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Focal フォーカル XS Book Bird Dome 音質 試聴 レビュー
XS Book の概要
XS Bookは、PCやヘッドホン出力を持つポーターブル・オーディオからLineレベルでアナログ音声を入力して使うスリムでスタイリッシュな20Wアンプ内蔵スピーカーです。
Focal XS Book メーカー希望小売価格 72,000円(ペア・税別) ご注文お問い合わせはこちらからどうぞ
右スピーカーに電源とアンプが内蔵され、メガネ端子型の電源ケーブルとRCAケーブルを繋ぎます。左スピーカーは、右スピーカーとRCAケーブル1本で接続し、ご家庭で使われには十分な音量を発揮します。ユニットは口径100mmのFocalオリジナルウーファーユニット(パッシブ型と同じ灰色のコーンが使われています)と逆ドームアルミニウム振動板を採用する口径19mmのツィーターが奢られ、バスレフ方式で50Hz-22kHzの広帯域を再生します。
音質テスト
音源にはテスト中のDLNAサーバーとAIRBOW SR6007 SpecialをEthernet(サーバー/市販LANケーブル20m/スイッチングハブ/オーディオグレードLANケーブル1m)で接続し、SR6007 SpecialのプリアウトをXS Book接続して行いました。XS Bookの音量は80%くらいにしています。
First Mini Album | バッハ・バイオリンコンチェルト | True Audiophile: Best of Groove Note 2 |
2 ne 1 | ヒラリー・ハーン | Various Artists |
歌がうまく、録音も良いK-POP。平均音量アップのため圧縮(コンプレッション)が強くかけられているPOP系のソフトでは、音の重なりの分離が美しく、ボーカルのハーモニーも綺麗に収録されていますので、高級HiFiで聞いてもその良さがきちんと伝わります。 | グラムフォンのソフトなので多重マイク録音されていますが、その中では比較的音の分離に優れています。癖のない整った演奏は、バッハらしいと思います。ヒラリーハーンの美しいバイオリンと、弦楽器が重なる部分でのハーモニーの美しさに見せられる1枚です。 | グラムフォンのソフトなので多重マイク録音されていますが、その中では比較的音の分離に優れています。癖のない整った演奏は、バッハらしいと思います。ヒラリーハーンの美しいバイオリンと、弦楽器が重なる部分でのハーモニーの美しさに見せられる1枚です。 |
音質テスト結果
ウォーミングアップには十分な時間をかけてから音質テストを行いました。またこのスピーカーが使われるであろう「最も悪い環境」を想定し、共鳴するテーブルの上にXS Bookを乗せて試聴しましたが、やはりあまりにもテーブルの共鳴が大きく音が濁りすぎたので、AIRBOW WFB-0115-1を下に置いて試聴しました。
試聴した曲:Go Away
XS Bookのサウンドは中域が太く、高域は素直に伸びています。低域は以外にパンチがあって、ニアフィールドで聞いているとこんな小さなスピーカーが鳴っているとは到底信じられない良質な音が出ます。
バスレフの影響で最低域が少し膨らみますが、過剰に感じる低域の膨らみは強度の低いテーブルの上に直接乗せたのが原因と考え、テーブルの悪い響きを遮断するためAIRBOW ウェルフロートボード WFB-0115-1を使いました。
ボードの追加で高域の透明感が大きく向上し、低域の膨らみともやつきがほぼ解消しました。音の広がり(立体感)も大きく改善し、ニアフィールドで聞くXS Bookは、Focalの上級モデルと同じ方向で音作りされていることが分かりました。
XS Bookの良さは「ボーカルが太く、滑らかでニュアンスが豊か」な部分です。これはFocal製品に共通する美点ですが、日本語と同じ「母音」でニュアンスを伝えるフランス語を母国語とする彼らの好みは、日本人に実によくマッチします。声が聞き取りやすく、高域は伸びていますがキツさや硬さがありません。サランネットを付けた状態ではさすがに高域が丸すぎる感じがしますが、ネットを外すとバランスが取れます。また、ニアフィールドで聞くときが最も高域が細かく、驚くほどの音質を発揮します。しかし、1m以上離れたスピーカーからオフセットした位置では、高域が大きくドロップしてもこもこします。しかし、スピーカーからさらに離れて2m以上の距離では、再び帯域バランスが戻ります。不思議な感じですが、基本的にはスピーカーの間は1m程度でその三角形の頂点で聞くのが一番良い音のようです。
2 ne 1のボーカルは女性らしく声がチャーミングで、彼女たちの「情感」がきちんと伝わります。伴奏とボーカルも綺麗に分離します。低音は、アンプ内蔵スピーカーの良さが出てパワフルに前に出ます。Tannoyなどのパワードスピーカーとの違いは、高域が滑らかで近くで聞いても高域が耳障りにならないことです。解像度や分離感も高く、スピーカー後方へ音場が大きく展開します。ちょっとしたサラウンド感覚さえあります。
さすがにこのサイズですから、体感するほどの低域の量感まではありませんが、POPSをエネルギッシュにバランスよく聞かせてくれました。
このサイズですから交響曲などまったく期待していなかったのですが、音が出てびっくりしました。このサイズのブックシェルフ型の良くできたスピーカーをそれなりのアンプで鳴らしたのとまったく遜色ない音が出ます。 弦楽器は綺麗に分離し、高域の透明感はなかなかのものです。驚かされるのは、コンサートマスターと伴奏、バイオリンとチェロ、コントラバスのそれぞれの楽章がきちんと聞き分けられることです。 ユニゾンとハーモニーがきちんと再現され、音の広がりも非常に大きく、こんな小さなスピーカーで交響曲がシッカリ鳴って本格的にそれを楽しめる事に驚きました。1000万円を超えるスピーカーまで生産している、Focalの底力を感じさせられました。この音は、聞いて頂かなければちょっと信じられないと思います。
試聴した曲:Here's to Life
グランドピアノの打鍵音、重量感がきちんと再現されます。音量を上げるとさすがに華奢なボディーが響いてエコーが濁りますが、ボーカルとエコーの分離感はなかなかのものです。 若干プラスティックが響くような低級な鳴きを感じることがありますが、音質はこのクラスの水準を十分クリアし上級機に迫ります。ジャシンタの繊細なボーカルのコントロール、切ない声の表情がよく伝わります。このあたりにFocalの伝統的な音作りの良さを感じます。フランス映画のように、情景と表情が非常に豊かです。 パワードスピーカーとしては安価ではありませんが、FocalらしさやFocalの音へのこだわりが十分に感じられます。XS Bookは「違いの分かる人」のセカンドスピーカーになり得る、お薦めモデルです。
試聴後感想
XS Bookは、サイズと設置環境を超えて広がる「音場の大きさ」と生楽器の美しい音色が魅力のパワードスピーカーです。プラスティック成形で作られるボディーの強度を超える「低音」が入ると若干低級な響きを発生し音が濁ることがありますが、そういうソフト(主にPOPやROCKに使われる電気楽器の音)を避ければ、驚くほど良い音を聞かせてくれます。 驚かされたのは、交響曲が実にきちんと鳴ることです。スピーカー後方に音が大きく広がり、ホール感が感じられます。弦楽器の重なりや、低音部/中音部/高音部の各パートがきちんと分離します。このクラスのスピーカーでそれを実現するのはすごいと思います。 10万円以下でパワードスピーカーをお探しでROCK/POPSを中心にお聞きになられるなら、TannoyやKRKがお薦めですが、生楽器を中心にお聞きになられるなら、XS Bookが最も良い音でそれを鳴らすと思います。
Bird Systemの概要
Focal Little Bird 2.1 Pack メーカー希望小売価格 160,000円(セット・税別) ご注文お問い合わせはこちらからどうぞ
Birdはサブウーファーとアンプを内蔵する「本体」と二つのサテライトスピーカーから構成されるシステムです。本体/Power Birdにはアナログ×3(RCA×2/ステレオミニ×2)・デジタル(同軸・光)×1・ワイヤレス(Wi-fi・Bird専用トランスミッター使用)×1・の入力を持ち、35W×2のアンプ、80Wアンプ内蔵のサブウーファー(42Hz-120Hz)が搭載されています。サテライトスピーカー/Little Birdは10cmウーファーとgr生みドームツィーターを採用する小型2Wayスピーカーで再生周波数帯域は、89Hz-25kHzです。システムでは,45Hz-25kHzとかなり本格的な再生周波数帯域を持っています。
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音質テスト
音源には、AIRBOW UD7007 Specialを使用し同軸デジタル接続、RCAアナログ接続の二通りで音質を試聴しました。
音質テスト結果
AIRBOW
UD7007/Specialと組み合わせて、まずデジタル入力で音質をチェックしました。サブウーファーの音量は本体背面のつまみで可変できるので、サテライトスピーカーを鳴らしながら音量を合わせようとしたのですが、中域を聞きながら低域を合わせると低域過多になり、高域を聞きながら低域を合わせると不足気味になり、なかなかちょうど良い音量が見つかりませんでした。結果としては、「少し多い目」くらいでバランスが取れました。
十分なウォーミングアップの後、桑田バンドのCDを1枚聞きましたが高域がまったく不足してもこもこした音です。さらにアンプを納める本体に内蔵させたサブウーファーが本体と共振し、低域がかなり膨らみます。そのため低域の質感もあまり思わしくありません。
しかし、スピーカーに耳を近づけるとがらりと音が変わりました。その時のスピーカーと耳の距離は1mを切りますが、デスクトップでの使用を前提として作られているXS
Bookならまだしも、スピーカーから離れた位置での使用が考えられるBirdではこの状況はあまり面白くありません。
念のため入力をアナログに変えて音質をチェックしましたが高域がさらにドロップしたため、それ以上の試聴は無駄と判断し試聴を完了しました。
試聴後感想
今回試聴したLittle Bird 2.1 Packの音質には疑問を感じます。
低級な響きで膨らむ中低域。解像度が低く、伸びのない高域。この音質では、16万円という価格は納得できません。
この価格であれば、通販モデルのBOSEのラジカセの方がよい音だと思いますし、国産コンポでもこれよりも良い音の製品は容易く見つかると思います。まして、XS Bookの良さを知った後では、Birdの音質と価格にはなおさら納得できません。
電源ケーブルや、設置方法、接続ケーブルの変更なども試しましたが、価格相応の音質を得ることはできませんでした。
この価格帯のロッキーインターナショナル取扱スピーカーならば、Audiopro
Avanto Seriesの方が遙かに音が良く、仕上げにも納得していただけるでしょう。またAvantoにネットワーク対応レシーバーのmarantz
MCR-603やそのカスタムモデルAIRBOW Singing Boxを組み合わせて頂ければ、遙かにわかりやすい高音質で音楽を楽しんで頂けると思います。
Dome Pack 2.1の概要
Dome Pack 2.1は、FocalのChorusなどにも搭載されているFocalオリジナルのアルミニウム逆ドーム型ツィーターが搭載され、高域周波数特性が28kHzと高級HiFiスピーカーに遜色ないスペックを持つドーム型形状の小型スピーカー"Dome"と、42Hz-200Hz/100Wのスペックを持つサブウーファー"Dome Sub woofer"のセットで20万円のかなり高級な"2.1chスピーカーシステム"です。仕上げは、赤と黒から選べ、壁掛けに対応し、外観や質感も含めてかなり"POP"な製品です。1本売りにも対応しサラウンドへの発展も可能です。
Focal Dome Pack 2.1 メーカー希望小売価格 200,000円(セット・税別) ご注文お問い合わせはこちらからどうぞ
Dome の概要
口径10cmのウーファーと25mmのFocalオリジナルユニットが搭載される小型スピーカーです。スタンドと本体は分離しませんが、仰角(上下)方向の角度調整が可能です。スピーカーケーブルは、スタンド部分の底面に接続するため「壁・天井取付」時にスピーカーケーブルを完全に隠蔽できます。
音質はきめ細かく高域がスッキリと伸びていますが低域が不足気味ですから、あくまでもサブウーファーのDome
Sub Wooferとセットで使うべきものと考えた方が良いと思います。スピーカーケーブルは底のゴムを外すと表れる端子に接続します。底板を厚くしないため端子は小さめで、ケーブルを差し込んでねじ止めします。6角レンチで締め付けるねじ(緑矢印)を締めるための6角レンチは取り外したゴムカバーに取り付けられています(黄色矢印)。中央上は、スピーカーケーブルを接続し、ゴムカバーを元通りに取り付けたときの底面です。
Focal Dome Pack 2.0 メーカー希望小売価格 100,000円(セット・税別) ご注文お問い合わせはこちらからどうぞ
Dome Sub Wooferの概要
100Wのアンプを内蔵し、42Hz-200kHzの帯域を再生する本格的なサブウーファーです。カットオフ周波数と音量調整の他、位相反転(0/180)スイッチが備わります。Domeと組み合わせるときには、カットオフ周波数に「Dome」の表示がありつまみをそのマークに合わせます。音量は部屋のサイズなどで最適値が変わりますから、マークはありません。こんかいのテストでは、カットオフを「Dome」に合わせるよりも、それよりもカットオフ周波数を少し下げた(サブウーファーの高域を出ない方向にして)方が、ウーファーとのかぶりが少なく低域がスッキリしたので、その状態で試聴しました。
Dome Sub Wooferだけを鳴らして聞きましたが、高域はしっかりカットされていましたので、他のスピーカーと組み合わせても問題なくお使い頂けると思います。内蔵アンプの最大出力が100Wなので、音量も十分です。
Focal Dome Subwoofer メーカー希望小売価格 100,000円(セット・税別) ご注文お問い合わせはこちらからどうぞ
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<柔らかい> - - - - - * - - - <硬い> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
音質テスト
音源にはテスト中のDLNAサーバーとAIRBOW SR6007 SpecialをEthernet(サーバー/市販LANケーブル20m/スイッチングハブ/オーディオグレードLANケーブル1m)で接続し、SR6007 Specialのスピーカー出力をDomeに、フロントプリアウトをDome Subwooferへ接続して行いました。
First Mini Album | バッハ・バイオリンコンチェルト |
2 ne 1 | ヒラリー・ハーン |
歌がうまく、録音も良いK-POP。平均音量アップのため圧縮(コンプレッション)が強くかけられているPOP系のソフトでは、音の重なりの分離が美しく、ボーカルのハーモニーも綺麗に収録されていますので、高級HiFiで聞いてもその良さがきちんと伝わります。 | グラムフォンのソフトなので多重マイク録音されていますが、その中では比較的音の分離に優れています。癖のない整った演奏は、バッハらしいと思います。ヒラリーハーンの美しいバイオリンと、弦楽器が重なる部分でのハーモニーの美しさに見せられる1枚です。 |
音質テスト結果
試聴した曲:Go
Away
Focalらしい歯切れの良い明るい音ですが、エンクロージャーが小さいためか少し軽い質感です。セット製品にもかかわらずウーファーとの繋がりに感が感じられ、小型スピーカーとサブウウーファーを組み合わせて鳴らしている感じがします。しかし、それはごくわずかなので神経質に聞かなければ違和感を覚えることはないはずです。
Domeが良質なツィーターを使っている良さで、高域の分解能と端切れ良さはかなり心地よく感じます。最低域こそ少し伸びたりませんが、その高域のエネルギーに負けない中低域をサブウーファーが演出しています。
伴奏に使われるシンセサイザー(電子音)は少し金属的ですが、硬すぎる事はありません。サブウーファーの帯域でパーカッションが少し膨らみます。この膨らみ感は、サブウーファーのカットオフを調整しても完全には消えませんでした。いろいろやってみましたが、ウーファーとのマッチング調整は難しそうです。
音量の大小にかかわらず音像がある程度の大きさに留まり不要に肥大したり滲まないのは、エンクロージャーの形状や剛性などを含め基本をきちんと押さえて作られたFocal製品だからでしょう。パワフルな明るい音で、POPを十分楽しめました。
XS
Bookもそうでしたが、Domeもクラシックを鳴らすとびっくりするくらい良い音を鳴らします。クラシックでは、POPで気になっていたサブウーファーとの繋がりの違和感は完全に消えてしまいます。少し気になった軽めの質感も、消えてしまいました。
Domeが搭載するツィーターの能力が高いため弦楽器の高次倍音が非常に明確かつ美しく再現され、おもちゃのような外観が信じられないほど、シッカリした本格的な音で交響曲が鳴ります。
これもXS Bookと共通する美点ですが、異なるサイズの楽器(バイオリン/チェロ/コントラバス)が重なったときに、それぞれパートがきちんと分離して聞き取れるのはすごいと思います。楽器の銘柄までは分かりませんが、それぞれの奏法(弓使い)やそれに伴う倍音構造の違いはきちんと再現されます。これでもう少し低域が伸びていれば、完璧なバランスだと思います。
試聴後感想
Dome+Sub Wooferで20万円(税別)なので決して安くありませんし、Audiopro Avanto FS-20のような低価格で優れたスピーカーと比べるとその価格に疑問を感じる部分もあります。
Domeはそういう「お買い得なトールボーイ型スピーカー」と比較するのではなく、ポップな外観を持つサブウーファーが分離したスピーカーセットでとFocalらしい楽しい音質が楽しめる製品と考えるのが正解だと思います。しかし、クラシックを鳴らすと評価は一気に上昇します。小型サテライトスピーカーとサブウーファーのセットでこれほどクラシックをきちんとならせる製品はそれほど多くないと思うからです。小さなホールや待合室、あるいはお洒落なリビングでクラシックをBGM的に鳴らすには、最適なスピーカーの一つだと思いました。
2013年2月 逸品館代表 清原裕介
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