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プリメインアンプ 音質比較テスト

 DENON / デノン PMA-SX1 

 AIRBOW PM11S3 Ultimate

その他の音質テストはこちら

 

AIRBOW PM11S3 Ultimateを使った、CDプレーヤーとDACの音質比較テストに引き続き、CDプレーヤーをAIRBOW CD3N Analogueに、スピーカーをTAD E1に固定して、DENON PMA-SX1の音質比較テストを行いました。

テストは、「概要のご紹介」から始まって、DENON PMA-SX1、AIRBOW PM11S3 Ultimateの音質テストへと進みます。PM11S3 Ultimateのテストの最後に、オーディオ機器に求められる音質について詳しく解説しています。アップロード前に再生画像を見ながら自分のトークをチェックしましたが、DENON PMA-SX1に対して個人的な好き嫌いが強く出ているように思います。言い訳をさせていただけるなら、多くのオーディオファンに愛されるDENONだからこそ、素晴らしい製品を作って欲しいという期待が大きすぎたのかも知れません。

メーカー様や関係各位への影響を考えて、アップロードを見合わせようかとも思いましたが、オーディオ機器で音楽をより深く楽しむためには、欠かせない主張が織り込まれているため編集せずにそのままアップロードすることにしました。もしも、内容に関してご気分を害されるようでしたら、予めお詫び申し上げます。

また、オーディオ聞きの音質判断はあくまでも「個人的で相対的なもの」です。絶対的な音質はいかなる場合にも図りかねますので、PMA-SX1の音質は、必ず「ご自身で試聴の上ご判断くださるよう」お願い申し上げます。

 スピーカー:TAD E1(お問い合わせはこちらからどうぞ

 CDプレーヤー: AIRBOW CD3N Analogueお問い合わせはこちらからどうぞ

テスト概要説明動画

試聴ソフト

Della
「せせらぎ」

Decca
「Your Best Tunes」

Grace Mahya
「Last Live at DUG」

noon
「500 Miles」

DENON
「新世界」

システムのメンテナンスにも使える、川の流れる音を収録した自然音のソフトです。

どこかで聞いたことがある。そんなクラシックを集めたソフトです。弦楽セレナードを聴きました。

試聴によく使います。録音が最高!もちろん演奏も素晴らしいです。

音質と演奏に優れる楽曲が集められたダイジェスト盤です。"500Miles/noon"を聞きました。

ワンポイントステレオマイクで録音された、良質なソフトです。納得の音質、納得の演奏。第2楽章を聞きました。

音質テスト
 PMA-SX1

PMA-SX1の概要(メーカーHPから引用)

全段バランス・BTL回路

PMA-SX1は、PMA-SX1はデノンのこれまでのSシリーズと同様に全段バランス構成とし、BTL接続により出力を得ています。この方式では、スピーカーのプラスとマイナスの両端子はアースに接続されず、パワーアンプのプラスとマイナスの出力段により直接駆動されるため、通常のアンプよりも高いドライブ能力を発揮できます。また、スピーカーのドライブ電流がアンプのアース(グラウンド)に直接流れ込まないため増幅の基準となるグラウンド電位が安定し、ノイズや回路間の干渉が低減され正確な増幅が行えます。全段バランスBTL回路により、PMA-SX1はにじみのないリアルな空間表現を可能にし、活き活きとした躍動感あふれる音楽表現を可能します。

 

・インバーテッドΣバランス回路

バランス、アンバランスどちらの入力信号も変換回路を用いずにダイレクトにバランス構成の電圧増幅段に入力されるバランスダイレクト設計。インバーテッドΣバランス回路は低ひずみ率、高SN比を実現し、バランスアンプでありながらシンプルでストレートな信号経路を実現可能にしています。

UHC-MOS シングルプッシュプル回路

通常のパワーアンプの出力段は小型のトランジスターをパラレル(並列)にして高出力を実現しています。しかし、多数の素子を並列駆動して大電流を流す手法ではどうしても素子の性能のバラツキが問題となり、音の濁りを生じることがあります。そこでPMA-SX1は、出力段に微小領域から大電流領域まで極めてリニアリティが優れているという特徴を持つUHC-MOS(Ultra High Current MOS ) FETを用いたシングルプッシュプル回路を採用しています。出力素子をプラス側とマイナス側にそれぞれ1個(1ペア)という最小単位素子による増幅は、「POA-S1」の開発以来「繊細さと力強さ」を高い次元で両立するためのデノンが磨き上げてきた伝統的な手法です。新採用のUHC-MOS FETは従来品に比べ、定格電流が30Aから60Aに、瞬時電流は120Aから240Aへと倍増され、一段と余裕を持った再生を実現しています。さらに、カスコードブートストラップ接続によりUHC-MOSのドレイン、ソース間電圧を一定に保ち、電圧に依存する増幅率(伝達アドミタンス特性)を安定化してアンプ回路全体の動作を安定させています。

アナログ式ボリウム
PMA-SX1のボリウムには多接点ワイヤブラシを採用したオーディオグレードのモーター式ボリウムを採用されています。デノンがこだわり続けるアナログ式ボリウムは入力バッファ回路が不要であるため、デジタルボリウムに比べて、よりシンプルな回路構成に出来るというメリットがあります。また構造においても、外部振動、外来ノイズの混入を排除するため最大15mm厚の堅牢なフロントパネル、削り出しの円筒状アルミカバー、そしてアルミ無垢材の削り出しノブ採用により音質劣化につながる要素を徹底的に排除しています。

・マイコンストップモードとリモコン対応
デノンはこれまでハイエンドアンプはリモコン非対応としてきました。それは、少しでも音質に影響を与える可能性のある要素は極力取り入れないという方針からです。しかしながら、時代の移り変わりとともにユーザーの皆様からのご要望を多くいただくようになったため、PMA-SX1はリモコン対応としました。もちろん音質への影響を避けるため、アンプを操作していないときはマイコンへの電源が完全にOFFとなるマイコンストップモードを搭載しました。

リモコンでは、電源オン/スタンバイ、音量調節、ミュート、入力切替の操作が可能になり、使いやすさが大きく向上しました。また、このリモコンでデノン製CDプレーヤーを操作することもできます。

DENON PMA-SX1 メーカー希望小売価格 \580,000(税別)お問い合わせはこちら

音質試聴動画へのリンク

 

音質評価

せせらぎ:水の流れる音に少し粘り気が感じられるが、特に不自然な感じはない。水の音は、やや少ない感じ。

     水平方向への音の広がりは良好だが、上下方向への広がりがやや狭く感じられる。

セレナード:弦楽器の音がやや金属的に感じられ、若干ほぐれにくい印象がある。音色の変化が小さく、演奏が単調に聞こえる。

     中音にはしっかりした厚みが感じられ、重心は低い。

モナリザ:ギターの音色がややくすんで感じられる。ゲージの細かい振動もあまり聞き取れない。楽器のアタックが丸く、高域に濁りがある。

     ボーカルは厚みがあって、独特な雰囲気で鳴る。中域からぐいぐい押してくるような印象がある。

500 Miles:ギターと同じく、ピアノの音も高次倍音がミュートされ、響きが濁って感じられる。高音が硬く、やや金属的。

     ボーカルにも濁りが感じられ、モノトーンのような音になる。聞きやすい音だが、表情の編が買うスク、音楽が単調に聞こえる。

新世界:低音に厚みがあるが、弦がほぐれず音が塊になってしまう。弦の細かい音が聞こえず、楽器に色彩感が感じられない。音の広がりも上下が狭い。

総合評価:トランジスターという素子の性能は、温度に依存して変わります。またキャパシタや抵抗、トランスなども作動温度で音質が変化します。そのため試聴には、できるだけ長時間のウォーミングアップを行って温度を安定させてから音質チェックを行うことにしています。PMA-SX1は48時間近くウォーミングアップしてから試聴しました。

このモデルに留まらず、UHC-MOSを搭載するDENONプリメインアンプの多くが、PMA-SX1と同様に高音伸びきらず、硬く感じられるように思います。低域の厚みと中域の押し出しは強いので、その点が残念です。また、それが原因で弦楽器のような複雑な響きを伴う楽器の再現性が単調になりやすいように思います。

音質テスト
 PM-11S3 Ultimate

PM-11S3 Ultimateの概要(メーカーHPから引用)

・総数166個に及ぶパーツを交換

PM11S3 Ultimateは、AIRBOWカスタムモデル プリメインアンプのフラッグシップとして求められる音質を実現するため、中には交換することでわずかにしか音が良くならない部位もありましたが妥協せず、総数166個の部品を交換(下写真は交換した部品の一部)追加して、回路定数にも若干手を加えました。

・録音の善し悪しやメディアの種類に依存しない「雰囲気の良さ」を実現

広がる音/前に出る音。硬い音/柔らかい音。シャープで端切れの良い音/響きが豊かな音。「オーディオ機器の音作り」には矛盾する部分が少なくありません。それを破綻させず、高いレベルで両立させるのが設計者(チューナー)の腕の見せ所です。PM11S3 Ultimateで目指したのは、生よりも生々しい音です。

「生の音に最も近い音作り」を目指すには、アンプの反応速度を速めて歪みを減らさなければなりません。けれど、「生の雰囲気に最も近い音作り」を目指すには、適度の響きを持たせることが大切です。PM11S3 Ultimateは音の立ち上がりの早さと、響きの収束の遅さという、相反する要素を絶妙なバランスで両立させることに成功しました。
PM11S3 Ultimateの細かく滑らかでシルクのように上品な高域は、楽器の音色の変化や音量変化を鮮やかに再現し、演奏の「上手さ」は損なうことなく引き出しますがソフトの粗は不要に暴きません。録音の善し悪しには左右されず、演奏の善し悪しはきちんと反映する音質です。

オリジナル(ノーマル)機に比べて大幅に強化された中低音の厚みにより、ふわりと部屋いっぱいに広がる穏やかな低域は、演奏の「雰囲気」と「楽器の色彩感の濃さ」を生演奏よりも濃厚に再現します。

その味わいは「最高級のレコードプレーヤーで聞く音楽」にとても近いイメージです。そしてそのアナログ的甘美な音質は、録音の古いモノラル時代の交響曲でも発揮されます。PM11S3 Ultimateが生み出す楽器のような響きが、ぎっしりと詰まっていた音と音の間に隙間を作り、録音が悪くて上手く鳴らないと諦めていたソフトの音を部屋いっぱいに立体的に広げ、重ねられた楽器の倍音を織物のような美しさで再現します。

PM11S3 Ultimateで再現できない「音」はあるかもしれませんが、再現できない「音楽」はありません。アナログ/デジタル、ディスク/PCの区別なくあらゆる音楽を「最高の雰囲気」で楽しませ、AIRBOWが目指すオーディオの一つのゴールを聞かせてくれるのが、“Ultimate”と名付けたAIRBOWカスタムモデルの最高峰です。

AIRBOW PM11S3 Ultimate 販売価格 \523,150(税別)お問い合わせはこちら

音質試聴動画へのリンク

 

音質評価

せせらぎ:澄み切った水の流れを感じる。鳥の声もクッキリして、近くの鳥の声は大きく、遠くの鳥の声はその向こう側に透けるように小さな声で聞こえる。

     水の音が手前で、その奥に森林が広がっている様子が伝わってくる。立体感が豊富で、自然な音。

セレナード:中低音にしっかりした厚みある。低い帯域から高い帯域まで、弦の音が綺麗にほぐれて、倍音が層状に重なっているように感じられる。
    
 弦楽器の音色が多彩に変化し、音楽に動きと抑揚の変化が出る。セレナードらしい、弦の切ない感じも良く出る。

モナリザ:イントロでギターの音がデリケートに変化している。ギタリストがギターの音が消えるところまでゲージをコントロールしている様子が感じられる。

     ボーカルに透明感が出て、潤いと艶もある。S/N感が高く、音も細かいので、会場の空気が見えるようになる。もうすこしパンチがあれば完璧。

500 Miles:ピアノの立ち上がりが早く、音がスッと出る。ストレスなく音が立ち上がり、打鍵感もキチンと出る。

     ボーカルは力強く、高域が透明感で高音が綺麗に抜ける。デュオの掛け合いが、目に見えるように再現された。

新世界:音量が小さくても、シンフォニーの複雑さがきちんと再現される。各々の楽器が持っている音色(質感)の違いが、音に出てくる。

     「た〜らら、た〜らら、た た ら〜らら」という旋律が頭の中(心の中)で鳴っている。心地よい音。

総合評価:PMA-SX1と比較して格段に音が細かく、音色の色彩感が鮮やか。音楽が躍動して楽しく聞ける。

試聴後感想

トランジスターは温度で音質(特性)が変わりますが、特にパワーアンプは通電(動作)すると発熱して、音が変わります。この「冷感時と温感時の音の変化」は、二つに大別できます。一つは、暖まると音がぼやけるタイプ。もう一つは、暖まると音がスッキリするタイプです。PMA-SX1は48時間近くウォーミングアップしてから試聴しましたが、暖まってから本領を発揮するように思います。

最近、フジヤエービックが主催する「ヘッドホン祭り」に行って来たのですが、短時間で多くのヘッドホンの聞き比べを行うと、耳の感度が落ちてきて(耳がぼけてきて)、繊細な音の違いがわからなくなります。その状態で比較試聴を行うと「音の鮮烈な製品」が良く聞こえます。これはTVの比較試聴にも当てはまり、量販店の展示ルームがTV鑑賞には明るすぎることもあって、コントラストが高く色が濃い「クッキリハッキリ画像」の製品がより良く見えます。けれど、このような「店頭でのアピール効果を狙って作られた製品」を自宅で見ると、ぎらぎらして眼が疲れ、中間色がまったく再現されず、人間がアニメのように見えてしまのです。けれど、多くのユーザーさんはそれに気づきません。

オーディオ機器では、日本製品に「スイッチを入れてすぐ」の音は繊細で切れ味も良いのに「暖まってくると音がぼける」製品がみられます。けれど海外製品の多くは、暖まってから本領を発揮します。

最近遠方から久しぶりに逸品館を訪れた友人が3号館の音を聞いて、こういう音はメーカー製品からは絶対出ない(鳴らしていたのはTADなのでそれは例外です)。「学生の頃からメーカーの名前とデザインの良さで国産オーディオ機器をさんざん買ったけど、結局どれも残っていない。3号館の音からは、パッション(情熱)」が聞こえてくる。」としみじみつぶやいていました。

私も同意できる部分が多く、国産品のすべてがダメだとは思わないのですが、海外製品と比較すると「音が薄い(表情が単調)」と思います。しかし、逆に海外製品は「色が濃すぎる(着色が過ぎる)」こともあって、一概にどっちがよいとは言えないのですが、全体的にはそういう傾向があると思います。また、国産製品の一部(ヘッドホンは大部分)が、そういう店頭での効果を狙ってか、必要以上に音のメリハリが強く、自宅で聞くと疲れるものも多いように思います。

AIRBOWは、逸品館の音に期待してくださるお客様(と友人)のために、自宅でゆっくり音楽を聞けるようにチューニングした製品です。音を言葉で伝えることは難しく(ほぼ不可能)、そのためほとんどのAIRBOW製品はご自宅への貸し出しを承っております。また、アクセサリーを除く主要な製品に「30日以内なら返品ができる:満足度保証」をお付けしているのも、「気に入ったら聞いて欲しい」という姿勢の表れです。

オーディオ機器の音質を進化させるのは、技術(テクノロジー)ではありません。それは情熱(パッション)です。けれど、音響機器ではメーカーが大きくなるに比例して、その情熱が音ではなく利益に向けられて行くのがとても残念です。

PM11S3 Ultimateの解説後半で論及していますが、オーディオ機器で最も大事なのは「変化の表現(再現)」です。良いアナウンサーの言葉は「声の良さ(音の良さ)」と「わかりやすいアクセント」を持っています。どちらが欠けても、心地よいアナウンスには聞こえません。オーディオも同じで、前者が「音の良さ(鋭さ、明瞭度など、音としてクッキリ聞こえる部分)」に相当するならば、後者は「変化の再現性(聞き取れる音の質感の変化)」に相当します。聞いていてもワクワクしない。聞き疲れる。そういう音は大抵変化に乏しく、音色が単調です。また、再現できる「最も小さい音」が小さければ小さいほど、大きな音との対比が大きくなり音楽が躍動します。音の鋭さも大切です。こういう「スペック(データー)」に反映されない部分まで、きちんと作り込まれているか?それが大切です。

「大きなメーカーの音響機器(売れている音響機器)によいものが少ない」という友人の意見は、耳にいたい言葉です。

2015年5月 逸品館代表 清原裕介 

 

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