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Esoteric エソテリック P-05X/D-05X CEC TL3 3.0 CDプレーヤー、トランスポーター 音質 比較 評価 レビュー 試聴

ネットワークプレーヤー 、 オーディオ専用NAS 音質比較テスト

 Esoteric(エソテリック) N-01

  

 I/O DATA fidata HFAS1-H40

  

 AIRBOW(エアボウ) N05 Ultimate 、 MNP-i5 Roon

  

逸品館では、黎明期にある「ネットワークプレーヤーの世界」をリードするために、様々な実験や研究を重ねた経験から「ネットワークプレーヤーの音質を引き出すためには、組み合わせるPCやNASの音質が最重要である」と考えています。少し前には、「ネットワークプレーヤー PIONEER N-70AEの音質テストレポート」を掲載誌、Windows PCとMac、さらには再生アプリVNCとHQ Playerの音質の違いをお伝えしました。

今回は、Esoteric N-01とAIRBOW N-05 Ultimateの音質比較と、Esotericがデモンストレーションのために用意している高音質NAS「I/O DATA fidata HFAS1-H40」とAIRBOWの高音質ミュージックPC「MNP-i5 Roon」の音質比較を行いました。

2017年8月発売のEsotericの”N-01”は、AKM歴代最高性能(2017年7月)のAK4497を搭載する、Grandioso K1のために新規開発されたプレミアムDAC モジュールを採用し、差動8回路DAC デバイス・左右独立電源を実現するK1/N-01専用設計の回路を搭載する、Esoteric「ネットワークプレーヤー」のフラッグシップモデルです。

Esoteric(エソテリック) N-01 メーカー希望小売 1,400,000円(税別) (メーカーホームページ

Esoteric(エソテリック)製品のご購入お問い合わせは、経験豊富な逸品館におまかせください。

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使われるDACチップは、「AK4490」。各チャンネル差動4回路(8出力)のパラレル/ディファレンシャル構成。電源トランスの数や容量は、N-01ほど豪華ではありませんが、対応するデジタル信号などはN-01と同一なのがEsoteric N-05です。

AIRBOW N05 Ultimateは、Esoteric N-05のパーツを約70個交換あるいは追加して、音質を高めたカスタムモデルです。

ハイレゾ・DSDに対応する「USB入力」と「ネットワーク入力(LAN)」を備えます。Roonの音声通信プロトコルには対応していません(2017年8月現在)が、AIR-PLAY機能により通常のネットワークプロトコルによりRoonと接続ができるのは、N-01と同じです。価格は、N-01のほぼ半額ですが、音質がどこまで迫れるか「直接対決」させてみました。

AIRBOW(エアボウ) N-05 Ultimate 販売価格 630,000円(税別) (メーカーホームページ

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I/O Dataが発売するfidata HFAS1は、ハイレゾ音源を楽しむために生まれたネットワークオーディオサーバーです。筐体の材質から基板設計、ひとつひとつの部品に至るまで徹底的な吟味を繰り返し、いく度もの試作と試聴を経て、製品化へとこぎつけたと紹介され、fidata(信頼)の名に相応しい高音質と快適な操作性を、一切の無駄を削ぎ落とした凝縮感あふれるボディに詰め込んだとされています。また、このモデルの登場を皮切りに「高価格オーディオ用NAS」が各社から発売され始めました。けれど、5万円程度のNAS(だいたいスマートフォンと同じプラットフォーム)と同じレベルのハードウェアーを使い、電源と筐体を強化しただけの製品を数十万円で販売されているのは、あまりにもお粗末です。その程度なら、電子工作に明るい人なら作れます。搭載されるサーバーアプリも最高音質のものを吟味しているのではなく、カスタム化が容易なものを使っているだけのようです。もちろん、これらの製品も市販されている一般的なNASと比べると音が良いのは間違いありませんが、最高級オーディオ用としては、通用するのかどうか?疑問です。

もちろん、少しでも音が良いものを、高く売るのは自由ですし、それを購入して満足できるでしょう。私が腹立たしく思うのは「それがあたかも最高の製品である!」かのようにコマーシャルすることです。I/Oが主張し、それを各種メディアが追従すれば、あたかも「それが周知の事実」のように定着します。べつにそれでも構いませんが、安易な商品を最高と信じたが故に「より良い音」、「より良い音楽体験」と出合うきっかけが消失することが、残念なのです。

だから、今回は現時点では、「正解に近い」と考える音楽用NAS(PC)のあり方を実現した、AIRBOW MNP-i5 Roonと比較することにしました。

I/O DATA HFAS1-H40 メーカー希望小売価格 320,000円(税別) (メーカーホームページ

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2017年7月に発売を開始した「MNP-i5 Roon」は、従来のモデルに比べてより一層の高音質を実現しただけではなく、話題の音楽再生アプリケーション「Roon(ルーン)」と最高音質を実現するプレーヤーアプリ「HQ Player」のW搭載と、それらの連係動作を実現したことにより、LINNから発売されている最高級ネットワークプレーヤーに匹敵する音質と機能、さらにそれに勝る使い勝手の良さを実現する、現時点で最も優れた「ネットワークプレーヤー」だと自負します。

AIRBOW MNP-i5 Roon 販売価格 460,000円(税別) (メーカーホームページ)(詳細な説明動画はこちら

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様々なテストを行った結果、オーディオ用NAS(あるいはPC)の音質は「処理能力(処理速度)」と「アプリ(ソフトウェアー)」が最も重要だと考えています。その理由はとても単純です。処理速度が速いほうが「ジッターが低減」できるからです。

ジッターという言葉が適切でないなら「レイテンシー(遅延時間)」と言い換えますが、処理速度が速ければ速いほど、すべての処理はスムースに進行し、音質劣化の原因となるジッターやノイズなどの発生が抑えられるのです。

もちろん、I/Oが主張するように筐体の強度や電源も音質に影響しますが、ハードウェアー+アプリの処理速度と精度の方が、遙かに音質に大きく影響します(この件に関しては「PIONEER N-70AEを使った、Windows vs Mac、VLC MediaPlayer vs HQ Playerの音質比較」で明らかにしています)。

だから、ハードウェアーとアプリを工夫せずに筐体と電源を強化した(オーディオグレードにした)だけの、オーディオ用NASを私は最高と判断しないのです。

ハードウェアーとソフトウェアーがどれだけ違うか、I/O fidataとAIRBOW MNP-i5 Roonの仕様比較表を作ってみました。

あれほど内部を説明するのに熱心なのにかかわらず、なぜかfidataの「CPUとメモリーの種類」は非公開です。けれど、中を空けると「スマートフォンベースの基盤、チップセット」が使われていることが分かります。USB入力も2.0が一系統しかありませんし、ファイルインデックスやファイル探索の速度もスマートフォンよりも遅いくらいです。

これに対し、最新のIntel CPUと最新チップセットに、高速のDDR4メモリーを搭載する、MNP-i5のCPUとメモリーの処理速度は、fidataの数十倍以上は早く、さらに現在最速のReal time 64bit Linuxをオーディオ専用にカスタマイズした「MsHD Vegas」がSSDに記録してOSとして搭載されます。搭載するサーバーソフトも、現在最も多機能で音質にも優れている「Roon(永年ライセンス付き)」、「Asset UPnP」の2種類に加え、USB接続用の再生アプリとして「HQ Player」も搭載します。ネットワークで使うNASになぜ「USB接続アプリ」搭載した理由は、現在ミュージック再生アプリとして最も優れていると思われる「Roon」ですが、その音質を発揮するためには接続するDACが「Roon Ready」でなければなりません。しかし、独自の通信プロトコルを使うRoonに対応させ「Roon Ready」を正式に名乗るには、かなりのコストをRoon社に支払わなければならないので、すべてのDACが「Roon Ready」ではありません。DAC側が「Roon」に対応していなければ、Roonとの接続は「AIR Play」で行われます。それでも十分音は良いのですが、DSDなどの一部の最高音質フォーマットがネイティブ伝送できなくなります。

今回テストした「Esoteric N-01」もまだ、正式にはRoonに対応していない(まだRoon Readyではない)ので、「Roon」とは「AIR Play接続」になり、DSDがPCMに変換されて再生されました。このような場合は、Esoteric N-01をRoonを搭載するPC(Roon Core)とUSB接続すれば、「ネットワーク専用のRoonプロトコル」を使わずに、データーをDACに送れるので、DSDもネイティブで伝送・再生出来るようになります。

けれど「どうせUSB接続する」なら、USBで最も音が良い再生アプリ「HQ Player」を使いたくなります。そこでMNP-i5は搭載する「RoonとHQ Playerを内部で接続できる(データーを受け渡しできる)」ようにプログラムが調整されています。

接続はUSBに限られますが、MNP-i5 RoonとEsoteric N-01をUSB接続すれば、RoonとHQ Playerを介してあらゆるファイルがネイティブで再生出来るようになります。さらに、同じデーターをさらに高音質で再生するための「HQ PlayerによるアップサンプリングやPCM-DSD変換」も使えるようになります。もちろん、その時の音質はfidataをネットワークでEsoteric N-01にに接続した場合とは、比較にならない程素晴らしいものです。

話しは長くなってしまいましたが、今回はこの話しが本当かどうか「動画」でも確認していただけるように、それぞれの条件でのアナログ出力をダイレクトにA/D変換した音をYouTubeにアップロードしています。よろしければ、ご確認下さい。

試聴環境

プリアンプ TAD C600 メーカー希望小売り価格 3,800,000円(税別)
パワーアンプ TAD M600 メーカー希望小売り価格 6,000,000円(モノラル×ペア・税別)生産完了

 スピーカー MAGICO Q1 メーカー希望小売り価格 4,000,000円(スタンド付きペア・税別)

試聴ソフト 

リザ・フェルシュトマンさん演奏の「バッハ・無伴奏バイオリンソナタ」SACDハイブリッドソフトのCD層の音声をリッピングして使いました。
バイオリンの音の細やかさや滑らかさ、高域の伸びやかさに加えて、臨場感の違いにも注目して比較しました。

ピアノの伴奏でムーンさんが歌う「500Miles」は。比較的強い圧縮(コンプレッション)がかけられ、ダイナミックレンジが狭くなっています。
狭められたダイナミックレンジの中で音楽がどれだけ大きく躍動するか、望郷の哀しみがどのように再現されるかを比較しました。

このディスクの1曲目には、最大サイズの楽器パイプオルガンが発生する広大なダイナミックレンジの音や、鋭い金管楽器に、対照的な柔らかい人間の声のなど、聞き比べに十分な種類の音が収録されています。
3曲目に聞くのは、CDから取り込んだ44.1KHz/16bitのWAVファイルです。

グレース・マーヤーさん演奏の「Root 66」SACDハイブリッドソフトのCD層の音声をリッピングして使いました。
楽器の音の違い、ボーカルの分離感、客席の歓声の広がり感や臨場感など、録音の良いこのソフトでは様々な楽器の音質や音色の変化がハッキリと聞き取れます。

ダウンロードで入手できるSACDを超える音質のDSD 5.6MHz」のこの音源は、良質なアナログマスターからダイレクトにDSDで録音され、SACDを超える音質を実現します。
44.1khZ/16bit(WAV)とは比べものにならない品質のこのファイルで、どれくらい音質がアップが実現するか比較しました。

動画による音質比較

Esoteric N-01 音質テストとI/O DATA fidata HFAS1-H40、AIRBOW MNP-i5 Roonの音質比較

Esoteric N-01 と AIRBOW N-05 Ultimate、LAN接続(Asset UPnP)とUSB接続(HQ Player)の音質比較

 

 

 (DLNA)

I/O fidata HFAS1-H40 → Esoteric N-01

 (WAV 44.1KHz/16bit)

Esoteric製のデジタル機器が鳴らすバイオリンは、「高域が硬い」、「中域のボリュームが物足りない」など、生音よりはオーディオ的(やや電気的)に聞こえることが多いですが、バイオリンの音がビオラかな?と感じるほどN-01の中域は太く、リッチな音で鳴ります。バイオリンの「木質的な感じ」もよく出て、有機的な暖かい音です。
けれど、奏者のイメージはすこし遠く、綺麗で上手な演奏を聴いているというイメージだけで「リザ・フェルシュトマン」の伝えたいイメージのようなものがあまり伝わってきません。バイオリンの直接音が強く、間接音がやや少なめだからかもしれません。

厳しい評価をすれば、そこが気になりますが、出てくる音はK-01Xで再生するこのディスクと比較しても全く遜色がない音質ですし、むしろ豊かさと滑らかさでは、それを凌駕するかもしれません。

 (WAV 44.1KHz/16bit)

イントロのピアノの音は太く、打鍵感も十分出ていますが、わずかにアタックの先端が丸く「シャープさ」にやや欠けます。

しかし、この高域がマスキングされた感じはN-01の問題ではないと思います。「I/O Fidata HFAS1の情報処理速度が不十分」なために僅かなジッターやレイテンシーが発生し、それが原因で高域が伸びきらないと思われるからです。

打鍵感の「フェルトの感じ(フェルトくささ)」がやや強いことを除けば、中低音の太さ、グランドピアノらしい重厚感は十分に出ます。この点では、従来のネットワーク・プレーヤーの音質は、確実に超えてきています。
ボーカルも暖かく、声の太さも出ていい感じですが、やはり「情緒的な部分」がやや抜け落ちている印象があります。
良い音で、整った演奏ですが、旅愁の悲しみのようなものがあまり伝わってきません。

 (WAV 44.1KHz/16bit)

パイプオルガンの「重厚感」は、さすがに重量級の高級プレーヤーの「良さ」を感じさせてくれます。ただ、教会のホール感、響きの豊かさが足りないので、小さな教会でパイプオルガンが演奏されているように聞こえます。
金管楽器は厚みがありますが、やや木管楽器のような柔らかい感じがあります。トランペットが、実物よりも大きく感じられます。けれどそれはさほど悪いことではなく、余計な鋭さが緩和されて耳あたりをよくしてくれます。

各楽器とボーカルの分離は、まずまず優れています。音の広がりは、前後左右に理想的な配分ですが、全体的にややこじんまりしています。
女性ボーカルは人数、分離感共に優れています。高域がややクリーミですが、生演奏をに近いイメージです。男性ボーカルが入ってきたところを書こうと思ったのですが、男女の区別がやや不明瞭で、知らない間に混声パートが終わっていました。
音色が単調(色彩がモノトーン)なので、感情の表現や似ている音を明確に分離するところに、やや支障が生じているのかもしれません。

 (WAV 44.1KHz/16bit)

ベースの音、ドラムの音は、驚くほど低いところからよく出て、リズムと音階の再現はとても優れています。Q1の低音再現力にも驚かされるのですが、ウッドベースの唸りが完全に聞き取れます。シンバルは厚みはありますが、やや柔らかい感じ。グレース・マーヤさんの声も少しハスキーすぎますが、まあそれはそれで心地よいものです。
ここまでの試聴では、高域の抜けが不十分で、そのため音が全体的にふわりとした柔らかい膜に包まれているように感じます。ただ、そういう「高域の抜け」をきちんと聞き取れる人は、全体の数割にも満たないかもっと少ないので、一般的にはほとんど問題とされないはずです。逆に中低域の厚みに優れる部分は、誰でも分かるので「N-01(+Fidata)の音」は厚みある重厚な音として、良い評価が与えられると思います。

ライブの楽しい感じはよく出ますが、最高域のハットするような鋭さが欠けているので、「ライブ特有のスリル」までは、再現されません。気の合ったもの同士が、仲良く楽しく演奏している感じです。

 (DSD 5.6MHz)

WAVファイルの再生で気になっていた高域の抜け感はほぼ完全に解消し、会場の雰囲気も程よく伝わるようになってきましたが、まだ間接音よりも直接音がやや強く「オンマイク(マイクと音源が違い)」に聞こえます。
コンサートホールのほぼ最前列に近いか、かなり前方の席で聞いているイメージですが、本来ならこの曲はもう少し後方の座席で聞いている感じのはずです。

WAVよりも明らかに音は良くなっていますが、Esotericらしい「やや前方で聞いている感じ」のする、メリハリ調の雰囲気がWAVよりも強くなりました。とはいえ、音の輪郭は不必要には強くはなく、Esotericらしさを残しながらも、マイルドで厚みのある音に仕上がっているように感じます。

接続機器が「fidata」ということで、ややあら探し的な試聴になり、レポートも問題点を少し多くあげすぎたかもしれませんが、ネットワーク・プレーヤーとしては、とても良い音に仕上がっていると思います。fidata HFAS1もまずまずの音だと思います。

  

AIRBOW MNP-i5 Roon → Esoteric N-01

  WAV 44.1KHz/16bit出力

気になっていた高域のベールが剥がれ、バイオリンの高域がスッキリと伸びました。

fidata HFAS1-H40では再現されなかった最高域の倍音が聞き取れるようになり、バイオリニストが弓を操作する速度や圧力、弦との角度によって「音色が変化する様子」まではっきりと伝わります。ホールの空気感、奏者の体の動きも見えてきました。
バイオリンの音に張りと力強さがみなぎり、ただ「鳴っていた音」に「意識」が宿り、fidata HFAS1-H40では伝わらなかった「演奏の魂」が伝わってきます。N-01の音が「無機的」あるいは「情熱不足」に感じたのは、fidata HFAS1-H40がN-01の本当の良さを引き出せなかったからでした。

fidata HFAS1-H40とMNP-i5 Roonで聞くバイオリンの音の鮮やかさ、音色の豊かさと複雑さには、決定的な違いがあります。MNP-i5 Roonで聞くと、リザ・フェルシュトマンさんが奏でるバイオリンが「歌って」いるように感じられます。

  WAV 44.1KHz/16bit出力

ピアノの音が出た瞬間、ホッとしました。これでこそ、グランドピアノ。ピアノという楽器はとても不思議です。ハンマーが弦に当たったときに生じる金属的な鋭い音が聞こえなければ、重い楽器が重厚で複雑な音を奏でているだけのように聞こえます。広いホールでピアノから離れた位置でそれを聞くクラシックなら、それでもある音楽は成立するのですが、奏者に近接した位置でピアノを聞くJazzでは、ピアノが持つ「アタックの鋭さ(打鍵感の鮮やかさ)」が再現されなければ、リズムや音色の変化が「単調」になってしまいます。

fidata HFAS1-H40では高域の最先端が丸くなるので、ピアノの「打鍵感」がハッキリせず、ピアニストが適当にピアノを弾いているように感じられます。その部分が改善されるMNP-i5 Roonでは、生演奏と同じようにピアニストが明確な意思を持ってピアノを正確なタイミングで奏でていることが伝わります。

ボーカルは発音が子音とリップノイズまでしっかりと聞こえ、発音の正確さが様変わりしました。
ただ「甘ったるく感じた演奏」に、緊張感と表現力が加わり、この曲のテーマである「戻れない故郷への想い」がひしひしと伝わります。特にヌーンさんが感情を込めて「500 Miles」と歌う部分では、500Milesの距離が当時は絶望的に遠い、決して帰れない距離であることがはっきりと伝わります。
良い演奏が、きちんと良い演奏に伝わること。それができていないfidataは、一般的なNASよりは音が良いと思いますが、高級オーディオ機器と呼べるレベルには達していないと思います。少なくとも140万円もするEsoteric N-01と組み合わせるには、力不足です。

  WAV 44.1KHz/16bit出力

パイプオルガンの空気を割く鋭いイメージ、高音と低音のパイプの位置関係(前後関係)がはっきりと再現され、教会らしい立体感が味わえるようになりました。また、不明瞭だった、右手と左手(あるいはフットペダル)の音階や音程の違いがはっきりして「楽譜が見える」ような鳴り方に変化します。
女性ボーカルは、静かな空間の中に浮かび上がるイメージです。男性ボーカルはそのやや後ろから聞こえてきます。fidataでは、不明瞭だった男女の声の差もはっきりとわかります。全く違う録音のソフト、全く違う楽団の演奏を聞いているようです。こういう音で鳴ってくれないと、音楽ファンは納得できないでしょう。
N-01は、聞こえない音、音の向こう側にあるものを伝えるのがやや苦手(私にはそう感じられます)な傾向を持つEsoteric製品の中では一頭ぬきでて、その部分まで踏み込んだ音を出せると思います。

  WAV 44.1KHz/16bit出力

それそれぞれの楽器の音の変化が鮮やかに再現されるようになったので、アドリブがくり広げられる「ライブ」で最も重要な「奏者の攻守の変化(楽器による会話の様子)」が手に取るように伝わります。

トランペットは周りを探るような控えめな鳴り方から、ハッキリ主役を張る鳴り方に変化します。また、日野皓正さんが吹く「トランペットの音」を聞いていれば、前半と後半のソロの部分で「音の張り」が全く変化することに気がつきます。前半では少し抑えめな音、ソロのパートでは「金色に光り輝くような晴れた音」になります。

ウッドベースは、奏でるリズムが軽やかになりました。

すべての音の「鮮度」が明らかに向上します。

シンバルの音だけを聞いていても、fidataではやはり高域がきちんと伸びていなかったことがわかります。

   ネイティブ出力

YouTubeでどこまで伝わるかはわかりませんが、NASの変更で音質が様変わりしました。
パイプオルガンの重厚な音に鋭さが加わり、教会(ホール)の響きがはっきりと再現されるようになってきました。やっと「本物らしい」音になってきました。トランペットも、肥大することなく、女性ボーカルの口元もきりりと引き締まっています。オーディオで演奏を聞いている違和感が消え、部屋が教会になったようです。
今まで聞いたEsoteric製品の中で、N-01はもっとも「本物らしい音」が出ていると思います。この音なら、ディスクをすべて処分してネットワークオーディオに乗り換えても悔いは残らないでしょう。

  

AIRBOW MNP-i5 Roon → AIRBOW N-05 Ultimate

NASはそのままで、ネットワークプレーヤーをEsoteric N-01からAIRBOW N-05 Ultimateに変えました。

  WAV 44.1KHz/16bit出力

音の密度はN-01よりも若干薄くなっていますが、バイオリンの鳴り方が伸びやかになって、より「本物らしく」なりました。
弓を止める寸前のかすれた音、複数の弦を鳴らす時の、それぞれの音量と音色のバランス。それらがすべて完璧に再現されます。この曲では、繊細で早い「トレモロ」が多用されるのですが、そのデリケートな指使いの速さと正確さが「尋常ではない」ことまではっきりと伝わってきます。
最高の楽器を、最高の奏者が演奏しているイメージ。
音質だけを比べるとN-05 UltimateはN-01に届きませんが、演奏を伝える力は、N-01に匹敵するか、あるいはそれを凌駕するように感じます。N-01の音の良さと、N-05 Ultimateの伝える力が合わされば、さらに完璧になるでしょう。

  WAV 44.1KHz/16bit出力

ピアニストが「ぽろりぽろり」とピアノを弾く雰囲気がよく出ます。

ボーカルはピアノとは綺麗に分離して、中央から抜けてきます。
音の厚みや密度感では、N-01には及ばないのですが、ボーカリストが息をするときの胸の動き、ピアニストの指に込める力の加減は、N-01よりも明瞭に伝わります。
バイオリンソロでは、バイオリンの「複雑な倍音の密度の違い」で、N-01とN-05 Ultimateは甲乙つけ難かったのですが、この演奏のリアリティーはN-05 Ultimateが優れ、目の前でボーカリストが歌っているように感じられました。
しかし、逆に音がリアルになりすぎて雰囲気がすこし薄くなった、情緒よりも緊張感が強まった感じはあります。

良い意味でモニター的ですが、N-01で聞く穏やかで甘いムードもこの曲に関しては、それはそれで良かったと思います。

  WAV 44.1KHz/16bit出力

N-01に比べ、倍音の密度が低下するので、パイプルガンの音がやや単純に聞こえてあっさりします。けれど楽器の質感はしっかりと伝わりますし、N-01ではあまり感じなかった「楽譜が見えるようなパイプオルガンの鳴り方」は生演奏にかなり近いと思います。
金管楽器は、金属の鋭さと、奏者の唇の柔らかさが両立した、いかにも良質な金管楽器が鳴っているという音になります。
男女混声コーラスの部分ではそれぞれのパートが完全に分離しながら融合して、見事なハーモニーを形作るのがよくわかります。
生演奏ではできないことですが、オーディオでは同じ演奏を繰り返し聞くことができます。再生される音が「正しければ」聞く度に蓄積される記憶が音を補完するので、聞けば聞くほど演奏の味わいが深まります。今聞いている音は、そういう音です。

  WAV 44.1KHz/16bit出力

N-01に比べ、ベースの音・シンバルの音が明らかに薄くなりました。「音の厚み(複雑さ)」の違いにN-01とN-05 Ultimateの重量差=電源容量の違いが、出てくるようです。
録音に優れたこのソフトでは、N-01の良さがN-05 Ultimateを確実に凌駕します。N-05 Ultimateでは、JAZZの躍動感の再現に求められるパワー感の創出が不足気味です。
楽団員が、すこしお腹が減っているようで、N-01よりも元気がありません。この曲はN-01が明らかに優れています。

   ネイティブ出力

パイプオルガンの大きさがすこし小さくなりました。ホールのサイズも同様です。けれど、空間の透明感、倍音構造の美しさには磨きがかかっています。
金管楽器は、美しい音で鳴りますが、CDからリッピングしたWAVデーターとDSD 5.6MHzの音の違いは、明らかにN-01の方が大きく、DSD 5.6MHzのデーターを再生しても、N-01の充実した感じには近づきません。
男女混声コーラスの精緻なイメージも、WAVデーター再生の方が良かったように感じます。N-05 Ultimateは、N-01ほどデーターの良否が音質に反映されないようです。

 (USB)

AIRBOW MNP-i5 Roon → AIRBOW N-05 Ultimate

ネットワークプレーヤーはそのままで、接続をLAN(AIR Play)から、USB(HQ Player)に変えました。

  USB・アップサンプリング出力

LAN接続でも良い音で聞けましたが、接続をUSBにすると音の鮮やかさが全く変わりました。
LANでは「良い楽器が鳴っている」という音でしたが、USBでは楽器の銘柄や、使われるゲージ(弦)の銘柄まで当てられそうなほどあらゆる音がさらに精緻になりました。
音を通じて演奏者の意識とつながるというイメージではなく、バイオリンの音を介して宇宙と繋がるような気さえします。
どこまでも静かで精緻。一切に濁りがなく透明。
夜空に瞬く星屑のように煌く音と、天の川のようにすこし濁る音。
あらゆる音が美しく、愛おしい。
あらゆる虚飾を廃し、あらゆる感情を解き放し、空っぽになった時、本当に美しいものだけがそこに残る。
こういう雰囲気でこの演奏を味わえたのは、初めてです。

気がつくと、目の前にあるのはスピーカ−(MAGICO Q1)ではなく、バイオリンそのものでした。

  USB・アップサンプリング出力

このソフトは「コンプレッサー」が使われて帯域が圧縮されているため「ピアノの音色の美しさが再現されない」のだと思い込んでいましたが、それは間違でした。

今、聞いている音は、生のピアノに圧倒的に近く、グランドピアノらしい重厚感と、楽器の王様らしいゴージャスな音色の複雑さを感じさせます。
ボーカルは歌い始める前の「イントロのピアノが鳴っている時」でさえ、出番を待っているという「存在感」が伝わってきます。

もっと言うなら、人間の体温、オーラのようなものまで伝わってくるように感じるほどです。

こういう音をオーディオから出すのが最終目標でしたが、それが実現しています。

もちろん、TAD C600+M600+MAGICO Q1もすごいのですが、「MNP-i5 Roon+HQ Player+N-05 Ultimate(USB接続)」の音は、組み合わせ価格がより高い「MNP-i5 Roon+N-01(LAN接続)」の音を圧倒します。

試聴機が持ち込まれた時にEsotericから説明を受けた「N-01は、USB入力よりもLAN入力の音が明らかに良い」という言葉を信じて、N-01とMNP-i5RoonをUSB接続して聞かなかったことを後悔しています。

断言しますが、皆様が試聴会で聞ける「Esoteric N-01 + fidata HFAS1-H40(LAN接続)」の音は、N-01が出せる最高のサウンドには程遠いものです。
これほど良い製品を作りながら、どうして「不完全なNAS」を組み合わせてデモを行うのか理解に苦しみます。

  USB・アップサンプリング出力

N-01に負けていた、N-05 Ultimateの音の密度や複雑さは「接続をLANからUSBに変えた」ことで完全に解消しました。CDから取り込んだWAVファイルの再現でも「N-01+Fidata+DSD128の音」を凌駕しています。この音なら、データー量が多く、価格も高い「DSD音源」をダウンロードで購入しなくても大丈夫です。

パイプオルガンは、パイプの中を流れる空気の流れまで感じ取れるほど精細です。女性ボーカルは人数が増え、一人一人の声が識別できそうなほど完全に再現されます。
男女の区別や、それぞれの立ち位置の違いも完璧。
音は驚くほど大きく広がり、リスニングルームが教会になったようです。
リザ・フェルシュトマンのバッハで感じたように、完璧な音。完全なリアリティーがこの曲でも実現します。
録音されたコンサートがこれほどの音で聴けるのなら、生演奏に行かなくても良いとさえ思います。
こういう「本物の音」の前では、アナログやデジタル、ハイレゾやDSDという論争はもはや意味を持たず、オーディオマニアの口から零れる、難解な言葉や数字カタカナ混じりの言葉が、すべて虚しい言い訳にしか感じられなくなります。
本物の前には、すべての虚言と論争は意味を持たないのです。

オーディオは、生演奏と同等に、あるいはそれ以上に音楽を正確かつ深く伝えられます。けれど、それを知るオーディオマニアは、ごく僅かです。なぜなら、彼らは「ゴール」を知らず、そこに「たどり着けないから」、あるいは「ゴールを目指していないから」、永遠にオーディオマニアのままなのです。もちろん、それを否定しませんし、それは幸せなことだと思います。けれど「本当に良い音楽に出会える幸せに」比べると、機械いじりがもたらす喜びは「どうでも良いこと」のように思えてしまうのです。  USB・アップサンプリング出力

LAN接続では、不足していたパワー感が出ました。特に低音の鳴り方が全然違ってきました。

ウッドベースの音が太くなり、唸りの変化がより大きくなりました。楽器の音色がより大きく変化し、それぞれが正確に躍動するので、「場の緊張感」俄然高まります。

シンバルの音はN-01よりもまだ少し細いですが、スティックの当たる位置によるシンバルの音の違い、シンシンと鳴るシンバルらしい感じがよく出ています。
日野皓正さんのトランペットも力強くなりましたし、ギターやキーボードの音も一段と冴えています。
目をつむれば、ラスト・ライブの会場にいるようですが、その臨場感は本当に「生演奏」そのものに近いものです。
あと足りないのは、圧倒的な「音圧感」でしょう。
こればかりは、生楽器にオーディオはなかなか届きません。

ネイティブ出力

パワー感のある音を表現するときに「蛇口を全開にしたような」という言葉を使います。けれど、今聞いている音はそれでは足らず「消防ホーズから水があふれ出すように」あるいは、水量に恵まれた「滝のように」と表現したくなるほどの力強さと勢いがあります。
女性ボーカルは、完全に生!生を聴いているようです。
男女混声の部分も完璧です。驚くほど音が多く、響きも豊かですが、さらにこれほどの量の音が出てくるのに「一切の濁りが感じられない」のが、より驚くべきところです。
これには、TADのエネ区トロニクスの素晴らしさや、密閉型の「Q1」の良さも大きく寄与しているでしょう。
AIRBOW MNP-i5 Roon + N-05 Ultimateもさることながら、やはり「MAGICO Q1」の圧倒的なパフォーマンスには、驚かされるばかりです。けれど、日本でしか売れていない「Q1」は、2018年に10台が生産された後、モデル完了となります。

こんなに完成した音を聞くのは、長いオーディオとの関わりの中で、そう何度もなかったのに・・・。「Q1」を売れなくなるのは、一人のファンとして、とても残念な気持ちです。

試聴後感想

Esoeric P-05X / D-05X , CEC TL3 3.0 , AIRBOW N05 Ultimate , D07X Ultimate , MNP-i5 Roon ディスクvsシリコン音質比較」の試聴後感想に書いたように、どんなに優れたDACでもトランスポーターが不十分だと決していい音が出ません。音質の向上には、DACよりもトランスポーターに注目すべきなのと同じ理由で、ネットワークオーディオでは「NASやPC」、「再生アプリ」の音質にもっと注意を払うべきです。

それが大前提ですが、Esoteric N-01は、これまでに聞いたEsoteric製品の中で「もっと熱い音」を聞かせてくれました。

また、このレポートを書き終えたのは、すでに24時を回った深夜の時間帯ですが、全く疲れることなく、レポートを書き上げられたのは、試聴の最後に一番素晴らしい音が聴けたからです。良い音と良い音楽に感謝!

2017年11月 逸品館代表 清原裕介

   

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