XA160.5とX600.5を返却し、入れ替わりにX100.5とX260.5が届けられた。出力画小さくなるに比例してアンプの重量は軽くなる。それでもまだ約30kg強あるが、やっと一人で動かせる重さに減量された。今回届いた2モデルのアンプは発売が新しく、エージングもまだ十分ではないとのことだったので、24時間以上音出ししてから試聴した。また、試聴スケジュールの都合からXA100.5とX260.5試聴の前にLuxmanの新製品L-550AXの試聴を挟まざるを得なかった。そのためXA160.5X600.5との厳密な聞き比べができていないかも知れないので予めご承知頂きたい。
XA100.5
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Luxman
L550AXを試聴したのと同じCDプレーヤーとスピーカーを使い、アンプだけ入れ替えてXA100.5+XP-20の試聴を開始する。直前まで聴いていたL550AXは実売で30万円を切り、つなぎ替えたXA100.5+XP-20の価格は300万円を超える。第一印象では、10倍になった価格に見合う情報量や音質は得られていないように感じられる。しかし、しばらく聞き続けていると、雰囲気の良さがじわじわ伝わって来た。
このアンプには良い意味で、高級品らしい主張がない。とても自然で耳あたりよく音楽を奏でてくれる。解像度もそれほど高く感じられないが、じっくり耳を澄ませて聞けば「隠れなければならない音がうまく隠されているだけ」だと分かる。ハッキリとは聞こえなくてもそこに音があるのが分かる。聞こえないわけではなく聞きに行かなければ聞こえない、いわゆる「ちょっとだけよ」の世界だ。聞こえるか聞こえないかの狭間にある音は、自分の想像で美化できるから、「生」以上に「美しい音」で聞くことができるのだ。想像(思い込み)以上に美しい音など、このようには存在しない。
XA100.5は、現実と空想の狭間の世界を再現する。高い実在感を持っているが、「下卑た音(汚い音)」は一切出さない。ある種のゆとりを感じるのだが、この音を言葉に代えるのは難しい。真の高級感とは、こういう感覚なのだろか?もちろん、こういう音には好き嫌いはあるはずだが、それぞれの素材を強く主張させることなく見事にまとめ上げる「割烹料理のように完成した美(バランスの取れた旨味)」をその音に感じる。
春風のように柔らかく、体と心を包んで癒してくれる音。聞いていると幸せになれる音。いつまでも浸っていたくなる音。XA100.5は、今回テストしたPassの中で一番のお気に入りになった。
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美しい。これほど美しく優しい音でこのCDを鳴らしたアンプはこれまでになかった。
お酒であれ、料理であれ、突き詰めると「まろやか」になるが、その最上級の「まろやかさ」と「旨さ」、「深さ」をこのアンプは持っている。CDプレーヤーやスピーカーとの相性も良いのだろう。体の芯から癒されるような素晴らしい音だ。生演奏から「灰汁」を抜き、「味わい」だけを残したような音。確実に「生演奏」を超える、この美しい音なら万人が「良い」と思うだろう。
弦は優しくすべるように滑らかだが、時折鋭く心にすっと切れ込んでくる。主旋律と副旋律の再現性や絡みも抜群で、対比するメロディーが実に鮮やかだ。ヒラリー・ハーンのバイオリンは軽やかに宙を舞う。ベースラインの音は、地の底からわき上がるようなゆとりと力を持つ。静かに、雄大に、たおやかな時間が流れていく。思わず仕事を忘れて、聞き入ってしまった。
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こういう激しいソフトはこのセットには合わないだろうと思い、ちょっといたずらで掛けてみた。
ところがどうだろう?これがなかなか悪くない。確かにこういうソフトに相応しい「BAD」な感じはない。音に汚れがなさ過ぎるのだ。柔らかい音だが高音はしっかりと切れ味があってハイハットが空を切る。低音もパンチがあって、腹にずしんと響く。自然に体が動き出すような楽しい音。底抜けに明るく、毒がない音。人生に何の苦しみも、悩みもなく、100%の幸せに恵まれた人たちが集う、底抜けに陽気で楽しいパーティー。美しく滑らかなこの音からは、ハイソでゴージャスなパーティーが連想される。マイアミの温かさと、ラスベガスのゴージャスさを合わせたような、大人のためのワンダーランド。思わず、そんな夢の世界を思い浮かべてしまった。
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スピーカーをThe Musicに変えて、ソフトを逆の順で試聴する。
すごい!BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)とは、世界がまるで違う。低音の量感/力感とパンチ力。高音の切れ味の鋭さと繊細さ。動きの鮮やかさ。ドーンと来てキラキラと消える、打ち上げ花火のような鮮やかさでダンス・ミュージックが鳴る。
低音がきちんと出るけれど鈍い音ではない。大型アンプならではの底力を感じさせるエネルギー感を持ち、膨らみやすいThe
Musicの低音をきちんと前に押し出し、無駄な余韻なくきちんと止める。ごりごりとした硬い音ではなく、弾力とパンチ力を兼ね備えた低音だ。大型アンプにありがちな「鈍さ」を全く感じさせないのが素晴らしい。
高音は滑らかだが、切れ味は鋭い。ボーカルは濁りがなく透明で、すっきりと美しい。引き込まれるような楽しい音。弾けるようなパワー感と、すかっとした切れ味が両立する理想的な音だ。
SST
Ampzzila+Ambrosiaの組み合わせに感じる「イタリア系の底抜けに明るく鮮やかな鳴り方」とは少し違う。もう少し湿り気があり、雰囲気も柔らかい。適度な響きも心地よく、ゆったりとしたテンポでダンス・ミュージックが鳴った。
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スピーカーを変えても音調は全く変わらない。それは他のPassパワーアンプにも共通する美点だと思うし、回路設計の優秀さの証拠だろう。
BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)で聞いていたのがCDで、スピーカーをThe
Musicに変えるとそれがSACDに感じられるほど一気に情報量が増加する。低音の響きは部屋を満たし、バイオリンは甘く切なくメロディーを奏で、クリアで美しい旋律に心が翻弄される。とても美しく甘美な音だ。
最初にこのアンプを聞いたときには、情報量はL550AXの10倍にはならないと評価したが、The Musicで鳴るこの音を聞いているとその評価を取り消したくなる。雰囲気だけではなく、情報量もかなり多い。まるで生演奏を聴いているような気分でSACDを聞くことができる。このアンプはすごい。BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)がその情報量をきちんと再現することができなかっただけだと、The
Musicが教えてくれた。
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BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)で聞いていたときはBGM的に心地よかったが、スピーカーを変えると演奏にすごみとメリハリが出る。より本格的な演奏に変化したこの音は、BGMとして聞き流せない。
X100.5の美点は「自然で無理のない音が出る」ことだが、それは今回テストしたPassのアンプの中でも群を抜いている。あらゆる音にストレスがなく、あるべき音があるべきタイミング、あるべき音質で確実に出てくる。その安心感は絶大で、リスナーを音楽に引き込む強い力を持っている。
最近聞いたセパレートアンプでは、SST
Ampzilla 2000とAmbrosia 2000が気に入ったが、XP-20とXA100.5のセットもそれに劣らず素晴らしい。この音を聞かされれば、300万円を超える高価な価格も納得できる。XA100.5のクリアで美しく、滑らかだけれど切れ味の良い「シルキーな高域」は、とても好みに合う。
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XA100.5と1028BEの組み合わせもなかなか良い。
BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)に比べるとメリハリが出て、音の芯がしっかりする。ウッドベースの音程がハッキリして、ピアノのアタックの衝撃も響きの厚みもきちんと再現される。ノラ・ジョーンズの声にも張りが出る。全体的に柔らかな音であることは変わらないが適度なメリハリと厚み、豊かさが加わって演奏の実在感と深みや躍動感が大きく向上する。それでもノラ・ジョーンズがなぜかパリジャンヌのように感じてしまう所にFocalの素性が現れる。決して濃すぎることはないが、フランス料理のようにこってりとして味わいが深い。
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BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)やThe
Musicと比べると空間に少し濁りが感じられる。Vienna
Acousticsのあの透明感は、ウィーンの音なのだろう。
1028BEは中低音に厚みがあって、温かく濃い。チーズやクリームのようなこってりと脂ののった音だ。バイオリンの音も少しクリーミーで、Vienna
Acousticsのようなすっきりと透明な音ではない。もちろんそれは傾向の違いでしかなく、十二分に素晴らしい音でヒラリー・ハーンのバッハが鳴る。
同じ楽譜を異なる楽団が演じているような雰囲気。どちらもレベルはすごく高いが、その解釈には明らかな違いが聴き取れる。同じソフトを「異なるバージョンで再現できる」という音楽の聴き方、オーディオの楽しみを知ってしまうと「原音」とは何だろう?と考えさせられる。でも、そんなことはどうでもいい。楽しく音楽が聴けることが、一番なのだから。
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こういう打ち込みが主体の音楽では、、1028BEのベリリウム・ツィーターの良さが生きてくる。
エッジが鋭く、透明感が高く、澄み切った高音が高価な装置で音楽を聞いているという満足感を与えてくれる。低音もリズム感があって、密度も高い。ボーカルの表現力、表情は豊かで、中音にはFocalらしい適度な甘さと厚みが感じられる。まろやかでセクシーな声だ。
The Musicでは体が動かずにいられなかったが、1028BEはそれよりやや落ち着いた音でダンス・ミュージックを鳴らす。体で感じるのではなく、鑑賞できる音でダンス・ミュージックが明るく楽しく鳴る。弾け切らずに適度な理知を残し、傍観者でいさせてくれるこういう鳴り方も悪くないと思った。
オーディオ機器にかかわらず、工業製品は全般的に性能が上限に近づけば近づくほど価格と性能が直線的な比例関係ではなくなってしまう。絶対とは言えないが、「中堅機」のコストパフォーマンスが高い。Passの製品もその例に漏れず、100.5と260.5の音が良い。このテストを行っている時、エレクトリから電話があって「今までの結果」を伝えたところ、100.5と260.5の設計が最も新しいと言うことだった。最新モデルの音質が、従来モデルよりも音質がブラッシュアップされていることも十分に考えられる。実際試聴した感じもその透明感の高いすがすがしい音に「新しさ」が十分感じ取れた。
XA260.5
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XA100.5と比べるとX260.5は、幾分音がさっぱりしている。XA100.5が精細に描かれた油絵なら、X260.5はアクリル絵の具で描かれた絵画のようだ。どちらにも良さがあり、甲乙は付けがたい。
X260.5もPass製品の例に倣い、音は非常に自然で無理な誇張が感じられない。音楽を弄らないこういう自然体の「高級感」は、心と体に心地よい。低音はゴリゴリせず、十分低い周波数まで伸びている。スピーカーを無理させずにしっかりと低音を出している感じだ。中音は濁りが少なく、すっきりとしている。
XA100.5では少しお姉さんに感じられたノラ・ジョーンズはジャストの年齢で再現され。「若鮎」のフレッシュな魅力に満ちている。ピアノの音は適度な厚みと鮮やかな音色が兼ね備わって、音としては美しい。しかし、それがボーカルより前に出ることはない。ウッドベースやドラムもそれぞれの音は明瞭に再現されるが、やはりボーカルより前には出ない。主役と脇役の描き分けがきちんと行われた音楽的に安心できるこの音作りは、Passというメーカーの長い歴史を十分に納得させるものだ。その点でPassはオーナーや技術者が変わってしまったMark-Levinsonなどの「名ばかり」になってしまった数多のメーカー製品とは一線を画している。X260.5の音には、初代Thresholdのテイストが感じられた。長い時間を掛けて練り上げられてきた音には、好き嫌い以前の聞く価値がある。
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低音の量感をもっと出せるパワーアンプはあると思う。しかし低音を出しながら、同時に中高域の透明感と音色の鮮やかさを感じさせる大型パワーアンプはそう多くない。X260.5は大型アンプのパワー感と小型アンプの透明感を兼ね備え、双方のいいとこ取りで音が作られている。
高域も低域も完全には伸びきらないが、両端がほんの少しだけロールオフしたバランスが、中域の厚みや滑らかさ、艶っぽさを実にうまく醸し出してくれる。コンサートマスターだけにスポットが当たるような鳴り方をせず、時には伴奏が主役となり、脇役と主役のそれぞれがうまく入れ替わり回転しながら、一つのテーマに向けて音楽が進行して行く。テンポが速くなり、再び遅くなり、その躍動の流れが実に鮮やかで心を揺るがす。
山頂に落ちた雨粒がやがて集まって小さな流れとなり、小さな流れが大河となり海に注ぐような、ドラマを音楽に宿らせる音だ。収録された音のすべて音楽に変換され、聴き応えのある素晴らしいバランスで演奏を堪能できた。
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BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)の素性なのか?あるいはX260.5とのコンビネーションなのか?ベースラインが遅れてやや重い。ボーカルの表情は豊かだが、切れ味が不足する。
ただ、絶対的な情報量や再生周波数帯域は十分に多く広いので、ケーブルを変えるなどのチューニングで好みの音に変えるのは、さほど難しくないと思われたので、プリアンプの電源ケーブルをAET
Evidenceに変え、電源タップにAIRBOW PS-Stream4を奢ってみた。
音が細かくなったが、スピード感に欠ける傾向は完全には消えない。パワー感が出たと言うよりは、細かい部分が更に繊細になったという感じだ。そこでプリアンプの電源ケーブルを元に戻し、パワーアンプの電源ケーブルをAET
SCR-EVO(旧モデル)変えてみた。音の切れ味が大きくアップし、細部の見通しや解像度もグッと良くなった。音の移動量も大きくなり、かなりPOPSらしい弾ける音に変化した。ただし、それでも音がやや重い傾向は変わらず、やはりX260.5自体がそういう「ややまったりとした音」に仕上げられていることが分かった。
最後に付属してきたNordostのWireWizard
Magusを試してみた。細部の見通しが良くなったが低音が少し軽くなった。今回試した電源ケーブルでは、意外なことに「最安のAIRBOW
KDK-OFCとの相性」が最も良かった。プリアンプの電源ケーブルに対する反応が鈍いのは、電源がセパレート化されている(電源ケーブルから回路までの距離が遠い)ことと電源部とプリアンプ本体を繋ぐケーブルが、あまりにも「普通」過ぎるためかも知れない。
XP-20やX260.5は「吊し」の状態で、十分に良くチューニングされている。ケーブルによるチューニングでは、その「持ち味」を損なわない慎重さが求められるようだ。
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BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)で感じられたさっぱりとした音調はそのままに、高域の切れ味や明瞭度が増加する。低音の圧力も増大し、ベースの響きが腹に響くようになる。しかし、スピーカーの価格差の約4倍ほど、音質が劇的には変わる感じはない。
じっくりと聞いていくと、X260.5は耳に聞こえる派手な部分よりむしろ、ボーカルの子音やギターの弦をリリースする瞬間のタッチや、ベースのアタックやタッチ、ドラムの金属的な音の美しさなど細部の明瞭さ克明さをThe
Musicとの組み合わせで大きく改善することがわかる。ボーカルは、まるで耳にかかる吐息を感じるほど艶めかしくなった。
全体像を作り変えるのではなく、静寂の中の静寂、穏やかな表情の中の深み、そういう細部までが完成されたPassの音にはある種の美的感覚がある。質よりも量をよしとするアメリカ製品にあって、Passは例外的に量よりも質を重んじる。その音はまるで「モナリザの微笑み」のように優しく深く、心が癒される。音楽を聞いて良かったと感じる時間を持てるこの音こそ、Passという高級機の名前に相応しい。
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スピーカーを変えると演奏の「真実味」が増加する。
オーケストラのスケール感や楽団員の構成に変化は聴き取れないが、演奏の細部が限りなく美しくなる。ノラ・ジョーンズでも感じたことだが、バイオリニストが弦を操作するデリケートさ、主旋律と伴奏の絡みの完璧さ、演奏の隅々までの完成度、音楽性がそのものが「頂点」に向かって一糸乱れず昇華する様を感じさせられる。
どっしりと、時には軽やかに、変幻自在に音がリスニングルームを舞う。絶対的な音質こそ、それほどすごいわけではないが、醸し出される雰囲気は「一流」以外の何ものでもない。この音は、音楽ファンにこそ相応しい。
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他のソフトでは顕著に感じられなかったが、このソフトでは「再生周波数レンジの拡大」が明確になる。ベースは腹にずしんと響き、高音は切れ味良く宙を舞う。細部の表現力も抜群で、とてもJ-POPとは思えないほど細かい音までしっかりと再現されることに驚かされる。
しかし、それでも「ウエット」な傾向は変わらない。細やかさに驚嘆し、十分鑑賞に値する音だがこういうソフトは少々雑でも良いから、もっと弾けるようにパワフルに鳴らしたい。
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1028BEのサイズはBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)よりも少し小さいが、量感のある引き締まった良質な低音が出ることに驚かされる。バスレフだが低音は膨張せず、ベースラインがしっかりと前に出る。ボーカルは明瞭度を増し、やはり一歩前に出る。声量を上げたときのエネルギー感も良好で、メロディーを押し出した部分がより鮮やかに強くなる。ピアノも響きよりは、アタックを聞く感じに変化する。ドラムのブラシワークもハッキリする。
BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)の試聴時にメリハリを強くしようと、電源ケーブルを変えた時は全体のバランスが損なわれた。しかし、BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)から1028BEにスピーカーを変えると、バランスが崩れずに高音の明瞭度が増加して、メリハリがうまく出た。
一貫して感じる「温かさ」はPassが持っているもののようだが、それを「スピーカーの持ち味」として再現しアンプの個性とは感じさせない。スピーカーとアンプが完全に同化してしまうような、この特殊な鳴り方はPass独特のものだ。低刺激だが、主張する部分はしっかりと主張する。メリハリがなさそうだが、じっくり聞くと奥が深い。
良い意味でオーディオや電気の存在を感じさせない「有機的な雰囲気」でノラ・ジョーンズが色っぽく、明るく鳴った。
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弦が少し金属的になり、ハーモニーに少し乱れが感じられる。低音の量感は確実にアップするが、中高音に少し濁りが生じた。
JAZZでは情報量(音数)が増えたように感じられたが、響き(余韻)が少なくなるためかこのソフトでは逆に情報量が少なくなったように感じられる。また、ホールの響きにも若干の違和感が生じた。直前にあまりにも完璧なThe
Musicの音を聞いたせいか、1028BEの音はほんの少しだけ「雑(乱れて)」に感じられた。
+
このソフトには1028BEの音が合う。
ベリリウム・ツィーターの金属的な響き、少し雑味を感じさせる余韻が「いかにも」というパワー感とチープさをうまく演出する。芯のある高音が、パーカッションのリズム感を向上させる。
高音の切れ味の向上に負けずにボーカルも明瞭度が増加し、音が全体的に一歩前に出る感覚でダンス・ミュージックらしいテンポ感とパワー感が生み出される。こういう鳴り方が、J-POPにはより相応しい。
試聴の最後にプリアンプをXP-20からXP-10に変更し、聞き比べてみました。パワーアンプはX260.5です。
XP-10
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XP-20では、深みと落ち着きのある大人の演奏に聞こえた。プリアンプをXP-10に変えると、それが少しさっぱりとする。カタログデーター上のチャンエルセパレーションが、95dBから85dBへ10dB低下しているが、前後左右への音の広がりが小さくなり、中央に体が集中することでそれが感じられる。音も少し前に出てくる。
ボーカルと楽器それぞれの音がきちんと描き分けられ分離し、個々の音の明瞭度ではXP-20を上回る様に感じられるが、ライブ会場や演奏の空気感、雰囲気の濃さが後退する。全く同じ音質でグレードダウンするのではなく、よりフレッシュでオーディオ的にわかりやすい音に変えられている。明確な音の作り分けにPassの高い技術力が感じとれる。XP-10は悪くない。しかし、価格がかなり違うので比べるのは酷かも知れないが、プリアンプはXP-20が良いと感じた。
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オーケストラが少し小さくなり、空間にも濁りが生じる。絶対的には決して悪い音ではなく、グレードは十分に高いが直前に聞いたXP-20との比較となるとXP-10はやはり分が悪いようだ。
バイオリンの音は素直だが、弓と弦がこすれる部分の音が少しおおざっぱに感じられる。ベースラインとの絡み具合も悪くないが、チェロとコントラバスが少し混じってしまう。
価格を考えるとスピーカーのグレードをBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)に落としても、プリアンプにはXP-20を使いたい。それほどXP-20には独特の魅力があったようだ。
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XP-20ではややウエットに感じられたParty
MIXだったが、プリアンプをXP-10に変えるとこれが実に上手く鳴る。
高音は繊細になりすぎず、線が太くしっかりとした芯がある。金属系のパーカッションの切れ味も鮮やかだ。ボーカルは少し抑えめに感じるが、その「わざと冷静な感じ」が逆に音楽のテンポ感を引き立てる。時折挿入される、シンセサイザーの効果音も「それらしく」て魅力的。低音は完全には伸びきらないが、前に出てパンチがある。
XP-20ではやや大人しく地味に聞こえた演奏が、ほどよく派手になり元気な音で鳴る。全体的な質感や細やかさではXP-20に及ばないが、こういうさっぱりした鳴り方もこれはこれで魅力的だ。