ELAC EA-101EQ-G 小型DAC内蔵プリメインアンプ AIRBOW AI301DA Special TEAC 音質 比較 評価 レビュー 試聴TAD デジタルパワーアンプ M1000、M2500 mk2 新旧、MANLEY 真空管プリアンプ(ヘッドホンアンプ) Neo Classic 300B、Jumbo Shrimp 聞き比べ音質比較テスト
聞き比べテストの概要 2018年9月、TADからRevolution Seriesの新型D級パワーアンプ「M1000(メーカー希望小売価格135万円/税別)」が発売されてすでに一年が経過しました。このモデルは、2015年8月に発売された上級モデルM2500 Mark2(メーカー希望小売価格168万円/税別)の下位モデルという位置づけですが、価格が近いだけではなく「技術的な共通点が多く、さらに3年分のアップデートが実施されているので、上位モデルにどれくらい音質が近づいているのか、あるいはそれを凌駕してしまうのか、3号館の展示品入れ替えに伴い、2モデルを真っ向勝負で聞き比べてみることにしました。 聞き比べは、まず「音量可変出力」を備えるAIRBOWのUSB-DAC「UD505 Special」をそれぞれのアンプにダイレクトに接続して行い、次にM1000にTADのプリアンプ C2000を、さらに逸品館が輸入を開始した「MANLEY(マンレイ/U.S.A)」社の真空管プリアンプ「Neo Classic 300B」と「Jumbo Shrimp」を組み合わせて、プリアンプの追加によりどのように音質が変化するかをチェックしました。 概要説明・YouTubeへのリンク AIRBOW UD505 Special 販売価格 195,000円(税別) TEAC UD505を高音質化した、AIRBOWカスタムモデルです。(メーカーサイトはこちら)
TAD M1000 メーカー希望小売価格 1,500,000円(税別) M1000はM2500 Mark2と同じく、TADコンポーネントの基本概念「Dual logic-Circuit Technology(対称性の追求)」が貫かれています。増幅回路は入力端子から出力端子まで完全に独立した2台のアンプをバランス接続したBLT方式を採用し、電源回路は、正負電源の対称性だけでなく、電源トランスから整流回路、安定化回路などすべての電源回路を各チャンネル独立設計とされています。構造面でも電源トランスの配置や基板のパターン構成に加え、配線長にまでも同一性を考慮したデュアルモノ構造を採用されています。 電源にはスイッチングノイズの影響が生じないトランスドロッパー方式の電源を採用し、電源のS/Nを高めています。また、高品質オリエント材を使用した1kVAクラスのトロイダル型電源トランスは、一次および二次側巻線を結合させることでエネルギー変換ロスを低減しています。さらに、TAD専用に開発した大容量33,000μFの電解コンデンサーと高速ショットキーバリアダイオードで構成された整流回路は、クラスDアンプが持つスピード感溢れるダイナミックな音質を支えています。 リード端子を排除した超低オン抵抗を誇るパワーMOSFETを採用する、クラスD出力段は電力利用率90%以上の高効率特性を達成し、電源エネルギーをストレートにスピーカーへ伝えます。スピーカーの各ユニットと各アンプを直結することで、ユニット間での干渉を排除し、セパレーションの向上を実現する「Bi-Amp機能」を搭載。本機能の搭載によりアンプとスピーカーがもつ本来の性能を引きだし、歪の少ない澄んだ音の再現が可能です。 強固な肉厚アルミ筐体は、D1000 Mark2で新開発されたスパイク内蔵型インシュレーターによる3点支持構造を採用により、荷重ポイントの明確化や床からの振動の影響を低減を実現することで、情報量、力強さ、空気感を向上させています。さらに“Referenceシリーズ“で採用している強固かつ高品位の大型スピーカーターミナルの搭載により、機械的、電気的な接続安定度の向上を実現し、極太スピーカーケーブルの能力までも最大限に引き出せます。 外観は、CDプレーヤーTAD-D1000」「TAD-DA1000」とデザインを揃えることで、システムの美しさを追求するとともに“Evolutionシリーズ”の持つ俊敏、高品位、高音質のイメージを表現しています。使用環境でデザインマッチしやすいブラックとシルバーの2色をラインアップされています。 TAD M2500 Mark2 メーカー希望小売価格 2,000,000円(税別) 「TAD-M2500MK2」は、2010年に発売されたRevolution Seriesのパワーアンプ「TAD-M2500」のマイナーチェンジモデルです。Mark2では、電源回路やスピーカー出力回路を低インピーダンス化するチューニングが行われると共に「TAD-D1000MK2」と共通の新型インシュレーターを採用されています。 外観イメージもD1000 Mark2と合わせるため、トッププレートの表面処理がヘアライン加工に変更されました。 TAD C2000 メーカー希望小売価格 2,100,000円(税別) DAC内蔵ラインプリアンプ。
MANLEY Jumbo Shrimp メーカー希望小売価格 690,000円(税別) チャンネル当たり真空管を「3本」純A級領域で動作させることで、きめ細やかで透明な音質を実現しています。生き生きとした躍動的な音質と、トランジスターアンプ同等のローノイズ(M1000と接続し、スピーカーに耳を近づけてもノイズはほとんど聞こえません)を実現するために負帰還(フィードバック)を全体ではなく、必要な部分に最小限使うことで対処しています。 使われている真空管は、NOS(New Old Stock)の音の良いものが選別して使われ、MIT社のオーディオグレードフィルムコンデンサーや、アルプス製可変ボリュームなどこのクラスのアンプにはあまり使われる事のない高級パーツをふんだんに盛り込んでいます。さらにやはりこのクラスの製品ではあまり使われる事のない、ウォーミングアップ機能、MUTE機能、真空管の長寿命化など業務機で培われたノウハウがふんだんに使われています。 MANLEY Neo Classic 300B メーカー希望小売価格 1,080,000円(税別) MANLEYは「真空管アンプの音質は、真空管そのものの響きに左右される」ことよく知っています。そして彼らは「300B」のサウンドをこよなく愛し、300Bを真空管式ラインプリ(ヘッドホン)アンプの出力に使うことを考え出しました。 300Bの甘く美しい響きを最大限引き出すために、あえて「ダイオード」をつかわず「整流管(5AR4)」を電源回路に採用、6LS7など大型3極管を純A級動作ですべての増幅回路に使うなど、MANLEYらしいこだわりに満ちています。 ラインとヘッドホンの出力切替は、上面のレバースイッチによる切替式が採用されているほか、ライン出力は「ダイレクト」と「トランス」の2種類から選択が可能で、ヘッドホン出力は「30Ω〜400Ω」・「400Ω〜4KΩ」の切替が備わるなど、業務機で培ったノウハウが生かされています。 さらにNeo Classic 300Bには、このアンプのために開発された革新的なリップルフィルターなどが搭載され、トランジスターアンプと変わらないローノイズが実現しています。スピーカーからはもちろん、ヘッドホン接続した時もノイズが聞こえないのは、感動的です。
試聴テスト 比較試聴は、まずAIRBOW UD505 Specialの「RCA音量可変出力(真空管プリアンプにXLR入力がないため、あえてRCA出力を使いました)」にTAD M2500 Mark2を接続して試聴した後、アンプをM1000に変えて聞き比べ、次にUD505 Specialを「RCA音量固定出力」に切り替え、プリアンプとしてMANLEY Jumbo Shrimp、Neo Classic 300Bを接続して音質の変化をチェックしました。 試聴テスト(全部) 試聴テスト(M1000、M2500 Mark2 抜粋) 試聴テスト(C2000 抜粋) 試聴テスト(Jumbo Shrimp 抜粋) 試聴テスト(Neo Classic 300B 抜粋) 試聴に使った機器
試聴ソフト (CDからリッピングしたWAVファイルを使用)
音質評価
チェロらしい「柔らかさ」はよくでているが、最高域がやや丸まって弦の切れ味が少し欠ける。
奥行きがとてもよく出る。ホールの立体感の再現は素晴らしい。 ハーモニーはもう少し艶が欲しいと感じることがあるが、その部分を除けば大編成の音楽が実に正確に再現される。ティンパニーやチューバホーンなどの大型楽器、低音楽器の再現はとてもリアルだ。 弦楽器の高域がややくすんで感じられたので、バンジョーはどうなるかと思ったが、この演奏のバンジョーの伸びやかさ、バイオリンの切れ込みの鮮やかさは文句がない。弦が緩まずに、ぴしっと張り詰めている感じがよく出る。複数の楽器が重なる部分でも、分離感は上々。 ピアノの音はひずみがなく、美しい。低音の揺るぎのない安定感も抜群。 指打ちの音の立ち上がりと立ち下がりは、とても自然。ボーカルもハスキーな感じがとてもよく出る。 また、今回の目的はプリアンプによる「プラスアルファ」を探ることだから、こういう音が基準としてで良い。 中低域のリニアリティーは圧倒的に高い。だから、低域が膨らみがちなスピーカーをきちんとコントロールするだろう。高域はやや出過ぎているくらいのスピーカーの方がマッチしやすそうだから、低域が膨らみがちで高域の解像度が高いスピーカー、たとえばB&WやTANNOYなどと組み合わせると良い結果が出るだろう。
M1000の音質は、M2500と比べて明るくて開放的だ。広域が良く伸びて、M2500で不足しがちだったチェロの柔らかい感じや、カザルスの弓を動かす丁寧さがよく伝わってくる。 低域の重厚感、重量感や密度では、さすがにM2500mk2にはかなわないが、音がいきなり大きくなる部分での音の「立ち上がり」がM2500よりも素早く、演奏にメリハリが出てきた。 M2500mk2のような圧倒的な密度感の高さ、緻密な感覚はないが、その代わりに演奏が軽やかで楽しく聞ける。 ピアノの音色が透き通ってきた。ボーカルも息づかいが伝わるような、雰囲気の濃さが出てきた。 M1000の音はM2500mk2よりも重心がやや高いのか、ボーカルのトーンが一段高くなった。 TAD
M1000 総合評価
一音が出た瞬間に雰囲気が、よりリアルになったことがわかる。
ダイレクト接続では感じられなかった、音が消えた後に残る「ホールの響き」が伝わるようになってきた。バイオリンの裏で奏でられているコントラバスの低い響きも聞こえる。
バンジョーとギターの音にしなり感が出て、音が弾力的になった。それは楽器の響きの変化が最後までしっかりと出るからだろう。
ハーモニカを吹く奏者の「ほっぺの膨らみ(動き)」まで見通せるほど、細やかにその音色が変化する。 指うちの音がくっきりして、リアルになった。ボーカルは、いわゆる唇のぬれた様子がわかるような鳴り方をする。 TAD
C2000 総合評価
チェロの木質感、良い楽器が持つ「甘い響き」が見事に創出される。 導入部の大音量の「切れ込み」がぐっと鮮やかになる。弦楽器のスリングなイメージ、金管楽器の輝き、木管楽器の打鍵音、あらゆる音が一段とリアルになる。空気感も出て、ホールで演奏を聴く雰囲気にぐっと近づく。 それぞれの楽器の音量や、存在感が適正化され、より快適な立体感が生み出される。ギターの弦の数が増え、バンジョーの音色のバリエーションがいっそう豊かになった。最も大きな違いは「演奏者が楽しそうに演奏している」ことが伝わることだ。
どこが違うとか、こう変わったとかという変化ではなく、演奏がただ「自然で生々しく」なる。もはや、デジタル機器を使っているという印象は完全に消えて、良質なアナログソースを聴いている雰囲気だ。 C2000はスピーカーをより良質なオーディオ機器にグレードアップするが、Jumbo Shrimpはスピーカーを楽器に変える。 指打ちの音に湿り気が出て、ボーカルの唇もしっとりと濡れてきた。ボーカルの美人度は、断然アップする。こういう音で女性ボーカルを鳴らされると、おもわずいけない妄想の世界に引き込まれてしまいそうになる。合ったこともなく、実際に見たこともないボーカルに恋い焦がれてしまいそうだ。後半のボーカルがメインになるところでは、ぐいぐいと引きつけられる。 そして、こんなすごい物理特性を持ちながら、その音質はどこまでも真空管らしくスイートで心地よい。 切れ込みはさらに鮮やかに、響きの透明度は増し、艶めかしさは最高潮に達する。こういう変化は、トランジスターアンプでは不可能で、真空管アンプならではのものだ。 それを、真空管アンプの欠点、たとえば解像度の低下、低音の痩せ、ノイズの発生などを一切排除して実現させているのが素晴らしい。価格も高くない。
カルスの奏でるチェロの音色になんともいえない深みと、滋味が出てきた。
Jumbo
Shrimpでも素晴らしいと感じたが、Neo Classic 300Bは、音の深みと迫力が違っている。生演奏よりもずっと小さい音でも試聴だが、体と心は完全にホールで聴いているイメージになっている。様々な音がめまぐるしく変化し、形を変えながら空間を大きく移動してゆく。フルスクリーンで描写される、フルカラーのシネマを見ているようだ。 バンジョーの音色が本物っぽい。伴奏のギターは、弦の数が増えた。 ただ驚かされるばかりだ。
ピアノの入り方、ボーカルの歌い方、プリアンプがないときとは全く別物になっている。ただただ、演奏が魅力的になり、自然と演奏に聴き入っている自分を感じるようになる。 本当に良い音は、どこがどのように変化したかはわからない。事実、もはやデジタルの音ではないし、オーディオの音でもない。目の前には、再現された演奏、リアルな生演奏だけが存在する。 ウインドベルの音色が心地よい。指打ちの音は、本物と見まごうほどリアルになっている。そして、今までは気づかなかったが、指うちの音が後ろから前へ、左右へと動いているのを感じる。 ボーカルは余裕たっぷりで、ぐいぐいと聞かせてくる。魅力もたっぷりだ。 もちろん素晴らしくなっているのは、ボーカルだけではない。伴奏も負けずに素晴らしい。 すべての音に無駄がなく、一切の不自然さがない。命のない音に、生命の息吹が吹き込まれたように、演奏に命が宿る。 けれど、そのわずかなノイズを除けば、Neo Classic 300BもJumbo Shrimpと同じように真空管を使っているとは信じがたいほど、S/Nは高い。音質の素晴らしさは、あえてもう一度書く必要はない。 EAR
912も素晴らしい真空管プリアンプだが、常にEARの音色を意識させる。それに対して、Neo
Classic 300Bには、アンプ独自の「音色」がない。システムや演奏の音色を変えずに、録音再生のプロセスで損なわれた響きの美しさや立体感、生命感だけが蘇る。Neo
Classic 300Bは、音楽ファンのための究極のプリアンプと断言できる。 2019年8月 逸品館代表 清原裕介 (TAD D1000 Mark2とM1000を組み合わせて、Focal SPECTRAL40thを聞いたときの音質評価はこちら) |
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