試聴装置
レコードプレーヤー
NOTTINGHAM INTERSPACE HD
昇圧トランス
AIRBOW WE−TRANS/L
フォノイコライザーアンプ
QUAD QC24P
プリメインアンプ
AIRBOW TERA POWER
スピーカー
VIENNA ACOUSTICS T3G(Beethove
Concert Grand)
試聴ソフト
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The
L・A・4
PAVANE
POUR UNE INFANTE DEFUNTE
BUD
SHANK
LAURINDO
ALMEIDA
RAY
BROWN
SHELLY
MANNE |
高音は繊細で明瞭度が高いにもかかわらず、アナログ的に柔らかい。
中音はクリアだが厚みがあって、音楽を躍動させる。
低音は量感があるが膨らまず、リズムを弾力的にはずませる。
楽器の分離感は抜群に高いが、無理に分解している感じは全くない。レコードやカートリッジ、アンプ、スピーカーなどの存在をほとんど感じさせず、あたかも生演奏を聴いているように自然な広がりと明瞭な立体感が得られる。
音像は柔らかく密度も高いがレコードでありがちな肥大した感じがまったくしない。一音一音に説得力があり、素晴らしい実在感で音楽が鳴る。楽器の生の音色に本当に近く、生演奏を聴いているようだ。
試聴ソフト
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Come
away with me
Nora
Jones
BLUE
NOTE
Music
From EMI
BTE32088
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ボーカルと伴奏の楽器の間に濃密な空気感が再現される。それは、CD/SACDでは感じられない種類のものだ。
ボーカルは非常に滑らかで暖かいが、レコードでありがちな過剰な肥大感や甘ったるさはなく、透明感も高い。
このレコードは、たいていの場合CD/SACDよりも音が悪く聞こえる。しかしLegacyで聞くと、実際にはデジタル録音されているソフトにもかかわらず、アナログ録音した「マスターテープ」を聞いているような音になる。
無理な音、不自然な音はなく、癖も少ない。そう言えば、まるでデジタルサウンドのように感じられるかもしれないが、これは間違いなく心地よいアナログの音だ。デジタルでは再現されにくい、暖かさ、空気感、雰囲気の良さを濃密に描き出してくる。
試聴ソフト
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チェリビダッケ
展覧会の絵
HQ-AUD-600
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凄い・・・。まるでコンサート会場で演奏を聴いているように、細かい雰囲気まで見事に再現される。
LA4やNORA
JONESも素晴らしいと思ったが、このカートリッジの本領は発揮できていなかった。
この情報量の多さ、この雰囲気の濃さはどうだ!それはデジタルでは出せない世界。
アナログ、レコードにいまだファンが多い理由が、Goldring
LegacyとNOTTINGHAM INTERSPACE HDでレコードを聞くと瞬時に感じ取れる。地の底から湧き上がる様に再現される弦楽器のパートに何とも言えない恐ろしさを感じ、音が出た瞬間に体ごと演奏に飲み込まれてしまう。
最近、ZYXのカートリッジを試聴した。確かに一音一音の細やかさや明瞭感ではZYX
OMEGAは、Legacyを上回るかもしれないが、雰囲気の再現性でLegacyはOMEGAを大きく凌駕する。音楽的・芸術的方向の評価でLegacyは、間違いなくこれまで私が聞いたカートリッジの中でもトップクラスの製品に比類する。
速い音は速く、遅い音は遅く、鋭い音は鋭く、柔らかい音は柔らかく、その対比のスケールの大きさが素晴らしい。
楽器の音色の鮮やかさもアナログならではの美しさだ。
チェリの振るシンフォニーの美しさと恐ろしさ、対比する芸術的表現のスケールが非常に大きく、そして見事に鮮やかだ。
聞いていて楽しいし、深い深い説得力がある。これ以上の音質は、レコードを聞くには不必要だと思う。素晴らしいサウンドでチェリが聴けた。
試聴ソフト
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Hotter
than Jury
Stevie Wonder
国内盤
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このアルバムからは“Lately”を選んで聴いた。この曲は、スティービーの中で最も好きな曲の一つで
特にZingali 1.12 + AIRBOW CD6002/Approse + Unison-research
Sinfoniaの組合せで聞くのが好きだ。
今まで素晴らしい音を聞かせてくれたLegacyだから、この曲もさぞや素晴らしいだろう!と思ってかけたのだが、そうではなかった。
高音が濁り帯域が狭い。低音には厚みがあるが、リズム感がなく、ピアノが重い。
まったく上記のシステムとは勝負にならない。この曲はCDで聞く方が遥かに良い。
試聴ソフト
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Thriller
Michael Jackson
国内盤
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アルバムタイトル“Thriller”冒頭の効果音、特に木製の扉が閉まるときの重々しいリアルな音。続く靴音の実在感が凄い。ここまでは良かった!
しかし、楽曲に入るとベースセクションは弾むのだが、高音の切れ味がもう一歩足りないし、高音の硬さ(芯の強さ)が足りない。明瞭感が不足するのでボーカルはやや後ろに下がってしまう。
楽しい音だが、ややパンチ力に欠けた。
総合結果 |
Goldring
Legacyは、情報量が豊富なカートリッジだ。
メーカーの説明にそぐわず、レコードの溝に刻まれた「音楽(決して音ではない)」を深く深く、非常に細かい部分まで再現する。
特に交響曲の音が重なった部分での、複雑性の再現は驚嘆に値する。弦楽器の繊細な倍音が折り重なって、空中を浮遊する様は、まるで最高の生演奏を聴いているようだ。これほどのサウンドをレコードから引き出せるカートリッジはそう多くない。
それに対し、ROCK/POPS系のソフトでは、やや高音の切れ味や明瞭度に物足りなさを感じたが、これは組み合わせるフォノイコライザーで調整可能かもしれない。
またデジタル音源のソースはNORA
JONESでは良く、スティービーでは良くなかったが、これはカートリッジの責任だけでなく、レコードのマスタリングやカッティングの問題も関わっているはずだ。
Legacyに施された高音の絶妙なチューニングは、アコースティック系楽器、特に弦楽器の倍音を「生演奏以上に美しく」再現する。だから、クラシック系のソース、アコースティック楽器が多いソースとの相性は抜群だ。しかし、ROCK/POPSは、組み合わせの相性を考えながら音作りをするか?あるいは、より適した音質のカートリッジを選んだ方が良い。
Legacyは万能ではない。しかし、再生対象を絞り込んだからこそ「生以上に生々しく音楽を聞かせる性能」を獲得した。レコードの再生芸術において万能なカートリッジはあり得ない。また、あったとしてもそれは面白くないだろう。Legacyで聞く「クラシック」、それはある種のオーディオ頂点のサウンドだ。 |
2010年3月 清原 裕介 |
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