PCに取り込んだ音楽を高音質で楽しむには、PCと接続できる高音質DACが必要です。しかし、オーディオ用USBインターフェイスの問題から、現在96KHz/24bit入力に対応したオーディオ用USB
DACは少数です。その中でも2009年11月末にEsotericから発売された、96KHz/24bitのUSBデジタル入力に対応した高級DAC D-07には期待できます。
そこで、すでにLAN(DLNA)経由でPCに取り込んだ96KHz/24bitの高音質デジタル音声の再生に対応しているAIRBOWのAVセンター AV8003/Specialとの比較を含め、下記の環境でEsotric
D-07を試聴しました。
スピーカー
Vienna
Acoustics T3G \638,000(ペア)
DVDプレーヤー
AIRBOW DV60/Ultimate
パワーアンプ
AIRBOW MM8003/Special
接続ケーブル
LAN audioquest RJ45-G/2.0m 生産完了
同軸デジタル AIRBOW MSD-130/EVO ¥27,000
USB Real Sound
APEQ2pro 付属品
同軸デジタル接続でD-07とAV8003/Special、Ble-spec
CDとノーマルCDを比較する
DVDプレーヤー “AIRBOW
DV60/Ultimate”と“Esoteric D-07”をAIRBOW MSD-130/EVOで同軸デジタル接続し“AV8003/Special”に「7.1chアナログ入力」した音質と“AV8003/Special”と“AIRBOW
DV60/Ultimate”を直接デジタル接続した音質を比較した。最初にSONYから発売されている「ブルースペックCDデモディスク」で聞き比べを行った。
Feel
the Difference of the Blue-spec CD Jazz Selection SICP 20050-1
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→D-07→(アナログ)→AV8003/Special (CD)
緻密で厚みがある。音質バランスや、音楽的な表現にも優れている。個人的には、今までのEsoteric製品の中で最も自然に音楽が聴けると思う。雰囲気も濃く、「高級機らしい音」が楽しめた。
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→AV8003/Special (CD)
D-07と比較すると、音数がやや少なく空気が"やや薄い"感じで音楽の全体像もD-07よりも荒いが、響き成分がD-07よりも多く、音質は躍動的で楽しい。価格の差は"質"に出るが、音楽的な楽しさは大きくは違わない。
耳よりも体?に訴えてくる「AIRBOWらしいパワフルな音」が特徴だ。
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→D-07→(アナログ)→AV8003/Special(Blu-spec)
D-07はAV8003/Specialよりも一音一音が細やかだ。AV8003/Specialが良くできたDVDなら、D-07はハイビジョンの雰囲気。明らかに情報量が多いのが聞き取れる。しかし、Esoteric製品中最もバランスが良く自然なD-07だが、AV8003/Specialで聞く楽器の音は“より違和感”が少なく、それと比較すると僅かにD-07の音には違和感が感じられた。また、前後方向の立体感(奥行き)もD-07がAV8003/Specialより浅く感じられた。
しかし一般的には、AV8003/Specialの持つ「高度な自然さ」を完全に再現するのは難しく、逆にD-07の「情報量」の増加はどんな環境でも感じられるから、D-07を購入したときの満足感は充分高いことは間違いない。
ブルースペックCDとノーマルCDの差は、D-07がAV8003/Specialよりも明確だ。再生される情報量(音)の多さに、音質差が比例しているのだ。ブルースペックCDは音がクリアになり、音の輪郭がクッキリとし音の分離が良くなるが、音楽的にはそれが必ずしも良い方向には向かわない。硬すぎるブルースペックCDの音よりも、楽器の音色は明らかにノーマルCDが好ましい。さらにノーマルCDでは強調感が無くなるので前後方向への音場も深くなり、より自然に音楽が聴ける。D-07で聞き比べた限りではブルースペックCDは音を聞いている感じで、ノーマルCDは音楽を聞いている感じの印象だ。
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→AV8003/Special (Blu-spec)
S/Nが向上して、音場の見通しが良くなる。音が一段と良くなった。もう一度、ノーマルCDに戻してみると、S/N感はすこし落ちる代わりに響きが増えて、音楽がよりチャーミングになった。どちらが好きか?生々しいか?と問われれば、音質は明らかにブルースペックCDが良いが、私はノーマルCDのもつ"雰囲気"のほうが好きだ。
D-07同様、AV8003/SpecialでもノーマルCDの音が私の好みによりマッチした。
Ble-spec CD vs ノーマル CD
以前、CDとSACDハイブリッド盤で"CDの音"を聞き比べたら、SACDハイブリッド盤の方が音が良いと説明したことがあるが、ノーマルCDとブルースペックCDの違いもそれに近い。しかし、SACDハイブリッドでは音楽も良くなったのに対し、今回の比較試聴ではブルースペックCDは「音の輪郭が硬くなって」音楽に悪影響を与えたように感じられた。
この一枚では優劣の結論は出せないし、また出す必要もないが、SONYが主張するブルースペックCDとノーマルCDの「音の違い」は確認できた。
同軸デジタル接続でD-07とAV8003/Specialを比較する
さらに好きな“音楽”でEsoteric D-07とAIRBOW AV8003/Specialの比較を続けた。
マイケル・ジャクソン ヒストリー ESCA
6200-1 “HEAL THE WORLD”
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→D-07→(アナログ)→AV8003/Special
緻密なサウンドでイントロの電子音の粒子が非常に細かい。
子供の台詞は中域に厚みがあるが、高域の伸びがやや穏やかで"母音"重視の発音に聞こえる。それに続くマイケルのボーカルは、緻密で説得力がある。
ハーモニーとボーカルはきちんと分離するが、前後方向の奥行きは、やはりやや浅い。
低音の量感は多く、前に出てくるがP-0sのような塊感のある硬い低音ではなく、球状にスピーカーから低音が丸く広がってゆくる感じ。
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→AV8003/Special
イントロの電子音の粒子はD-07ほど細やかではないが、透明感や響きの美しさではD-07を上回る。
子供の台詞は"子音"がハッキリとして英語らしい発音になるが、D-07に比べると高音がやや薄っぺらく「チャラチャラするように」感じられることがある。マイケルのボーカルは、緻密さ説得力でD-07に及ばない。
ハーモニーとボーカルはきちんと分離する。前後方向の奥行きは、D-07よりも深い。
低音の量感はD-07よりも少なく、押し出し感も弱い。
矢野顕子 Super
fork Song ESCB-1294 “中央線”
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→D-07→(アナログ)→AV8003/Special
イントロのピアノは、アタックがやや不明瞭でハンマーが弦に当たった瞬間のタッチが分かりにくい。ピアノの響きが少し曇って、矢野顕子らしい澄んだ響きが出ない。低音も響きが止まらない。厚みはあるが、響きがすこしミュートされたようなピアノだ。
しかし、ボーカルは抜群に良い。緻密で滑らか。マイクを通した嫌らしさが完全に消えて、肉声を聞いているようだ。
全体的にすこし霞がかかったようにクリーミーだが、演奏は存分に楽しめる。
最後のピアノの響きが消える部分は、最後まで聞こえる感じがせずに「聞こえないノイズフロアにピアノの響きがかき消される」ように聞こえなくなったが、これはこれで魅力的な音だと思う。
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→AV8003/Special
イントロのピアノは、アタックが明瞭で音階の変化がキッチリと聞き取れる。空間に広がるピアノの響き、音の広がりはD-07よりも大きく、ピアノの響きが澄み切って美しい。低音の音階もD-07よりも明瞭だ。
ボーカルはD-07よりも密度が薄くなり、声がやや遠くなる。
ピアノの音とボーカルの音色の違いは、AV8003/SpecialがD-07よりもハッキリと聞き分けられるが、明瞭度が増加した分マイクの癖やミキシングの癖もより明確に感じられるようになった。
透明感は明らかに高い。しかし、粒子が粗く情報量は少ない。音の粒子の細やかさ情報量の豊富さでは、マイケル・ジャクソンと同じにAV8003/SpecialはD-07に及ばない。価格の差が出たと言える。
最後のピアノの響きが消える部分は、最後までずっとピアノが鳴っているように聞こえて、次の曲との間に「無音部」がないように感じられ、聴感上のS/N感がD-07よりも高く感じられた。
ピアノの音はAV8003/SpecialがD-07よりも魅力的だが、ボーカルはD-07が魅力的だった。
ディスクをDVDオーディオ(96KHz/24bit)に変えて
引き続き同軸デジタル接続でD-07とAV8003/Specialを比較する
DVD AUDIO SAMPLE DISK 、 DAP-1 “ホワッツ・ニュー/リンダ・ロンシュタット”
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→D-07→(アナログ)→AV8003/Special
CDと比べて高域が伸びやかになって空間のクリーミーな濁り?もやや低減されるが、全体的な音質はCDと大差がない。
D-07で聞くブルースペックCDがノーマルCDの1割り増しとすれば、DVDオーディオはノーマルCDの3割り増しくらいだろうか?音の差は充分に感じられるが、それが決定的なものとは思えない。
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→AV8003/Special
CDでは感じられたD-07との情報量の差がグンと小さくなる。
空間は相変わらず透明で、高域の見通しが抜群によい。ボーカルも濃くなりリスナーとの距離も近くなる。
D-07では3割り増し程度に感じられたノーマルCDとの音質差が、AV8003/Specialでは5割り増し以上に感じられ、その音質差もかなり決定的と感じられる。
情報量は依然D-07よりも少ないのだが、高域のレンジの広さや透明感がそれを補い、両者の音の差がかなり小さくなった。CDを聞くためならAV8003/SpecialにD-07と使いたくなるが、DVDオーディオではD-07は「あえてなくてもかまわない」と感じるように変化した。
DVDをPCに取り込んた音声(48KHz/16bit)と
それをアップサンプリングした音声(96KHz/24bit)を
USB接続でD-07、LAN接続でAV8003/Specialに入力した音質と
CDとDVDを直接DVDプレーヤーで演奏しその音声(44.1KHz/16bit)を同軸デジタルで入力
したそれぞれの音質を比較
平井堅 うた馬鹿 (CD+DVD) DFCL
1330-2 “思いがかさなるその前に”
・PC→(USB)→D-07→(アナログ)→AV8003/Special
PCを立ち上げWindows
Media Playerから、44.1KHz/16bitと96KHz/24bitを聞き比べるが、驚いたことにその違いはほとんど分からない。念のためD-07のディスプレイで確認すると、サンプリング周波数は44.1/96の切り替えが確認できるから間違いなく音声が切り替わっていることが確認できた。
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→D-07→(アナログ)→AV8003/Special
音質があまり良いとは感じられなかったのでCDとDVDをDV60/Ultimateで演奏し、その音声を同軸デジタルでD-07に入力してPC/USBとの音質を比較した。
DVD(同軸デジタル/工場出荷設定)
D-07の設定を工場出荷の状態にしてCDとDVDを聞き比べると、CDよりも明らかにDVDはレンジが広く、伸び伸びと音楽が聴けた。
DVD(同軸デジタル/オーバーサンプリング 2/4fs)
次にD-07の「オーバーサンプリング」の設定を「2/4fs」に切り替えて比べたが音質はほとんど変わらなかった。
DVD(同軸デジタル/DACモード DSD)
DACのモードをDSDに切り替えると、音源が変わっていないのにパソコンで音源をアップサンプリングしたときのようにFレンジ(高域方向の音詰まり)のストレス感が消えて、より伸びやかに音楽が鳴るようになった。
従来のEsoteric製品でテストしたときには、DSDモードは音数が少なくなる傾向があったが、D-07では音数も多くなる。この音なら積極的にDSDコンバートを使いたい。
D-07によるCD/DVD(同軸デジタル)とPC(USB)の音質比較結果
D-07でDV60/Ultimateから同軸デジタルで直接出力したCD/DVDの音質と、DVDをPCに取り込んで(96KHz/24bit)にアップサンプリングした音質をUSB接続で比較したところ、DVD(同軸デジタル-DSDアップコンバート)の音質が最も良かった。この音を100とすると、USB(96KHz/24bit)のサウンドは、90くらいだった。しかし、この「-10」は、を凝らさないと分からない小さなものである。
・PC→(LAN)→AV8003/Special
D-07で得られた最高音質「DVD(同軸デジタル-DSDアップコンバート)」とAV8003/Specialの「LAN経由でDVD(96KHz/24bit)の音源」を比較した。
「DV60/Ultimateから同軸デジタル出力したCD」による聞き比べで、D-07と少なくない情報量の差が感じられたAV8003/Specialだが「LAN経由でDVD(96KHz/24bit)を入力」すると、その音はD-07にかなり近くなる。
若干、音の粒子が粗い様に感じられるがほとんど気にならないレベルにまで近づいたAV8003/Special/LAN接続では、D-07/DVD(同軸デジタル-DSDアップコンバート)との音質差を気にすることなく、澄みきった伸びやかな音で音楽を楽しめた。
・DV60/Ultimate→(同軸デジタル)→AV8003/Special
最後にDV60/UltimateからDVDを同軸デジタルで直接出力した音とLAN(96KHz/24bitアップサンプリング済)の音を比べて見た。高域の伸びやかさや切れ味は、DVDが明らかにLANに聞き劣り音の粒子一つ一つもややぼやけてしまう。
音質が劣化し全体に薄くベールをかけたように変化するが、このソフトフォーカスな感じがかえって音楽を安心して聞かせてくれるので、これはこれで全然悪くないと思った。