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Rotel RC1580MK2 ローテル プリアンプ 音質 試聴 比較 レビュー 価格 販売 展示
B&W社の傘下で堅実な製品を発売し続ける「Rotel」から、低価格高機能プリアンプ RC1580のマイナーチェンジ・モデルRC1580MK2が発売されました。
一般的なオーディオ用プリアンプには「セレクターとボリューム」以外が装備されていないシンプルナ製品が多いのですが、Rotel RC1580MK2は、今時のプリアンプとしては珍しいほど多機能です。
RC1580MK2の機能
・LINE入力は、RCA×4、XLR×1に加えMC/MM切り替えがあるPhono入力が1系統備わります。それに入出力を持つTAPE端子が2系統備わり、録音出力はRCA/XLR/Phonoの合計6に加え、TAPE1入力が出力できます。今時TAPE端子を使うことはありませんが、RCA×2の入力が追加できると考えてもいいでしょうし、あるいはTAPE2の入出力を使ってイコライザーなどを接続することも可能です。さらに「バランス」、「高/低 2バンドのトーンコントロールとバイパススイッチ」が備わっていますので、プリアンプとして求められる機能はほぼすべて揃っています。付属リモコンでは、バランスとトーンコントロールを除く操作が可能ですが、本体にない「Mute(消音)」機能が備わります。出力は、RCA/XLR×各1系統です。
また、ワイヤードのリモコン入力と12Vのトリガー出力が備わりますが、特別な場合を除きこの機能が使われることはないでしょう。
Rotel RC1580MK2 メーカー希望小売価格 ¥210,000(税別) (この製品のご購入はこちら) |
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試聴用機材 |
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Vienna Acoustics The Music | AIRBOW PM11S3 Ultimate |
3,800,000円(税別) | 565,000円(税別) |
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音質テスト
音質テストは、開発中のAIRBOW NA8005 Studio+iPod Touch(ファイルはWAV形式)をソースに、PM11S3 Ultimate直接接続と、中間にRotel RC1580MK2を入れた場合の音質を比較して行いました。
Ballad Collection Mellow / DOUBLE ”残り火-Eternal Bed-”
PM11S3 Ultimate Direct接続(プリアンプなし)
高音はやや細く感じますが、艶やかで美しく鳴ります。低音は量感が豊かだけれど、少し膨らみます。ボーカルは滑らかで表情が細かく、魅力的です。ソースを考えると十分な音質ですが、聞き慣れたシステムと比べると音が全体に突っ込んでくる(主役脇役がはっきりしない)印象を受けます。CDプレーヤーと比べてクォリティーは引けを取りませんが、音の広がりが横1列でやや平面的に感じられました。
RC1580MK2使用(プリアンプあり)
高音は僅かにロールオフして、スィートで滑らかな印象が強まります。低音の量感は僅かに減少しますが、膨らみが少し解消します。横1列だった音の広がりに前後の幅が出て、CDで聞いている印象にグッと近づきます。音質の劣化は若干ありますが、それを上回るバランスの改善を感じます。
価格を考えると、相当な性能だと思います。
PM11S3 Ultimate Direct接続(プリアンプなし)
高域がスッキリと伸びて音がとても細やかです。PC/ネットワーク・プレーヤーで最も問題となる高域のざらつきや、粉っぽさはまったく感じられません。中低域に揺るぎない力強さが感じられますが、これは回転部分のないトランスポーター(iPod Touch)の良さが出ている印象です。空間も大きく広がり、音と音の関係の精度も高く、弓と弦の動きが手に取るように伝わります。PC/ネットワーク・プレーヤーというネガティブな部分をまったく感じさせない素晴らしい音でヒラリーハーンのバッハソロが鳴りました。
RC1580MK2使用(プリアンプあり)
プリあり プリを使わない場合と比べると、2弦3弦の音が明らかに太くなります。高域はやはり僅かにロールオフするのですが、中域が太くなることでバイオリンのボリュームが増し、楽器(バイオリン)が少し大きくなった(ビオラの音に近づいた)印象です。やや大げさに表現するなら、「プリなし」が奏者の聞く音で「プリあり」が観客の聞く音のように聞こえます。プリアンプを使うことで直接音のエネルギーが減少し、間接音成分(響き)が増える感じです。好みにもよるのでしょうが、私はプリアンプを使うことで聞きやすくムードのある音になったと感じました。
PM11S3 Ultimate Direct接続(プリアンプなし)
音の広がりに乏しく平面的になりやすいこのソフトですが、中低音に厚みがあり驚くほどリッチな音で鳴ります。バイオリン、チェロ、コントラバスの各パートは、音色の分離がもう少し欲しい感じがしますが、それぞれの楽器が持つ「ボリューム感の違い」は非常に良く再現されます。この部分ではCDを超えているかも知れません。 回転部分を持たない。PC/ネットワーク・プレーヤーの音質は、CDに比べて高域の「揺らぎ(昔よく言われたf揺らぎ)」が感じられず、弦楽器の音が少し機械的(事務的)に聞こえますが、その印象さえ除けば、音の広がり、音の関係は非常に良好で、ふくよかな音で音楽をリッチに楽しめるクォリティーに達しているように思います。
RC1580MK2使用(プリアンプあり)
プリアンプを追加することで中低音がさらに豊になり、音楽に抑揚が出ます。各弦楽器の音色の違いも大きくなり、コンサートホールで演奏を聴いているイメージに近づきました。もちろんプリアンプを追加した事による「音質の劣化(音に薄いベールがかかったようなイメージ)」は感じられるのですが、ピントがシャープすぎたポートレートをソフトフォーカスで撮影し直したような、良い意味での「ムード」が醸し出されます。低価格のプリアンプとして懸念される「音質の劣化」は、ほとんど無視できる範囲内です。逆にプリアンプを追加する事によるバランスの向上は価格を遙かに超えるものが感じられます。これはなかなか良くできたプリアンプです。
A Child Is Bone / 峰純子 ”The Nearness of You”
PM11S3 Ultimate Direct接続(プリアンプなし)
イントロのピアノの美しい音に耳を奪われます。ボーカルもきめ細かく艶やかで、情緒たっぷりに歌っています。すべてのソフトで、前後方向が少し浅いという弱点はありますが、音のクォリティーに関しては、ほぼCDと変わりません。逆にグランドピアノの低域の重厚な響きは、CDを超えています。CDはアナログ的な滑らかさを持つ情緒的な音。NA8005 Studioは中低域がより充実した、エネルギー感の豊かな音という印象です。
RC1580MK2使用(プリアンプあり)
プリアンプを使うとNA8005 Studioの音は、SA8005 Studioの音にグッと近づきます。演奏の抑揚が強くなり、メロディーラインの速度変化も大きく感じられます。ゆったりとした大人の雰囲気で時間が流れます。この音であれば、PC/ネットワーク・プレーヤーとCDプレーヤの違いをまったく感じることなく、素晴らしい音質で音楽に浸りきれると思います。ハイエンドオーディオとして何ら臆することのない、完成度の高い素晴らしい音質です。
試聴後感想
Rotel RC1580MK2
プリアンプ プリアンプはセレクターと音量調節機能を司る機器と考えられることが多いようですが、高級プリアンプには「音を整える」という重要な働きが求められます。しかし、微小な信号を損なうことなく、音に響きを与えて音楽性を高めるのは非常に難しく、良いプリアンプは高価にならざるを得ません。しかし、トランスの強大化など高音質に物量を投入しなければならないパワーアンプと比較すると、プリアンプは出力が小さいためトランスなどの重量物が少なく材料コストを安くあげられます。このように考えれば、パワーアンプに比べて重量が軽い=材料代が安い「高級プリアンプ」のコストは「開発費」と「外観」だと思い当たります。
RotelはRC1580MK2に簡素な回路と外観を採用することで、低コストを実現すると同時にRotelならではの量産効果で「低価格」と「高音質」を両立しています。 今回発売されたRC-1580MK2の内容は明かではありませんが、従来モデルのRC-1580にXLR端子が追加されただけではなく、高域の「艶やかさ」がより改善している印象で非常にムーディーな音に仕上がっています。
外観こそ若干「高級感」に欠ける嫌いはありますが、その音質は50万円クラスのプリアンプに引けを取りません。機能も豊富で、この価格帯でも最も「使える」プリアンプに仕上がっていると思います。RCA1580MK2は、Rotelらしい良心的な製品だと感じました。
AIRBOW NA8005 Studio プロトタイプ
SA8005からメカニズムを取り去り、空いたスペースと浮いたコストで電源回路とデジタル入力回路を強化したネットワークプレーヤーがMarantz NA8005です。そのNA8005を母体とする開発中のカスタムモデルが、AIRBOW NA8005 Studioです。
AIRBOWからすでに発売されている「SA8005 Studio」と開発中の「NA8005 Studio」のDAC以降の回路は同一です。しかし、全体的なバランスを整えるためその(DAC以降)チューニングにはかなりの違いがあります。
Rotel RC-1580MK2のエイジングを兼ねてセットで聞き、今回のRC1580MK2の試聴テストに使ったなNA8005 Studioはプロトタイプなので製品版とは少なからず音質が異なりますが、すでに製品として十分な性能に達していることが確認できました。 しかし、今回の試聴でもう少し「響き」と「広がり」を持たせることができれば、他メーカーにはない「音楽性の高いネットワークプレーヤー」として完成度が高米良玲ることが確認でき、DAC回路へのフィルターの追加、アースラインの強化、電源のローノイズ化などを行い、NA8005 Studioは完成しました(8月発売)。
Dali HELICONの試聴リポートに書きましたが、Audioによる音楽の楽しみは大きく2分されると感じています。一つは、Audioの存在を感じさせない自然で深みのある音。もう一つは、Audioによる高音質の存在をじさせる音です。当初、NA8005 Studioは「ハイレゾ/DSD」という言葉を実感できる「高解像度な音質」に仕上げようと思ったのですが、Rotel RC1580MK2を接続して聞けた音があまりにも「官能的」だったため、機械的で潤いを失いやすいPC/ネットワーク・プレーヤーが多い中、時間を忘れて音楽を聞いていたくなるような「心地よい音」を実現する「ノーマルモデル」と、PC/ネットワーク・プレーヤーらしい「存在感のある高音質」を実現する「ハイレゾ対応モデル」の2機種をラインナップする予定です。
2014年7月 逸品館代表 清原裕介
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