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HEGEL H590 、 AUDIA FL THREE S ハイエンドプリメインアンプ 音質比較HEGEL (ヘーゲル) H590(生産完了品) HEGEL H90、H190の音質レポートはこちらから御覧いただけます。 AUDIA (オーディア)A級プリメインアンプ FL THREE S 逸品館がお薦めの「HEGEL」新製品、プリメインアンプH590の試聴機が国内輸入代理店のエレクトリから送られてきました。 HEGEL H590の概要と特徴 HEGEL H590は、同社のプリメインアンプの「フラッグシップ」として、130万円という高価格で発売されます。HEGELの伝統で、RCA×3、XLR×2のアナログ入力に加え、RCA/BNC各1系統の同軸デジタル入力、3系統のTOS光デジタル入力、さらにAir Play対応の有線ネットワーク入力、USB入力が備わります。デジタル出力は、BNC1系統が備わります。同軸デジタル入出力端子にあえて「BNC」を使うところにも、HEGELのデジタルサウンドへのこだわりが感じられます。 またH590は、H190と同様に「出力固定と可変のRCAアナログ出力」が各一系統備わり「DAC」としても使えますし、さらなるパワーや音質を求めるときには、音量可変出力(プリアウト)に直接パワーアンプを繋いでシステムのアップグレードが可能です。 ヘッドホン出力は備わりません。 横幅はHEGELの標準サイズ「430mm」です。高さは「H170mm」、奥行きは「445mm」と少し前後咆哮に大きめです。重量は22.0kgと高価な割には重くないのが嬉しいところです。出力は、8Ωのスピーカーを接続した場合に、300Wをデュアル・モノラルで発揮します。 HEGEL H590
AUDIA(オーディア) FL THREE S の概要 輸入代理店ホームページを編集して記載 今回試聴するFL THREE Sは、高級セパレートアンプもラインナップするAUDIA社のエントリーモデルです。A級で100W(8Ω)の出力を発揮し、メーカー希望小売価格は、HEGEL H590の約半分 580,000円(税別)です。 このアンプは、従来の機材に多く見られた「遅い音」を改善し、パワフルながら非常に早いトランジェント表現を可能にするためのAUDIAの基本設計思想「L/R完全ディスクリート、完全バランス回路、大容量トランス、そして独自開発の電流フィードバック回路」が採用され、音源信号をそのままアンプから出力するという基本的なコンセプトを極限まで追求した技術がふんだんに盛り込まれています。つまり、最新設計のデュアル・モノラル・プリメインアンプであると言うところはH590と同じです。 デジタル入力を装備しDACを内蔵するH590と違い、FL THREE Sは完全なアナログアンプでデジタルから切り離されています。 AUDIA FL THREE S メーカー希望小売価格 580,000円(税別) 仕上げは、ブラックとシルバーの2種類
H590 対応デジタル信号のチェック
少し前に試聴したH90/H190では、USB/LANデジタル入力の完成度がいまいちだったため、今回は試聴を開始する前にどんな信号が通るかをチェックしました。まず、USB入力ですが、前回Windows10との組み合わせで音質と使い勝手の悪さに辟易したので、今回はLinuxのカスタムOS「icat
MsHD」を搭載するAIRBOW MNP-i5 Roonと組み合わせて対応する信号をチェックしました。 最近では、このように「Linux USB入力」USB入力の良さが際立って来ましたが、それはオーディオ機器のUSB入力使われるチップは、「Linux」と互換性のあるインターフェイス「ALSA」が使われているためです。各メーカーから無償配布されているサウンドドライバーは、ALSAを使わずにWindowsやMac OSでチップを動かすためのものです。 しかし、ALSAも少し前までは様々なバージョンが混在して使える信号が使われるチップによってバラバラでしたが、2016年くらいからは上記のH590のように、共通してかなり高い周波数まで使えるようになっています。補足ですが、marantzやEsotericは少し前の製品から、AIRBOW ミュージックPCと搭載するHQ Playerの組合せで、DSDネイティブ/11.2MHzくらいまで通るようになっています。YAMAHAも最新モデルは、対応しています。 ※AIRBOW ミュージックPCのUSB対応について詳しくはこちらを御覧下さい。 音質チェックを動画で見る(準備中) 試聴環境 Vienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G) (現金で購入)・(カードで購入)・(中古で探す) 試聴は、スピーカーにVienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)を組み合わせて行いました。 AIRBOW ミュージックPC MNP-i5 RoonからHQ Playerを使って、AIRBOW N05 UltimateにUSB入力してD/A変換した音をアンバランス出力で「FL THREE S」で聞きました。 HEGEL H590は、接続を最初の「MNP-i5 Roon → N05 Ultimate」に戻して、直接アンバランス入力した場合と、MNP-i5 RoonからHQ Playerを使って、H590にUSB入力した場合の音質を比べました。 AUDIA FL THREE SのRCAライン入力の音質評価
せせらぎ 高域がくっきりした、明快な音質で解像度はかなり高く、音場は背後まで大きく広がる。 トラベラー ヘッドホンでこの曲を聞いた直後だろうか、まるでサラウンドのように音場が広がることにまず驚かされる。 高域ははっきりとやや強めだが、中低音にもしっかりとウエイトが載っているので、音は細くない。 No Sanctuary Here 低音が「ものすごく」出る。音場も「ものすごく大きく」広がる。それが第一印象。 やや「分離感」が勝ちすぎる傾向が感じられるが、音質のレベルは相当高い。 ピアノのタッチがとてもよくわかる。そのほかの音も素晴らしいクォリティーで再現されている。 低音は、Beethoven Concert Grand(T3G)から出ているとは思えないほど、低いところから聞き取れるし、金管楽器の輝き感、チャイムの鋭さもよく出ている。 音の細やかさ、ダイナミックレンジの広さは、CDから出てくる音とはとても思えない。 FL THREE S 試聴後感想 クォリティーの高さを求めるなら、このプリメインアンプは随分と「お買い得」に感じられます。もちろん、オーディオ的な快感だけではなく、音楽を聞かせる部分もきちんと押さえられています。MAGICOとは組み合わせて聞けませんでしたが、そういう現代的なスピーカーとよくマッチしそうなアンプだと思いました。 デジタルアンプではありませんが、デジタルアンプと変わらないほどの物理特性と、それでは引き出しにくい「艶っぽさ」が高いレベルで両立しているような雰囲気です。同価格帯の国産品や他の海外製プリメインアンプのご購入をお考えなら、その時には是非一度このアンプもチェックして下さればと思います。 HEGEL H590 USBデジタル入力音質評価
せせらぎ 音が出た瞬間、目の前に「森とせせらぎ」が出現した。 トラベラー あらゆる音は本当に素直だし、圧倒的に細やかで自然で、やはり何の不満もなく音の世界に身を委ねられるが、イントロの弦が爪で引かれ撓んでリリースされてもとどりになる様子。パーカッションの運動感覚、ピアニストの指使い、音の変化から、音源の「動き」まで手に取るように見えてくる。 No Sanctuary Here イントロのベースでは、「音階のゆらぎ」が見えてくる。メインボーカルとコーラスの位置関係は、前後左右に広がってきっちり定位するだけでなく、一人一人の口の位置や、その動きまで見えてくる。 LOVE 音源をハイレゾに変わえても、音の細やかさやダイナミックレンジなどはほとんど変化がない。そう言うとハイレゾの良さが出ていないように聞こえるかもしれないが、そうではなく通常音源がすでにハイレゾの領域に入っていたのだと、逆に確信できる。 Don Dorsey この曲は、スタジオ録音特有の「広域が強調された感じ」が出てくるはずだが、H590でこの曲を聞くと、そういう「違和感」が完全に消えて、まるでコンサートホールで生演奏を聴いているようだ。 ここまでに5曲を聴き共通して感じられるのは、H590の音作りの巧みさ。マイクや録音機器のクセが強く出る「高域」はあえて伸ばさずに、中低域をしっかりと出すことで「高域が伸びている」ように聞かせる手法で音が作られている。 まるで、すべての音楽を「芳醇」に鳴らしてくれる、Vintageのオーディオのようなサウンドが心地よい。 試聴の最後には、あえて録音の古い「モノラル曲」を選んだが、こういう曲でこそ「H590」の素晴らしさが引き出せるはずだ。 バッハ・バイオリンソナタ ヨゼフ・シゲティー モノラル時代に録音されたこの曲をデジタルで聞くと、本来は滑らかなはずの音が粗くなり、またハードなタッチになりがちだ。けれど、晩年のシゲティーの演奏は、枯れてはいたとしても「粗野な音」のはずはない。 そういうイメージでH590の音を聞くと、生演奏を聴いているよりは、高域が少し「甘め」だが、シゲティーの指使い、弓の動き、体の動きまで感じ取れるほど刻々と音色が大きく変化することに驚かされる。この音は、まるでアナログのようだ。そのまま聞き続けていると、知らず知らずシゲティーの曲に同調して体に力が入ってくる。 やはりこれは素晴らしい演奏だし、それを再現するH590も見事なアンプだ。工業製品の枠から大きく逸脱して、芸術品の領域に入っているH590は、オーディオ機器ではなく「楽器」のようにスピーカーを奏でてくれる。 HEGEL H590 RCAライン入力音質評価
せせらぎ 温度感が適度に下がり、せせらぎがより一層ゆったりと流れるイメージ。 トラベラー H590USB入力で聞く音は「会場中央からやや後方」で聞くライブの音だった。N05 Ultimateからのアナログ入力では、ステージにかなり近い席で聞く雰囲気に変化する。 ただ、H590の持っている「高域を伸ばしきらない音質チューン」によって、低域から高域まで「ビシッ!」と伸びきるN05
Ultimateの「音の良さ」が半減してしまう。 No Sanctuary Here 音は良くなっているが、バランスが「普通のオーディオ」になってしまった。 Don Dorsey この曲も同じ印象。再生機器を変えたことによる「音質向上」や、ファイルをハイレゾに変えたことによる「音質向上」は、全て「H590」でスポイルされている。空間に濁りが出て、見通しも少し悪くなっている。 けれどマイナス方向へ変化する原因は、H590のアナログ入力のエイジングがまだ不十分なためかも知れない。 LOVE 高域に少し霞がかかっている。刺激が薄れて、服の上から背中を描いてもらっているようだ。 バッハ・バイオリンソナタ ヨゼフ・シゲティー この曲を聴いて、何が「足りなくなったのか?」答えが出た。それは「運動量」だ。 バイオリンの音色の変化が単調になったため、音楽の命である「躍動感」が小さくなってしまったのだ。 この音なら、こんなにお金をかけなくても出せるだろう。 試聴後感想 HEGEL
H590は、良い音のアンプですが少し癖があります。 今回は、AIRBOW ミュージックPCから直接H590にUSB接続した時の音が最高でした。 電気的な増幅機器の存在感が完全に消えてオーディオ機器の存在が全く感じられず、眼の前で演奏が繰り広げられているとしか思えないような音。「スピーカーから音が出ている意識」が完全に消え、ただ「音楽を聞いている、味わっている」という優雅で豊かで贅沢な時の流れだけが存在します。耳の肥えた私をここまで見事に「騙しきれる」アンプは、ほとんどありません。 HEGEL H590の音質は、このメルセデスEクラスに似ています。 USB入力でこのアンプを使う時、聞き手はオーディオ機器の存在を忘れてしまいます。聞いている音源がCDなのかSACDなのか、あるいはアナログなのかということすら忘れてしまうでしょう。QUADのために私が作ったコピー「オーディオから最も遠く、楽器に最も近い」という言葉は、H590にもぴったりと当てはまります。130万円という価格は決して安くはありませんが、それに見合う「贅沢な時間」をこのアンプは、もたらしてくれるでしょう。 2019年3月 逸品館代表 清原裕介 |
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