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ROKSAN(ロクサン)K3/caspian Pioneer(パイオニア) PD-70AE CDプレーヤー 音質 比較 試聴 レビュー 評価
ROKSAN(ロクサン) Caspian / K3 CDプレーヤー (プリメインアンプ音質比較はこちら)
Pioneer PD-70AE CD/SACDプレーヤー 音質比較テスト 1985年、イギリスで産声を上げた「ROKSAN(ロクサン)」は、当初「audio-technica」扱いで日本に初上陸しました。その音質に惚れ込んだ「逸品館」は、日本でも有数の「ROKSAN専門店」として拡販を行い、ROKSANを起業した「社長兼エンジニアのトラジ・マグハダム氏」来日の折には、一緒にカラオケに行くなど深い親交がありました。しかし、代理店変更後に「アフターサービスや将来的展望に疑問を感じたため」、後ろ髪を引かれる思いで取り扱いを中断しました。このような理由で逸品館では、しばらくROKSANの販売業務は宙に浮いたような状態でした。しかし、このたび2018年より信頼できる輸入代理店「ナスペック」にROKSANの輸入代理業務が移管されたことで、逸品館は「ROKSAN」を再び取り扱うことにしました。 けれど逸品館がROKSANを取り扱っていた時からはすでに25年近くが経過し、その間に「ROKSAN」も創業者の「トラジ・マグハダム」が退社して自分自身で別ブランドを立ち上げるなど、「中身」が大きく変わっています。そこで「取り扱いを再開」に当たって、今一度その音質を「チェック」することにしました。 普段なら、新製品の試聴は「同一メーカーのみ」で行いますが、今回の「比較試聴」は、同価格帯国産品で「USB入力を備えず高音質を実現しているCDプレーヤーの国産代表として「Pioneer PD-70AE」を、プリメインアンプも低価格高音質の「Pioneer A-70A」を加えて聞き比べ、内外製品の実力と音質を比べることにしました。 ※CDプレーヤーのテストと、プリメインアンプのテストをまとめるとページが長くなるので、このページには「CDプレーヤー音質比較」のみ掲載しています。 ROKSAN K3 CDプレーヤー ROKSAN K3 CDプレーヤーは、大型のトロイダルトランスとシンプルな回路構成で作られています。 (YouTubeに英語での紹介画像がありました。リンクはこちら) 使用されるDACチップは、「TI(Texas Instrument)」のPCM1798です。 ※ROKSAN ホームページにはPCM1730Eと記載されている部分がありますが、このモデルの生産が完了し新しく作られた互換品がPCM1798なので、古い記述が残っているだけのようです。 このチップは、オーディオ専用に作られたステレオ出力モデルで、8倍オーバーサンプリングのオーバーサンプリングフィルターと24bit精度のDACを搭載し最大192kHz/24bitの入力信号に対応しています。CD再生時には、読み取り信号を176.4kHz/24bitにアップコンバートしてD/A変換が行われているはずです。音質に重要な役割を持つ「水晶発信子」は、オリジナルの高音質発信子(High precision, custom made Master Clock Crystal)が使われているようです。 同軸と光のデジタル入力各1系統を備え、同軸と光に加えてXLR(AES/EBU)合計3系統のデジタル出力が備わります。最初に書いたようにUSB入力は、備わっていません。 最新のUSBを備える国産CDプレーヤーは、大幅に高品位化したハイレゾに対応するため、サンプリング周波数384kHz、量子化ビット数32bitのDACチップを使います。しかし、最新のDACチップのほとんどが「マルチチャンネル(8chが主流)」対応となり、ワンチップに納めています。しかし、多チャンネルを1つのチップにまとめるとプロセス(回路)が微細になって、流せる電流が小さくなります(出力が小さい)。しかし、K3が使用するPCM1798は、2世代以上前に作られた「CDプレーヤー向き」のDACチップで見かけ上のスペックでは劣りますが、音質は決して悪い物ではありません。実際、TADのフラッグシップ「D600」には同種のDACチップ「PCM1794」が搭載され、現時点でも他社製品とは一線を画する「力強い音質」を実現しています。 そういう意味では、ROKSAN K3 CDプレーヤーは、国産品よりも「CDの再生にこだわって作られたCDプレーヤー」と言えるでしょう。 ROKSAN (ロクサン) K3 CDプレーヤー メーカー希望小売 250,000円(税別) (メーカーホームページ)
ROKSAN Caspian M2 CDプレーヤー ROKSAN Caspian M2 CDプレーヤーは、2つの大型トロイダルトランスとシンプルな回路構成で作られています。 使用されるDACチップは、K3と同じ「TI(Texas Instrument)」のPCM1798ですが、電源トランスが1個から2個に増え、筐体は、K3よりも薄く小さくなっていますが、重量は1s重くなっています。小さくて重い=高密度ですが、実際に持ったときにもかなり「詰まっている感じ」がします。 機能面での違いは、デジタル入力が省かれていることと、バランス出力が採用されているところです。また、内部にもK3よりも良質な水晶発振子と、より高級な増幅回路「バランス回路」が使われているようです。 これらが「どのように音質に反映されるか」を比較で確かめたいと思います。 ROKSAN (ロクサン) Caspian M2 CDプレーヤー メーカー希望小売 360,000円(税別) (メーカーホームページ)
Pionner CD/SACDプレーヤー PD-70AE 2017年10月発売の「PD-70AE」は、メーカーのホームページに「CD愛好家に捧ぐ」と書かれているように、CD再生時に余計なノイズ源となりかねない「USB入力」を省いてまで、CD再生に特化しているところにあります。 DACチップは、L・R 各チャンネルにESSテクノロジー社製高性能8ch DAC ES9026PROを独立搭載しますが、各チャンネルそれぞれを8chパラレル駆動として、電流量を増やし、クリアで抜けの良いサウンドと、しっかりとした厚みのある中低域を両立します。 USB入力は省かれましたが、CD-R/RW、DVD-R/RW、DVD+R/RWに記録された「WAV/FLAC/Apple Lossless/AIFFの192kHz/24bitファイル・DSDの5.6MHzファイル」の再生に対応することで、最新DACチップ「ES9026PRO」の機能を生かしています。 回路的には、Caspianと同じくデジタルとアナログにそれぞれ専用の大型トランスを採用し、基板から独立した「フルバランス回路」を採用しています。さらに、密閉型の頑丈なケースに収められた「音の良さそうなメカニズム」が使われています。さらに本体には、高音質化の基本となる高剛性の「リジッドアンダーベース」を採用し、総重量は、なんとCaspianの約2倍「19.7kg」に及びます。それでいて、価格はK3 CDプレーヤーより僅かに高いだけに収まるのは、国産量産品だからです。 しかし、このように「国産製品」のスペックや技術解説が同価格帯の海外製品に勝っているのは、当然のことでした。けれど、実際に「出てくる音」では、海外製品の方が味わいが深いなど、逆に国産品が敵わないことも少なくありませんでした。 今回のROKSAN、Pioneerの音質比較は、過去の経緯からしても「当然行うべきテスト」だと考えました。 PIONEER PD-70AE メーカー希望小売 280,000円(税別) (メーカーホームページ)(詳細な音質テストはこちら)
試聴環境 聞き比べには、ストレートな音質のプリメインアンプ「AIRBOW PM10 Ultimate」と、能力の高いスピーカー「Vienna Acoustics Liszt」を使いました。また、ROKSANに付属している電源ケーブルがあまりにも「チープ」だったので、Pioneer PD-70AEも含めて音質比較の電源ケーブルは、すべて「AIRBOW KDK-OFC」で統一しました。 AIRBOW PM10 Ultimate 販売価格 780,000円(税別) Vienna Acoustics Liszt メーカー希望小売価格 2,000,000円(ペア・税別) 試聴ソフト
動画による音質比較
「価格」という枠を外したとしても、水の流れる音、鳥の声の細やかさ、分離感・立体感には全く不満を感じないほど基本性能が高い。この価格帯で、ここまでの性能を持っているCDプレーヤーは、国産品では過去なかったように思う。また「回転しているディスクから音が出てくる」という、不安定な感じ、揺らぎも全く感じられない。20キロ近い重量は、伊達ではない。 唯一、問題点を挙げるとすれば、すべての音がはっきりと聞き取れ、透明度もすごく高いのだが、、その「音」が僅かに電気的に感じられ、「せせらぎ」をごく薄いガラス越しに見ているように感じることだ。けれど、もしこの薄い一枚の「ガラス」を聞き分けられたとしても、それはあなたの耳を褒めるべきで、CDプレーヤーを問題視すべきではないと思う。それくらい僅かな「違和感」があるだけで、その部分を除いては内外オーディオ専門メーカー50万円クラス帯製品の音質に達している。
暖かく雰囲気の良い音だが、前後方向への音の広がりがやや不足気味で、音場は横長楕円形に展開する。
音が出た瞬間に、K3との「格の違い」を強く感じる。 せせらぎで聞き比べると、Caspian CDPは、「癖の少なさ=自然さ」でPD70AEを確実に上回ることが感じられる。 「せせらぎ」が本当にリアルな音で鳴り始めると、スピーカーの前に敷いている「カーペットが濡れているように錯覚する」が、Caspian CDPは、見事にそこまでの音を出してくれた。
この価格帯のCDプレーヤーとは、とても思えないほど音が細やかで隅々まではっきりと聞き取れるのは、ディスクを変えても同じだ。 僅かに「電気的な色づけ」を感じるのはせせらぎを聞いたときと同じで、バイオリンの音色がほんの少しだけ硬く、電気的に増幅しているように感じる事があるが、やはり問題にするほどの大きな癖ではない。 再生スケールが「正しく(フェアで)」色づけがほとんどないので、しばらく聞いていると、自分がホールにいるような錯覚を覚える。この表現力は「量産モデル」の領域を超え、音楽再生に特化した海外製品に匹敵するだろう。
バイオリニストが弓を動かす「速度の違い」がはっきりと伝わってくる。 音のバランスも悪くない。 けれど、PD-70AEの超絶に細やかな音を聞いた後では、倍音の複雑さに物足りなさを覚える。また、ホールからの反射音や残響も少し少なく感じられる。 音の傾向は良いが、PD70AEと比べると、音の数が明らかに少ない。PD-70AEとの物量差が、音に出てしまった感じだ。
バイオリンは「胴に使われている木材の材質」が特定できるような鳴り方をする。この音なら、バイオリンに詳しい人ならば、そのメーカーを言い当てられるだろう。 弓を弾く速度の変化と、バイオリニストの体の動きが見事にシンクロし、バイオリンから出る「細い音」と「太い音」の質感の違い、感情の動きを伝える「音色の変化」がダイレクトに心に触れる。 CDという「フォーマットの枠」を超えて、音楽をしっかりと楽しめる音。オーディオメーカーとしてのROKSANの高い見識が伝わる、素晴らしい音だ。
アコー・スティックギターの音が、僅かに「エレキ・ギター」のように聞こえる。 ボーカルは、透明感が高く、細かな表現まで再現される。子音がはっきりと伸びているが、「サ・シ。ス・セ・ソ」が荒れて聞こえないのは良い。硬質だけれど、心地よくボーカルが鳴る。
ギタリストが「弦をリリースする瞬間の音(断絃の感覚)」がはっきりと伝わる。 ボーカルは、子音まではっきりと伸びて、かつ滑らかさで潤いもある。ギターとの分離にも優れている。 けれど、音の数=密度は、このクラスとしてはもう少し欲しい。音数が不足するから、どうしてもやや表面的な音に聞こえる。
ギターの音の太さやボーカルの密度感がK3を圧倒する。ギタリストが「弦をつま弾いた時」の爪のあたる音と弦が震える音、胴の響きの描き分けが実に見事で、生のギターを聞いているとしか感じられれないリアルな鳴り方をする。このリアリティーの高さは、PD70AEを明らかに上回る。 K3は言うに及ばず、Caspianでさえもまだ「PD-70AEの細やかさ、密度の高さ」には及ばない。けれどCasipianの方が、PD-70AEよりも音が薄いはずなのに、出てくる音のイメージは逆に濃く感じられるから不思議だ。 Caspianの音はあまりにも自然体で、PD70AEほど「頑張って音を出している感じ」がしない。だから「オーディオ的な実在感」を求めるオーディオ・マニアには、PD70AEほど高く評価されないかもしれない。しかし、「オーディオ的着色(違和感)」を嫌がる音楽ファンなら、PD70AEよりもCasipian CDPをより高く評価するだろう。 Caspian CDPの音は、PD-70AEよりもさらに生演奏(実演)に近く、自然体で演奏を楽しめるからだ。
ピアノの音は、ほんの少しだけ電気的な傾向が感じられるが、打鍵感(タッチ)の違いはしっかりと出てくる。 しかし、それだけなら過去にも類似品はあった。PD-70AEがそれらと違うのは、今まで国産品があまり得意としなかった「音楽の表情の豊かさ」もしっかりと持ち合わせているところだ。
ピアノの打鍵感が少しぼやけて、ピアノの響きにも濁りが感じられる。ボーカルは、音像がやや大きく、口元が緩い。 音色はよく、表情もしっかり出るが、深みや沈み込みが不足している。
レコーディングエンジニアが「どのようなマイクを使い、どのようなポジションでピアノを録音したか」がわかるほど正確な音が再現される。Caspianで聞くと、ボーカルとピアノが「違うマイク」で収録された後、ミキシングされていることもよくわかる。 生音に近いからこそ、生音と異質な部分(マイクやミキサーを使ったこと)がよりはっきりと分かるのだが、そういう「分析的な一面を持つこと」は、Caspian CDPの音の良さの本質ではない。このプレーヤーの本当のすごさは、正確な音の再現が「現場(演奏)」を脳裏に浮かび上がらせるのに、直接結びついているところにあるのだから。
イントロの金管楽器の「くっきりとした感じ」と「濁らない真っ直ぐな音」は、高く評価できる。やはり、PD-70AEは基本性能が高い。 楽音に耳を傾けるとオーボエや弦の音にわずかに硬さを感じるが、その「癖」は問題のない範囲で、それぞれの楽器の「音色の変化」はきちんと再現される。
イントロの管楽器の「数(人数)」が少なく、フルオーケストラの迫力が出ない。 音が重なる部分での「濁り」は小さく、立体感(音の広がり感)」も優れているが、PD70AEとの比較では、情報量が明らかに少なく音が間引かれて「MP3」に圧縮された音源を聴いているような感覚になる。 「間引かれたこと」が、何らかの味わいを醸し出してくれるならまだしも、PD-70AEと比べると情報量や密度感に物足りなさを覚えるだけだ。
イントロの「管楽器の厚み」がK3とは、まったく別物に聞こえる。楽器の音の「圧力感」も全然違っている。 「音の量」や「隅々までしっかりと聞こえる感じ」はPD-70AEには及ばないが、その「全部聞こえない感じ」は「生演奏のそれ」を見事になぞらえているので、実際にコンサートを聞いているようなイメージではCaspianがPD-70AEを上回る、さらに、一部の音が聞こえにくい(マスキングされた)ことで「雰囲気や味わいの深さ」は、逆に向上する。 PD-70AEで完全には消えなかった「違和感」が霧散し、音を聞きこまなくても、音が出た瞬間に演奏に引き込まれるほどのつよい求心力を発揮する。この見事な音作りこそ「ROKSAN」の真骨頂だ。 試聴後感想 Pioneer PD-70AE PD70AEを試聴するのは、「Pioneer PD-70AE こだわり音質テスト」以来ですが、ROKSANと比べて「基本性能の高さに国産品のアドバンテージ」が感じられました。 重量で音質が決まるわけではありませんが、このクラスのCDプレーヤーとしては「圧倒的に重い 」、PD-70AEの「19.6kg」は、ROKSAN Caspian CDプレーヤーのほぼ2倍です。それだけ中身が詰まっている訳ですから、低音の量感や質感、音のきめ細やかさなどで優れた能力を発揮するのは当然のことです。さらに、それに加えて今まで国産品が苦手としていた「正確な音楽の再現性」までもが備わっているところなど、まさしく「鬼に金棒」。潔くUSB入力を省いてまで、音にこだわった「設計者の良心」が音質から伝わってきます。 この価格帯で、よくぞここまで音質を仕上げたものです。内外CDプレーヤーを集めても、50万円以内なら間違いなく「トップクラス」にランクインする音質です。 ROKSAN K3 CDプレーヤー K3とPD-70AEは、重量が倍ほど違っています。そのためか、K3の音には「厚み」と「密度」が足りません。 確かに高音も低音もよく出ているのですが、それは「薄い音を両端に無理して広げたようなイメージで中身が薄い」のです。 ROKSANは好きなメーカーなので、あまり悪口は言いたくありませんが、K3の音はあまり褒められたものではないと感じました。 輸入品だから仕方がないのかもしれませんが、この価格帯ならもっと「情報量」が欲しいと思います。 ROKSAN Caspian M2 CDプレーヤー 情報量や物理的な音質という意味では、Caspianを持ってしてもPD-70AEには僅かに及びません。しかし、癖のなさ、機械の気配を全く感じさせない自然な音は、優秀な海外製品ならではの良さを感じます。 薄型ボディーと押しつけがましくないデザイン。簡単そうに見え手も、超本格的な音質。それは、設立当初からROKSANが持っていた「ブランドの魅力」です。Caspianは、それを見事に継承しています。 もちろんですが価格差を考えた場合、K3よりもCaspian
CDPを選ぶべきです。あまりに音が違いすぎます。 2018年6月 逸品館代表 清原裕介
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