cec tl-0x esoteric p70 d70 infranoise crv-555 ccg-525 音質テスト

CEC TL-0X
Esoteric P70/D70
INFRANOISE  CRV-555 CCG-525
音質テスト

逸品館でもお薦めしてきた、CECベルトドライブCDプレーヤーのトップモデル“TL−0”がモデルチェンジし“TL−0X”に生まれ変わって発売されました。変更点は、ピックアップレンズがTL51Xなどに採用されたCD−R対応品になったこととボディーカラーが、ブラックからシルバーに変更されたことです。

D/Aコンバーターには、EsotericD70。比較用のトランスポーターとしてEsoteric P70 を使って試聴テストを行いました。

さらに、INFRANOISEから発売された、高精度クロックジェネレーターCCG−525と外部クロック入力対応デジタル、リコンストラクターCRV−555を加えトランスポーターと高精度クロックによるデジタル信号改質の影響を確認してみました。

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CEC TL-0X
 希望小売価格 1,800,000円 (税抜価格)
カラー:シルバー
専用リモコン付属

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デジタル出力は3系統

写真左から

光(TOS)

同軸(RCA)

AES/EBU(XLR)

流行の外部クロック入力端子は備わりません。

世界で初めて「ベルトドライブ方式」を開発した、CEC ベルトドライブCDトランスポーターのトップモデル。

電源は別置き(写真上の左側)、CDはスタビライザーで固定します。

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Esoteric D70VU
 希望小売価格 950,000円 (税抜価格)
生産完了しました
カラー:ブラック
専用リモコン付属

デジタル機器では世界のトップに立つ、Esotericのセパレート型D/Aコンバーター。

外部クロック入力、最大192KHzに対応しています。

INFRANOISE  CRV-555

希望小売価格 85,000円 (税抜価格)

生産完了しました
専用電源ケーブル付属

デジタル入力 2系統(RCA/BNC・XLR)
96KHz/24Bit対応
デジタル出力 2系統(RCA/BNC・XLR)
電源 AC100V、50/60Hz
消費電力 5W
外形寸法 W190×H56×D220mm
質量 950g
メーカー標準価格 ¥85,000(税別)

外部クロック入力のないCDトランスポーターの出力に繋いで、デジタル信号を改善する装置。

CRV−555の使用時には、外部から高精度のクロックを入力しなければならず単体では使用できない。

詳細な説明はこちら


フロントパネルには傷つき防止シールが張り付けたままになっています。

INFRANOISE CCG-525
希望小売価格 85,000円 (税抜価格)
専用電源ケーブル付属

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クロック出力 2系統(BNC)
44.1KHz/48KHz

倍率×1/2/4(最大192KHz)
クロック入力 1系統(BNC)
電源 AC100V、50/60Hz
消費電力 4W
外形寸法 W190×H56×D220mm
質量 810g
メーカー標準価格 ¥85,000(税別)

高性能なマスタークロックを発信する、低価格のクロックジェネレーター。

D70VUやCRV−555になどの「外部クロック入力端子」のあるデジタル機器に繋いで使用します。

(スイッチは左から、44.1/48KHz切り替え、クロック倍率1/2/4切り替え、電源ON−OFF)

ベースクロック発信器に定評ある三田電波株式会社の温度補償型高精度水晶発振器、MX−0510 TCX0、±1.0ppm(0−50°)を採用したCCG−525は、INFRANOISE独自の高音質PLL及び分周回路により44.1KH〜192KHzまでの各周波数に変換された高精度なクロック出力を造り出します。

外部クロック入力端子には、オーディオ機器として製造されたのではない測定用の高精度発信器や軍用の発信器(ルビジュウム、セシュウム、GPS利用)から得られる高精度な10MHzの基準出力を入力することで、さらに高精度なマスタークロックを発信することが可能となります。

CRV−555とCCG−525の接続方法

CRV−555(写真左)

@外部クロック入力端子/BNC×1
  マスタークロックを入力します。

Aデジタル信号出力/RCA,BNC,XLR各1
  D/Aコンバーターなどを繋ぎます。

Bデジタル信号入力/RCA,BNC,XLR各1
  CD/DVDなどデジタルプレーヤーを繋ぎます。

CCG−525(写真右)

C外部クロック入力端子/BNC×1

  10MHzの高精度のクロックジェネレーターを繋げます。

Dマスタークロック出力端子/BNC×2

CD/DVDプレーヤーとDAC/AVアンプとの接続

@とCを同軸デジタルケーブル(BNC端子)で接続する。

AにDAC/AVアンプを接続する。

BにCD/DVDプレーヤーを接続する。

試聴は、3号館「デジタルコンサートルーム」で行い、アンプにAIRBOW TERA CRYO LIMITED、モニタースピーカーにPMC MB−2を使用しています。

今回、BB5ではなくMB2を使ったのは、スピーカーは大型になればなるほどスピーカーの個性が強くなり、音が誤魔化されやすいためで、BB5よりもより小型のMB−2の方が音の違いを正確に把握しやすいためです。

ソフトには、カーペンターズのボーカルのみを使用しています。

比較の基準とするために、P70+D70(4倍アップコンバート・DUAL−XLR接続)で聞いてみました。この音の「情報量と質感の総和を10点」とし、高域、中域、低域に分けて、他の組合せの音質を相対的に評価しています。

また、音楽を聴いた印象や楽器の音色感を「冷たい」か「暖かい」かで評価しました。

P70+D70(DUAL−XLR接続/4倍アップコンバート、192KHz)

整った音で音質も細かく、明瞭度も高いが、前後方向の奥行きに乏しく立体感にやや欠ける。

ハーモニーの分離やボーカルの明瞭度は非常に高く、一つ一つの音が明確に聞こえるが、 やや機械的(デジタル的)な感じで、あまり胸を打たない。(ハートに響かない)

低音は量感も多く、締まりがあって、非常にシッカリしている。低音は高く評価できる。

音色:冷たい

高音:硬い、情報量は10点

中音:やや硬い、情報量は10点

低音:非常にしまっている、情報量は10点

P70+D70(2倍アップコンバート・RCA接続)

4倍アップコンバート・DUAL−XLR接続に比べて、高域が柔らかくなり

不足していた前後の広がりも改善される。

雰囲気が良くなり、音楽のニュアンスが心に届くようになるが、やや元気がなくゆるい感じになる。

TL−0Xと似た方向に音質が変化するが、高音の透明度や伸びやかさではTL−0Xが勝っている。

音色:普通

高音:柔らかくなる。バランスも改善する、情報量11点

中音:前後の立体感が出るがディティールがややゆるくなる、情報量9点

低音:量感が少し減り、甘さが感じられる、情報量9点

P70+D70+CRV−555/CCG−525(2倍アップコンバート、88.2KHz)

高域のS/Nが大きく改善され、ザラザラ、キンキンした感じが完全になくなり滑らかになる。

輪郭の明瞭度は失われないが、Esotericの味が無くなったとも言えなくない。

全体的なバランスが良くなる。前後方向の立体感が改善し、ステージの奥行きが深くなるが

Esoteric特有の固まり感は少なくなる。低域もややゆるくなり、TL−0XとD70の組合せに近くなる。

音色:やや冷たい

高音:透明度と滑らかさが改善する、情報量11点

中音:ニュアンスの再現力が大幅にアップする、情報量12点

低音:ぼやけて甘くなる、情報量8点

P70+D70(88.2KHzでCCG−525を使ってクロックを外部入力して使用)

高域のS/Nは、Esoteric同士の組合せでは最も良い。

エコーが多くなり、音に艶が出る。

透明度が非常に高く、情報量が多い。

楽器から出た音だけではなく、楽器の中の音まで聞こえるようになる。

低音はゆるく、少なくなるが、ボーカルの表現力は抜群。

外すと、音が粗くなるが元気の良さは出る。低音はシッカリする。

繋ぐと、軽快。外すと、重厚。そんなイメージだ。

音色:普通

高音:透明度、解像度共に高い、情報量13点

中音:厚みがあり、表現力豊か、情報量12点

低音:量がやや少なく、甘い、情報量8点

TL−0X+D70(アップコンバートは出来ない、44.1KHz)

エコーが多くなり、中高域が滑らかになる。低音はやや甘く、量も少なめだが、中高域は非常に美しい。

ボーカルが前に出て、バックの楽器が後ろに下がり、前後の立体感が出る。

さらに、エコーか左右からリスナーの体を包み込むように回り込み体が音に包み込まれる。

音のエッジは少しゆるく、明瞭度はP70よりも低い。優しい音。

音色はP70よりも明るく、ほんのりした桜色のイメージだ。

音色:暖かい

高音:透明度が高く余韻が多い、情報量は12点

中音:柔らかくニュアンスが豊か、情報量は12点

低音:やや少なく甘い、情報量は8点

TL−0X+D70+CRV−555/CCG−525(アップコンバートなし、44.1KHz)

TL−0Xの柔らかさにP70の明瞭度感が加わったようなイメージで中高域の輪郭がハッキリする。

透明度は格段に高くなり、ガラスを磨いて曇りが取れたように中高域の見通しが良くなる。

それに伴い、低音がシッカリし、P70+D70の組合せに近づく。

高域がハッキリする反作用で、中域がやや引っ込んで聞こえるようになる。

バランスとしては、ない方が好ましいが、外すと音(フォーカス)が途端に甘くなる。

付けるまでは、透明度が高く滑らかに感じた高域が、

外すとゆるくなり、S/Nも悪化してシャリシャリ感じられるようになる。

音色:暖かい

高音:透明度が抜群に高くエコーが美しい、情報量は14点

中音:ニュアンスの細かいところまでシッカリ再現される、情報量は11点

低音:濁りが取れ透明度が高くなる。量は少しだけ増える、情報量は9点

今回の試聴のまとめ

まず、CECから発売された[TL−OX]の評価だが、前モデル[TL−0]から進化している様子はほとんど感じられない。
TL−0の長所であった、ベルトドライブ特有の「高域の伸びやかさ」、「透明度」、「広がり感の良さ」、「中域の滑らかさ」、「雰囲気の良さ」はシッカリと継承されているが、カラーがブラックからシルバーに変わり、重厚さが薄れたように感じられる外観のイメージと音のイメージを重ねたわけではないし、直接比較したわけでもないが、TL−0に比べると低域がかなり「薄く」なったように感じられる。
音は決して悪くないし、ベルトドライブの良さも認める。しかし、180万円という高額な価格設定もあり、今となっては従来ほどの大きな魅力は感じられないというのが正直な感想だ。

INFRANOISE CCG−525は、¥85,000(税込)と非常に安いマスタークロックジェネレーターであるがインフラノイズの説明では、音質改善効果は高いという。また、TL−0XにTL−0を越える、高精度な水晶発振子が搭載された形跡もないから、ひょっとしたら?という興味もあって先行発売されているCRV−555とのセットで試聴を行った。
結果は、非常に良好なS/Nが得られた。中域〜高域にかけてのデジタル臭さ?デジタル特有の棘とげした感じは確実に緩和される。フォーカスや音の細やかさにも悪影響はなく、音の広がりや雰囲気がさらに良くなるが、低域は少々ゆるくなった。
付属のケーブルは、インフラノイズがチューンしたものだが、あまりにも頼りがないし、筐体もプラスティックで華奢だから、電源ケーブルの交換や、インシュレーターの追加などで欠点を補うと良いだろう。ただ、本体価格が非常に安いのであまりに高価なアクセサリーを使うくらいなら(特にCCG−525)ワンクラス上の機器を購入することも視野に入れて検討すべきかも知れないが、この価格のデジタル信号改質機としては、非常にお薦めできる良品であることに違いはない。

さらに、CCG−525の実力を確かめるため、P70VUとD70VUに88.1KHzのクロックを入力して音質の変化を確認したが、かなり驚くべき向上が見られた。
結論を先に述べると、Esotericじゃなくなる?INFRANOISEの音質傾向が支配的になるのだが、P70+D70の組合せで「音が硬い」、「音場が平面的」、「弦の音がキツい」、「ボーカルに艶が足りない」と不満を持っているなら、CCG−525は是非試すべきだ。
副作用?は、低域がゆるくなることで、P70+D70の押し出しの強いシッカリした低域を魅力だと感じているなら、CCG−525はお薦めできない。
最大の利点は、この種の機器は「使用する」、「しない」をフロントパネルのスイッチで簡単に選べ、さらに発信(入力)するクロックの周波数を変えることで、非常に手軽に音質を調整できることだ。
CCG−525の実売価格を考えると、外部クロック入力端子のあるデジタル機器には、必需品と言えるほど安くて高価のある音質改善装置だと思う。

最後に、オリジナルのCD−R(試聴用に複数のソフトを一枚にまとめるときや、オリジナルのアルバムを作るときに使用している)の作成で、YAMAHAのHDDレコーダーだけで編集を行った場合(YAMAHA単体でHDDからCD−Rにダビング)とYAMAHAをプレーヤーにレコーダーにmarantzのCD−Rを使った場合、その中間にCRV−555+CCG−525を挿入して、ダビング時に「デジタル信号の改質」を行った場合の音質を比較してみた。
YAMAHAは、一旦CDをHDDに取り込んでからデジタル出力(デジタルトランスポーター)した場合に限り、デジタル出力機としての性能は非常に優秀で10〜20万円クラスのCDトランスポーターにも勝るとも劣らないことが、外部DACとの接続による音質チェックや、marantzのCD−Rへのコピーにより確認できた。
しかし、内蔵のCD−Rの録音品質はあまりよろしくないようで、CDマスターの音質を100とし、marantzをレコーダーとした場合の音質劣化が80%程度だったのに比べ、内蔵のCD−Rでダビングすると音質は60〜70%程度に劣化した。
そこでさらなるダビング時の音質の向上(劣化防止)を狙って、CRV−555+CCG−525を導入すると、ダビング時の劣化はほとんど無視できるレベルにまで低下し、ダビング後の音質は90〜100%に達した。
100%は、つまりロスレス(劣化のない)ダビングが可能だということになるが、実際にCRV−555+CCG−525を通してダビングすると(非常に良質なCD−Rメディアを使用した場合に限る)、S/N感が向上しマスターよりも音質の透明度が向上し、音の広がりやエコーの量感が増すことが確認できた。引き替えに、ほんの少し音質の明瞭度(音のエッジの鋭さ)が失われるが、ボーカル系のソフトなどではそれが奏効してより聞きやすく、雰囲気が良くなって感じられることもあった。

今回のテストで、一番驚いたのはYAMAHAのHDDレコーダーのトランスポーターとしての性能が非常に優れていることと、INFRANOISEのCRV−555+CCG−525の組合せによってその良さが飛躍的に大きくなることだ。この3台に高音質のD/Aコンバーターを組み合わせれば、まったく問題のない「超高音質CDジュークボックス」が実現する。

CDを無圧縮で数百枚収録でき、好きな部分だけを取り出せ、組み替えて聞くことの出来る「超高音質ジュークボックス」音楽好きにはたまらない魅力のあるシステムだと思う。

折角なので、YAMAHAのHDDレコーダーに手を入れてさらに高性能なAIRBOW仕様の製品を作ろうとYAMAHAに打診したのだが・・・けんもほろろに拒否された。良い機械を作れる確信があっただけに残念だ。機会があれば、ねばり強く交渉はしたいと思うが・・・、YAMAHAの壁は高く、崩せないかも知れない。

2006年2月 清原 裕介

ABS9999,ABS7777、CRV555の音質はこちら

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