音質チェックには、ウィーンアコースティックの上級モデルT3Gを上手く鳴らすことを最大のターゲットとして開発した、AIRBOW
SA15S1/Master PM15S1/Masterを使いました。
AIRBOW SA15S1/Master
AIRBOW PM15S1/Master
第一印象はウィーンアコースティック全般に通じる、「しなやかな透明感」を感じさせる心地よいものだ。T3G-BやT3Gとの比較では、低音の量感がやはり少ない。
搭載されているツィーターの口径がT2G,T3G-B,T3Gよりもやや小さく、膜厚の厚いものが採用されているため、高域の解像度や明瞭度がハッキリとそれらよりも劣っている。これらが原因となって、中域の「濃さ」もやや薄く感じられるが、これは価格帯が違うのだから仕方がない。
T2Gと比較すると、ツィーターの変更により高域の過剰感が抑えられ、中域から高域にかけての繋がりが改善されていることが聞き取れる。
高域のスピード感や切れ味は若干控えめになるものの、T2Gのような「中抜け」した感じがほとんどなくなって、ウーファーとツィーター、2つのユニットの音がスムースに繋がる。
ウィーンアコースティックのトールボーイ型としては、唯一このモデルに採用されたS1Gと同じ特殊な構造を持つツィーターは、フロントバスレフの開口部を兼ね、プレートからの反射防止を目的とした形状をしている。Bach
Grandではその能力がうまく発揮され、何も考えずに設置しただけでも濁りのない大きな音の広がりが実現することに驚いた。ポンッ!と設置しただけでも、スピーカーの周りに音がまとわりつかないのが素晴らしい。これなら、セッティングに困ることはないだろう。
癖がなくスムースな音の出方は、エントリークラスのトールボーイスピーカーとして申し分のないものだ。ほぼ同価格帯のQUAD
22L2との比較では、エンクロージャーの重量感や仕上げの高級感ではBach Grandが勝っていると感じるが、音質はWウーファーを採用しているQUAD 22L2の中低域の厚みや、ツィーターの音質差が出て、「音の細やかさ、雰囲気の濃密さ」で22L2が、Bach Grandをやや上回るように感じる。Bach Grandは、22L2よりもややさっぱりとした感覚の音質だ。
しかし、どちらのモデルも甲乙つけがたい良きライバルには違いない。
ゆったりとパーソナルな雰囲気で音楽を聞きたいとお考えの方に、Bach Grandはぴったりのスピーカーだ。スピーカーベース、ケーブル端子、サランネット、エンクロージャーの質感、そういう「高級と感じる」部分への仕上げの丁重さと高級感は、このクラスの国産製品にも感じられないもので、「もの」としての高級感に溢れている。この価格帯のスピーカーとしては、もっとも「深みのある高級感」が感じられる仕上がりではないだろうか。
とくに“ピアノブラック“仕上げは美しい。音が出ていなくても見とれてしまうほどの存在感さえ感じられる。最近増えてきた「黒」を貴重とする薄型テレビやAVシステムと完璧にカラーコーディネート出来るのもありがたい。Bach Grandならリビングに設置しても、奥方大満足!間違いないだろう。
Bach Grandはウィーンアコースティックらしい、澄みきった癖のないサウンドで音楽を「優しく」奏でる。
ややタッチは軽いが、それも決して悪いことではない。
ブックシェルフのS1G+スタンドとほとんど同じ価格で購入できるBach Grandは、S1G+スタンドの組合せにはない、伸びのある低音を出す。しかも、S1G+スタンドと同じ「中高域の透明感」を実現している。
Bach Grandのややさっぱりした傾向を補いたい場合には、真空管アンプを使うと良いだろう。シンプルな2way構成なのでアンプへの負荷が少なく、真空管アンプとのマッチングにも優れているはずだ。
AURA
NOTEやCARATのような一体型CDレシーバーと組み合わせるのもお洒落だ。CARATなら仕上げの質感もバッチリ合う。
Bach Grandは音楽が大好きで良い音でそれを聞きたいけれど、価格はそこそこでインテリア性が高く、お洒落でカジュアルに音楽を聞きたいとお考えのあなたにベストマッチする、完成度の高いスピーカーだ。