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Integrated Amplifire
MUSICAL FIDELITY A5.5 (イギリス製・プリメインアンプ) 音質テスト
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Musical Fidelityの輸入代理店ハインツ&カンパニーから、モデルチェンジで生産完了となったA5.5の特価情報が届いた。台数をまとめて仕入れることが条件だが、値引きが余りないミュージカルフィディリティー社の製品としては破格の条件提示がなされた「A5.5」を聞いてみた。 |
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<特長> 『超弩級250Wx2 ハイパワー、ハイカレントはまさにセパレートアンプを凌ぐ程の最高級インテグレーテッドアンプ』 大電流デリバリーに優れた最高級大量のパワートランジスタをふんだんに採用し、抜群のリニアリティーとディテール表現を実現し、さらに新開発スーパーファースト・オプティカル・フィードバック・プロテクション・サーキットにより、静粛感や立体感も飛躍的に向上しました。 また、操作性の面でも、チャンネルバランス ±0.5dBという最新ボリュームサーキットにより、極小音量から大音量までをパーフェクトにコントロールします。 そのハイパワーでいてより繊細、しかも艶っぽい音色はプリメインの域を遥かに超えることに成功しました。ハイパワーであることを誇示しないソフトな曲線でデザインされたフロントパネルとアールデコ調のボリュームノブは、デザイン面でも音楽派のユーザーの琴線に触れることでしょう。 定価:\398,000【税別】→売り切れました |
試聴装置 VIENNA ACOUSTICS T3G(Beethove Concert Grand) 試聴ソフト “IMMACULATE” Madonna 輸入盤 CD 低音が打ち込みで構成されるPOPSを再生すると大型のユニットを3個も搭載するT3Gは、アンプの力が足りないと低音が膨らんだり緩くなりやすい。その膨らみやすいBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)の低域をA5.5は、ものの見事に引き締めた。ベースが弾力的に弾み、リズムセクションの明瞭な再現が音楽を大きく躍動させる。低音の力感と量感は抜群だ。 高音の切れ味はやや甘く今一歩物足りなくもないが、逆にそれがソフトの粗やスピーカーの過剰な能力をコントロールしマドンナを「Musical Fidelity的世界感」で上手くまとめ上げる。この時期のマドンナはもう少しキュートに思うが、A5.5は肉付きの良い音でマドンナをじっくり聞かせる。 個人的な好みでは、もう少し爆裂的な迫力でこのソフトを聞きたいが、これはこれで決して悪くないし、リスニングルームの絶対的なサイズが限られる日本では、スピーカーの近くで小音量で音楽を聞く機会が多いから、高域が出しゃばらず中〜低域にタップリとした厚みのあるA級アンプのサウンドが上手くマッチすることが多い。そういう理由から、日本ではA級的なまったりしたが結構好まれる。A5.5はまさにそういう「日本人好み」の音質でマドンナを鳴らした。 “BLUE NOTE FOR YOU STANDARDS” 日本盤 CD A5.5で鳴らすJAZZは、はっきりと暖かい。このディスク特有の冷たく張り詰めた音では鳴らない。全体的な音質もどことなく木質的で、マイルスのトランペットがほんの少しだが「クラリネット」のように鳴る。 音色の変化は多彩で細かいから、愁いを帯びたトランペットの雰囲気は深く再現される。サックスはトランペットよりもさらに木質的なイメージが強くなる。ある意味ではそれは当然だ。なぜならば、トランペットは「金管楽器」でサックスは「木管楽器」に分類されるからだ。どちらも同じ金属のボディーを持つが、発音部は違う。トランペットのマウスピースは金属製でサックスのリードは竹製。それぞれの楽器はその発音部分の材質の違いで「金管」と「木管」に分類されている。「木管」に分類されるサックスがトランペットよりも木質的な音で鳴るのは、間違ではない。 ピアノの打鍵感は心地よく、厚みと重量感がある。 ドラムのブラシの動きもきちんととに反映され、JAZZらしい「楽器の会話」がお洒落に再現される。楽しくノリの良い音だ。ディスクの古さ、録音の古さは、まったく感じられない。しかし、マドンナでも違和感を感じたようにこのディスクも、もう少し張り詰めた雰囲気で聴きたい。 A5.5とBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)の組合せは、このディスクを「フレンチ」に柔らかく濃く鳴らす。こういう聴き方も決して悪くはないが、一部のJAZZファンには「違う」と叱られそうな気がする。 “MIDORI LIVE AT CARNEGIE HALL” 五嶋みどり 輸入盤 CD このディスクが今回試聴したシステムにベストマッチする。 バイオリンの擦過音は柔らかく、五嶋みどりの独特の「硬さ」を上手く緩和しながら、バイオリンをキュートに鳴らす。グランドピアノの重量感と左手の強さはきちんと再現され、ロバートマクドナルドのピアノをハイセンスに響かせる。 嫌な歪み感や無理矢理音を出している感覚はまったく感じられず、スピーカーから自然に音が出る。音の広がりと立体感の再現性は抜群でスピーカーを中心に音場が大きく部屋全体に広がり、システムの存在感は綺麗に消える。 A5.5の音は全般的に柔らかいので、緊張感を伴わずやや情緒に流される嫌いはあるが、コンサートは「演奏者の労苦」を見せる場ではないから、観客を無条件に楽しませてくれるこの音質はクラシックにはとても良く合う。演奏者とリスナーの間に暖かい空気感を感じさせる鳴り方。それがA5.5の持ち味だ。 “MIDORI LIVE AT CARNEGIE HALL” 五嶋みどり 輸入盤 CD SA10/Ultimateと組み合わせて鳴らしたA5.5の音質にちょっと納得行かなかったので、思いつきでCDプレーヤーをUX1SE/LTDに変えて「五嶋みどり」を聞いてみた。 するとどうだろう?世界が完全に一変したではないか!! ふわっとした暖かい「靄」のような甘い空気は完全に消え、バイオリンの張り詰めた様子、ピアノの力強い打鍵感、アタックの鋭さと芯の強さの表現がぐんぐん出てくる。 思わずSA10/Ultimateとの組合せが悪かったのか?そんな考えが頭をよぎるほどだが、決してそんなはずはない。どちらのプレーヤーの音も私が自信を持って仕上げているのだから。しかし、43万円と150万円という莫大な価格差を持ってしても、それぞれで聴ける「音楽の再現性」のレベルはまったく違うと言わざるを得ない。それほどドラスティックな差が両者の間にある。 アンプやスピーカーを換えていないにもかかわらず、バイオリンとピアノの音色の特徴が完全に再現され、楽器の銘柄が瞬時に特定できる。 緑が奏でるバイオリンは、ガルネリだろう。その独特の厚みのある響きが再現される。ロバートマクドナルドが弾くピアノは、スタインウェイに違いない。その独特な高域の華やかさが、ハッキリと聞き取れる。試聴終了後、念のため確認したがバイオリンは“ガルネリ”、ピアノは“スタインウェイ”で間違いはなかった。SA10/Ultimateでは、違う楽器に聞こえたのでA5.5に「癖」があると感じたのだが、UX1SE/Limitedとの組合せでは,それが完全に消えてしまう。 演奏の躍動感、動きの大きさのスケールもまったく比較にならない。表情の変化や躍動感の大きさが数倍ではなく、一気に10倍くらい高まったように感じられるほどだ。止まっていたものが動き出す。それくらい大きな違いが感じられる。 A5.5が素晴らしいのかUX1SE/Limitedがすごいのかわからなくなるが、とにかく出てくる音は素晴らしい。VIENNA ACOUSTICS T3G(Beethove Concert Grand)との組合せで、パーフェクトなサウンドが鳴った。これほどの音を聞いた人は、それほど多くない。いや、多分いないだろう。今聞いている音は,それくらい素晴らしく良い音だ。 後書き 落ち着いて評するなら、A5.5はスピーカーの影響を受けにくく、入力を正確にスピーカーの音質に反映できるアンプといえる。組み合わせるプレーヤー、アクセサリーでA5.5は化ける。そのポテンシャルは、思ったよりも遥かに高かった。当然、ハインツ&カンパニーには、即時A5.5を発注した。使い方さえ間違えなければ,このアンプは安い。安すぎる! |
2010年3月21日 清原 裕介 |