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2019年6月、audio-technicaのMCカートリッジ「OC9シリーズ」がモデルチェンジ、「OC9Xシリーズ」として29,000円から98,000円の価格帯で5モデルが発売されました。 AT-OC9XEB メーカー希望小売 29,000円(税別) アルミニウムカンチレバーに接合楕円針を搭載したMCカートリッジの入門モデル。 AT-OC9XEN メーカー希望小売 45,000円(税別) 軽量な無垢楕円針を搭載したMCカートリッジのステップアップモデル。 AT-OC9XML メーカー希望小売 70,000円(税別) ボロンカンチレバーにマイクロリニア針を搭載。高品位な磁気回路を採用したミドルクラスモデル。 AT-OC9XSH メーカー希望小売 85,000円(税別) ボロンカンチレバーにシバタ針を搭載。豊かな中低域を表現する上位モデル。 AT-OC9XSL メーカー希望小売 98,000円(税別) ボロンカンチレバーに無垢特殊ラインコンタクト針を搭載。音溝から忠実に情報を読み取る最上位モデル。
試聴環境 PHONO BOX シリーズの聞き比べには、レコードプレーヤー DENON DP-500M(ヘッドシェルは、カートリッジに附属するaudio-technica AT-HS10を使用)、フォノイコライザーアンプ Pro-Ject PHONO BOX ULTRA 500、プリメインアンプ AIRBOW PM12 Master、スピーカーには Vienna Acoustics Lisztを使いました。 この聞き比べをMusic BirdのYouTubeアーカイブで見る
試聴したレコード
アナログの全盛期に、Pioneerがバックアップし、Lobster企画が録音したダイレクトカッティングの優秀録音盤。 CDでも発売されているシンセサイザーなども伴奏に使った、録音の良いPOPSのレコード。比較的新しい高音質重量盤。 チェリビダッケの没後に発売された、公式海賊版。ライブ録音。録音は悪くないが、ノイズが多い。
前回のカートリッジ聞き比べでも思ったのですが、針先は「とがりすぎていない(極端に扁平率が大きすぎない)方が無難」だと思います。もちろん、レコードの録音やカッティングとの相性はあると思いますが、ある程度の面積(点ではなく線で)針先がレコードと接することで前後の音が時間軸上で重なり、それがアナログらしい滑らかさと艶やかさや豊かな響き、まったりとした厚み感が演出されるように思うからです。 いい意味でもそうでない意味でも、XEBはMCらしくない音です。 イントロのトランペットは音がやや混濁していますが、抑揚はきれいに出ています。XEBはDP-500M付属のMMよりも音の立ち上がりが早く、同じ音量でも明らかに音が大きく聞こえます。S/Nも高く細かい音の再現性にも優れています。
機器のレベルをそのままにして再生を始めると音量が大きく聞こえたので調べると、テストトーンで+3dbほど音が大きくなっていました。レベルを調整して試聴を開始します。 今回は試聴前に全てのレコードを超音波でクリーニングした効果もあって、盤面状態に優れるこのレコードではノイズがほぼ皆無になりました。レコードの再生でもデジタルで聴いているときと、S/Nの高さはほとんど変わりません。アナログだとわかるのは、音のエッジ(輪郭)が滑らかでまろやかなことと、それが原因で音の分離が甘いところです。ボーカルの低位もまだ少しぼやけています。 この曲では、カートリッジを変えたことによる音質の向上がそのまま生きてきます。
これまでに聞いたカートリッジでは感じられなかった「空気感」が出てきました。ピアノは響きの濁りがとれて、ドラムのブラシワークもはっきり見えます。ウッドベースもくっきりと生々しい音です。ボーカルは、低位感が向上し口元がしっかりして、唇の動きまで見えるようです。 シンセサイザーが一音鳴った瞬間に、「良い!」と思えます。 最近は、メジャーになれないミュージシャンがオーディオマニア向けに、近接録音した特殊な楽曲を発売していますが、私はすぐに聴くのをやめます。プロのボーカルなら、Amandaさんくらいの迫力と表現力がなければダメだからです。 イントロのトランペットは質感の高さと、音の変化のデリケートさが違い、弦楽器も解像度と明瞭度、そして演奏の躍動感を再現するのに重要な「色彩感(音色)」の変化がとても大きくなって、楽器一台一台の音を聞き分けられそう(分離できるほどではありませんが)です。
音量はテストレコードを再生し、1KHzの正弦波で合わせてますが、カートリッジの感度(針の動きやすさや発電力)が高まると、音楽信号は大きくなります。XEBからXENでは、録音機のメモリで+3db、XENからXMLではさらに+2db、XMLからXSHでは、さらに+1dbと音がどんどん大きくなっています。出力が高いと細やかな音まで拾いやすくなるのに加え、フォノイコライザーへの入力も大きくなるので細かい音の再現性や分離感、エネルギー感などあらゆる部分が良い方向に働きます。 XENとXMLほどの大差はありませんが、XSHはXMLに比べさらにあらゆる方向に音質が数割程度改善されているように感じられますが、XENとXMLの差が大きく鮮やかだったためか、この程度の差ならXMLでも十分だという印象です。 ジェシーを聞いた時、XSHに引っかかった理由がわかりました。色彩がほんの少しですがXMHよりも浅いのです。それはイントロ部分のシンセサイザーを聞き比べるとよくわかります。心なしか、バックコーラスの「存在感(意味)」もやや薄くなっているようですし、パーカッションの意味合いもまた少し薄れているようです。ボーカルもやや口先だけで歌っているように感じられます。 イントロのトランペットの音が違います、XMHに比べ癖が強く音抜けも悪い感じです。音も重く弦楽器の分離感もXMLの方が良かったように思います。曲が進むと、楽器の高次倍音がやや「堅い」用にも感じられます。
2ランク下位モデルで安いXMLに比べて、高域がわずかに濁るように感じられます。ピアノの響きも濁り、ウッドベースも繊細さが薄まりました。ブラシの音は細くなり、ウッドベースも元気がなくなっていますし、その場にあった空気感も消えてしまいました。 シンセサイザーの響きは、1ランク下位のモデルで安いXSHよりもさらに濁ったように思います。音のエッジも丸くなり、切れ味が減退しています。ボーカルは透明感が損なわれ、実在感・存在感が薄くなっています。パーカッションも切れ味が減退し、元気がありません。リズムの変化が不明瞭で、演奏の抑揚が小さくなっています。 この曲とのベストマッチングもXMLで決まりです。 イントロのトランペットの「間接音(ホールトーン)」が聞こえなくなりました。後方に位置する大型管楽器の分離も悪くなっています。弦楽器も分離が悪く、音色もくすんでしまいました。 2020年2月 逸品館代表 清原裕介 |
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