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First Watt SIT-1 \1,200,000(税別) 生産完了
First Watt SIT-2 \600,000(税別) 生産完了
製品の概要
PASS LABの設計者「ネルソン・パス」自身が理想とするアンプの製作を目的として、個人のブランドとして設立したのが「First Watt」です。First Wattの製品の特徴は、ピュアな音質を求め入力段と出力段のシンプルな増幅回路で構成されることです。 すでに発売されている製品で逸品館でお薦めしているFirst WattパワーアンプのM2はJ-FET入力にM-FET出力を組み合わせ無帰還純A級プッシュプルから25W×2の出力を得ています。J2は、J-FET入力にJ-FET出力を組み合わせ負帰還純A級シングルエンド・プッシュプル(SEPP)回路から25W×2の出力をさらに少ない歪み率で実現します。ネルソン・パスの理想はトランジスターアンプを真空管の3極管と同じ動作に近づけることで、M2やJ2はかなりそれに近いと言えます。しかし、ネルソン・パスはそれで満足せずさらなる理想を求め出力段のトランジスターを真空管の動作に最も近いトランジスターのSITに変更し、J-FET入力無帰還純A級シングルエンド・プッシュプルという、ほとんど真空管と変わらない回路のパワーアンプ、SIT1とSIT2を生み出しました。SIT1とSIT2は10Wというパワーアンプとしては例外的に小さな出力は変わりませんが、SIT1がモノラルでSIT2がステレオという違いがあります。今回は、このSIT1とSIT2の素の実力を確かめるべく、あえてプリアンプを使わずに音量調節機能を備えるDAC Hegel HD20とダイレクトに接続して音質をテストすることにしました。さらに小出力でも大型のスピーカーをドライブできるかどうかを確かめるため、スピーカーには大型のVienna Acoustic The Musicを使いました。CDトランスポーターにはAIBROWのフラッグシップ、UX1SE/Limitedを組み合わています。
試聴機材
AIRBOW UX1SE/Limited With Antelope Audio OCX
Come away with me Norah Jones CD 試聴ソフト |
First Watt SIT-2 \600,000(税別) 生産完了 |
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<明るい>
- - - * - - - - - <暗い> |
<柔らかい> - - - * - - - - - <硬い> |
<付属品> |
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音質テスト結果 約30分のウォーミングアップを経たSIT-2の音には、ネルソン・パスが作り出す純A級アンプらしい暖かさと芳醇な音色とシンプルな回路を想像させるのに十分な透明感と細やかさを持っています。SIT(Sillicon Carbide Induction Transistor)を採用するアンプには、Digital Domain社のB1aがありますが、SIT-2にはB1aと共通する、トランジスターアンプとは思えない滑らかさが感じられます。 ピアノはもう少し厚みが欲しいですが、ドラムの量感と押し出しは十分です。小出力パワーアンプで懸念される低音は、量感が若干不足気味に感じられるものの価格と出力を考慮すれば十分以上の低音が出ます。 中音は純A級らしくきめ細やかです。さらにスイッチング・ノイズ(ゼロクロス歪み)を発生しないシングルエンド・プッシュプル回路の良さで音質が驚くほど滑らかです。この滑らかさは、通常のトランジスターアンプではなかなか実現できない領域にあると思います。 ノラ・ジョーンズの声には余計な響きがなく透明ですが、少しストイックなようにも感じます。ブラシの音は少しウェットでやや遅れる感じですが、リズム感はキチンとでます。各楽器の音色は少し単調ですが、変化はリニアでそれぞれの特徴が上手く再現されます。 ネルソン・パスの純A級アンプの代表作にはAlephシリーズがありますが、SIT-2はAlephのような「濃さ(色づけ)」がほとんど感じられず、さっぱりとした良い意味でゲイン・オブ・ワイヤーなサウンドに仕上がっているように思います。イメージとしては、上質なミネラルウォーターという感覚のサウンドです。 音質のピュアさではM2やJ2を確実に上回り、ネルソン・パスの狙い通り良くできた3極真空管アンプの音にかなり近いと感じました。高能率のスピーカーと組み合わせれば、価格を遙かに超える高品質なサウンドが得られることは間違いなさそうです。 |
2011年 12月 逸品館代表 清原裕介
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