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Vienna Acoustics新製品のMozart Grand Symphony Edition、Haydn Grand Symphony Editionの音質比較テストを行いました。機材は、AIRBOW SSS-2013とAIRBOW SR6008 Specialを使用し、LAN経由でSSS-2013に取り込んだCDリップファイル(44.1kHz/16bit/WAV)を使って音出ししました。
AIRBOW SR6008 Special(AIRBOW Beet Boardの上に設置)
Vienna Acoustics Mozart Grand Symphony Edition | ||||||||||||||||||||||||
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・外観と特長 Mozart Grand Symphony Editionは、Mozart Grandの改良モデルです。28mm口径のシルクドーム型ツィーターに152mmのスコーカー、さらにスパイダーコーンを使う152mmのウーファーが組み合わされています。 グリルには高音拡散体(黄色矢印部のスリット)が設けられ、グリルのあるなしで音の広がりを調整できるように配慮されています。こういう細かな気配りがVienna Acousticsの高音質の秘密です。 Mozart Grand Symphony Edition(以下MG/SE)を最初カーペット直置きで鳴らしました。柔らかく良い音で鳴りましたが、音をもう少し引き締めたくて人造大理石ボードを使うと、低音がさらに伸びて引き締まり高音の切れ味と芯の強さが大きく改善しました。MG/SEは、ボード「あり」の方が音が良いのでその状態で試聴します。 B’z ”Pleasure”:Zero Vienna Acousticsのさらに大型のBeethoven Concert Grand Beethoven Baby Grandと比べるとキャビネットが小さく、ウーファーの数が少ないMG/SEは「低音が足りない」ように見えます。しかし、SEは中低音がかなり強化された印象で、サブウーファーの必要性を感じないほどしっかりと量感のある低音が出ます。 バスレフなので低音は若干膨らみますが、だらしなく広がってしまうのではなく、力強く前に出るところは魅力です。 中域はVienna Acouticsのもっとも得意とする分野です。ボーカルは、滑らかで表情豊か。ギターは響きが甘く、フェンダーっぽい音で鳴ります。シンセドラムや高音の効果音もエッジは若干柔らかめですが、シッカリと鳴ります。高分子を振動板に使うユニットらしい、厚みと粘りを感じる音です。 高域はテキスタイル振動板らしい、スムースで透明感のある繊細な音です。 Holly Call Trio ”Don't Smoke in Bed”:Smile ウッドベースの引き締まった美しい響きに、Vienna Acousticsが使うウッド製エンクロジャー(箱)の高密度を感じます。直前にテストしたVenere3.0はサイズの割に軽く、そのためか再生される音の密度がやや低く感じられることがありました。MG/SEは低音方向の再生周波数レンジこそVenere3.0に及びませんが、全帯域の密度の高さ、質感の高さではそれを大きく上回ります。JBLの大型スピーカーもそうですが、サイズの割に「軽い」スピーカーは響きが軽く、音の密度が薄くなる傾向があるかも知れません。 逸品館がVienna Acousticsと並んでお薦めするFocalもVienna Acousticsと同じようにキャビネットの密度が高く、引き締まった美しい響きを奏でるスピーカーです。またVienna AcousticsとFocalは、にミッドやウーファーのユニットに樹脂製振動板(高分子系の素材を振動板)を使うためか、中域の暖かさや厚みも似ています。それに対し、ツィーターはFocalがマグネシウム合金、Vienna Acousticsがカスタムシルクを振動板に使うため高域には明確な違いがあります。シルクに比べ比重の重い金属振動板を使うFocalは、高域のレスポンスが穏やかなため子音がやや太くアンニュイな印象を受けます。軽く繊細なカスタムシルクを振動板に使うVienna Acousticsは、Focalに比べ子音がより滑らかで非常に高い高域まで倍音がスッキリと伸びている印象があります。Focalの厚みある高域と、伸びやかで透明感の高いVienna Acousticsの高域、どちらもニュアンスが豊かで聞きやすい音ですが、力があるのがFocalで繊細なのがVienna Acousticsの持ち味です。 MG/SEが鳴らすホリーコールの声には粘りがあり、太さを感じます。ウッドベースはボディーの音が心地よく、響きが伸びます。バランスが良く聞きやすい音でニュアンスも豊かです。優しくほのかに明るい音で、スマイルが鳴りました。 Neumann & Czech Philharmonic ”From The New World” ホールトーンが豊かに響きます。コントラバスの低音もシッカリ伸びています。中域が柔らかいので木管楽器の音は非常にリアルです。金管楽器がほのかに木管のように鳴りますが、それはそれで魅力的です。中低音にはしっかりした厚みがあり、弦楽器の圧力感もきちんと再現されます。 楽器相互の位置関係が自然に再現される豊かな広がり感。ホールの最も良い席でコンサートを聴いている抜群のバランスが実現します。 |
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Vienna Acoustics Haydn Grand Symphony Edition | ||||||||||||||||||||||||
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・外観と特長 Haydn Grand Symphony Editionは、バスレフですがポートの開口部がツィーターの取り付け部に設けられています(左写真)。ツィーターは上級モデルとは異なる25mm口径のテキスタイル型が使われています。ウーファーは、上級モデルと共通の152mmスパイダーコーンが組み合わされています。 スタンドには、オール木製のKripton"SD-1"を使いましたが、響きが良くVienna Acoustics Haydnとはベストマッチに感じました。
B’z ”Pleasure”:Zero 低域の絶対量は少ないのですが、キャビネットとウーファーの口径が小さいHaydnの低域は非常に歯切れが良く、ぐんぐん前に出ます。パワー感が強いので思ったほど低域が足りない感じがなく、むしろMG/SEよりもリズムは弾む感じです。 小型キャビネット特有の響きの少なさが、音の切れ味と消え際のスッキリした感じを高めていることがわかります。 上級モデルと同じウーファーユニットを使っているとは思えないほど中音域の明瞭度が高く、音の芯がしっかりクッキリしています。ベース音の唸りなど、MG/SEよりシッカリ変化します。高音もネオジウムを使ったユニットが奏功しているのか、透明感が高くスッキリと伸びやかです。 この曲では、中低音の歯切れの良さ、リズムが弾む感じ、中高域の透明度の高さによる楽器とボーカルの分離感の良さなどで、MG/SEよりもハイドンがより楽曲が躍動し楽しく聞ける感じでした。従来モデルと比べると中低音が豊かになり、中高域の明瞭度が上がっています。 最近はトールボーイ型がスピーカーの主流ですが、ハイドンを聴いて改めて「ブックシェルフ型の良さ」を再認識しました。 Holly Call Trio ”Don't Smoke in Bed”:Smile Zeroでは低域不足を余り意識しませんでしたが、残念ながらウッドベースの絶対的な量感は不足気味でベースのサイズが小さく、音も少し痩せて聞こえます。 ボーカルは、MG/SEよりもしっかりと強く聞こえます。張りのあるこのパワフルな声の方が、本来のホリー・コールらしいと思います。 ピアノも重厚感は若干不足しますが、アタック感(打鍵感)はMG/SEよりもはっきりし、ベースの断弦感と合わせてリズムを構成する音はMG/SEよりもしっかり、はっきり出ます。 リズミカルにJAZZを鳴らすHaydnは、歯切れ良く元気の良いスピーカーです。 Neumann & Czech Philharmonic ”From The New World” キャビネットが小さく不要な響きも少ないハイドンは「弦の複雑な倍音」を細かく見事に再現します。余計な響きのない空間の透明感の高さがとても魅力的です。 楽器の音を正確に聞き取りたいときは、ベランダ席前方(天井吊りマイク付近も同様)の音を私は好みますが、ハイドンはそういう理知的で美しい音で交響曲を鳴らします。また舞台袖付近、あるいはベランダ席最前列では中低音よりも高域が勝って聞こえるのですが、ハイドンの音はそういうバランスでこの曲を鳴らします。 音場の豊かさ(リッチさ)が魅力のMG/SEとは、また異なる魅力を持つのがハイドンです。 試聴後感想 Vienna Acousticsで聞く「弦」に惚れない人はいないと思います。精緻という言葉がピタリと当てはまり、なおかつ色気さえ感じます。 上質なキャビネット(良い響きの木が使われています)と吟味されたオリジナル設計のユニットが組み合わされることで再現される「音の質/音質」の高さも魅力的です。長くモデルチェンジしないのは、長くベストセラーを続けているから。時を超えて愛される名機。それがVieena
Acousticsのスピーカー。 |
2013年11月 逸品館代表 清原 裕介
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