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Rotelから近日発売予定の新型DAC「RDD-1580
プロトタイプ」の試聴機が届けられました。Rotel RDD-1580は、LAN(Ethernet)に対応しないUSB入力を備えるDACです。付属する専用ドライバーのインストールでUSB
Class 2.0(192kHz/24bit)の再生に対応しますが、DSDは非対応です。
このモデルの音質を確認するため、Focal Aria926の試聴後、スピーカーをVienna
Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)に変え、CDプレーヤーとアンプは引き続きAIRBOW
SA14S1/PM14S1 Masterを使って音質テストを行うことにしました。
Vienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)の主な仕様
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比較にはAIRBOW SA14S1 MasterをUSB入力で使用しました
CEC CD3N | ||||||||||||||||
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今回の試聴では、受け側DACだけではなく、送り側PCの音質を比較するため、Windows7 Professional(i5)をインストールしたノートPCとAIRBOW MSS-I3/MSHDを使いました。また、Rotel RDD-1580、AIRBOW SA14S1 Master共にiPodの接続に対応するので、追加で愛用のiPod Touch/第5世代を繋いでPCと音質を比較しました。
音源はすべて、CDをリップしたWAVファイルを収録しています。
PCのデータストレージには、ストレージによる音の違いが起きないように同一モデルの外付けHDD(1TB)を同じケーブルでPCに接続して使いました。ただし、Windows用HDDのフォーマットは購入時のままのNTFSですが、MSHD/Linux用のHDDはext4でフォーマットし直しています。iPod touchは内蔵メモリーに収録したWAVデーターをUSB接続で再生しました。
「Windows7pro」をインストールしたPC。CPUはi5、再生ソフトはMSS-i3に合わせて、「VLC Player」を使いました。
「iCAT Ink. MSHD/Linux」をインストールしたAIRBOW MSS-i3/MSHD。CPUはi3。再生ソフトは「VLC Player」を使いました。
「i-OS7」をインストールした、i-Pod タッチ/第5世代も比較に使いました。再生ソフトは、i-Tunesです。
(このテストの前に行った、Marantz SA14S1、PM14S1とAIRBOW カスタムモデル Masterの音質比較を読む)
音質テスト
Rotel RDD-1580 | ||||||||||||||||
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添付される付属品(プロトタイプ) ACケーブル リモコン RCAケーブル 外部機器制御用・フォンケーブル USBケーブル ドライバーインストールCD-ROM |
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AIRBOW PM14S1 Master | ||||||||||||||||
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当初RDD-1580を使ってWindows PCとAIRBOW MSS-i3/MSHDの比較を行う予定でした。RDD-1580の説明書には「専用のドライバーを入れない場合、USB Class 1.0で繋がり、96kHz/24bitMadeのデーターを再生可能」と書いてあったので、ドライバーを入れずにWindows PCに接続しました。しかし、ドライバーが不明と表示されてRDD-1580が認識されません。届けられた試聴機には付属するはずの専用ドライバーが見当たらず、またRotelのHPからは専用ドライバーが供給されていないのでしかたなく、今回はRDD-1580とWindows PCを組み合わせた音質テストはパスすることにしました。 このままではRDD-1580のUSB入力の音質がテストできません。そこでオーディオ用にチューンしたLinuxを搭載するAIRBOW MSS-i3/MSHDを送り側機に使ってUSB接続の音質をAIRBOW SA14S1 Masterと比較することにしました。Windowsが対応しないDACにLinuxが対応することを疑問に思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、MSS-i3/MSHDが搭載するMSHDは、特別な場合(YAMAHAの新製品)などを除き、ほとんどの機器とUSB接続が可能なのです。また、一部のモデルでは搭載するVLCの機能を使って192kHz/24bitまでのハイレゾ音源の再生も可能です。VLCが対応しないUSB機器とは44.1kHz固定で繋がりますが、ハイレゾとの音質差はほとんどありません。 今回テストしたDAC(CDプレーヤー)だけではなく、ハイレゾ対応USB-DACでCDをリップした音源とハイレゾ音源を比較しましたが、高級機になればなるほど44.1kHz/16bitと192kHz/24bitの差が小さくなります。最近発売される高級CDプレーヤーでは、ハイブリッドディスクを再生した場合のCDレイヤーとSACDレイヤーの音質差が無視できるほど小さいかあるいは逆転することがあります。DACも良く出来なモデルなら、ハイレゾとノーマル音源、DSDとノーマル音源の差はほとんどありません。それらの高級機で実際に再現される音楽の音質差は、ハイレゾ、DSD、ノーマル(CDと同じ44.1kHz)というデーターファイル形式よりも、「ソフトの録音そのもの」による音の違いの方が遙かに大きく感じられます。 そういう理由で今回は、AIRBOW MSS-i3/MSHDを送り側に使い、ファイルはCDをリップした44.1kHz/16bitのWAVだけを使いました。しかし、Windows PCを送り側機に使う場合と、AIRBOW MSS-i3/MSHDを送り機に使う場合では音質に大きな差があります。そこで誤解を招かないよう、このテストではまずAIRBOW SA14S1 MasterをUSB接続した場合のWindows PCとAIRBOW MSS-i3/MSHDの音質を比較した後で、Rotel RDD-1580の音質をリポートすることにしました。 送り側にWindows PCを使った場合のAIRBOW SA14S1 Masterの音質 「Windows7pro」 SA14S1 Master PM14S1 Master AIRBOW SA14S1 Masterで聞くCD(リッピング元)に比べ、音の立ち上がりが明らかに遅く、また周波数帯域上下のレンジが削られてかなり音質が「圧縮」されたように感じます。 音の分離感や解像度感もCDに劣り、音場が濁って一つずつの音にも切れ味と鮮やかさを感じません。 悪い音、嫌な音ではありませんが、中庸に鳴っている感じです。 マイケル同様、CDに比べて音場が濁っています。それぞれの音の分離も悪く、楽器の音色やボーカルの表情に鮮やかさが感じられません。 分厚いカーテンの向こう側に設置したスピーカーで聴いているようです。 このソフトは元々音場が濁って聞こえるので、PCをトランスポーターに使うことによる欠点はあまり感じられません。 バイオリン、チェロ、コントラバスの各パートの音は分離して聞き取れますが、CDよりも楽器の音色の描き分けが甘く、バイオリン、チェロ、コントラバスの特長がうまく再現されません。 この文章だけを読むと「かなり悪い音」のように思われるかも知れませんが、絶対的には悪い音ではありませんし、音楽性を損ねる妙な癖も感じられません。このリポートはいつも聞いている「相当良い音」との比較なので、音楽を聞くには十分な音は出ている感じです。 送り側にAIRBOW MSS-i3/MSHDを使った場合のAIRBOW SA14S1 Masterの音質 MSS-i3/MSHD SA14S1 Master PM14S1 Master 一音目からまったく音が違います。空間が濁らずに大きく広がり、一つずつの音が磨かれたように輝いて力があります。 Windowsの音質をMP3に例えるなら、MSS-i3/MSHD はCD以上の音に感じられます。 低音は弾み、高音は抜けています。音の細かさも飛躍的に向上し、Windows PCでは団子になっていた音の重なりが綺麗に分離します。 音の次元が大きく変わりました。 Windows PCと比べて前後方向へ音場がより大きく展開します。また、音場空間の濁りも取れて見通しが良くなりました。目の前にあった分厚いカーテンが取り払われたようです。 ピアノの響きの余韻の長さ、ボーカルの息づかい、ウッドベースの弦を押さえる左手の圧力変化、そういった「高級オーディオでしか味わえない世界」が再現されるようになりました。 送り側のPCを変えると、コンサートホールの座席位置が変わります。 Windows PCはコンサートホール後方で音が混濁して聞こえる状態。MSS-i5/MSHDは楽器からの直接音と間接音のバランスが最も良いとされるSS席に該当し、さらに楽器からの直接音とホールの反射音(間接音)が聞き分けられそうなくらい、音が細かくまたそれぞれの特長がきちんと再現されます。文句を付けるなら、CDに比べて弦楽器の高次倍音が完全に再現されていないように感じる部分でしょうか。生楽器はもっと高い周波数のエネルギーが高いはずなのに、その部分が若干スポイルされているように感じす。しかし、オーディオと生楽器では元々そういう高周波に近い周波数帯域の音が一番違うので、これくらいは仕方のないと思います。 送り側にAIRBOW MSS-i3/MSHDを使った場合のRotel RDD-1580の音質 MSS-i3/MSHD Rotel RDD-1580 PM14S1 Master 低音にシッカリしたボリュームがあり、全体的に肉厚な音です。しかし、リズムが若干重く、伴奏とボーカルの関係もSA14S1 Masterのようにピッタリと合っている印象がありません。 しかし、RDD-1580は多くのUSB-DACで問題となる高域のノイズをまったく感じられないほど音はクリアで、伴奏とボーカルの分離にも優れ、音楽を楽しめる良い音のUSB-DACという印象です。 ウッドベースの音に厚みがあり、ボディーの木の暖かさも感じます。ノラ・ジョーンズの声にも厚みがあり、女性らしくまたふくよかな彼女の若々しいボディーを連想させるような艶のある音が出ました。 ピアノは少し響きがマイルドですが中低音にしっかりとした厚みがあり、高価なピアノらしい良い音が出ます。 マイケルで感じた「リズムの重さ」はこの曲ではまったく問題とならないばかりか、曲の流れに余裕を生み好印象。大きな川が海に向かって流れるような、ゆったりとした暖かい音でノラ・ジョーンズが聞けました。 SA14S1 Masterにくらべるとコンサートホールの大きさがやや小振りに感じられます。また、気になっていた弦楽器の高次倍音もさらにミュートされてように聞こえますが、無理に伸びていない分違和感が小さいように感じられます。 上手にデフォルメされたオーディオの音ですが、縮尺や要約のスケールが正確なので音楽の再現性にはまったく影響を与えません。 日やリンゴを行ったテスターが「好みや感覚に合わせて作った音」という感じがなく、DACチップメーカーから供給される評価回路をそのまま組んだような、良い意味で癖や機械のいやらしさの感じられない、フラットな音でヒラリー・ハーンが聞けました。 |
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iPod Touch 第五世代 | ||||||||||||||||
本来はPCによる音質比較でUSB DACのリポートを終えるのですが、最近私は好んで愛用のiPod Touch(第5世代/i-os7)をAIRBOW機器に接続して聞いています。それはiPodが多彩なプレイ「プレイリスト、シャッフル、ジーニャスプレイリストなど」を備え、長時間ジュークBOX的に音楽を聞くのにとても適していることに加え、音源をMP3(320bbs)で圧縮して収録しているにもかかわらず、下手なCDプレーヤーよりも音が良いと感じる事が少なくないからです。そこで今回は、追加テストとしてAIRBOW SA14S1 MasterとRDD-1580に備わるFront USB端子に愛用のiPod Touch(第5世代/i-OS7)を繋いで聞いてみました。 送り側にiPod Touchを使った場合のRotel RDD-1580の音質 (接続はiPod Touchに付属のUSBケーブルを使用) i-Pod タッチ/第5世代 Rotel RDD-1580 AIRBOW PM14S1 Master SA14S1 Master + Windows PCで聞けた音よりは明らかに解像度が高く、音場の濁りも少なく良い音です。 高域にはまったくノイズ感がなく、 ボーカルも滑らかです。聞き耳を立てると音の数が少し少なく、音が重なったところの裏側の音が少ないように感じます。また低音のボリューム感も小さくなっていますが、バランスに優れているので音楽を楽しんで聞けます。自然で違和感のない楽しい音です。 MSS-i3/MSHDに繋いだ場合のRDD-1580の音を10として8近くまで出ているかもしれません。 ウッドベースの量感が若干失われ、ウッドベースの音量が少し小さくなりました。しかし、ベースが後に下がった分ボーカルが前に出て心地よい感じです。 絶対的な情報量や音質は劣化しているはずなのですが、全体のバランスや雰囲気に優れるので、オーディオ的に聞き耳を立てなければそれが気になりません。 また、PCをトランスポーターにした場合は、音が途切れ途切れに感じられる(音が滑らかに繋がらず、音と音の間に隙間があるような感覚)事があるのですが、iPod Touchの音は滑らかに繋がり、レコードやCDのようにディスクを回転させて音楽を聞いているのに近いイメージの音が出ます。 まったく不満を感じない良い音でノラ・ジョーンズが聞けました。 iPod Touchだとやっぱり、安心できる良い音です。Windows PCを大きく超えるこの良さは一体なんでしょう?下手をするとMSS-i3/MSHDよりも音が有機的で滑らかに感じられるほど良い音です。 音の細かさ、周波数帯域の広さなどHiFi性能ではMSS-i3/MSHD がiPod Touchを大きく凌駕しますが、音楽を聞くだけならiPod Touchでも十分な音が出せると思います。 音源を「WAV」で取り込むのと記憶領域が限られる「iPod Touch」ですが、音質はWindows PCを明らかに超えています。 送り側にiPod Touchを使った場合のAIRBOW SA14S1 Masterの音質 (接続はiPod Touchに付属のUSBケーブルを使用) i-Pod タッチ/第5世代 SA14S1 Master AIRBOW PM14S1 Master 出てきた音を聞いて驚きました。MSS-i3/MSHDをソースにしているときは、SA14S1 MasterとRDD-1580の能力はかなり拮抗しているように感じたのですが、iPod Touchで聞き比べるとかなりの差が感じられたのです。iPod Touchで比較するSA14S1 Masterは、音の細かさ、明瞭度、鮮やかさでRDD-1580を大きく上回ります。 RDD-1580とSA14S1 MasterでiPod Touchを聞いて感じるのは、音質面で明らかにMSS-i3/MSHDにiPod Touchは引けを取るものの、それを凌ほどのバランスに優れる滑らかな音は実に魅力的で、雰囲気良く音楽を聞かせるのです。雰囲気を優先する!音楽を楽しませる!という部分を重点的にAIRBOW製品は音作りしますが、iPod Touchはそれに似ています。 AIRBOWの入門機のように音質を欲張らず音楽の雰囲気を見事に醸し出せるiPod Touch。こんなに小さな機械からこんな素敵な音が出る。これはすごいことです。 意外性に驚かされましたが、ここで少し冷静になって、分析的に音を聞いてみました。 iPod Touchの音は周波数帯域の上下が若干ドロップした「音楽再生に理想的とされる、かまぼこ形のエネルギーバランス」を持っています。聞こえると気になる高音が上手く端折られているので、音質の劣化が気にならないのです。また、響きの成分も多めに再生されるので、音楽の雰囲気や演奏会場の空気感が上手く再現されます。 普及価格帯のゼネラルオーディオのiPod Touchですが、その音作りの手法がAIRBOWの高級コンポに見事にマッチし、そのサイズや価格が信じられないほど心地よい雰囲気で音楽が再現されます。以前から、私はiPod TouchやiPadの音が良いと感じていましたが、iPod-USBインターフェイスの進歩と共にそれがさらに磨かれてきたようです。 響きが多く滑らかな音です。 音がとても自然にシームレスに流れるので、違和感なく楽しく音楽を聞くことができます。その音は良くできたAクラスアンプや、真空管アンプのそれに近いイメージです。弦楽器の高音が若干丸いのですが、その減衰する感じが自然(物理的な減衰に近い)ので音質劣化が気になりません。逆にこのソフトでは高音が丸められていることで、グラムフォン系のソフトの問題である「空間の濁り」や「楽器の異質な重なり感(倍音がぶつかる)」が全く気にならないというメリットさえ感じました。 最新のソフトの多くは「ゼネラルオーディオ(通常音質の機器)」に合わせて作られています。細かい音まで収録するのではなく、各々の楽器の音の明瞭度を高めて収録してます。そのようなソフトを高級オーディオで再生すると、本来は再生されるべきではない「楽器の音を録音しているマイクが拾ったその場の間接音」まで再生されてしまうので空間が濁り、音の広がりや定位が悪くなるのです。 しかし、iPod Touchのちょうど良い音質劣化が、「問題となる部分」をスポイルしてくれるので、より雰囲気良く音楽を自然に楽しめたのだと思います。 |
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CDソフト | ||||||||||||||||
試聴の締めくくりにCDを聞きました。 まずSA14S1 MasterでPCにリップした元CDを聞き比べ、さらにヒラリー・ハーンのソフトではSACDレイヤーの音質もチェックしました。 さらにAIRBOW SA14S1 Masterの上級モデル CD3N AnalogueをCDでSA14S1 Masterと聞き比べました。ベルトドライブCDプレーヤーという希有な存在感を放つ、CD3N Analogueは一体どのようなサウンドで音楽を奏でてくれたのでしょう? SA14S1 MasterでCDを聞きました SA14S1 Master AIRBOW PM14S1 Master 「音質」という意味では、今回試聴した中でCDがベストでした。 高音が綺麗に伸びて、それぞれの音の分離、質感にも優れています。これぞ高級オーディオの良い音だ!というイメージでマイケルが鳴ります。 iPod Touchの音が、えもいわれぬソフトフォーカス感が醸し出す良い雰囲気でマイケルを楽しませてくれるのなら、CDはきちんとした高音質でマイケルを楽しませてくれます。 iPod Touchの雰囲気の良さにさらに、音の良さ(良い音を聞く)という喜びが加わりました。 音それぞれに「品位の高さ」を実感します。 密度が高く端正で美しい音で楽器が鳴り、音楽が奏でられます。楽器奏者のタッチの変化、ノラ・ジョーンズの声の変化、細かい部分の再現性は、やはりiPod Touchとは比較に鳴らないくらい向上します。 オーディオマニアがこだわる「音質」では、CDが一番です。「高級」という言葉で表される何かがしっかりと伝わります。 雰囲気に逃げることなく、真っ直ぐ良い音を出してノラ・ジョーンズをがっちり聞かせてくれました。 このディスクはハイブリッドなので、CDとSACDの両方で聞いてみることにしました。 iPod Touchで聞くヒラリー・ハーンは気軽なライブを聴いている印象、CDではそれが本格的なコンサートを聴いている印象に変わります。 正装して音楽をきちんと聞きたい。そういう折り目正しく美しい音でヒラリー・ハーンが聞けました。 SACDレイヤー この曲ではCDのクッキリした音が、よりバッハらしい「区切り感(言語で言う音節)」の鮮やかさが感じられ高印象でしたが、逆にドビュッシーのような印象派の音楽にはSACDの滑らかさがマッチしそうです。しかし、いずれにしても最近メディアが主張する「DSDの圧倒的高音質の優位性」はまったく感じることができません。 CDプレーヤーの進歩によりCDの音質が大きく向上した結果、ハイレゾやDSD(SACD)の必要が薄くなったように思います。ほとんどの音源がCDであることを考えれば、これはとても喜ばしいことです。 CD3N AnalogueでCDを聞きました AIRBOW CD3N Analogue AIRBOW PM14S1 Master SA14S1 Masterよりも高音がスッキリと伸びて、音場がより開放的に広がります。 従来ベルトドライブの弱点とされていた、低音の膨らみや高音の芯の弱さはまったく感じられません。 同じDACを搭載するDA3N Analogue2よりも、音質がややさっぱりしているとカタログに書いたCD3N Analogueですが、それでも楽器の色彩感はSA14S1 Masterよりも濃厚で鮮やかです。 マイケルが早口で発音する英語がすべて聞き取れ、高の表情も繊細で豊かに再現されます。また楽器とボーカルの対比や、各々の音の対比も非常に鮮やかです。 美しく彩色された色鮮やかな映像を見ているような美しさと、ドラマティックな躍動感でマイケルが鳴りました。 今日はもう十分「良い音」を聞いているのですが、それでもCD3N Analogueの音を聞くと「安心」するから不思議です。 音は非常にきめ細かく、高音も驚くほどスッキリと伸びています。通常のHiFi機器ではここまで音が良くなると、「音楽がHiFiになりすぎて分析的に聞こえ始める」のですがCD3N Analogueはそうならず、実に肌触り良い音で音楽が鳴ります。 SA14S1 MasterでCDとiPod Touchを聞き比べたとき、音質ではCD、雰囲気ではiPod Touchに軍配を上げました。良い音と雰囲気の良さは両立しにくいのですが、CD3N AnalogueはCDの高音質とiPod Touchの醸し出す雰囲気の良さを見事に両立させています。とても高品位な音ですが、オーディオを聞いているという違和感がなく、良い音で生演奏を聴いている雰囲気です。 AIRBOWの上級モデル セパレートCDプレーヤーのTL3N/DA3N Analogueは濃厚極まりない雰囲気の濃さが魅力です。CD3N Analogueは雰囲気にどっぷりとはまる寸前で端正さと艶やかさが両立した、純日本的な美しく艶やかな音でノラ・ジョーンズを鳴らしました。 CD3N Analogueでこのディスク(CDレイヤー)を聞くと、SA14S1 Masterで聞くSACDよりもさらに弦楽器の台数が多く感じられます。 音の広がり感は十分ですがコンサートホールのサイズがさほど大きく感じられないのは、CD3N Analogueではなく「グラムフォンの癖(マルチマイクによる音場の混濁感)」が若干悪い方向に働いているのでしょう。 バイオリンの音は高音が美しく伸び、音にシッカリした芯の強さが感じられます。今回試聴した中でもっとも生の楽器の音に近い音です。チェロやコントラバスの音も同様にそれぞれの楽器の特徴的な音が明確に再現され、生演奏を聞いている音質と雰囲気で音楽を楽しめます。 CD3N Analogueで聞くこのディスクは、音楽の躍動感、演奏の運動が見事に再現され、SA14S1 Masterと比べても一段と精度と質が高められていることがよくわかります。 高性能でなおかつ自然な音。たぶんそれはCD3N(TL3N)がSACDよりも伸びやかに楽器の高音を再現できることに秘密があります。 ベルトドライブ方式の良さを生かし切るCD3N Analogueの高音は、SACDよりも遙かに良く伸びた自然な音質でヒラリー・ハーンを鳴らしました。 |
試聴後感想
今回の比較試聴ではAIRBOW SA14S1 MasterとRotel RDD-1580だけではなく、USB DACとしてそれぞれを使った場合の「送り側機/デジタルトランスポーター(PCやiPod)」の音質の比較を行いました。
今回の環境でWindows PCの音質はiPod Touchに及ばず、音楽を聞くには適しているとは思えないありさまでした。それに比べ、オーディオ用に特別チューニングを施した、Real Time Linuxを搭載するMSS-i3/MSHDは、当然のことながらWindows PCの音質を圧倒しました。また、MSS-i3/MSHDはWindows PCのように専用ドライバーのインストールを必要とせず、繋げばすぐにUSB-DACから音が出る(一部接続できない製品もあります)など使い勝手もWindowsよりも優れています。Linaxと聞くと敷居が高いイメージですが、以外に簡単で特別な知識なしでも使えそうです。MSS-i3/MSHDは今回、USB接続での音質テストのみ行いましたが、HDMIやLAN出力での高音質や搭載されるソフトを使った様々な機能を考え合わせるなら、価格相当の価値が出てくると思います。また同様の機能を持つ「NUS/Buffalo製品」などと比べても、音質機能面でそれを大きく上回ることを確認しています。
PCに比べ驚くほど小さく価格が安いiPod Touchは、音も貧弱に思われがちです。しかし、良質なヘッドホンを繋げばその音質は想像を遙かに超えるはずです。また、USBトランスポーターとして使った場合も優秀で、今回のテストで付属ケーブルを使った場合でも、Wondows PCの音質を超えました。もちろん、専用OSを搭載するハイスペックPCのAIRBOW MSS-i3/MSHDには及びませんが、その良さは私が名器と感じるフルレンジスピーカー BOSE 101に似ているように思います。どちらもすべての音をきちんと出しませんが、それを上回る「美味しい音」を「美味しく出す」大きな魅力を持っています。
しかし、iPod Touchは記憶域の容量がPCよりも小さいことが問題です。多数の楽曲を収録するにはどうしてもファイル(データー)を圧縮しなければならないからです。私は音質をテストした結果、MP3 320bpsに音源を圧縮してiPod Touchに収録しています。この圧縮なら、ヘッドホンで聴く限り「音質劣化」はほとんど気になりません。ヘッドホンで聴く場合はそうでなくてもUSB-DACと組み合わせて使う場合、収録するファイルは圧縮しない方が確実に良い音が出せることも事実ですが、プレイリストの作りやすさ、自動で音楽を選曲してくれるなど、長時間音楽を聞くために便利な機能も搭載されているので、ジュークBOX的にCDプレーヤーを使いたいとお考えなら、iPod TouchもしくはiPadで十分だと思います。
今回テストに使った、iPod Touchは第5世代の一番新しいもので、OSもi-OS7をアップグレードしています。手元に同じ音源を収録した第4世代のiPod Touchがあるのでそれと音質を比較しましたが、はっきりした音の違いを感じました。しかし、しばらくそのままで聞いているとどんどん音が良くなってきたではありませんか。PCはiPod Touchは「デジタル機器」なのでウォーミングアップは必要なさそうですが、同じデジタル機器であるCDやDACがそうであるように、ある程度のウォーミングアップは必要かも知れません。PCにウォーミングアップが必要なんておかしい!と早合点しないでください。デジタルの論理回路を動かしているのはアナログ回路。アナログ回路に使われるトランジスターは、温度変化に非常に敏感です。場合によっては数億を超えるトランジスターを搭載する、PCやiPod Touchが「暖まると音が変わる」のは、オーディオ機器としてはごく自然なことなのです。
私は試聴テストに使う特別な曲を除きiPod タッチには、MP3(320pps)で楽曲を取り込んでいます。なぜなら元々音質がそれほど優れている訳ではない古いJazzやPopsなどは音数が少なく、MP3に圧縮してもCDとほとんど差を感ずにすむ(もちろん、明かな違いはありますが)からです。しかし、音数の多い交響曲などは圧縮で音質が明らかに損なわれますから、そういう音楽のみWAVで取り込み、音数(音源の数)が少ないJazzやPopsはMP3と使い分けて容量の少なさを補っています。
今回、音質が芳しくなかったWindows PCですが、PCオーディオにWindows PCを使っている方は多いと思います。Windowsの音質を少しでも良くするにはハイレゾやDSDファイルを使う必要はありません。それを使っても音が良くなるとは限らないからです。今回、Linuxを使うMSS-i3/MSHDが高音質を実現できたのは「ハードウェア」ではなく「ソフトウエア」の音質に優れるからです。Windows PCで音を出すために必要な「プレーヤーソフト」には注目してください。かなり音が変わります。私は「雰囲気の良い音が出る」Win Ampを通常使っていますが、今回はプレーヤーソフトをMSS-i3/MSHDと合わせるため「VLC」を使いました。音質が優れなかったのは、VLCの影響があるかも知れません。また、DACやアンプ、あるいはスピーカーやソースを変えてテストすると異なった答えになる場合があるのは、付け加えるまでもないでしょう。
PCオーディオの黎明期(未だに黎明期かも知れないですが)には、CDドライブはエラーするから音が悪いと言われたことがあります。しかし、それは大きな誤りです。最近のCDメカニズムは低価格でも性能が高く、よほどのことがない限りCDの情報をエラーフリーで100%完全に読み取ることを確認できるからです。また、PCでCDを読み取るとエラーが減るというのも迷信だと考えています。それはCDプレーヤーで再生できない傷の付いたCDは、PCにリップしてもやはり傷のある場所で音が飛ぶからです。PCが完全にエラーを補正できるのなら傷で音は飛びません。このような経験からPCの読み取り能力は、CDとそれほど変わらないと考えています。
PCオーディオファンには申し訳ないのですが、CDの読み取りで「音質」が変わるのは、実は「読み取れるデーターの精度」ではありません。最近、ディスクの素材にガラスや、高品質な樹脂を使った「高音質CDソフト」が発売されていますが、それはCDプレーヤー(CDドライブ)はディスク材質の影響で音が変わるからです。なぜディスクの材質で出てくる音が変わるのかその理由を説明できるメーカーを私は知りません。また、私も理由を知ることはありません。しかし、豊富な実験と経験から「CDディスクの響き」が再生される音に影響することを知っています。CDの響きが再生音に影響することをプラスの方向に使ったのが、ベルトドライブメカニズムを搭載するCD3N(TL3N)Analogueです。これらのモデルにはAIRBOWが開発した、高音を伸びやかにする特殊なスタビライザー「STB-1」を付属しています。このスタビライザーは「それ自体が楽器のように響く」ことで、CD化(デジタル化)で失われた楽器の高次倍音を復元する力を持っています。その効果は大きく、今回の試聴でCD3N AnalogueはCDの再生でさえ、SA14S1 Masterで聞くSACDを超える高音質を聞かせてくれました。
話を戻します。Rotel RDD-1580は今回聞き比べに使った製品がいずれもRDD-1580よりもかなり上位機種だったため、「ここがよかった!」という強い印象がありません。しかし、それは良い意味でのRDD-1580の長所です。RDD-1580にはDSDファイルに対応しないというスペック上のウィークポイントはあるものの、ソースの録音やほとんどのDSDファイルが「PCMからアップコンバートで作られている」という事実を考えても、DSDが高音質という保証はどこにもありませんから、DSD対応は機械としても魅力を高めてはいるもののそれはスペック上だけで音質的なメリットはないと断言できます。
RDD-1580の魅力は「素の良さ」を持っていることです。特にMSS-i3/MSHDとの組み合わせで聞かせてくれたノイズ感が感じられない、滑らかで柔らかな音は印象的でした。Rotel RDD-1580はメーカー希望小売価格15万円の価格帯では、上位にランクできる良い製品だと思います。
2014年1月 逸品館代表 清原 裕介
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