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TAD ME1-K メーカー希望小売価格 550,000円(1台・税別) 専用スタンド ST-3-K メーカー希望小売価格 200,000円(ペア・税別)
2016年9月16日、TADから一番小さなスピーカー、Micro Evolution Oneが発表されました。このスピーカーは、TADがその名に恥じないクォリティーを持ちながら、エントリー価格を実現するために生み出したモデルです。 基本的なデザインは、先に発売された「CE1」を踏襲しますが、CE1には使われていなかった新たな技術が採用されています。 ME1の概要 ・定位に優れ、自然な拡がりを再現する新開発9cmCSTドライバーを搭載 CE1とME1のCSTユニットが違うのは、次の点です。
(CE1のCSTユニット)
この新開発の小型CSTドライバーは、420Hzから60kHz(CE1は、250Hzから100KHz)という広帯域にわたり位相特性・指向特性ともに優れた音響特性を持ち、安定した定位と自然な音場空間をもたらします。クロスオーバー周波数は、ミッドレンジとウーハーを420Hz、ミッドレンジとトゥイーターを2.5kHz(CE1は、250Hz、2KHz)に設定しています。 ・新開発16cm口径ウーファーを採用力の最適化を図った振動板16cmウーファーを採用 ウーファーには、アラミドの織布と不織布をラミネートした振動板を新開発。振動板を忠実に駆動させるために、ボイスコイルには高強度のチタン製ボビンを採用しています。この新型ウーファーは、高い放熱特性をもち、パワーリニアリティに優れ、クリアな低音を再生し、カラーレーションのない素直な中低域の再生の実現に貢献します。 ・Bi-Directional ADSポートを採用力の最適化を図った振動板16cmウーファーを採用 “CE1”のために開発した、エンクロージャーの両サイドパネルにスリット状のポートを配置し、前後へ開口部をレイアウトする「Bi-Directional ADSポート」をME1にも採用しました。この銀杏の葉を合わせたような独特なバスレフポートは、滑らかに効率よくポートから気流を排入出させることでポートノイズを低減するとともに、ウーファー再生帯域内に強く影響を及ぼす低次の内部定在波がポートから漏洩する現象を抑制します。これにより、ME1はこのクラスの常識を越える、クリアでレスポンスの良い中低音域を実現します。 また、ポートを前後・左右に対称レイアウトとしているので、エンクロージャーを振動させる力を打ち消し、豊かで、力強い低域の再生を実現するとともに、理想的な「音の広がり(左右対称の緩やかな指向性)」も実現することに成功しています。 ポートから排出される低音を前後にむらなく広げるための「プレート」部分は、CE1の5mm厚アルミから、ME1では3mm厚鋼板へと変更され、強度の低下を招くことなく本体のスリム化を実現しています。 ・キャビネットの不要共振を低減するSILENTエンクロージャーを採用 ・精悍で美しい 「ピアノブラック仕上げ」 音の屈折を最低限に抑えた極小バッフルを採用するとともに、エンクロージャーにはピアノブラックの品位ある仕上げを採用。塗装の吹き付け作業、下地塗装の研磨、最終の磨き上げの工程は熟練の職人が丁寧に時間をかけ仕上げています。 ・干渉を最小にするため独立してマウントされたネットワークフィルターを採用 CST用のフィルターには、厳選されたPPフィルムコンデンサ・無誘導抵抗・空芯コイルなどを使用し、16cmウーファー用には磁気特性に優れる低損失コアを用いたコイルを使用することで、直列に挿入される抵抗分を可能な限り低減するとともに、厳選された低損失電解コンデンサ・無誘導巻線抵抗・空芯コイルなどを使用しています。これらによりひずみのないクリアな音質と音場を再現しています。 各定数は、音響出力特性・エネルギー特性・インピーダンス特性等を最適化するように決定し、レスポンス・及び、位相特性を最適化するスロープ特性を実現しています。
試聴環境 今回の試聴は、3号館のデジタルコンサート(奥側の部屋)でカーペットの上に「AIRBOW WFB-4449HD」を置き、その上に「WELLFLOAT WELLDISC」を設置、ME1+専用スタンドST-3をスパイクベースを使わずに設置しました。 TAD 沼崎氏の解説と音出しには、TAD RevolutionからCDプレーヤーの「D1000 Mk2」、プリアンプの「C2000」、パワーアンプの「M2500 Mk2」を使いました、
さらにイベント後半では、代表清原がD1000Mk2と「AIRBOW PM11S3 Ultimate(トランジスタープリメインアンプ)」と「AIRBOW Stingray Ultimate(真空管プリメインアンプ)」、さらにDAC内蔵の「AIRBOW HD-AMP1 Special」を「AIRBOW MSS-i3 MsHD6.7(音楽専用PC)」と組み合わせて、ME1を様々な方向から試聴しました。 AIRBOW PM11S3 Ultimate(トランジスター・プリメインアンプ) メーカー希望小売価格 565,000円(生産完了) AIRBOW Stingray2 Ultimate(真空管・プリメインアンプ) メーカー希望小売価格 830,000円(税別) AIRBOW HD-AMP1 Special(USB-DAC内蔵・デジタルプリメインアンプ) メーカー希望小売価格 180,000円(税別)
試聴会後感想 試聴会でも解説しましたが、TADは本当に「宣伝下手」なメーカーだと思います。これは、TADが「業務用機器のメーカー」だったことが、大きく影響しています。 なぜなら、日本のコンシューマ・オーディオ市場では、商品の売れ行きは「実力」ではなく「風評(評論家や、それに迎合するマニア)」の評価で決まるからです。つまり、評論家対策(評論家にお金を払い、接待してよろしくやること)と雑誌広告を盛大に行わない限り、日本のコンシューマ市場ではブランドは形成されないのです。海外から見ると、これはかなり「奇妙」なことのようですが、日本を原点とするアジアのオーディオマーケットでは当たり前に見られる現象です。たぶん、先祖や年長者に敬意を払うことを大事にするアジア人は、物事を独自に判断するよりも、資格者の意見を参考にする傾向が強いのでしょう。 それはともかく、TADはそういう「対策」をよしとしないため、メディアが大々的に(たとえばB&WやJBLや、Accuphaseなどのブランドよりも)取り上げることがなく、デザインもそれほどパッとしない(すみません、音質重視のデザイン故なのはわかっていますが・・・)ため、一般的には割と「地味な存在」と受け取られているようです。 けれど、業務市場で鍛えられ、また日本人ならではの細やかな気配りと、驚くほどのこだわりが見られるその製品の実力は非常に高く、正しく使いこなすことさえできれば、他の追従を許さない驚くべき音質を発揮するのです。 今回試聴したME1もその例に漏れることのない、高い実力を持っていました。 ME1の良さは、点音源に近い同軸2way型を採用しながら、高忠実で驚くほど指向性に優れる「CST」を搭載する効果で「理想的な立体感(音の広がり)」が実現することです。 同軸2wayユニットの決め手は「中央のツィーターから発生する高音波」を「スコーカーに干渉させない」ことにつきます。単純に中央にドーム型ツィーターを配置している「KEF」の超高域がスモーキーなのは、スコーカー(もしくはウーファー)の振動により、ツィーターの超高域が変調されるからです。指向性の鋭いホーン型ツィーターを採用する「TANNOY」のユニットはこの悪影響がありませんが、指向性が強い(スピーカーの前と横では高音の出方がかなり変わる)ため、心地よい音で聞けるエリアが狭くなっています。この問題に対し、先に書いたようにTADは、ツィーターの少し前に「マッチングホーン」と呼ぶ、超ショートなホーンを配置することで、指向性に一切の悪影響を与えることなく、ミットレンジとツィーターの干渉を解決しています。しかし、この素晴らしい技術は、あまり一般に知られていません。 次に、バスレフポートの開口部を左右の前後に配置することで、スピーカーの中心から低域を360度方向にむらなく広げられる、Bi-Directional ADSポートを発明したことです。低域がスピーカーを中心に無指向性に広がる事による音質的メリットは、計り知れません。この2点は、スピーカー設計の歴史に残しても良いほど、素晴らしい技術なのです。 もちろん、この抜本的な新技術だけではなく、驚くほど綿密かつ入念に設計と製作が行われています。ME1への、このすさまじいこだわりの実現は、世界有数の技術集団Pioneer(レーザーディスクやプラズマディスプレイ)が母体だったTADだからこそできたことです。これに近いこだわりと技術を持つメーカーは、B&Wですが、設計の巧みさと正しさでTADはB&Wをすら上回ります。 技術的な説明ばかりをしてしまいましたが、ME1はTADが標榜する「正確な音楽トランスデューサー(変換器)」として、素晴らしい仕上がりでした。時々「TADの音は冷たい、国産品だから、温かさや情に欠ける」と声が聞こえてきます。確かに、TADの製品は何かを「サービス」することはありません。だからといって、冷淡な音ではありません。 今回試聴に使ったME1は、使用時間がまだ200時間程度と「若く」、そのために中高音が硬く感じられました。そこでそれを緩和するため「真空管アンプ」を組み合わせましたが、これが見事に成功し素晴らしく透明でありながら、清潔な艶を感じさせる潤いのある音でME1が鳴りました。 また、ME1には本来組み合わせられることのない価格帯のUSB-DAC内蔵デジタルプリメインアンプ「AIRBOW HD-AMP1 Special」との組み合わせでも素晴らしい音を出し、アンプの負担をかけずにその音質を引き出せる「TAD スピーカー」ならではの良さも感じさせてくれたのです。 正しく設計されたスピーカーは、アンプに負担をかけません。 アンプを選ぶスピーカーは、設計が完全ではないのです。 ME1は価格TADとしては安く、サイズも手頃ですが、低音は相当低いところから出ます。狭い部屋に置いても、音場は大きく広がります。独特な音色を奏でる、海外製品(フランコセブリン)のような魅力は持ち合わせていませんが、あらゆる音楽を素直に再現するその個性は、また世界で唯一のものなのです。 2016年10月 逸品館代表 清原裕介 |
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