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Esoteric F03A プリメインアンプ 音質比較試聴 Esoteric F03A メーカー希望小売価格 950,000円(税別)
F03Aの概要
電源部には、940VAの大型カスタムEIコア電源トランスを採用。 試聴環境 Vienna Acoustics Liszt (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す) AIRBOW N05 Ultimate (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す) AIRBOW MSS-i5 MsHD 6.7
試聴は、スピーカーにVienna Acoustics Liszt、プレーヤーにAIRBOW N05 UltimateをUSB接続でMSS-i3 MsHD6.7に繋いで行いました。試聴したソフトは、いつもの5曲です。CDとそれをリッピングしたWAVファイルをMSS-i3MsHD6.7が標準搭載する「HQ Player」で88.2kHz/24bitにアップサンプリングしています。さらに、AIRBOW GPS-10MHを使い、10MHzのクロックを送り込んで同期させています。 ※この音質チェックの方法は、Esoteric F05の音質テストに使ったAIRBOW K05X UltimateにMSS-i3 MsHDを接続していたときと同じ条件で、USB-DACだけをK05X UltimateからN05 Ultimateに変えただけになります。N05 Ultimateは、K05X Ultimateとほとんど同じ構造ですが、メカニズムが廃止された分電源に余裕ができるのか、中低音のパワー感がより高く、音の細やかさも若干K05X Ultimateを上回ります。今回はスピーカーをBeethoven Concert Grand(T3G)からLisztに変えていますが、F05(輪郭が強くメリハリ調)、F03A(滑らかで自然)という音の傾向の違いは、これらの接続機器の状況を超えて感じられるものです。 せせらぎ 鳥の声は左右だけではなく、前後方向にも展開する。遠近感も悪くない。 「生音」よりも「輪郭が強く」全体的にすべての音がハッキリ、クッキリと聞こえた「F05」とは違って、F03Aの音は滑らかで自然。鳥の声にも表情があり、明るい初夏を思わせるせせらぎが伝わってくる。 セレナード 弦楽器のまとまりは良いが、バイオリン、チェロ、コントラバスの分離は少し甘い。コントラバスの位置は、まだ少し前過ぎる。 モナリザ ボーカルとギターの関係性はきちんと再現されるが、距離がやや近い。 嫌なところがほとんどなく、上手く鳴っているが、海外製品のようなプラスアルファーの魅力は感じられない。 国産品らしく、癖のない音作りがされている。 500Miles ピアノの音は厚みがあり音色も良い。ホーカルは艶があって、厚みもある。 これだけを聞いていると、不満など無く、かなり良い音に感じられる。 けれど細かくチェックし行くと、中域に何か付帯音があることが分かる。 空間が白い靄で満たされているような、全体的にソフトフォーカスになっているような、服の上から背中を掻かれているような、そういう極薄いベールに音が包まれている。それは決して不愉快ではないけれど、ラウドネスがかかっているように中域が厚ぼったく、超高域がスッキリと抜けて行かない。 新世界より この「厚ぼったい音」は、Esotericの初号機「DシリーズセパレートCDプレーヤー」で感じていた「暖かさ」とそっくりだ。 もちろん、当時と比べると、その癖は小さく、ほとんどの場合違和感は感じないと思う。 逆に、F03Aの音に違和感を感じるなら、それを聞いているシステム(スピーカー)の音と、リスナーの耳は相当鋭い。 そういう「ほんの少しの違和感」を除けば、音は滑らかだし、広がりもあるし、F03Aは良くできたプリメインアンプだと思う。 少なくとも同価格帯の他社国産アップと比べると、より高く評価できる音質に仕上がっている。 試聴後感想 F05は透明で鋭い音。海外製品なら、PASS-LABのAB級ハイパワーアンプに似た、凜とした音に仕上がっています。 F03Aはまろやかで暖かい音。PASS-LABの創設者、ネルソン・パスが作る別ブランド品、First Wattの音に似ています。 同じメーカー製品でありながら、これほど性格の違う音に仕上がっていることに戸惑いすら感じるほどです。 プレーヤーには、「高度なデジタル技術」を投入しながら、Esotericはデジタルアンプを避けています。その結果、F03Aは、僅か30Wの純A級アンプを駆動するため、無信号時にも200Wを超える電力を消費し、発熱も相当なものです。 なぜ、このようなおかしなことが起きるのでしょう? デジタルにはハイテク、アンプにはデジタルを使わない。これが、オーディオマニアが考えている「コンポーネント高音質実現」の方程式です。AB級よりもA級の音が良い、CDのリッピングやライティングは「低速度」が良い、と考えるもの「技術」と「現実」を知らない素人の考えです。 多くの日本製品は「マーケティングの要求」に沿って作られています。だから、オーディオマニアが考えている「間違った方程式」が使われているのです。 これに対しTADは、プレーヤーのアップサンプリングを2倍(88.2kHz)ビット数を24bitに抑え、アンプには積極的にデジタルパワー素子を使っています。その結果、市場に受け入れられにくい製品になっていますが、音質は飛び抜けています。 このように「マーケティング(消費者受け)を最優先に作られる日本製高級オーディオ機器の音」は、そつなくまとまっていますが、、「奏者が一体何を表現したいのか?」その伝わりが、良くできた海外製品に比べて薄く、言い換えるなら「魂が聞こえない」製品が多いように思います。 業界を変えて考えるなら、TOYOTAが作る車も市場の要求を満たすためにコストの範囲内で順当にまとめられてはいるものの、想定しない場面に遭遇すると途端に馬脚を呈してしたり、あるいは「運転する人の心に響くものが薄い」と評価されていました。しかし、TOYOTAは国際社会でより広く通用する車を作るために、今までの路線を守りながらも「運転して面白い車作り」を目指す方向に、大きくその舵を切り直しつつあります。 これに対して、「Mazda」は「作りたいものを作り、それを市場に問う」と言う形で車作りを行ってきました。世界で唯一「ロータリーエンジン」を作り続けていたことがその証です。いつの時代も車作りメーカーの「魂」を失わなかった「Mazda」には、不遇な時代もありましたが、最近は好調です。 「作りたいものを作る」のか「売れるものを作る」のか? 本来、生活には不必要な「オーディオ機器」は、そつなくまとまっているだけなら、これから先の時代には通用しません。 物が満ちあふれている。そういう時代に残るものは「人の心を打つもの」です。 国産オーディオ製品も、スペックから脱却し、「心に響く音作り」を目指し、舵を切り直す時がやってきているのかもしれません。 F03Aは現時点の国産オーディオの尺度で図るならば、非常に良くできているプリメインアンプだと思います。 2016年7月 逸品館代表 清原裕介 |
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