をあまりにも上げると、ハウジングの強度?が不足するためか、最低音が少し濁りますが、その状態でもボーカルはぼやけずにキチンと鳴りました。 イントロ部分での金管楽器の抜け感が向上し、ティンパニーの低音もしっかりとしています。 弦楽器の質感やクラリネットやファゴットなど木管楽器と金管楽器の音色の違いもはっきりし、ホールの空気が澄み切ってきました。 音量を上げても音が濁らず細かい部分まではっきり聞こえます。奏者の衣擦れのような細かな音まで聞こえる気がしたほどです。 さすがに10万円を超えるような最高クラスのイヤホンほどの音の良さはありませんが、スマートフォンやポータブルプレーヤーと組み合わせるなら、この音で十分だと思います。 イントロのハープの音が細かくなりましたが、パープの音色の艶っぽさ、ボーカルの艶っぽさは、LS70の方が気持ちよく感じられました。小音量部分での再現性は、LS70も相当良かったのだと実感します。 CL70よりも音が細かく、立体感にも優れています。 イントロ部分の音の細やかさは、LS200が勝っています。けれど、ハーモニーのバランスは、CK90PRO2の方が整っています。 ギターの音は、LS200の方が細かく聞こえましたが、CK90PRO Mk2と比べても艶やかさは、LS70が一番良かったように思います。ギターの音は、生音よりもわずかに細く聞こえます。 CK90PRO2の良さは、音量を上げたときの濁りがとても小さく、リニアに音が大きくなることです。 ピアノの音の鮮やかさは、LS200が上回っていました。輪郭の明瞭感もLS200の方が上です。 生演奏を聞いているバランスには、CK90PRO2が一番近いように感じられました。
楽器の音の数は、LS200よりも少なく感じられます。もしかするとLS70よりも少ないかも知れません。 Telephone
イントロのハープの音は少し堅く、艶が少ないように感じます。ボーカルも同様ですが、これはCK90PRO2が完全な新品だからかも知れません。 試聴後感想 CK90PRO2は、音質よりもバランスの良さが光る「逸品」ですが、ケーブルのタッチノイズが大きいなど、その後モデルでは改善された欠点もあります。 試聴後感想 このレポートの始めにも書きましたが、私は高校生の頃から魚釣りの時などに「カセット・ウォークマン」を使って音楽を聞いていましたから、イヤホンやヘッドホンとの付き合いはもう40年近くになります。この仕事を始めてからは、さすがに会社で一日中音楽を聞いていますので、イヤホンやヘッドホンで音楽を聞く機会は少なくなりましたが、それでもジムの運動時や、大阪東京の移動時の電車内では必ずイヤホンで音楽を聞いています。 部屋の影響(ルームアコースティックの影響)を強く受けるスピーカーと違い、イヤホンは環境の影響をあまり受けません。もちろん、イヤーパッドと耳管の密着性は重要ですが、audio-technica製品のイヤーパッド(プラグ)は、他社と比べて装着性や密着性に優れています。 私が「普通の人」と違うのは、指揮者に指示して生演奏の現場を知り、レコーディングまで行い、今は数千万円を超えるHiFiセットの音を決めているので、「耳が不自然さ(違和感)」にとても敏感なことです。 そういう敏感な「耳」で、高級ヘッドホンやイヤホンを聞くと、とても奇妙な音の製品が多いことに気づきます。 また、価格にふさわしくない音質(つまり音が悪い)の製品も少なくありません。 仕事で使う「モニター用」として、あるいは気軽に音楽を楽しむための手段として私は、「自分用」に音の良いイヤホンやヘッドホンをいつも一つは用意しています。けれど本来がけちんぼなので「イヤホンなら2万円程度」、「ヘッドホンでも10万円程度」が理想とする予算の限界です。 今使っているヘッドホンは、放送局で長年使われ続けている「Sennheiser HD-25-1」です。価格はそれほど高くありませんが、すべての音がどんな音であるかをきちんと把握することができる逸品です。ただし、ユニット口径が小さく、装着時に耳たぶがつぶれるので、装着感はお世辞にも良いとは言えません。また、密閉型ですが、遮音性もそれほど高くないので、このヘッドホンは音楽編集時など、もっぱら仕事用に使っています。自室では、すでに生産が完了している「AKG」を今も愛用しています。 これらと比べて「欲しい」と思った、高級ヘッドホンはありませんでした。 けれど、今年に発売された「Focal Elear」は、本気で欲しくなりました。私の予算を少し超えますが、今まで聞いた中では最高のヘッドホンです。 イヤホンは、「audio-technica ATH-CK90PRO」-「PRO2」と気に入って愛用していましたが、ジムで運動しながら使ったためか、2台とも2年を待たずして壊れてしまいました。イヤホンは精密なので、修理は基本的に「交換」になります。そのため、生産が完了すると「修理不能」となります。そこで、今は後継モデルの「ATH-IM02」を愛用しています。このモデルから「耳かけ型」になったので、ケーブルのタッチノイズがATH-CK90PRO Mk2よりも低減し、装着感も向上しています。 掲示板に「おすすめイヤホンは?」という問い合わせがあったので、IM-02をおすすめしようと思っていたら、生産が完了していました。 そこで、掲示板へのお返事を兼ねて「次期イヤホン」を探るため、「ATH-LS70」と「ATH-LS200」を聞いたのです。 試聴機が届いて、会社の帰り際にちょこっと聞いたときは、LS70がLS200よりも良さそうに聞こえました。価格もIM-02よりも手頃だしこれはおすすめだ!と直感してうれしくなったのです。 しかし、しっかりと聞き比べてみると、LS70は音量を上げると音が濁るという弱点が発覚しました。また、様々なソフトを聞き比べると、LS200の対応性が広く、やはり価格だけのことはあると納得させられたのです。 そして、最後の仕上げ(自分を納得させるため)に、手元にある「IM-01(02ではありません)」と「CK90PRO2(いざというときのために買い置きしている新品)」を引っ張り出してきて、LS200と聞き比べました。 「IM-01」は、音がもやもやとして解像度が低いので即座に落第です。これは、以前IM-01/02の聞き比べても感じたことです。また、IMシリーズには、03/04もありましたが、02に比べてバランスが悪いので、私は02を選んで使っています。 CK90PRO2は、さすがに3年近く愛用していたモデルということだけあって馴染むのか、「バランス」、「違和感の少なさ」では、現時点でもトップの能力を持っていることが確認できました。しかし、先に書いたようにケーブルのタッチノイズや、装着感(ケーブルでイヤホンが引っ張られる)などの点では、最新モデルに敵いません。また、低音の明瞭度、高音の細やかさでもLS200には負けています。 念のため、最後にもう一度LS200を聞いてみました。 CK90PRO2に比べると、高音の明瞭度が高く、低音もクッキリしてパンチがあります。バランスの自然さではCK90PRO2が勝りますが、音の良さはLS200の勝ち。それはわかっていたことなので、LS200とCK90PRO2を即座に比較することで、LS200がどのように聞こえるかを調べたかったのです。 結果は、LS200がCK90PRO2よりも良い音で聞こえ、心配していた「違和感」もほとんどありませんでした。CK90PROほど、完璧ではないのですが、「自然になじんでしまう」範囲内だと思います。 結論 小音量〜大音量で、ロックやポップスなどの「電気楽器を使う音楽」など、流行の音楽も聞きたいのであれば、「ATH-LS200」がおすすめです。私は、ジムで使うなら「楽しい音」が欲しいので、「IM-02」が壊れたらメリハリが効いてのノリの良い「ATH-LS200」を使うことにします。 「ATH-IM02」や新型の「ATH-LS200(LS70)」は、ケーブルの脱着が可能です。audio-technicaから純正の交換ケーブルが発売されていますが、社外品で交換用のケーブルも発売されています。ケーブルが断線したときのリペアやケーブル交換による音の調整が可能になっているのも「進歩」の一つです。 2016年12月 逸品館代表 清原裕介 |
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