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Marantz SA8005 PM8005 と audioquesr RedRiver Mackenzie Yukon の 音質 評価 比較 試聴 レビュー

 JBL Studio 2 Series 音質 試聴 テスト

SA8005/PM8005、audioquest cable、音質テストに続いて、JBLのNewモデル Studio2 Series の音質チェックを開始しました。

使用するアンプとCDプレーヤーはSA8005/PM8005、接続ケーブルはaudioquest Red Reverです。

その他の音質テストはこちら

Marantz SA8005 Marantz PM8005

audioquest Red Rever

129,500円(税別)  129,500円(税別)  0.5m:13,600円(税別)・1.0m:14,900円(税別)
1.5m:16,100円(税別)・2.0m:17,400円(税別)
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最初にStudio290を試聴します。まずスピーカーのウォーミングアップを兼ねて、SA8005にiPod Touchを接続し出た音を聞いたとき「何じゃこりゃ?」と思いました。段ボールにユニットを取り付けたような低級この上ない響きの安さと、ユニットがそれぞれバラバラになっているバランスの悪さに驚いたからです。

それもそのはず、このサイズでこの価格!どう考えてもこのスピーカーは安物です。

そういえば、インターナショナル・オーディオショウで著名な評論家が、失笑しながら近づいてきて、清原君、JBLの新しいスピーカーを聞いたかね?あれは、ゴミだよゴミ!と聞きもしないのにいきなり大声で話しかけてきたことを思い出しました。Studio2 Seriesが、よほどお気に召さなかったのでしょう。

しかし、一晩そのまま放置して翌朝部屋に入ると、再び驚きました!普段聞いているBeethoven Concert Grand(T3G)にスピーカーを変えたのでは?と確認したくなるほど、”普通によい音”で鳴っていたからです。

Studio290からでた音の第一印象が見た目や価格と一致したので、某評論家はそれで判断し早々に試聴を切り上げたのでしょう。私も昔ならそうしていたかも知れません。しかし、最近は時間の許す限り長い時間製品を聞くことにしています。メルマガにも書きましたが、しばらく鳴らさないと「本当の音」が聞けないことがあるからです。よかったこの製品を悪く書かなくてすむと、胸をなで下ろしました。

Studio2 Seriesの特長

Studio2 Seriesには、JBL最新モニタースピーカーのために開発されたHDI(High Definition Imaging)ホーンが全機種に採用されています。ユニットには25mm口径のCMMD(Ceramic Metal Matrix Diaphragm)ドームツィーターが採用され透明感と広がりある高音を実現しています。サランネットの上部にはJBLの刻印が施されます。

ウーファー、スコーカーには、PolyPlasコーンを採用した口径200/165/100mmのユニットが各モデルに振り分けられ使われます。ツィーターとスコーカー、ウーファーのユニットが統一されたStudio2 Seriesは、複数のモデルを組み合わせて使うサラウンドシーンでも統一された繋がりのよい音色が実現します。

 

Studio290/280/270(フロアスタンディングモデル)はBi-Wireに対応し、スパイクが付属します。

今回はスパイクを使わず、ウェルフロートボードに直接設置して聞きました。

230/220/210/225Cは、通常のシングルワイヤリング・ターミナルです。ブックシェルフモデルにスパイクは付属しません。

JBL Studio 290

 

形式 3Way・4Speaker・フロア・バスレフ
ユニット 高域:25mm/HDIホーン
中域:100mm×1/PolyPlasコーン
低域:200mm×2/PolyPlasコーン
能率 91dB/1W/1m
クロスオーバー 550Hz/3800Hz
周波数特性 28-22Hz
インピーダンス
サイズ W273×H1197×D352(mm)
重量 25.0Kg(1台)
希望小売価格 68,000円 (1台・税別)
仕上げ ローズ

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音が出たときのStudio290は、響きが段ボールのようにがさつで薄くユニットの音もバラバラでとても聞けたものではありませんでした。最初にかけた安室奈美恵さんの曲が、まるで下手な盆踊りのように聞こえ、こりゃダメだ、酷い、と感じました。しかし、1時間ほど聞いていると、少し良くなった気がしたので、そのまま一晩鳴らし、翌日部屋に入ってみるとさなぎが蝶になるような大変身を遂げていたのです。

上位モデルStudio5 Seriesの最大サイズStudio590と比べStudio2 Seriesの最大モデルStudio290は、音のバランスが遙かに良くなっているように思います。ただ、Studio590のテスト時は繋いですぐにそれを評価したので、今回のように一晩鳴らすとStudio590も大変身を遂げたかも知れません。

音質テスト

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー)

Studio290の美点は、低音が膨らまずにシッカリしていることです。価格相応の薄いキャビネットが採用されているにもかかわらず、エンクロージャー(箱)の低級な響きがあまり感じられません。この価格、このサイズのスピーカーとは信じられないほどコントラバスのパートが膨らまず、遅れることもなく正確なタイミングと音階で再現されます。交響曲におけるStudio290の低音再生能力はこの価格帯のスピーカーでは驚異的です。これは最新の解析技術によりキャビネット内に設けられた「補強リブ」が大きな効果を上げているのだと思われます。また、低価格のスピーカーで問題となりやすい「低音〜中音〜高音への音の繋がり」も非常に良好で、ユニットから再現される楽器の音色にまとまりが感られます

高域は、彼らがHDIと名付けたホーンとツィーター直前に設けられた音響反射体の効果でしょうか、透明感が非常に高く広がりも良好です。低価格のスピーカーにありがちな安っぽい硬さもなく、高域までスッキリと伸びています。さすがに高級モデルのように最高域までは伸びていませんが、適当なところからロールダウンする穏やかな高域が音楽を上手くまとめる方向に働いています。

指向氏が緩やかだとは言え、ホーンですから高音が最もはっきり聞こえるのは、ツィーターから上下±15度、左右±30度です。しかし、その範囲を超えるとガクンと音が悪くなるのではなく徐々に高域がドロップしています。これだけ広い範囲と緩やかなドロップ感なら、スピーカーをリスナーの正面に向けなくても良い音で音楽を楽しめそうです。

Studio290の音について何か具体的な「褒め言葉」を書きたいのですが、さすがに普段聞いているBeethoven Concert Grand(T3G)クラスの製品よりも音の質感が低く、それを褒めるのは嘘になります。しかし、逆にけなさなければならないところは一つもないのが立派です。この価格、このサイズでよくこれほどまとまりのある音を作ったものです。これは良い仕事のスピーカーです。外観がややチープで、サイズも大きすぎますが、一本10万円〜15万円程度のスピーカーの「質感」は十分に持っています。加えて一本30万円オーバーの大型スピーカーと同等の膨らみや濁りが感じられない、量感ある低音が出ます。

Studio290に高級スピーカー並みの高音質やプラスアルファを求めるのはさすがに無理だと思います。しかし、最も良い音で交響曲を聴ける最低価格のスピーカーはStudio290をおいて他にはありません。価格や仕上げを含め趣味性が高いと言えませんが、驚くほど実用性の高い製品です。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

音が複数入るとさすがにユニットの固有音を感じますが、Studio290よりも高価な製品で290よりユニットの繋がりが悪いスピーカーもありますから、価格を考えれば十分どころか、望外に優れていると評価できる音の繋がりです。伴奏とボーカルの分離にも優れ、ウェルフロートボードの助けもあるのでしょうが音の広がりも理想的です。ヒラリー・ハーンではスピーカー後方に音が広がり、マドンナではスピーカーより前に音場が展開しました。

シンセドラムの低音が入ったとき音量をさほど上げていないにもかかわらず、身体を震わすほどの低音が再現され思わず頬が緩みました。ここまで低い領域の低音は、普通サブウーファーを使わなければ出ません。また強度が低く低音が膨らみやすい薄いキャビネットを使っているにもかかわらず、低音がほとんど遅れず、膨らまない事も立派です。コンピューターシミュレーションの飛躍的な進歩で、自動車のボディーが軽く高強度に仕上がるようになったのと同じ理屈でStudio290も軽く強固なキャビネットを持っています。また高性能なスピーカー分析ソフトによる精密なシミュレーションで設計されたはずのStudio290の音は、良い意味で人間が聞いて合わせたのではない正確に作り込まれた精度の高さと色づけの小ささが感られます。

Studio290の音は普段聞いているVienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)よりもややトーンが暗く、ちょうどニュートラルかそれよりも僅かに明るいムードでしっとりと大人の雰囲気でマドンナを鳴らします。7万円を切る価格を感じさせないほど音の品位感も高く、ペア20万円を超えるスピーカーで鳴らしているといっても、わからないほど十分なクォリティーと広い帯域でマドンナが見事に鳴りました。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

さすがにスピーカーの1.5m以内に近づくとツィーターとスコーカーの音がキャビネットから反射して、音像がダブる(音の輪郭が濁る)のが感じられます。それ以上離れるとキャビネットの存在がほとんど気にならなくなりますが、Studio290の立派なサイズやキャビネット反射を考えると、10畳を超える大きめのサイズのある程度大きな部屋に設置することがお薦めです。

ボーカル、ビブラフォン、ギター、ウッドベース、トランペットの音は明解に分離し、変な癖もありません。その上、Beethoven Concert Grand(T3G)のような高級スピーカーと比べても、低音の量感はほぼイーブンかそれを上回るほど豊かです。

価格の限界で高級スピーカーのような「部屋に溶け込むような自然さ」までは達していませんが、「違和感を覚えるような不自然さ」は感じられず、Studio290はは「量」だけでなく「質」も、このクラスのスピーカーとして出色だと思います。
Studio290は良くできたテーブルワインだと思います。家計に響かない価格の安さと、毎日飲み続けても飽きの来ない癖の無さ。たっぷりした量感をこの価格で実現しているのが、Studio290の凄さだと思います。オーディオ的にこだわらなければ、このスピーカーで十分。ジャンルを問わず音楽を楽しめせてくれます。

Marantz SA8005/PM8005とのマッチングも優れていたと思います。

JBL Studio 230

形式 2Way・2Speaker・ブックシェルフ・バスレフ
ユニット 高域:25mm/HDIホーン
低域:165mm×1/PolyPlasコーン
能率 88dB/1W/1m
クロスオーバー 2400Hz
周波数特性 42-22Hz
インピーダンス
サイズ W273×H381×D289(mm)
重量 7.9Kg(1台)
希望小売価格 44,000円 (ペア・税別)
仕上げ ローズ

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Studio290に続けて230の試聴を行いました。ウォーミングアップなしで聞く230は、ツィーターの音が濁っていて高域がまったく伸びず、フルレンジに質の悪いツィーターを繋いで失敗している見本のような音しか出ません。しかし、Studio290のウォーミングアップ前後でツィーターの音が激変し、スピーカーの音質が飛躍的に改善することがわかっていますから、あわてずiPod Touchをリピートにして、他の仕事を片付けながら音が良くなるのを待つことにしました。

音質テスト

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto”

メーカー希望小売価格4.4万円(ペア・税別)を感じさせない、バランスがよくきめ細やかな音が出ます。コントラバス、チェロのパートが明確に分離して再生され、ホールのサイズ感こそ小さく感じられるものの、交響曲がきちんと再現されます。

Studio230の美点は低音と高音のバランス感覚に優れ、小型スピーカーで交響曲を聴いているせせこましさや低音が足りないという不満を感じさせないところにあります。小型スピーカーで交響曲を不満なく再生できる製品として、Stirling Broadcast LS-3/5aがありますがStudio230で聞く交響曲はそれに似ています。もちろん、音の密度感や品位感に価格なりの限界はありますが、10万クラスの下手なスピーカーよりは全然良い音です。

各パートだけではなく、各楽章も含め、音楽がきちんと対比して描かれます。このクラスでそれが実現するのはそれはすごいことですし、素晴らしいことです。

Studio290でも感じましたが、Studio 2 Seriesは、高度なシミュレーションと、高度なスピーカー設計のノウハウを凝縮して作られているに違いありません。なかでも素晴らしいのは、このモデルのために作られた25mm口径のCMMDユニットを搭載するHDIホーンの音の良さです。このユニットは振動板の近くに、銀色の反射板が設けられています。JBLは過去に「蜂の巣ホーン」や「金羽根」という特殊な音響レンズを高級機に使っていました。ユニットの前にあえて「遮るものを置く」と直接音が遮られて音が悪くなりそうですし、音響工学的に見ても高域の位相を乱すと考えられます。しかし、ユニットを遮るように配置されたこれらの「反射体」は、ユニットの指向性を緩め定位感を向上するよう働きます。教科書に書かれていないこの素晴らしい方法を知るのは、ごく一部のスピーカー設計者に限られます。古い時代にJBLが「隠し味」として使っていた方法をStudio Seriesの設計者知っているのが、それを有効に使いこなしています。また、そのような豊富なスピーカー設計の経験なしには、この低価格でこれほどバランス良くまとまった音質のスピーカーを設計できるはずがありません。
従来のJBLの低価格帯スピーカーは、「見かけ立派だけれど、質が低い印象」が強く好きではありませんでした。現在も上級モデルであるはずのMoniter Seriesにその傾向が残っていて、JBLの高級機は今も好きなスピーカーではありません。しかし、Studio 5 SeriesでJBLに感じた驚きは、Studio 2 Seriesで確信に変わりました。このクラスで最も音が良いモデルの一つとしてJBLの低価格スピーカーを推薦することになるとは、私自身が最も驚いています。Studio230は私の想像を遙かに超える良い音で、ヒラリー・ハーンのバッハ協奏曲を鳴らしました。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

ハードドーム型の振動板を採用するツィーターらしい澄み切った音で、シンセサイザーの金属的な高音が再現されます。もちろんこの価格ですから、その高音はものすごく細かく、あるいはびっくりするほどの美しい音で再現されるわけではありません。またマドンナの声もそれらしく聞こえますが、格段の深みや表現力を与えられているわけではありません。

耳で聞こえる「質」には限界があります。しかし、伴奏とボーカルの対比、ボーカルとバックコーラスの対比、など「対をなす音や表現」の再現性が抜群で、音楽が命とする「ポリフォニック的構造」がきちんと再現されます。正しいと言うと堅苦しく感じられるかも知れませんが、けっしてそうではなく「音の関係」が正しく再現されることにより、音楽が「設計図通り」に機能し大きく美しく躍動するのです。Studio230は、音楽の組み立て方が見事で、聞いていると音楽の楽しさに引き込まれます。

例えば、ボーカルの艶やかさや表現力、あるいは弦楽器の浸透力だけに的を絞るならJBLよりもAudioProに部があります。Audioproに比べStudio230の音質がとび抜けて優れている訳ではありません。高音や低音がびっくりするくらい出るのではありません。しかし、音と音の関係の精度が高く、音楽が色づけなく再現されます。このバランス感覚の素晴らしさは、この価格帯のブックシェルフ・スピーカーで最も秀でています。一芸に秀でるAudioproには、その独特な魅力があります。しかし、あらゆるジャンルの音楽を公平にならす能力にかけてこのクラスでは、Studio 2 Seriesを上回るモデルを私は知りません。

某評論家が酷評したStudio 2 Seriesですが、それは「刹那的な高音質にしか反応しない、オーディオ耳」で製品を判断したために違いありません。先入観なしに音ではなくそれが奏でる音楽を評価しうる「バランス感覚に優れる音楽耳」で聞けたなら、Studio 2 Seriesの評価は全く違うものになったはずです。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

Studio290と比べStudio230は帯域が狭まった分、音の質が高まっています。この曲では、楽器の音の美しさが向上し、ボーカルの吸引力が大きく向上しています。何気なく聞き流せた、センテンス(歌詞)がグッと心を掴みます。ぽろりぽろりとつま弾かれる、ギターの音も心に美しく響きます。
ボーカルだけの音楽に伴奏を加え、ギターにベース、シンバルにドラム、あるいはキーボードと楽器を増やすのは、すべて音楽を豪華にするためです。音楽は音が増えると情報が増え豪華になります。その究極が楽器を100台以上使う交響曲です。音楽に必要なこの「複雑さ」を再現するためには、単音の美しさよりも複数音の描き分けが重要です。個々の楽器の質が上がらなくても、複数の楽器の違いが再現できれば、音楽はよりゴージャスに感じられます。

低価格のスピーカーで難しいのは、単音を美しく再生するよりもむしろ、重なった音を分離して(分離しているように)聞かせる事です。Studio 2 Seriesはそれが見事に達成されています。サイズを超える豊かな中低音、量感のある音の広がりが実現しますが、この曲を聴いても感じるのは、ボーカルやそれぞれの楽器の音の対比が、綺麗に分離して聞き取れることです。ボーカルが中心となる歌謡曲、特に編成が少ない弾き語りのスローバラードの表現力は、Studio230が290を大きく上回ります。JBLとは思えないしっとりとした質感の高い音で、オレンジペコが鳴りました。この価格帯のスピーカーで試聴が終わった後も、ずっと音楽を聞き続けたいと感じることは、そう度々ありません。

JBL Studio 220

形式 2Way・2Speaker・ブックシェルフ・バスレフ
ユニット 高域:25mm/HDIホーン
低域:100mm×1/PolyPlasコーン
能率 86dB/1W/1m
クロスオーバー 4100Hz
周波数特性 52-22Hz
インピーダンス
サイズ W168×H260×D203(mm)
重量 3.7Kg(1台)
希望小売価格 32,000円 (ペア・税別)
仕上げ ローズ

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Studio290とStudio230は同時に届けられましたが、これからレポートを書くStudio220/210/270は、一週間ほど後に届けられました。Studio290/270は同一条件で比較できましたが、230/と220/210は写真を見ていただければおわかりになるように、使用しているスタンドと設置場所が異なります。その影響が若干音質レポートに出ているかも知れません。

音質テスト

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto”

Studio 2 Seriesが共通して搭載するホーン型ツィーターの良さが音に出ます。中域〜高域にかけての音の繋がりが自然で、エネルギー感のディップ(落ち込み)もなく実にスムースに弦楽器が鳴ります。コントラバスのパートは量感がしっかり出て、響きの分離感も上々です。

JBLと聞いて感じる「独特な音の癖」はまったく感じられず、バッチにTannoyと書かれていれば、「ああ、そうなんだ」と納得できるほどバランスの良い、ナチュラルなサウンドでヒラリー・ハーンが鳴りました。協奏曲をきちんと鳴らせる、これはよいスピーカーです。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

このサイズ、100mmという小さい口径のウーファから出てくるとは思えないほど低域が豊です。バスレフポートのチューニングが実に巧妙なのでしょう。このサイズでこれだけ見事に低域を不足感なしに再現できるスピーカーは、それほど多くないと思います。

適度なダンピングと定位感や切れ味を向上させる働きを持つディフューザーが与えられた、HDIホーンの音質も素晴らしく澄み切って伸びやかな高域を不要な刺激感や音の荒れなしにスムースに再現します。

限られたサイズでバランス良く音を聞かせる。スピーカーに最も重要なその能力において、Studio220は価格を超える及第点を与えられる製品だと感じました。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

Studio220の低域はサイズが2倍、ウーファーの口径も130mm以上の製品でなければ出せないほどの量感を感じさせます。この曲でもイントロ部のベースの量感の豊かさに耳を疑いました。

小口径で驚くほど豊な低音を再生するスピーカーの代表としてTannoy Autograph Miniが思い浮かびますが、Studio220は質感はともかく量感はそれに迫るほどの低域を再生します。

中高域はクロスオーバー付近での音色の違和感、エネルギーの落ち込み感が完全に解決され、この価格帯とは思えないほどきめ細やかで濁りの少ない音質が実現しています。低音、中音、高音、のエネルギー感のバランスが見事で、身体が動き出すような楽しい音でオレペコが鳴ります。JBLのスピーカーには高域が硬く無表情な製品もあるのですが、Studio220はそれとは全く違う柔らかで滑らかな中高音が魅力です。

JBL Studio 210

形式 2Way・2Speaker・サラウンド用・バスレフ
ユニット 高域:25mm/HDIホーン
低域:100mm×1/PolyPlasコーン
能率 86dB/1W/1m
クロスオーバー 4200Hz
周波数特性 52-22Hz
インピーダンス
サイズ W256×H260×D170(mm)
重量 3.7Kg(1台)
希望小売価格 34,000円 (ペア・税別)
仕上げ ローズ

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音質テスト

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto”

使われるユニットとキャビネット容積が類似する、Studio220と210の音質は似ています。しかし、キャビネット形状の影響なのかStudio210の音場は、Studio220よりも前後に浅く左右に広くなります。また前後の立体感が浅くなるためか、コンサートホールらしい響きの深さや複雑さが損なわれ、全体的に少しさっぱりした音に聞こえます。

その部分が少し違っていますが、Studio210もこのクラス・価格帯のスピーカーとしては、秀でた製品だと思います。

異形のキャビネットは見た目に違和感があるかも知れませんが、音質はすごく普通の良いスピーカーですから、薄型テレビと並べて「フロントスピーカー」としてお使いになるのも、十分「あり」だと思います。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

210で使われる異形のキャビネットと、二つに分けられたバスレフポートの影響でしょうか、220に比べて低音が早く収束します。また、キャビネットが生じる響きも若干少なく感じられます。マドンナの声はややあっさりして、Studio220で濃かった暖かさや艶やかさが少し薄くなった印象です。

210は優れたツィーターの能力でこのクラスとしては透明感が高く、細かい音まで良く出ます。またウーファーの応答性も早く、スムースに音が出ます。クラシックだけではなく、POPSも十分に聞かせる高い能力を持っています。Studio220を聞かなければ、Studio210も相当良いスピーカーだと感じたはずでが、220の出来の良さは出色で、それと比べると210は普通に良くできたスピーカーという印象になります。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

Studioの低音は、220と同様に驚くほど豊かです。しかし、210の低音は220よりも若干早く収束するため、低音の響きの豊かさやゆとりが若干少な目に感じられます。

同じピックアップマイク、同じゲージを使っていても、エレキギターが「胴の形状」で音がまったく変わるように、Studio210と220は同じユニット同じネットワーク(たぶん)を使っていても、キャビネットの響きが違うため出てくる音も違います。もちろんスピーカー・キャビネットの違いはエレキギターほど大きな違いを生みませんが、キャビネット形状の影響なのかStudio220が210よりもさらにウェルバランスです。

このソフトの試聴でも210を超える220の完成度の高さ、パッケージングの優秀さがクローズアップされました。

Studio210は異形キャビネットを採用するスピーカーとしては優秀で、通常キャビネットスピーカーと変わらない良い音を鳴らしてくれます。十分メインスピーカーとして使える音質です。

JBL Studio 270

形式 3Way・3Speaker・フロア・バスレフ
ユニット 高域:25mm/HDIホーン
中域:100mm×1/PolyPlasコーン
低域:165mm×1/PolyPlasコーン
能率 88dB/1W/1m
クロスオーバー 750/3400Hz
周波数特性 35-22Hz
インピーダンス
サイズ W237×H1010×D267(mm)
重量 16.1Kg(1台)
希望小売価格 44,000円 (1本・税別)
仕上げ ローズ

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音質テスト

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto”

音の出始めはスコーカーとウーファーの繋がりやキャビネットの響きに違和感を覚えましたが、10分ほど鳴らすと「馴染み」が出ました。キャビネットが小さいためか、馴染みの出るのはStudio290よりもかなり早い印象です。

Studio 2 Seriesの性能を引き上げているのは、良くできたHDIホーンユニットの能力だと思います。Studio 5 Seriesでもそう感じたのですが、この二つのStudio Seriesに搭載されるホーンは形状こそ違えども、どちらもきめ細かさや表情の豊かさというホーンの良さはそのままに、ホーンの弱点であるウーファーとの自然な繋がりを克服しているように感じます。取り付けられるバッチこそJBLですが、その音調は同じホーンでもクラシック向きと評されることの多いTannoyに近いイメージです。

ウーファーとの繋がりの良さや指向性の緩やかさでStudio 5/2 Seriesは、上位モデルStudio Monitor Seriesを大きく上回ります。またStudio Monitor Seriesが硬めでやや単調な高音を持つのに対し、Studio 5/2 Seriesの高音は柔らかく表情が豊かです。これまでのJBLでは「安かろう、悪かろう」のイメージでお値段相応に外観よりも音質が低級でした。しかし、Studio 2 Seriesは、仕上げの質感にこそ価格の限界を感じさせますが、音質は上級モデルとそれほど変わらない質感が与えられています。ペア10万円という低価格が信じられない品位が高く、自然で深みのある音でヒラリー・ハーンが鳴ったことに驚きました。

Focalの新製品、Chorus 706/716/726も素晴らしいスピーカーでしたが、Studio 2 Seriesはその半額で、その半分以上の音質を鳴らす、コストパフォーマンスに優れた製品です。JBL同士の比較では、上位モデルStudio 5 Seriesと比べられるほど高いレベルにあります。音色が近く、音質にも価格ほどの差が感じられない5/2 Seriesの選択は音質ではなく、外観と予算がキーポイントになりそうです。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

Studio 220/210/270の直前に聞いたFocalの新製品New Chorus 700 Seriesではウーファー口径の大きい706/716/726の音質が素晴らしく、口径の小さいユニットを搭載する705/714の音質はそれに比べると今ひとつという印象でした。
構成が似ているFocal New Chorus 714とStudio 270を比べると、音のバランスや躍動感、ライブ的な雰囲気の豊かさでStudio 270がChorus 714を凌ぐと感じル程好印象です。もちろん価格の限界で音の細やかさ(緻密さ)や響きの密度感でStudio270はChorus 714に及びませんが、純粋に音楽を聞く楽しさではそれを上回るかもしれません。

Studio270が奏でるLike a Virginは、ベースラインの量感がたっぷりして音階やリズムもしっかりしています。価格の限界でキャビネットの強度もそれほど高くありませんから、音量を上げると欠点が予定します。しかし、音量を無闇に上げなければ、低音がそれほど膨らむことがありません。HDIホーンの良さが発揮される声には張りがあり、滑らかさや暖かさ肉厚感も感じられます。

時々楽器の音色こそ価格なりに少し単調に感じられることがありますが、少なくともボーカルの説得力は10万円(ペア)を下回るスピーカーとは思えません。

Studio270は、価格をお聞く超える満足感で、じっくりしっとりと音楽を楽しませてくれました。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

イントロのベースの量感は十分です。

ビブラフォンとベースだけを聞いていると、中高音の繋がり部分が少し希薄に感じるのですが、ボーカルがその隙間を埋めるので歌が入るとその隙間も気にならなくなります。

価格からは考えられない大型サイズのキャビネットと大きめに設定されたバスレフポートから生み出されるゆったりと厚みのある中低音。歯切れ良く、速度も速いホーン型ツィーターの高音。中低域の柔らかさを高域の硬さを違和感夏結びつける中高域の繋がりのバランスがホーン型スピーカーで最も難しいポイントですが、Studio 270は実に巧妙にそれを成し遂げています。

確かに単体で13万円というSA8005とPM8005をで鳴らしていることを考えれば、Studio270から再生される音の質感はそれに見合うほど高くありません。音質を追求すれば、Studio270は遅からず馬脚を呈することになるでしょう。しかし、そういう意地悪な聴き方や使い方をせず適切に使ってあげれば、Studio 270は素晴らしいパートナーになるはずです少なくとも10万円以内の予算で探せる、ベストスピーカーの一つであることは間違いありません。

試聴後感想
オーディオ機器にかかわらず、趣味性のある実用品(カメラや車、釣り具もそうかも知れない)の購入には、「予算」という個人の事情が大きく反映されます。人はまず「価格帯」を決め、予算内で気に入った製品を探します。その時に最もわかりにくいのが、実は「音の良さ」のように見た目や数値(価格やデーター)に現れない部分なのです。
しかし、購入してからは「買うときに分からなかった、製品の味わい」がじわじわと満足度を決めてゆきます。

オーディオ機器の購入判断は、実にパーソナルなものです。だから、売れているとか、評判がよいとか、そういう指標は、まったく判断材料になりません。売れている、評判がよい、というのは、精々「失敗したときに自分を慰める手段」でしかありません。だから「失敗したくない」とお考えならば、できるだけ「現物」に触れてみられることをお薦めします。雑誌やWebの評価を信頼して失敗すると、悔やんでも悔やみきれない苦い思いをすることになるからです。

しかし他方、現品を一ずつ確認する手間暇とコストを考えれば、手にはいる情報だけを頼りに博打的な商品選びをせざるを得ないことも十分考えられます。そこで注意して欲しいのは、オーディオ機器にかかわらず最近の工業製品は、高額品と低価格品の性能格差が以前よりもずっと小さくなっているということです。それはコンピューターシミュレーションの進歩により、コストのかかる「試作」と「開発時間(人件費)」が大幅に削減できるようになったからです。以前ほど「価格」は、性能の指標にならないのです。

人気の高いStudio 5 Seriesに続いて発売されたStudio 2 Seriesは、価格が安くそれに匹敵する「サイズ」や豪華なユニット構成を持つ製品でした。このような場合、ほぼ間違いなく音の質感が低く「安物の音」しか出ないのですが、Studio 2 Seriesは見事にその予想を裏切りました。「音質」や「見た目の質感」でこそStudio 5 Seriesに及ばないStudio2 Seriesですが、音楽を再生するスピーカーとして重要な「音の関係性の再現や音色対比の鮮やかさ」では(特に最大のStudio290は)Studio 5 Seriesに匹敵し、時にはそれを凌駕する魅力を聞かせてくれます。10万円以下のクラスにはTannoy、Audioproなど音の良いスピーカーが多いのですが、それらと比べてもStudio 2 Seriesはまったく引けを取らない仕上がりです。

Studio2 Seriesが上位モデルやライバルよりの秀でているのは、音色のバランスです。このクラスのスピーカーはコストに縛られているため「単音の美しさ」を向上するのは難しいのですが、巧みな設計によりStudio2 Seriesは楽器の音色を鳴らし分けることで、驚くほど自然でスムースな鳴り方を実現しています。

輸入品と聞くと「割高」に感じられるかも知れません。しかし、世界的なデフレ?の影響を受けて10万円以下のスピーカーの多くは、コストの安い「中国」で生産されています。JBLもTannoyもAudioproもこのクラスの製品は中国生産です。この代表的な3つの製品を比較しましょう。豊かな中低域に柔らかで滑らかな質感の高音をかぶせるというStudio2 Seriesの鳴り方はこのクラスのTannoy製品と共通しますが、中低域の厚み感でそれを凌ぐ魅力を持っています。Audioproは、Studio2 Seriesよりも引き締まった中低域と、滑らかで透明感を感じる繊細な高域が魅力ですが、やはり中低音の量感ではStudio2 Seriesに敵いません。

スピーカーの物理的な低域再生限界の低さが重要になる電子楽器系の音楽は、低音の豊かなJBLやTannoyがマッチするでしょう。物理的な能力よりも中高域とのより自然で滑らかな繋がりや艶、滑らかさと言った聴感上の心地よさを求められるなら、Audioproがマッチするでしょう。価格が国産製品と変わらないながらも、輸入品らしい独自の味わいを持つこのクラスの海外ブランドスピーカーこそ、海外製オーディオ入門モデルに相応しいと思います。国産品とはひと味違う、聞いて楽しい海外製スピーカーを一度お試しになるのも悪くないと思います。

2014年3月 逸品館代表 清原 裕介
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