今回の試聴のまとめ
まず、CECから発売された[TL−OX]の評価だが、前モデル[TL−0]から進化している様子はほとんど感じられない。
TL−0の長所であった、ベルトドライブ特有の「高域の伸びやかさ」、「透明度」、「広がり感の良さ」、「中域の滑らかさ」、「雰囲気の良さ」はシッカリと継承されているが、カラーがブラックからシルバーに変わり、重厚さが薄れたように感じられる外観のイメージと音のイメージを重ねたわけではないし、直接比較したわけでもないが、TL−0に比べると低域がかなり「薄く」なったように感じられる。
音は決して悪くないし、ベルトドライブの良さも認める。しかし、180万円という高額な価格設定もあり、今となっては従来ほどの大きな魅力は感じられないというのが正直な感想だ。
INFRANOISE CCG−525は、¥85,000(税込)と非常に安いマスタークロックジェネレーターであるがインフラノイズの説明では、音質改善効果は高いという。また、TL−0XにTL−0を越える、高精度な水晶発振子が搭載された形跡もないから、ひょっとしたら?という興味もあって先行発売されているCRV−555とのセットで試聴を行った。
結果は、非常に良好なS/Nが得られた。中域〜高域にかけてのデジタル臭さ?デジタル特有の棘とげした感じは確実に緩和される。フォーカスや音の細やかさにも悪影響はなく、音の広がりや雰囲気がさらに良くなるが、低域は少々ゆるくなった。
付属のケーブルは、インフラノイズがチューンしたものだが、あまりにも頼りがないし、筐体もプラスティックで華奢だから、電源ケーブルの交換や、インシュレーターの追加などで欠点を補うと良いだろう。ただ、本体価格が非常に安いのであまりに高価なアクセサリーを使うくらいなら(特にCCG−525)ワンクラス上の機器を購入することも視野に入れて検討すべきかも知れないが、この価格のデジタル信号改質機としては、非常にお薦めできる良品であることに違いはない。
さらに、CCG−525の実力を確かめるため、P70VUとD70VUに88.1KHzのクロックを入力して音質の変化を確認したが、かなり驚くべき向上が見られた。
結論を先に述べると、Esotericじゃなくなる?INFRANOISEの音質傾向が支配的になるのだが、P70+D70の組合せで「音が硬い」、「音場が平面的」、「弦の音がキツい」、「ボーカルに艶が足りない」と不満を持っているなら、CCG−525は是非試すべきだ。
副作用?は、低域がゆるくなることで、P70+D70の押し出しの強いシッカリした低域を魅力だと感じているなら、CCG−525はお薦めできない。
最大の利点は、この種の機器は「使用する」、「しない」をフロントパネルのスイッチで簡単に選べ、さらに発信(入力)するクロックの周波数を変えることで、非常に手軽に音質を調整できることだ。
CCG−525の実売価格を考えると、外部クロック入力端子のあるデジタル機器には、必需品と言えるほど安くて高価のある音質改善装置だと思う。
最後に、オリジナルのCD−R(試聴用に複数のソフトを一枚にまとめるときや、オリジナルのアルバムを作るときに使用している)の作成で、YAMAHAのHDDレコーダーだけで編集を行った場合(YAMAHA単体でHDDからCD−Rにダビング)とYAMAHAをプレーヤーにレコーダーにmarantzのCD−Rを使った場合、その中間にCRV−555+CCG−525を挿入して、ダビング時に「デジタル信号の改質」を行った場合の音質を比較してみた。
YAMAHAは、一旦CDをHDDに取り込んでからデジタル出力(デジタルトランスポーター)した場合に限り、デジタル出力機としての性能は非常に優秀で10〜20万円クラスのCDトランスポーターにも勝るとも劣らないことが、外部DACとの接続による音質チェックや、marantzのCD−Rへのコピーにより確認できた。
しかし、内蔵のCD−Rの録音品質はあまりよろしくないようで、CDマスターの音質を100とし、marantzをレコーダーとした場合の音質劣化が80%程度だったのに比べ、内蔵のCD−Rでダビングすると音質は60〜70%程度に劣化した。
そこでさらなるダビング時の音質の向上(劣化防止)を狙って、CRV−555+CCG−525を導入すると、ダビング時の劣化はほとんど無視できるレベルにまで低下し、ダビング後の音質は90〜100%に達した。
100%は、つまりロスレス(劣化のない)ダビングが可能だということになるが、実際にCRV−555+CCG−525を通してダビングすると(非常に良質なCD−Rメディアを使用した場合に限る)、S/N感が向上しマスターよりも音質の透明度が向上し、音の広がりやエコーの量感が増すことが確認できた。引き替えに、ほんの少し音質の明瞭度(音のエッジの鋭さ)が失われるが、ボーカル系のソフトなどではそれが奏効してより聞きやすく、雰囲気が良くなって感じられることもあった。
今回のテストで、一番驚いたのはYAMAHAのHDDレコーダーのトランスポーターとしての性能が非常に優れていることと、INFRANOISEのCRV−555+CCG−525の組合せによってその良さが飛躍的に大きくなることだ。この3台に高音質のD/Aコンバーターを組み合わせれば、まったく問題のない「超高音質CDジュークボックス」が実現する。
CDを無圧縮で数百枚収録でき、好きな部分だけを取り出せ、組み替えて聞くことの出来る「超高音質ジュークボックス」音楽好きにはたまらない魅力のあるシステムだと思う。
折角なので、YAMAHAのHDDレコーダーに手を入れてさらに高性能なAIRBOW仕様の製品を作ろうとYAMAHAに打診したのだが・・・けんもほろろに拒否された。良い機械を作れる確信があっただけに残念だ。機会があれば、ねばり強く交渉はしたいと思うが・・・、YAMAHAの壁は高く、崩せないかも知れない。
2006年2月 清原 裕介
ABS9999,ABS7777、CRV555の音質はこちら
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