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Phasemation フェーズメースション 昇圧トランス T2000 音質 比較 評価 レビュー 試聴Phasemation(フェーズメースション) T2000 昇圧トランス 音質試聴テスト ハイクラス・プリメインアンプやフォノイコライザーには、MCカートリッジの低い電圧に対応できる「MCポジション(入力)」が設けられています。MCカートリッジを使うなら、このポジションを使えば音が出ます。 昇圧トランスとは、MCカートリッジの小さな出力電圧(0.02mV〜0.5mV程度)を20〜50倍の電圧に上げる働きを持つ、小電力・高能率の変換トランスですが、MCカートリッジに昇圧トランスを組み合わせることで、イコライザーのポジションは「MM」で使えるようになります。 では、なぜわざわざ「MCポジション」が備わるアンプに「昇圧トランス」を組み合わせるのでしょうか? それは「音が良くなる」からです。 トランジスターのゲート(入力部)は、小さな電圧でも動作します。時に最近はトランジスターの改良は進み、低電圧でも有効に動作するトランジスターが増えてきました。しかし、MCカートリッジの出力電圧は「最大時」が表示されていますが、レコードに刻まれた「一番小さな音」はそれよりも−60dB以上低く、わずか「1/10000000(一千万分の一)mV」でしかありません。高感度のトランジスターでも、これほど低い電圧では「リニアリティー(直線性)」や「応答速度」が限界に達します。 そこで「トランスによる電圧変換効果」を利用して、MCカートリッジの出力をあらかじめ数十倍に上げておくと、トランジスターがよりスムースに動作して、音質が向上するという仕組みです。さらにトランスには、変換時の「残留磁気」により「響き」や「エネルギー」の発生が考えられるため、出力信号が入力信号よりも強められるという「効果」も期待できます。 しかし、さすがにこれほど小さな電圧ではトランスも動作しにくいので、超低電圧でも良好なレスポンスと、リニアリティーを持つ「超高性能トランス」を使わなければなりません。そのため、高級な昇圧トランスには通常のトランスよりも初透磁率の高い「パーマロイ」や電力損失の少ない「高純度導線」などが使われ、性能もさることながら価格も驚くほど高価になります。 今回は、Phasemationから発売された「メーカー希望小売価格 90万円・税別」の超高級昇圧トランス「T-2000」に真空管を使うフォノイコライザーアンプ「QUAD QC24P」を組み合わせ、その内蔵トランスとAIRBOWから発売している、誉れ高いビンテッジモデル昇圧トランス「BV-33」の3つを比較することで、T-2000の性能を確認しようと思います。 Phasemation T-2000 メーカー希望小売 900,000円(税別)
主な特長 ・バランス伝送対応入力 カートリッジの発電部は、「バランス動作」です。T2000は、カートリッジの出力をバランスのまま入力するための「バランス入力端子」を装備します。 ・極薄スーパーパーマロイコア 昇圧トランスの心臓部である「コア」に極薄スーパーパーマロイを用いることで、変換効率(伝送効率)を向上させ、微細な信号まで漏らさず昇圧します。 ・最適巻線+高純度銅線 仕様カートリッジとトランスの完全なマッチングを計るため、巻線数の最適化が図られています(適合カートリッジ・インピーダンス:1.5〜40Ω)。さらに、信号を出力する2次巻線に高純度銅線を用いることで損失を抑え、音の細やかさと共にエネルギー感の向上が図られています。 ・2重シールドとフローティング構造 電磁波ノイズを拾いやすいトランス部には、銅メッキ鋼板シャーシーとトランスを包み込む磁気シールドによる「2重シールド」が行われています。振動に敏感なとらんすは、ハイダンピングラバー材で本体からフローティングして取り付けられています。 ・モノラル筐体の採用 左右チャンネル間の干渉を防ぎ、シールドを完全にするため、チャンネル専用の「モノラル筐体」が採用されています。フロントパネルには、CA-1000と同じ20mm厚のスラントアルミパネル、脚部にはウッドベースが採用されています。 ・高音質パーツの使用 入出力端子には、FURUTECHのロジウムメッキ品、フットにはTAOCのハイカーボン鋳鉄インシュレーターが採用されています。 本体とフォノイコライザーを結ぶための「アース線」にも極太線+ロジウムメッキ端子が採用されています。 真空管式フォノイコライザーアンプ QUAD QC24P メーカー希望小売 360,000円(税別)
主な特徴 QC24Pの設計は、EARのティム・デ・パラビチーニが行いました。言い換えれば、QC24Pは「QUADの皮を被ったEAR」と言えるでしょう。 上の写真は、QC24Pの内部ですが、電源トロイダルトランス@を取り囲むように短い配線で並べられた電源平滑コンデンサーHや電源スイッチBAとダイオードC、ロスを抑えるため基板に直接取り付けられたMM/MC切り替えセレクターDE、ハムノイズ低減のためシールドされた真空管Gなど、かなり「こだわった設計」であることがうかがえます。今回試聴する「内蔵昇圧トランス」はFです。 AIRBOW 昇圧トランス BV33 メーカー希望小売 350,000円(税別)・生産完了 (残り一台のみあります)
試聴環境 ターンテーブルに、Nottingham「Interspace HD(生産完了品)」、カートリッジに、Goldring「ERICA GX(生産完了品)」、Vienna Acousticsのスピーカー「Liszt」とAIRBOWのプリメインアンプ「PM14S1 Master」を使って試聴しました。 AIRBOW PM14S1 Master 特別販売価格 309,000円(税込) Vienna Acoustics Liszt メーカー希望小売価格 2,000,000円(ペア・税別) YouTube動画は準備中です。 試聴したレコード
QC24P「内蔵昇圧トランス」 Dreaming 普段からこの曲はデジタルで何度も聞いているが、それと比べて、アナログの音は透明感が高く、響きが美しい。ボーカルは滑らかで艶もある。 「質感」ではアナログがデジタルに勝っているが、逆に「量感」ではデジタルがアナログを凌駕する。アナログはデジタルに比べ、低音の量感が少なく、音の数がやや少なく感じられる。 アナログの方がムードがあるが、デジタルの方が細かい音まではっきり聞こえる。だから、どちらが良いかの判断は難しい。 でもこの曲に関しては、低音のしっかりした感じと、リズムのブレない感じで、デジタルに軍配を上げるかも知れない。 Jesse このレコードは、私が買ったのではない。今から20年以上前に「中古で買い取ったレコードの中に混ざっていた一枚」だ。まだ今ほどソフトには明るくなかった当時は、このレコードの内容を知るよしもなく、ただ「高音質ダイレクトカッティング」という帯の文字に惹かれて「どんな音がするのだろう?」と思って聞いてみた。 ピアノが鳴り、ボーカルが流れ出した。その曲が醸し出す「ムード」は、明らかに海外の雰囲気だったし、英語の発音も抜群だった。だから、ボーカルが「峰純子」という日本人だと知って、本当に驚いた。伴奏も半端じゃなかったので、改めてジャケットで確認すると、ピアニストはハンク・ジョーンズだった。名手だ。 「ロブスター企画・PIONEER」。改めてジャケットを見ると、そう書かれていた。このレコードに限らず、1980年前後のアナログの末期、音質が頂点に達した時に録音された時のレコードは、本当に音が良いものが多い。このレコードで聞く、ウッドベースの「香り」が漂うような音は、絶品だ。この雰囲気は、デジタルでは絶対に出ない。 後半で少し、ピアノが歪んでいるのが気になった。 Liza Jane シェフィールドから発売されていた、このシリーズのレコードは,私が持っているレコードの中でも特に音が良い。 けれど、いつもは「AIRBOW BV33」を外付けにして聞いているせいだろうか、QC24Pの内蔵昇圧トランスだと少し細かい音が聞こえにくいし、金属弦の音色の変化も乏しく、楽器の響きの良さも出にくい。 大雑把なようで、意外に繊細なバンジョーの音が昇圧トランスでどう変わってくるか、注意して聞いていきたい。 QC24P + 昇圧トランス「AIRBOW BV33」 Dreaming 昇圧トランスの変更で、楽器の響きの長さが変わった。音の広がりや、立体感も変わっている。 Jesse ピアノの音に深みが出る。ウッドベースの音は太くなり、密度が上がる。ぐっと「生の音」に近づいている。 やはり、BV33は素晴らしい昇圧トランスだ。 Liza Jane イントロのギターの「耳あたり」が柔らかくなった。 バンジョーの音には張りがでて、色彩も鮮やかだ、 バイオリンも、スリリリングな感じが出てきて、カントリー・バイオリンらしい雰囲気で鳴る。 コーラスも人数と厚み全然違うから、演奏がゆっくりとゆとりを持って聞こえる。 QC24P + 昇圧トランス「Phasemation T-2000」 Dreaming AIRBOW
BV33は、EMT
JC6に搭載されているのと「多分同じ」トランスで、私が今まで聞いたトランスの中でも群を抜く音の細やかさと音色の良さを持っていた。だから、T2000と言えども、もしかしたら。の気持ちはあった。 この音の細やかさは、すごい。デジタルなら、MP3がハイレゾ級になったくらい違う。 Jesse 使っているカートリッジが10年選手(といってもそれほど頻繁には聞いていないので針先は摩耗していない)だからか、BV33では大音量が少し歪みっぽく感じられたが、Phasemation T-2000では、それが見事に解消している。 サイズからして全然違うから当然と言えば、当然なのだろうけれど、音の細やかさだけでなく、周波数レンジ、ダイナミックレンジ、全てに余裕がある。どれほど大きな電圧が入力されても「飽和しない」という安心感がある。 ボーカルとピアノトリオとの分離も素晴らしい。目の前にステージがあるような「圧倒的な立体感」と「実在感」。3Dのホログラムを見ているようだ。 Liza Jane 空気感がすごい。この音を聞かされると「デジタル」とアナログの違いを認めざるを得ない。けれど、こんなに良い音でアナログを聞いたことがある経験を持つ人は、まずいないはずだ。だから、世間で「アナログはデジタルよりも良い」と言われれると、なんだか強い違和感を覚えてしまう。経験上、オーディオでは「断言」する人に限って、「本当に良い音」を聞いていない。「知らないから」こそ、安易に断言できるのだ。だから、テレビのニュースなんて、全く当てにならない。デフォルメされ、ねじ曲げられて、真実なんて一割も残っていないだろう。 カントリーは、元々「じっくり聞く音楽」ではない。最高のBGM的に「ながら」で聞くのが良い。T-2000が聞かせるこの曲は、まさしく「お気に入りのカフェで生演奏を聴いている」雰囲気だ。曲の鳴り方が本当に楽しくリラックできるから、ついつい「雑念」を呼んでしまう。うまく言葉にはできないけれど、「生々しい」とか「実在感」とか、そういう評価を超えて「目の前にある」というのが正しいだろう。無音でも,そこに「空気がある」のがきちんと伝わってくる。生演奏を直接聞いているよりも「濃い」密度で、この曲が鳴った。もう、戻れない。 試聴後感想 世の中では、またしても「アナログ vs デジタル」論争が繰り返されています。けれどすでに10年近く前に、私の中で答えは出ています。いまさら「アナログには戻れない」。それが私の答えです。 私は仕事柄、一日中音楽(オーディオ)を聞いています。それを「レコード」でやったなら、恐ろしいほど不便ですし、いちいち傷つけることを恐れてもいられません。実際、試聴に使うレコードは、どんどん傷が増えて行きます。 私は、1000枚近くレコードを持っていますが、そのほとんどは「現在発売されていない」物です。歴史的な名盤も多く、レコードを傷つけたくありません。それに新しくプレスされるレコードは、昔の物に比べて、かなり音が悪くなっているので、古いレコードの価値は上がるばかりです。 だから、私はアナログ・コレクションをほとんど聞くことがありません。 それでも「いつかは」と言う思いで、アナログシステムの音質向上研究も続けています。 Phasemation T-2000は、間違いなく素晴らしく、きっと入手可能な最高の昇圧トランスでしょう。 できるなら手に入れて、手持ちのレコードをすべて「デジタル・アーカイブ」してみたいものです。 2018年5月 逸品館代表 清原裕介 |
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