ボードの「基本的な音質傾向」を比較するために、絨毯敷き詰めの床にボードを直接置き、その上にAIRBOW
Singing Box2を置いて簡単な音質比較を行いました。
AIRBOW
Singing Box 2
ソースには、リンダロンシュタットの「For
Sentimental Reasons」を選びました。
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For Sentimental Reasons / Linda Ronstadt
ASYLUM/9-60474-2
ジャンル:ジャズボーカル(ビッグバンド)
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テストは、何も置かない状態、最も廉価なKRIPTON AB-G2500、同じくKRIPTONのAB3000、最後に新製品のFB-FA455の順序で聞き比べました。
何も置かない
サイズや重量からは考えられないほど豊かな中低音が鳴ることに驚かされる。リンダロンシュタットのボーカルの厚みもサックスの重量感ある響きも、大型コンポ並の迫力で再現される。
音の滑らかさや温かさにも、低価格品にはない高級機の味わいが感じられる。
音楽を安心して聞かせる自然なサウンドと、ストレスなく広がる音場の豊かさが心地よい。
KRIPTON AB-G2500
音の細やかさは、ハッキリと向上する。
音の輪郭成分(高周波成分やアタック成分)の明瞭度が向上し、音の芯がシッカリする。
輪郭の明瞭度が向上すると音の聞き分けが容易になり、各楽音がはっきりと分離で聞こえるようになる。
シンバルやパーカッション、バイオリンの音はクリアでシャープになる。
ボーカルやフルートなどの管楽器では、響きがやや硬質になって空気感が澄むが、その反面響きの豊かさ(混濁してふわっとした響きのイメージ)がやや後退し、楽器の響きが硬質なイメージへと変化する。
温度感は低下しないが、音が硬質な方向へと変化するため、演奏にクールなイメージが出てくる。
AB-G2500を使うことで音質は、「スタジオ」・「モニター」という言葉から連奏されるような、精緻だけれど少しの緊張感を伴う美的感覚が強い傾向へと変化した。
KRIPTON AB3000
AB-G2500同様、音の細やかさはハッキリと向上する。しかし、明瞭度の向上幅はAB-G2500の方が高い。その結果は前回のテストとやや異なっているが、AIRBOW
Singing
Box2の筐体が軽いことや筐体の剛性が低いことと関連していると考えられる。重量級の機器を設置した場合には、AB3000の方が音が細やかに感じられることがあっても不思議はないと思われる。
AB-G2500ではパーカッションやバイオリンの切れ味など、主に「アタック音(音の輪郭成分)」が強まったが、AB3000ではそれに「響きの豊かさ」も加わる。
アタックと響きの両方が強化されるので、ボーカルには切れ味と滑らかさが両立した「生々しさ」が加わり、ピアノも打鍵感と響きの透明感が増し音色の美しさが際立ってくる。
音が良くなったと感じたAB-G2500に対して、AB300Oでは「質が上がった(楽器の音色が良くなった)」と感じる方向への変化が実現する。
ボーカルの伸びやかさも自然で、ボードを使用しないときに比べて明らかに表情の抑揚(ダイナミックレンジ感)が大きくなり、音楽の動き(躍動感)がより強く感じられる。音楽の表現力(演奏のドラマ性)が大きく向上しより深く音楽に引き込まれる。
Singing
Box2で「JAZZ
VOCAL」を聞く設定の今回のテストでは、AB-G2500よりもAB3000がSinging
Box2によりマッチしているようだが、それにしてもこの変化の大きさは、かなりのものだ。
Fuhlen Coordinate FB-FA455
竹の集成材を使ったこのボードを使うと「木質的な響き」が豊かになり、音の温かさや滑らかさなどが向上する。それは、集成材を使ったKRIPTON AB3000と同じ方向の音楽的に好ましい方向だ。金属やプラスティックなどの素材を使ったボードとの違いがそこに感じられる。
FB-FA455とAB3000で印象が異なるのは「音の芯が強い」ことで、その点ではAB3000よりもAB-G2500と傾向が似ている。
FB-FA455は、KRIPTONの製品と違って特殊な「制振構造」を持っていない。そのためか、KRIPTONの製品に比べると、より「広がりが豊か(音の立体感に優れる)」に感じられる。
また、この製品には中央部に「F字」の切り欠きが2カ所あって、そこで響きを制御していると説明される。そのためか、ボードの方向(Fがハの字になっている方向)を変えると、音が前に出たり、音が後ろに展開したりと、音の広がりに違いが感じられる様な気がしたが、その差は大きなものではない。
FB-FA455は、AB-G2500の「明瞭度」とAB3000の「響きの良さ」を両立させていると言えるのだが、場合によってはそれが「どっちつかず」と感じられて「効果が物足りない」と感じられることがあるかも知れない。
この「響きの良さ」を生かすには、スピーカーのベースとして、あるいはレコードプレーヤーのベースとして使うと大きな効果を発揮しそうだ。
AIRBOW KDK−OFC−M1.85
最近の低価格製品やHDDレコーダーなどのAV機器、あるいはゲーム機などには「メガネ端子型電源ケーブル」が採用されている。電源ケーブルのグレードアップは、音質や画質の向上に大きい効果があることは広く知られているが、低価格の機器に使う電源ケーブルが1万円もするのは頂けない。
そこでAIRBOWから\3,000(税込)を大きく切る「オーディオグレード・メガネ型電源ケーブル」を発売する。ボードのテストに付け加えて、このケーブルもテストしてみた。
標準品
今回の3種類のボードを「音質の好み」で並べると、「AB3000>>FB-FA455>AB-G2500」の順序になったが、最もAIRBOW
Singing BOX2にマッチしていたKRIPTON AB3000と2番手のFB-FA455の再比較を行った後に、メーカー付属の電源ケーブルとAIRBOWの電源ケーブルの音質差を検証した。
FB-FA455からAB3000に変えると響きの厚み(倍音の厚み)が明らかに向上する。楽音の分離感は変わらないが、それぞれの音色の鮮やかさが際立ち、エネルギー感(音の伸びやかさ)も格段に向上する。
かなり効果のあるFB-FA455からの変化なのに、そこからさらにシステムを一クラス上げたと感じるくらい大きな違いが感じられる。AB3000とSinging
Box2は相性がぴったりだ。
しばらくするとボードと機器がなじんできて、響きの透明感が増してくる。当初AB-G2500にやや劣ると感じられた「明瞭度感」や「切れ味」も大きく向上する。ボード一枚で音質のみならず音楽の表現力がこれほどまでに変わるのは、今までにないほどの経験だ。
AIRBOW KDK−OFC−M1.85
標準品の電源ケーブルでも全く不満はなかったが、電源ケーブルを交換すると「低域方向への伸びやかさ」がさらに深くなる。声の質感も向上して、さらにデリケートな細やかさが再現されるようになる。質感や細やかさの向上に伴って情報量(音の数)が増大し、音の密度が高くなる。結果として、同じ曲を聴いていてもより「テンポがゆっくり」と感じられるようになる。
空間の濁りが低減して声の響きや楽器の響きの透明感が向上するが、温度感は変わらず音が冷たくなったりしない。裏側に隠れて消えていた音が聞こえるようになる。
ボーカルと楽器の分離感、それぞれの楽器の明瞭度感が向上する。楽器の音の「質」も向上し、「良質な楽器」を使っている音の良さが随所に聞き取れるようになる。
しかし、音が良くなりすぎた?せいか、標準電源ケーブルの方が「ゆったり」とした気分で音楽に浸れたように感じる部分もあって、Singing
Box2へのKDK-OFC-M1.85の導入はソフトなどとの相性により、必ずしも良い点ばかりではなさそうに思った。
後日、録音の良いクラシック(交響曲)で評価を行った時は、標準ケーブルでは聞こえなかった細かい音が聞こえるようになったことと、低域〜高域の周波数レンジが大きく広がる相乗効果で、標準(付属品)とは、次元が違う音質で音楽を楽しめて納得した。
※KDK-OFC-M1.85の画質・音質改善効果については、すでに実施した多数のテストにより問題のないことを確認していますが、量産されるケーブルを使う限り「質的なチューニング」を極限まで追えないのは事実です。そのために他のAIRBOWの高額商品と同じように画質・音質の向上が、そのまま「雰囲気を高める」ことに繋げられないことがあるかも知れません。
また、後日の再テストにより「KDK-OFC-M1.85」を充分にエイジングすれば、問題点と感じられた「硬さ」などがほぼ完全に解消することが確認できました。
総合評価
AIRBOW
Singing BOX2との相性では、KRIPTON AB3000が圧倒的な良さを発揮した。他の2機種との最も大きな違いは「音色の鮮やかさの向上」にある。「ガラス」や「竹」ではなく「木」を材料に使った良さがそこに出たように思われた。また、素材そのものを利用するだけでなく、ジルコンサンドや極小鉄球を内部に充填した特別な構造もより良い音質改善に寄与していると感じられる。
「標準電源ケーブル+AB3000」がもたらした変化は、決して後戻りの出来ない「決定的」なものであった。その変化を極端に表現するなら、CDがレコードになったと感じたほどだ。KRIPTON AB-G2500、Fuhlen Coordinate FB-FA455も音質は確実に向上したが、その変化はAB3000ほど決定的とは感じられなかった。
しかし、それはあくまでも「相性」によってもたらされた「マジック」かもしれない。違う機器や、異なるソース(音楽)を使った場合には、今回のテストの結果が簡単に覆ることもあると思うから、あくまでも今回のテストの結果は「ボードの傾向」として捉えて欲しいと思う。
オーディオ機器から発せられる「音質」は、「相性」で大きく変わる。“誰か”と全く同じ機器を使ったとしても、その“誰か”と「同じ音」は決して出ないし、決して出せない。逆に私が「セッティング」すれば、機器が変わっても似ている“私の音”が出る。楽器が奏者で音を変えるように、オーディオも「機械」や「アクセサリー」だけで音が決まるのではなく、あくまでも「使い手」を含めた「環境」による「相性」で大きく左右されるのは間違いない。