AR2000(アナリコン)、DR3000(デジリコン)から始まった、インフラノイズの「後付け音質改善装置」だが、AR2000、DR3000にはデメリットが皆無ではなかった。
その後に発売されたABS−9999は、それまでのインフラノイズの製品に共通する「音の角が丸くなるような、鮮度の低下感」を感じさせない「デメリットが皆無の音質改善装置」として私は高い評価を下し、実際に今回テストに用いたAIRBOW SA12S1/KAIとPS7400/Specialの接続には常時繋ぎっぱなしで使用しているほど気に入っている。
ただし、ABS−9999をさらに上位のAIRBOW TL−51/KAIとDAC−1の間に使用した場合には、それほど大きな音質改善効果が認められず、正直なところハイエンド、ピュアオーディオへの導入にまで考えなかった。もちろん、それはTL−51/KIAやDAC−1が、すでに内部で十分な精度のクロック発信を行っているためで、一般に市販されているデジタル機器間に使用した場合には、ABS−9999の音質改善効果はかなり大きいことは確認していた。
その次に発売されたABS−7777は、遙かに効果なEsoteric G−0Sに勝るとも劣らない素晴らしい音質の「基準クロック発信器」だったが、残念ながら外部クロック入力端子のないデジタル機器には使えなかった。そして今回発売されたCRV−555によりその問題が解決し、あらゆるデジタル機器に「ABSシリーズの優れた音質改善効果」が発揮できるようになった。これでインフラノイズの仕掛けた「電波時計の搬送波を利用するデジタル信号改質装置」のラインナップが揃ったわけだ。
私もAIRBOWの機器を設計したりチューンナップする経験の中で、デジタル信号がアナログ信号とは異なり「回路が増える」、「通過する部品が増える」ことによって、劣化を起こさず場合によっては「回路を付け加えることで音質が向上する」ことを知ってはいたが、さすがに外付けの装置で改善しようとまでは考えていなかった。しかし、インフラノイズの秋葉氏は地道な弛まぬ努力により、一見「ギミック」とすら考えられるほど奇抜な装置を作り上げてしまった。
失礼な言い方だが、過去のインフラノイズの製品は、たしかに目の付け所は斬新であったものの製品になったときの完成度が足りず、一過的な評価しか得られないのが通例であった。しかし、このABSシリーズは「紛れもない本物」だ。これまた、失礼だと思うがこれはまさに瓢箪から駒、素晴らしい製品が生み出された。このシリーズは今後インフラノイズの名を不動のものとし、ベストセラー商品になる実力を十分備えている。
テストを終えて、また自分自身で1年以上ABS−9999と付き合った中で、言いたいことは山ほどあるが、要点だけに話を絞って紹介しようと思う。
ABS−9999は、中級クラス(売価で50万円程度まで)のデジタル機器に使用するとき最も効果があらわれる。もちろん、それ以上の機器に接続しても大きな効果を上げる場合もあるが、それは保証できない。最も適しているのは、ピュアオーディオではなくDVDとAVアンプの接続だ。DD/DTSなどのサラウンド信号の音質改善には、驚くほどの効果がありAIRBOWのDVDプレーヤーとAVアンプの接続には是非(絶対と言っても良い)お薦めしたい。AIRBOWに組み合わせて使用すれば、DD/DTSの音質がCDはおろか場合によってはSACDすら上回る。このセットで聞く音楽に、私は一切の不満を感じない。完成された音楽再生装置になる。
ABS−7777は、外部クロック入力端子の備わっているデジタル機器に使うとEsoteric G−0sに匹敵するほどの(部分的にはそれを越えるほどの)素晴らしい性能を持っている。G−0sの音質と比較すると、G−0sが「ある種粉っぽいようなデジタル臭さ」を常に感じさせるのとは対照的に、ABS−7777はより「スィート」で、より「透明度」が高い。音楽性では、G−0sを凌駕すると私は感じる。
CRV−555は、この素晴らしいABS−7777の恩恵をほぼすべてのデジタル機器(DD/DTSは除く)に対してもたらしてくれるところがすごい!そして、安い!効果を考えれば、驚くほど良心的な価格設定である。数十万円もするケーブルを購入している場合ではない。CRV−555+ABS−7777を使えばCDの音質は、一気にSACDに近くなる。サーロジックのサブウーファーやAIRBOWの波動ツィーターによってスピーカーの音質を強化した上で、CRV−555+ABS−7777を使えば、そのシステムの音質はSACDを凌駕できる。
CRV−555+ABS−7777の効果を知るために、数万円のCDプレーヤーのデジタルアウトにCRV−555+ABS−7777を接続して音を聴いたが、その状態でも数万円のCDプレーヤーが数十万円〜50万円程度のCDトランスポーターに匹敵するくらい音質がアップした。それは驚きであると共に、CRV−555+ABS−7777が正しく作動していることの証明でもある。
ただし、良いことばかりではない。ABS−9999にもABS−7777にもたった一つ大きな欠点がある。それは、太陽フレアーなどによって電離層が大きく乱されたとき(電離層の状態が不安定になったとき)電波時計の搬送波が大きく乱され、そうするとABSシリーズの優れた改善効果が完全に失われてしまうことである。この欠点は、電波を使っている以上どうしようもない。
だが安心してかまわない。なぜなら、私はここ1年以上、毎日ABS−9999の音質をモニターしている(常時使用している)が、そのような経験は1年間で数日しかなかったからだ。
すべてのデジタル機器の音質を根底から改善してしまうABSシリーズは、素晴らしい発明品に違いない!