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デノン DENON DA-10 AH-M300 AH-M400 ヘッドホン NOBLE CLASSIC 4 5 6 PK K10 Universe JH AUDIO Roxanne Unique Melody MASONE MAVERICK イヤホン 音質 比較 レビュー 価格 試聴 販売

ヘッドホン、イヤホン、音質比較テスト

 DA-10AH-MM300/400 (ご注文お問い合わせ

 Classic 3/4/5/6 、Switch PR 、 K10 Universal  ご注文お問い合わせ

 Roxanne  ご注文お問い合わせ

 MAVERIC 、 MASONE  ご注文お問い合わせ

2014年ヘッドホン関連商品の高級モデルをDENON「DA-10」にiPod Touch(CDからリップしたWAVファイル)を接続して聞き比べました。

その他の音質テストはこちら


試聴したヘッドホンアンプ

Apple

iPod Touch(第5世代)

DENON DA-10
市場売価 \40,000(税込)以下
生産完了

audioquest USB-DIAMOND 生産完了品

メーカー希望小売価格 \69,000(0.75m/税別)audioquest製品へのお問い合わせはこちらから

試聴した音楽(CDからリップしたWAVファイルを試聴)

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

 Grace Mahya Last Live at DUG
 “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

 

ヘッドホン比較試聴

DENONからダイナミック型ヘッドホンが2機種発売されました。プロトタイプをメーカー発表会で聞いた時の印象が素晴らしく、「DENONからよいヘッドホンが出る」と期待していた製品です。AH-MM300、AH-MM400をiPod TouchにDENON DA10を組み合わせ、愛用のSennheiser HD25-1 Uを基準として比較試聴しました。

まず基準器HD25-1 UをDENON DA-10と組み合わせて聞きました。以前のカナル型イヤホン試聴テストに比べると、ヘッドホンは振動板までの距離が離れるためか少し音の細かさが足りない気がします。またDA-10との組み合わせだとHD25のハウジング材質に起因するプラスティックのような響きがほんの少し感じられました。この点では、逸品館お薦めDAC内蔵ヘッドホンアンプ「HEGEL Superのほうが広がりや艶やかさ、滑らかな繊細感でHD25との相性が良さそうです。しかし、前回のテストでHEGEL Superは残留ノイズ(その後点検に出しています)が過大だったため、カナル型イヤホンテストに支障が生じたため、今回はノイズのない DENON DA10をアンプに使いました。

DA10のゲインは、音に力強さを感じる「Hi」に設定しました。また「Charge」をONにした場合と、OFFにした場合を比較するとOFFの方が若干音がクリアに感じられましたが、試聴テスト中の「バッテリー消耗による音質変化」や今後のテストでのバッテリー劣化による音質変化を考慮し、テストはDA10フルチャージした上で「Charge ON」にしています。

それぞれのヘッドホンの音質グラフは、Sennheiser HD25-1 Uを「10点」として、相対的な感覚で評価しています。

Sennheiser HD-25-1 U 実勢売価 2万円強 ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

音は素直で演奏や音楽の感覚がリニアかつ十分に伝わります。けれど、DA10で聞くHD25は、少し音が乾いた傾向があり、若干音が細かい粒子状(粉っぽい)に感じられました。

低音の量感は多くもなく少なくもなく、高音も同じ印象で帯域バランスは自然です。あと少し艶があれば・・・。そういう雰囲気で新世界が聞けました。

新世界ではそれほど低音が出るという印象がなかったのですが、この曲では低音にパンチ力があって、音がぐんぐん前に出てきます。シンバルの音も歯切れよく、抜群のリズム感です。

ボーカルは伴奏と綺麗に分離し、近くに聞こえます。また、日野輝正のトランペットのパートではトランペットが前に出ます。それに続く、各楽器のメインパートでも主役の音が少し前に出ます。その楽器の位置変化がとても自然で、生演奏をその場でヘッドホンでモニターしている雰囲気です。とても良い音でRoot66が楽しめました。

 

イントロのキーボード、ギターの音が鮮やかな色彩感を伴って再現されます。低音の力強さ、量感も抜群です。

Root66でも感じましたが、HD25の良さは「各々の楽器の描き分け」と「高音と低音のタイミングの良さ」にあります。必要な音がドンピシャのタイミングで、必要な楽器の音色の変化が適切な変化量で再現されます。

本当に自然で楽しい音です。

 

試聴後感想

ヘッドホンやヘッドホンアンプの音が「わからなくなった」ら、一度HD25-1 Uをお聞きになられてはいかがでしょう?

HD25-1 Uの最大の長所は「音」と「音楽」に色を付けないことです。

数百を超えるヘッドホンの中から、私がリファレンスとしてHD25-1 Uを使う理由が伝わると思います。

HD25-1 Uは音楽や演奏にほとんど色付けることなく、そしてそれをとても楽しく聞かせてくれます。

唯一の欠点は「耳」を押しつぶすような小さいハウジングです。これは「現場」で使うときに、「外部の音を入りにくくする」ために必要な事ですが、そのため長時間の試聴では耳が痛くなることがあるかも知れません。


DENON AH-MM300  実勢売価 2万円中頃 ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

 B'z Pleasure  “ZERO”

MM300のイヤーパッドは柔らかく装着感に優れていますが、やや平面的なので滑りやすく、それを抑えるためか若干耳への押さえつけがキツいように思います。

基本的に素直な音ですが、HD25に比べて解像度感が低く細かい音が聞こえません。細かい音を聞き取るために音量を上げると、フォルテで音が飽和しかなりうるさく感じられます。

この曲では、MM300がもつ「曇った感じ」が強く出ます。ヘッドホンと耳の間に分厚い「毛布」を挟んでいるような音です。

本来なら歯切れ良く、弾けなければならない高音がミュートされ、JAZZが弾みません。

t>高音の歯切れが悪く、音が鈍っています。

t>中音はそれなりですが、高音の鮮やかさに欠けるので、ボーカルが不明瞭で何を言っているのか聞きとりにくい印象です。

唯一の救いは、楽器や声のトーンが艶やかに再現されることですが、鮮度や解像度が低いのがそれ以上に問題です。

試聴後感想

HD25やMM400と比べ、MM300は音が曇って感じられます。細部がぼやけて、耳栓をして音を聞いているようです。仕上げが美視差は魅力ですが、このヘッドホンよりも低価格で音質に優れる製品は他にあります。ただ、発表会で聞いた時は今回の個体よりもずっと良い印象だったので、鳴らし込めば良くなるのか?あるいは生産品とプロトタイプの音から製品が変わったのか?なんだかスッキリしない感じです。


DENON AH-MM400 実勢売価 3万円強 ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

 B'z Pleasure  “ZERO”

MM400のイヤーパッドは耳を覆うような形状に仕上げられていてずれることがありませんが、拘束感はもうすこし小さい方が好みです。また、HD25に比べて少し重いのも気になります。

音の細やかさは、HD25とほぼ同等かそれを上回り、広がり感はHD25を超えています。

音は自然で癖がなく、低音はHD25よりも少し広がりボリューム感があります。高音はしなやかで、HD25で感じた「粉っぽさ」は消えています。これでもうすこし解像度感と透明感が高くなれば言うことがありません。のあたりは組み合わせるヘッドホンアンプで確実にカバーできると思います。

Audio-technicaのフラッグシップモデルに迫る価値を感じる、よいヘッドホンだと思います。

MM300「曇り感」は完全に消えました。けれど明瞭度はHD25MM400を上回ります。

音量を少しあげてみました。音が近くなりましたが、立体感(各楽器の位置関係)は浅くなりました。また、それぞれの楽器が「同時に鳴っている」感じで、同じ音量ではHD25よりも少しうるさく感じます。

低音のパワー感はHD25よりも少し少なく、高音はHD25よりも明瞭で少し伸びるようです。

音質そのものは軽快で歯切れもよく、やや高音が強めの音を好まれるならば、HD25よりもよいヘッドホンに感じられると思います。

高音は少し騒々しいくらいクッキリしているのに、低音はやけにバタバタします。

HD25で聞くドラムは乾いてスッキリ弾けましたが、MM400のそれは湿っていてドタバタとリズムが遅れ気味です。

曲間の女性のナレーションは艶めかしく、背筋がぞくっとするほどです。

しばらく聞いていましたが、リズム感が遅れ気味でバンドがへたくそに感じられました。ROCK好きにはあまりお薦めできないかも知れません。

試聴後感想

外観が美しく、音質も繊細です。高音は少し刺激的でキラキラしていますが、高音を引き立てるのでこれはこれでよいと思います。弱点は低音が少し遅く、リズムの早い音楽を聞くと低音が遅れがちに感じられることです。

基本的な性能が高いので、組み合わせるアンプとの相性、簡単に交換できそうなケーブルなどで調整すると「好みの音」で聴けそうです。


イヤホン比較試聴

カナル型イヤホンの基準には、生産完了になってしまった愛用のイヤホン「audio-technica ATH-CK90PRO2」とほとんど同じ音質の「ATH-IM02」を選びました。このモデルには「バランスド・アーマチュア型」という構造が採用されています。まずIM-02をDENON DA-10と組み合わせて聞き、DA10のゲインは音に力強さを感じる「Hi」に設定しフルチャージ状態にした上で、「Charge ON」にしています。

それぞれのイヤホンの音質グラフは、IM-02を「10点」として、相対的な感覚で評価しています。

audio-technica IM-02  実勢売価 1万円中頃  ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

ダイナミック型ヘッドホンと比べるとカナル型イヤホンは音が近くから聞こえます。けれどATH-IM02は、カナル型としては望外とも言える自然な音の広がりを持ち、頭の中で音が鳴る感じがありません。

以前は「メガネの蔓と干渉して嫌だ」と評価した、耳かけ型補助具ですが、今回はカーブの設定が上手く行った?のか、メガネとの干渉がありません。逆ににこの「耳かけ」のおかげでイヤホンがケーブルで引っ張られることもなく、安定して音楽が聞けました。

音の細やかさはHD25とほとんど同じくらいですが、小さい音はより振動板が鼓膜に近く、イヤホンが耳に密着するIM-02のほうが、当然ですがハッキリ聞き取れます。

色彩感(音色の再現性)はHD25とほぼ同等か、HD25がやや優れる感じ。低音の量感もほとんど同じ。高音の明瞭度と伸びやかさも似ています。

これでもうすこし広がり感があれば申し分ありませんが、そこはイヤホンの限界でしょう。

十分しっかりした音で、演奏と音楽が楽しめました。

HD25と比べるとIM-02は中高音の細やかさと、質感の繊細さで勝ります。低音もよく出ていますが、低音の押し出しやドライブ感はヘッドホンのHD25がイヤホンのIM02に勝ります。

IM-02はHD25と比べると全体的に「音が近く」、演奏がタイトに感じられます。このあたりは好き嫌いもあると思いますが、カナル型としては開放的で楽しい音でRoot66が鳴りました。

高音にもう一歩切れ味が感じられれば完璧ですが、十分にJAZZを楽しめる音です。

 

愛用のATH-CK90PROはジムで運動中、RockやPOPSを聞くのに使っています。

それはCK90PROの低音のパンチと立体的な音の広がり感が気に入っているからです。おなじ「バランスドアーマチュア型」を採用する「IM02」は見事にその良さを踏襲しています。

低音のパンチ感!ギターのドライブ感!ボーカルの色彩感、バランスが良く、表情が豊かで躍動的。

1万円半ばから後半で手に入れられるイヤホンとしては音質でIM-02に勝るモデルを探すのは難しいでしょう。

試聴後感想

このヘッドホンは良いです!低音がしっかり出て、中音に厚みと表現力があります。圧倒的なパワー感も高く評価できます。

かけ心地は、イヤホンから出ている「蔓」が長すぎるように思うのと、その蔓が容易に変形するのが気になりますが、メガネをかけていても「蔓」が邪魔にならず、イヤホンがケーブルに引っ張られないのも高評価です。

愛用のATH-CK90PRO2に変えて使いたくなりました。カナル型一押しモデルです。  

以前の評価でメガネをかけていると使いにくいと評価したIM02ですが、今回なぜかメガネとはそれほど干渉せず使えることがわかりました。この点は、お詫びして訂正しなければいけません。


Noble Classic 3  メーカー希望小売価格 \36,944(税別)ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

今回拝借したNobleの試聴機には、すべて「赤プラグ」が装着されていましたのでその状態で試聴しました。

装着感には違和感がなく、音のバランスもIM02と似ていますが、若干音の細やかさが落ちる感じです。また、高域のノイズ感(衣擦れの音など)が、IM02よりも強調されて聞こえます。中音と低音には若干の曇りが感じられますが、音楽の流れや演奏の変化はキチンと出ます。

音との音の間にある「空白」の部分の気配は、IM-02よりも濃密に感じます。

音そのものはIM02Classic 3(以下C3と表記)を上回りますが、C3も音楽の表現力では決して負けていない感じです。

C3はプラグの密着性がIM02よりも低く、そこから若干音が漏れて消える感じです。イヤホンを外すときに、IM02はなかなか外れずピタリと吸い付いているのですが、Nobleのすべてのモデルは簡単に外れて落ちます。このプラグの密着性の差が音に出るので、試聴時にできるだけイヤープラグを密着させるのにかなり苦労しました。

前回、Noble W4をテストしたときは、この赤いイヤープラグの装着感が優れていただけに、今回のこのマッチングの悪さは腑に落ちません。

IM02と比べC3は高域の歯切れがよく、シンバルの音がクッキリしています。低音はIM02が豊かで、C3ではベースの音量が不足して感じられました。拍手もハッキリし過ぎて、若干高域が少し耳に付きました。

Root66で低音不足を感じさせたC3ですが、ZEROでは意外にしっかりした低音が出ます。けれど、このソフトでは中音がベールに包まれたように感じられ、ボーカルが曇っています。

また、IM02に比べ広がり感が不足し、強い音が頭の中に叩き込まれるように感じられました。

試聴後感想

Noble Classic3は、聞く音楽や音によって印象ががらりと変わります。バランスが良いと感じたり、まったく悪く感じられたり、かなり大きな差が感じられました。

ただ、出るべき音はしっかり出るので、生演奏(生音)のバランスを知らなければ、このイヤホンの「バランスが偏っている」と感じられないかも知れません。そんなときは、IM-02やHD25と比べてみてください。Classic3の「個性」に気付けると思います。

 

 

Noble Classic 4  メーカー希望小売価格 \46,204(税別)ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

Classic3と同じイヤープラグにもかかわらず、C4はイヤーパッドの密着性が不足気味です。音が隙間から漏れて、低音がかなり減っていま。

高音も同じで、Classicよりも高音の質が低い感じで、密着性がなかなか改善しません(イヤープラグは、テクニカIM02の方がよくできています)。

何度か装着をやり直し、イヤホンを手で押さえながら聞いてみたりしながら、無理矢理耳に詰めるとやっと密着しました。それでもC3より低音が少なく、中音も痩せて感じられます。

高音は細やかですが、中低音が痩せているので細く、硬く感じられます。

耳の後にケーブルを回す構造のおかげで、ケーブルにイヤホンが引っ張られず、音が変わらないのはよいのですが、イヤープラグをきちんと密着させているにもかかわらず、中低音の力が逃げていくような感覚は、Noble W4では感じられなかったものです。

イヤホンを手で押して密着性を変えても、全般的に中低音が不足します。高音はClassic3よりも明らかに改善し、音が細かく歯切れもよくなりました。けれど、ハイ上がりのC4の音はJAZZに合いません。

やっぱりどこかから音が漏れているように中低音が痩せてしまいます。

高音が硬く、針のように鋭く頭の中に突き刺さります。

ボーカルはボディーが弱く、細い金切り声です。

あまりにも高域のエネルギーが強すぎます。

試聴後感想

中低音がすかすかで、バランスがあまりにも高音よりです。アンプなどを変えれば改善するのかも知れませんが、今回の環境では「スピーカーのようなバランス」では鳴りませんでした。  それにしても「外装」だけが違うはずの以前テストした「W4」とC4はどうしてこれほど音が違うのでしょう?それが持ち「ロットによる違い」だとすれば、看過できない差です。

 

Noble Classic 5  メーカー希望小売価格 \64,722(税別)ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

Noble Seriesは、僅か1万円の価格差で3.4.5.6の4モデルがラインナップされていますが、これほど細かいラインナップが必要なのでしょうか?

今回の試聴でC3とC4では、C3の方が好ましく思いましたが、C5はC3よりも明らかに音が良く、IM02と比べても音の細やかさで勝ります。

低音はIM02とほぼ同じ量感ですが、低音楽器の響きが長くなりました。また楽器の分離感も向上しています。

高音も細やかで滑らか。楽器の音の鮮やかさでも勝っている印象です。質の高い透明感溢れるサウンドで、新世界を楽しめました。

イヤープラグの密着感はモデルを変えても相変わらずで、感心しません。

C5はC4よりも低音がしっかり出ます。グレース・マーヤさんの声も太くなり、彼女らしい肉付きの良さが出てきました。高音は少し控え目になりますが、バランスが整いました。

C3/C4で聞くこの曲は、バランスが悪く不満だらけでしたが、Cは見違えるようなウェルバランスでこの曲を鳴らします。

基準器のIM02と比べた場合、好みとしては音が鋭すぎるように感じますが、この切れ味や明瞭感はIM02には感じられなかったものですから、価格なりによい音が出ていると評価できます。逆にC5を基準にすれば、IM02の音は少し鈍く感じられるでしょう。楽器の音色も鮮やかになり、楽しくJAZZが鳴りました。

イヤープラグの密着感の不足を解消するために、耳を上に引っ張ると途端に低音が出るようになりました。けれど、それでは高音が曇ってしまいます。どうも今回のイヤープラグは上手くありません。とにかく、イヤープラグの装着感を調整しながら、一番気持ちよく音を聞ける位置を探しました。

IM02と比べて、C5は高音がかなり硬く刺激的です。低音も若干少なく、IM02が持っていた「広がり感」が不足しがちです。

C5でこの曲を聴くと高音のキツサと相まって音が頭の中に突き刺さる感じです。録音が悪い!と言えばそうなのかも知れませんが、ソースやアンプを選ばないIM02の懐の深さが一般的にはより広く受け入れられると思います。

試聴後感想

C5は高音が強く、頭の中に突き刺さります。「難聴」については先に書きましたが、刺激の強い高音を聞き続けると「耳がぼけてしまい」、鋭い音に対する感度が低下します。それは強すぎる刺激を脳に届けない(脳を痛めない)ようにするための正常な生体反応ですが、この状態では細かい音、高音が聞き取りにくくなります。難聴ではなく「耳の癖」であれば、正しい音/自然な音を聞くことで穏やかに回復しますが、その状態で「ハッキリ聞こえうる音」を聞き続けると元に戻らなくなります。イヤホン選びを間違うと、難聴を併発します。C5の音は、すこし危険な領域にあるかも知れません。

 

Noble Classic 6  メーカー希望小売価格 \100,000(税別)ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

音が出た瞬間からC5との違いが感じられます。

低音の量感はそれほど大きな差がありませんが、高域方向の解像度感が一気にアップし、聞こえなかった細かい音がいっぱい聞こえます。今までのイヤホンでは感じられなかった「場の気配感、空気の動き」のようなものまで感じられます。

いささか「過剰」な感じもしますが、ホールの一番良い席でコンサートを聴いている感じです。

フルートの音の鮮やかさが印象的な明るく元気な音で新世界が鳴りました。  

低音が比較的良く出たC5と比べても、C6はさらに驚くほど低音が出ます。気になっていたイヤープラグ付近からの音漏れも完全にありません。

今回のClassic Seriesの試聴では、私のイヤホンの装着方法が悪いのか、あるいはNobleのイヤープラグの癖が強いのが、装着するたびに音がまったく変わってしまって困りましたが、C6はそれも治まりました。

Root 66を聞くC6の音はとても素晴らしく、IM02に戻ろうとは思えません。すべての音は明快で力強く、ドラム(ハイハット)の圧迫感はしびれるほどです。圧倒的に躍動感溢れる音質で、Root66が楽しめました。

イヤープラグの良好な装着感のまま、楽曲を先ほど聴いた「新世界」に変えてみました。想像とは違って音の印象は、先ほどとほとんど変わらなかったので、C6以外のモデルもプラグの密着性能が原因でなく、単純に音楽とのマッチングによってがらりと印象が変わっていたようです。  

Classic3/4/5の高音はキツく刺激的でした。C6もその傾向はありますが、3/4/5に比べて中低音が圧倒的に肉付きよく、音量をさほど上げなくても音楽の雰囲気が出るようになります。

ボーカルの稲葉さんの声も、プロっぽく太い声になりました。

IM02と比べると広がり感や低音の響きが不足しますが、それはC6が少ないのではなく、低音増幅チャンバーを持つIM02が「持ち上げられている」からです。

個人的にC6の音は、高域の刺激が少し強すぎる気がしますが、Classic Series中最もHiFiで高音質なことは間違いありません。

試聴後感想

C6はClassic Series中最もバランスが良く、音も細かく仕上がっています。ただとても高音質ですが、少し高音が強すぎるので、組み合わせるアンプの高音の質、聞く時の音量に注意が必要かもしれません。わかりやすい高音質イヤホンだと思います。

 

Noble SWITCH PR  メーカー希望小売価格 \72,222(税別)ご注文お問い合わせ

あまりに刺激が強く、聞き続けることができなかったため、評価できず。

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

PKは他のモデルに比べると能率が少し低いのか、音が小さくなりました。そこで音量を上げてみましたが、細かい音は聞こえるものの低音が痩せ気味で、あまり面白くありません。この音であれば、Classic3/6の方が安心して音楽を楽しめると思います。  

やはり低音がまったく出ません。スカスカの音です。高音はキンキンとうるさく、安物のイヤホンで音楽を聞いているようです。

そこでDA10のゲインをノーマルに変えました。少し低音が出るようになりましたが、高音が突き刺さるようにうるさく、耳を痛めそうなので試聴を中止しました。

やはりこのソフトでも低音がまったく出ません。

高音は荒れていて硬く、突き刺さります。  

試聴後感想

高音が強く刺激的でうるさく、中低音はすかすかで、スピーカーとはまったく異なるバランスでした。数分と聞いていられず、試聴後、頭がふらふらしたほどです。  

  

Noble K10 Universal  メーカー希望小売価格 \175,741(税別)ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

今回試聴したNoble製品中、最も音が細かく、バランスにも優れています。

楽器の色彩感の再現性が素晴らしく、カラフルかつゴージャスな文句の付けようのない音質で新世界を鳴らします。

価格を考えるとコストパフォーマンス的には「Classic3/6」が優れているように思いますが、どうしても最高の音が欲しい!とお考えなら、このモデルしかないでしょう。所有欲が満たされる音で新世界が鳴りました。  

シンバルの高音が細かく、キラキラ印象的な鳴り方をします。トランペットは、演奏者の唇の動きが見えるようです。ボーカルも驚くほど表情が細やかで、Universalの解像度や情報量が桁違いに優れている事が感じ取れます。

ただこれほどの音になるとさすがにアンプがDA10では物足りなくなりました。もっと質の高いヘッドホンアンプの必要性を感じます。

レンジの広さ、音の細かさ、立ち上がり立ち下がりの早さ、圧倒的に高音質です。オーディオ用スピーカーに例えるなら、MagicoQ Seriesに近い高性能なイメージです。

DA10とこのソースとの組み合わせでは、Universalから出てくる音は「ノイズ」でしかありません。

これは音楽ではありません。  

ソースの悪さがまともに露呈する感じです。

試聴後感想

Universeは、驚くほど高性能なヘッドホンです。

けれどその結果として、駆動するアンプ、ソフトの「粗」をストレートに出します。

音楽鑑賞には「やや過ぎた高性能イヤホン」ですが、所有欲は満たされると思います。  


Unique Melody MAVERICK  メーカー希望小売価格 \108,000(税別)ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

Noble製品に比べてMAVERICKは低音が良く出ますが、中高域の細やかさ・透明感の高さはではNobleがMAVERICKを上回っていた印象です。

イヤホンが少し大きく重いのですが、装着感は良好で耳にピッタリとフィットします。

例えば、MAVERICKの音が愛用しているCK90PROUや今回の基準器としたATH-IM02と比べて、断然優れているかと問われれば、価格ほどの音質差はすぐには感じられないかもしれません。けれど、バランスが良く繊細で音色も美しいその音を聞いていると「買って良かった」という気持ちが徐々に沸き上がってくるはずです。フォルテシモよりもピアニシモがより強く印象に残りました。MAVERICKは小さな音まで綺麗に聞かせてくれます。

イヤホンのハウジングが大きいためだと思いますが、低音が少し膨らんで遅れがちです。バスレフのスピーカーの低音のようです。けれど、ベースの最低音の低さは、今回テストしたイヤホン中最高!ベースのブンブンという唸りがハッキリと聞こえます。

シンバルは、スティックの当たる位置がわかりますし、ボーカルは厚みと余裕があります。中低音が少し膨らんで柔らかいですが、スピーカーでの試聴とまったく違和感なく聞ける穏やかで暖かい音です。

良いバランスで心地よくJAZZが鳴りました。

 

 

 

この曲も、他の曲と同様のイメージです。

高音はスッキリと伸びていますが、メリハリは必要以上に強くなく、私には好印象です。

ボーカルは僅かに伴奏よりも前に出て、発音がハッキリと聞こえます。

低音には重厚感とパンチ力があり、重心が低くこの曲が「太くパワフル」に鳴りますが、リズムセクションは僅かに遅れ気味です。

良くできたバスレフスピーカーとほぼ同じイメージで、この曲が楽しく鳴りました。

試聴後感想

MAVERICKはその先鋭的な外観とは裏腹に、古典的で暖かい音質に仕上げられています。大型のボディーサイズに見合う重量感溢れる低音がとても魅力的ですが、反面高音の切れ味や解像度感はそれほど高くありません。最大の魅力は「音楽を上手く鳴らすバランスの良さ」です。Nobleの上級モデルが、音質を優先するあまり「ソフトの粗を出し過ぎた(ソースによって印象が大きく変わる)」のに対し、MAVERICKは「ソフトの粗を出さずに演奏のおいしさ」を引き出すようにチューニングされています。

とんがった部分が欲しいのなら、Noble Universeに勝るイヤホンはそれほど多くないと思いますが、音楽に親しみたいならその性能ではMAVERICKがお薦めです。音楽が心地よく聞けるイヤホンです。

  Unique Melody MAVERICK/MASONに付属するパーツ類。

 

Unique Melody MASON  メーカー希望小売価格 \130,000(税別)ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

MASONのバランスは、MARERICKに比べて思いっきり高域寄りです。

弦と弓が触れるサワサワした音がハッキリと聞き取れ、クラリネットのリードの響きも聞き取れます。奏者の衣擦れの音もハッキリします。

全体的に楽音よりもノイズ(雑音)が強くなる傾向があり、それが「ライブ感(臨場感)」を高めているのですが、肝心の音楽への集中を殺ぐ感じがします。

現場との距離感はMASONが近く、音楽との距離感はMAVERICKが近く感じました。

シンバルが太く響きが長く尾を引きます。楽器のアタックが全体的に強く、ボーカルも子音が強くなります。けれど中低音もしっかり出ているので、バランスが極端に高域に寄った感じはありません。

イヤホンの刺激になれていない私には、このイヤホンの音は刺激が強く、音がかなり「キツイ」感じがします。

ルート66を聞いた感じと同じです。1/2/4kHz近辺にピークが感じられるので、高音が強くメリハリが効いていますが、そのために高域が強くうるさい感じがあります。このあたりは、個人の好みと「聴覚の敏感さ(イヤホンを大音量で続けて聞くと、細かい音が聞こえなくなります)」で判断が分かれるのでしょう。

イヤホンを使い大音量で音楽を聞き続けると、確実に耳を痛めます。けれど、そういう大音量にすればするほどMASONの良さが引き立ちます。悪魔のように、危険なイヤホンです。

試聴後感想

MAVERICKはウォームで聞きやすいバランス。MASONはハードでキツイ音。そのイメージは同じメーカーの製品とは思えないほど正反対です。  

 

JH Audio Roxanne  メーカー希望小売価格 \138,630(税別)ご注文お問い合わせ

Neumann チェコフィル  “新世界 第2楽章” 

Grace Mahya “Root 66” 

B'z Pleasure  “ZERO”

Roxanneのバランスは、MAVERICKMASONの中間あたりです。MAVERICKよりも高音がクッキリしていますが、MASONほどハードではありません。

けれど、その高音にはどことなく「プラスティッキー」な響きが感じられ、弦楽器や管楽器の「木質感(柔らかい膨らみ感)」が薄く感じられます。

シンセサイザーでサンプリングされた音楽を聞いているようです。その印象を除けば、音の細やかさ、バランスなどは高級モデルに相応しい質感に仕上がっています。

楽器のアタックの明瞭感が割と強いにもかかわらず、楽器の倍音や人間の声にすこし「スモーク」がかかっているように感じられます。

中高音の「抜け感」が少し不足しています。またそれが影響して、低音楽器ももやもやしています。

ピアノの倍音もプレゼンスが足りず、弦をフェルトでマスキングしているように感じます。

高音の響きに強調感があります。MASON1/2/4kHzが強いように感じましたが、Roxanneはそれよりも高い4/8kHzに強調感を覚えます。

ボーカルの子音は強く荒れています。全体的にキツく、雑な印象です。

ソフトの録音が原因だと言い切るなら、そういうことですが一般的な「音楽」を聞くイヤホンとしては、音の良さにこだわりすぎているように思います。

試聴後感想

Roxanneの音はかなり刺激的で、高域がキツく粗雑なイメージです。長時間聞き続けることは難しく、数分間の試聴でも頭がふらふらしました。念のため、弊社の女子社員にも聞いて貰いましたが、同様の印象でした。


イヤホンの特殊性とイヤホン難聴について

今回試聴した「イヤホン」の一部は、スピーカーで音楽を聞くのとはかけ離れた「硬くてキツイ音」でした。ヘッドホンの一部にもそういう「キツイ音」の製品はありますが、イヤホンではその傾向がより強く見られます。その理由を考えました。

・私達は身体でも音を聞いている。イヤホンでは、音を判断するための情報(刺激)が足りないのではないか?

すでに「20KHz以上の高周波が人間の脳を活性化させる」という考えは、CDを超える高域を収録できる「SACD」、「DVDオーディオ」、最近では「ハイレゾ」などの必要性で言及されています。この考え自体は本当で「ハイパーソニック エフェクト」と称され、科学者にも広く知られています。日本では「京大」などが意欲的に「ハイパーソニック エフェクト」の研究を行っています。その京大で行われた「PET」を使った実験で、オーディオマニアにとって「重要な事実」が見つかりました。それは「人間は高周波(20kHzを超える高い音)は、耳ではなく身体で聞いている」というものです。

この研究は、次のような方法で行われました。「被験者」の脳の働きを探るため「PET」という装置を使い、脳内の活動の状況を画像で直接観察できるようにして、次の二つの状況で「脳の活動」を計測します。

1.被験者はヘッドホンを装着します。ヘッドホンからは20kHz以上「聞こえない高い音」を出し、スピーカーからは20kHz以下の「聞こえる音」を出す。

2.被験者はヘッドホンを装着します。ヘッドホンからは20kHz以下の「聞こえる音」を出し、スピーカーからは20kHz以上の「聞こえない高い音」を出す。

驚いたことに「ハイパソニックエフェクト(20kHz以上の音波によって脳内の活動が活発になる)」は、「ヘッドホンから聞こえない高い音を聞かせる(1)」でなく、「身体に20kHz以上の音を当てる(2)」で発現し、(1)では発現しなかったのです。この研究により、人間は20kHz以上の高調波を「耳」ではなく「身体」で感じていると考えられるようになりました。※この実験の内容は「放送大学」で詳しく紹介されました。

※詳しくは、ハイパーソニックエフェクトの発見者である大橋力さんの対談ページをご覧ください。ちょっと難解ですが、「5.聞こえない音を聞く脳を見る」の項目でこの現象について触れられています。

この研究結果や自分自身がスピーカーとイヤホンで音楽を聞き比べた経験を踏まえ、「イヤホン」による音楽の試聴では身体(皮膚)への高周波の刺激(実際には高周波だけではなく低音も含めた音波全般の刺激)がなくなるため音の聞こえ方に偏りが生じ、それを補うため「高域過多」になりやいと考えています。ヘッドホンも同様に考えられますが、ヘッドホンは多少なりとも頭蓋の骨伝導を起こすため、イヤホンよりも高域過多の製品が少ないように思います。また、一般的に「音が良い」とされるヘッドホンの音はスピーカーのバランスと似ているように思います。

このように人間が「複数の刺激」を統合して「情報精度を高める」ことは、聴覚だけではなく味覚でも行われています。例えば鼻をつまめば食べ物の味がよくわからなくなりまが、それは脳が「味覚と嗅覚を統合して味を判断する精度を高めている」証拠です。もしかすると皮膚感覚を伴わないイヤホンでの音楽鑑賞は、鼻をつまんでものを食べているに等しく、音の判断に「より強い刺激が必要とされる=高域がキツくなる」のかもしれません。

・ミュージシャンが「騒々しいステージ上やスタジオで使うイヤホン」が「静かな環境で聞く」時にマッチするのか?

ミュージシャンやレコーディングエンジニアが聞いているのと同じ音を聞き、現場との一体感を高めたいという願望は音楽ファンなら誰しも感じる事です。だからこそオーディオファンにとって「現場の音」は、「憧れ」です。オーディオを始めた頃は、私もまったく同じように考えていました。けれどその後の現場経験、レコーディング経験、ハイエンドオーディオ機器の製作などの経験を通じ、現場と家庭環境で必要とされる音は「まったく別なものである」と痛感するに至っています。その理由を説明しましょう。

スピーカーの試聴では「店頭での大音量」と「家庭での小音量」で製品の印象がまったく変わってしまうのが普通です。それは「ダイナミックレンジの違い」が原因です。「ダイナミックレンジ」とは最大音量と最小音量の比ですが、この数字が大きければ大きいほど音楽の表現力が増します。仮に購入を検討しているオーディオセットの最小有効音量を「1」とします。店頭での音量の最大値を「100」とするなら、店頭試聴でのダイナミックレンジは「最大100(1:100)」です。家庭での音量の最大値はこれより小さく「10」としましょう。この場合のダイナミックレンジは「最大10(1:10)」でしかありません。つまり音量が限られる家庭では店頭の「1/10」の能力しか発揮できないのです。この「ダイナミックレンジ」をライブに当てはめて考えましょう。クラシックのように「生楽器が使われる(音を電気増幅しない)」場合、楽器の最大音量は決まっていますから「ダイナミックレンジを拡大し音楽に表現力を増加させる」ためには「最小値の小ささ」が求められるので、静かな環境で演奏が行われます。これに対し生楽器よりも遙かに大きな音量が得られる電気楽器(スピーカーを使う音楽)では、環境が騒々しくともそれを上回る音をだせばダイナミックレンジが確保できるので、再生音量が大きくなります(ライブハウスなど)。

家庭(静かな環境)での音楽鑑賞に必要なのは「最大音量の大きさ」ではなく、「最小音量の有効値を下げる」ことです。オーディオセットの最小有効音量が「限りなくゼロ」に近くなれば、小音量でもダイナミックレンジは無限に大きなり、小音量でも音痩せを感じずに音楽を楽しむ事ができるのです。余談になりますが、店頭でのオーディオセットの選びで重要なのは「大きな音」ではなく「小さな音」を聴く事なのです。逸品館3号館ではお客様の試聴時、「すべての蛍光灯を消す」事があります。これは蛍光灯から発生する「聞こえないほど小さなノイズ」をシャットアウトするだけで、「スピーカーから聞き取れる最小音量がぐんと下がり」オーディオセットの繊細な表現力が飛躍的に向上するからです。蛍光灯を消せば、「音の広がり」、「臨場感」が数倍以上改善するので一度お試しください。このように「現場(騒々しい)」と「家庭(静か)」では、環境がまったく異なります。

ミュージシャンが使っている高級イヤホンとして有名な「JH Audio社」の製品説明Webには次のように書かれています。

JH Audio社は「インイヤーモニター(IEM)の神」と言われるジェリー・ハービー氏によって設立されたメーカーです。ジェリー氏は、まだインイヤーモニターが普及していない当時、ヴァンヘイレンのモニターエンジニアをしていました。その際にドラマーであるアレックスにインイヤーモニター導入の検討を依頼されました。試行錯誤の末、最初の2ウェイカスタムインイヤーモニターを完成させ、他のメンバーもその高音質に驚き、またたくまに音楽業界のスタンダードインイヤーモニターとなりました。エアロスミス、ガンズアンドローゼス、ヴァンヘイレン、レディーガガ、フォーリナー、リンキンパーク、アリシアキース、ロブトーマス、ボンジョビ、ゴッドスマックなどのビッグネームはすべてJH Audioユーザーです。】

確かにこの説明を読めば「JH Audio 社製イヤホン」に憧れを持ち、それが欲しくなると思います。この「ミュージシャンが信奉する」という広告のやり方は、「楽器業界」で有効な手法として広く使われていますし、オーディオの世界でも何度となく使われてきた言葉です。これは「演奏家への憧れ」を利用した、巧妙なすり替えで「現場」=「神」だから「最高」という強引な論法で商品の音質を正当化する方法です。けれど「現場の音」と「リスナーが聞きたい音」はハッキリ異なります。まず先に説明したように「周囲の騒音レベル」がまったく異なります。さらに「音楽家」は「演奏を聴いている」のではなく「演奏に必要な情報をイヤホンから得ている」という部分が家庭での音楽鑑賞と決定的に違います。大音量下でのイヤホン試聴では「繊細さ」よりも「明瞭度」が求めらます。電気楽器系コンサートのライブ中に「繊細な音」を聞き取るのは不可能です。彼らが求めるのは、楽器演奏のタイミングを確認するための「明瞭度」です。だから、通常の音楽鑑賞に「JH AudioのRoxanne」を使った場合、明かな高域よりのバランスに感じられるのでしょう。

さらに大きな問題があります。それは「イヤホン難聴」です。まず騒音にさらされる環境での「24時間以内の労働災害安全基準」をご覧ください。85dB/8時間(騒音職場の定義)、91dB/2時間、94dB/1時間、100dB/15分とされています。106dBの安全基準は4分未満です。これ以上の時間大音量にさらされると「元に戻らない難聴」を引き起こします。けれど大音量コンサートのステージ上の音量、もしくは彼らが使うイヤホンの音量は、確実にこれらの危険水準に達しているでしょう。その音量下では、人間は一時的にせよ「聴覚感覚が変化(一部の周波数に対する耳の感度が低下する)」しています。

人間の聴覚には「自動音量調整・イコライジング機能」が備わり、大音量にさらされると耳は「感覚を保護」するために自動的に一部の感度を落とします。今回試聴したイヤホンで私が「高域が硬い」と感じた製品は、試聴リポートにも書いていますが「1/2/3/4/5/6kHz」にピークを持つと感じました。これを先ほどの24時間以内の労働災害安全基準」に当てはめて考えると、騒音にされされた場合の聴覚の低下は「3kHz〜6kHzが聞こえにくくなる」という臨床結果と一致します。言葉は悪いですが、この周波数にピークが与えられた「難聴の人が聞き取りやすい音質のイヤホン」は、普通の感覚では高音がキツすぎると感じられます。そういう「特殊な環境」、「特殊な聴覚」にあわせて作られた音が、果たして「通常の耳」の感覚にマッチするでしょうか?そういう限られた条件下にマッチするように作られた「現場用のイヤホン」を「一般的にも最高」というのは違うと思います。

話が随分長くなりましたが、今回のイヤホンの試聴で感じたことは「二つ」です。一つは「イヤホンを聞く環境の騒音値」です。静かな部屋でイヤホンを使う場合と、電車の中などの騒音下でイヤホンを使う場合には、イヤホンに求められる音質が異なるはずです。二つ目は「イヤホン難聴」の問題です。必要以上に大きな音を聞き続けると、人間の耳は「高域の感度が低下」し、それを補うために「イヤホンの音が刺激的」になります。体と心の健康を考えると「高音が過剰に強いイヤホンを日常的に使うのは危険な行為」だと、私には感じられます。

昨年私はモータースポーツで左手に回復不能な傷を負いました。幸い、日常生活や仕事にはまったく影響がありませんが、それでも私はモータースポーツを続けています。「危険」を知っても、それが「好き」だからです。けれどモータスポーツを運営し、それで利益を得るメーカーや業界がユーザーに回復できない傷を負わせてから、危険を知らせるのはあってはならないことです。先ず最初に功罪を正しく伝えて、その判断をユーザーにゆだねる。それが「正しい自己責任」だと思うのです。あまりにもバランスが偏ったイヤホンを使い続けることで、ユーザーが「難聴を発症」したら、製造メーカー、それを薦める人たちには責任はないのでしょうか?知らなかったからですませられるのでしょうか?

もちろん「音が偏っている、偏っていない」に関わらず、大音量での長時間の音楽干渉は「難聴発症」の原因になりますから、イヤホンのバランスの善し悪しと「難聴発症」を結びつけるのは短絡的で正しいことではありません。けれど、バランスの崩れた音を聞き続けるのは「体と心の健康」には良くないことです。さらに回復しないほど聴覚を損なう(難聴を発症してしまう)ことは、人生さえ変えてしまいかねないほど重大な出来事です。ユーザー(お客様)に正しい判断をしていただくために、よけいなお節介かも知れませんが逸品館は「効果」だけではなく「副作用」もきちんと伝えるべきだと考えます。

試聴結果

今回聞いたイヤホンで私のお薦めは「audio-technica ATH-IM02」、「MAVERICK」、「Noble clasic6」の3モデルです。

2015年1月 逸品館代表 清原裕介

 

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