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ELAC FS407 , BS312 , AET HS-M838HV , SH-3046B AIRBOW Metal base King 音質 評価 比較 試聴 価格 レビュー

 ELAC FS407 / BS312
AET HS-M838HV / SH-3046B   ,   AIRBOW Metal base King 音質 試聴 テスト

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今から約一年前の発売時にFS407は試聴テストを行っています。今回もう一度このスピーカーをお借りしたのは、人気の高いELAC製品をじっくりと聞き直し、逸品館でも拡販したいと考えたからです。今回は、SA8005/PM8005と組み合わせ、Vienna Acoustic Beethoven Concert Grand(T3G)、JBL Studio290/270/230/220/210の試聴テストに続き、それらとの比較の感想も交えながらFS407を徹底的に聞いてみました。

Elac製品、FS407の特長はフィルムを畳んだ形状の彼らが"JET5"と名付けたツィーターです。細かな平面が組み合わさったウーファーは形状こそ特殊ですが使用される材質、駆動方式共に通常のコーン型ウーファーとそれほど大きな違いはありません。

JET5やS407の概要については、こちらのページに詳しく書いています。
FS407を鳴らしながらそれぞれのユニットに耳を近づけて音を聞いてみました。JET5の音は繊細でしなやかですが、ドーム型ツィーターと比べると高音の「芯が弱く」感じられます。スコーカー、ウーファーは高い周波数帯域(ツィーターと繋がる帯域)の音がもう少し伸びて欲しい感じがします。

JET5の癖でFS407は高音の芯がやや弱く、そのため低音の輪郭感もやや柔らかくなっている印象があります。中域付近は比較的がくっきりしますが、低音は柔らかく、低音:柔らかめ・中音:クッキリ・高音:繊細で伸びやかだがアタック感がやや弱い、というイメージで鳴っています。

この評価は前回と同じです。そこで今回は「スピーカーの置き方」を工夫して、FS407の魅力をさらに引き出すチャレンジを行いました。その後、BS312/LS-70-2のスタンド付きセットを聞きました。

Marantz SA8005 Marantz PM8005

audioquest Red Rever

129,500円(税別)  129,500円(税別)  0.5m:13,600円(税別)・1.0m:14,900円(税別)
1.5m:16,100円(税別)・2.0m:17,400円(税別)
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ELAC FS407

 

形式

2.5Way・バスレフ方式

ユニット

高域:JET5×1
低域:150mm AS XR CONE ×2

クロスオーバー

450/2500Hz

定格/最大 入力

130W/170W

周波数特性

30-50kHz

サイズ

W260×H1038×D314(mm)

重量

17Kg(1台)

希望小売価格

520,000円(ペア・税別)

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音質テスト

FS407をWFB-1515-4に載せ、位置調整せずに聞くと音の広がりや高域の抜け方に違和感を覚えます。シンバルの音を聞いてその原因が分かりました。ELACが搭載するJET5は、ドーム型ツィーターよりも指向性が強く形状が平坦なため「左右のツィーターから耳までの距離誤差」に敏感です。この傾向は、リボン型ツィーターやAIRBOWが発売する波動ツィーター(平面カーボンパネルを使用)にも当てはまるのですが、このような場合「AIRBOW レーザーセッター」を使うと問題ハウスのように解決します。しかし、そういう「精密なセッティング」を行って引き出したスピーカーの性能は、一般的ではありません。また、逸品館推奨セッティングを行えば音質は驚くほど改善します(動画でセッティングを見る)が、その音を出すにはご家庭でも同じようなセッティングが求められます。そういう状態で出せる音は、ビギナーには出せません。そこで今回は「誰でもできる使いこなし」として、「スピーカーの置き方」による音質アップを試すことにしました。まず分厚いカーペットの上に「AIRBOW ウェルフロートボード WFB-1515-4」を設置しました。このボードは変えずに、上に載せるFS407の「スパイク」と「スパイクベース」の変更で音がどのように変化するかを聞き比べました。

ボードにFS407を直置き(スパイク取付用の台座を付け、スパイクを取り付けない状態)で試聴。下写真右側

 

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー)

澄み切った高音が綺麗な音で鳴りますが、弦楽器のこする感じ(アタック感)がやや弱く、弦楽器から音が出る瞬間のアタック(衝撃波)の強さと、音階が安定し持続する音(正弦波)のエネルギーバランスが、やや前者に偏っている感じです。輪郭が弱い(柔らかすぎる)ため、楽音の分離がやや不明瞭です。 音の品位感、細やかさ、広がり感は、このクラスのスピーカーとしては優れたものを感じるだけに、この僅かな違和感をどうして緩和するか?がこの曲をより深く、印象的に鳴らすポイントになると思います。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

音の輪郭はクッキリしていますが、高域にフィルムが共振しているような「チャラチャラした感じ」が付きます。 低域は比較的良く伸びて、ベースラインの音階ははっきり聞こえます。しかし、高域のアタックのエネルギー感が不足するため、低域が前に出ず少し奥まります。 ヒラリー・ハーンで感じ取れたのと同じポイント、高域のメリハリをアップさせることがこの曲をより楽しく弾ませるポイントになりそうです。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

左右方向へ音は広がりますが、前後方向が浅く、リスニングポジションから見て伴奏とボーカルが横一線に並び、ヘッドホンで頭の中に音をたたき込まれているように感じます。定位に違和感を覚えました。

FS407の付属スパイク先端にキャップを取り付けた状態で試聴。下写真左側

 

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー)

標準で付属する透明なキャップを脚に取り付けます。この柔らかな樹脂樹脂がスピーカーの微振動を吸収するからでしょうか?高域が適度に抑制され、気になっていたJET5の違和感が大きく減少しました。しかし、高域のささくれ?のような輪郭の強さが緩和された結果、JET5らしい高域の独特な解像度感も低下しました。

音のバランスが向上して違和感がほとんど消失し自然な音になりましたが、Elacらしい独特の魅力が少し薄れました。高域が滑らかに伸びる、普通に良い音のスピーカーになった感じです。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin  

高域のぺらぺらしたフォルムが鳴いているような感じが抑えられ、中域に滑らかさと厚みが出ます。ボーカルも厚みが出てしっとりしました。

ベース音は重心が下がりますが、やや湿った感じです。 樹脂製キャップを使うことで、高域に感じていたセロハンが共振するような付帯音が消え、今度は中域にナイロンのような柔らかい付帯音を感じるようになりました。

暖かいですがちょっと湿った音は、半透明の樹脂をユニットの使っていた頃のRogersによく似ています。 厚みのある暖かい音で、マドンナが鳴りました。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

重心がぐんと下がりました。ウッドベースは低く唸り、ボーカルは厚みが出てしっとりした艶が出ます。引き替えにシンバルの抜けが柔らかくなり、金属を打ち付ける鋭さや固い感じが薄くなりました。

足に付いている柔らかな樹脂により、高域のキツサや硬さが緩和されましたが、アタックに必要な刺激も薄くなりました。薄いフェルトで高音を僅かにミュートしたような柔らかいバランスでオレンジペコが鳴りました。

FS407の付属スパイク先端にスパイクを取り付け、スパイクベースにAET SH-3046Aを使った状態で試聴。

 

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー)

高音が伸びましたが、その質感はやや金属的です。高音の伸びに反比例して中低音の厚みが後退し、エネルギーバランスが少し高域寄りに変わりました。

綺麗な音ですが、あっさりさっぱりした音です。理知的な雰囲気でヒラリー・ハーンが鳴りました

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin  

高域に芯が出て、音が力強く一歩前に出ます。高域の金属的な響きは、このソフトにはよい方向に働きます。

マドンナの声は快活で歯切れ良くリズムを刻み、シンバル系の音も鮮やかに響きます。

低音もシッカリして遅れもなく、明るく楽しい雰囲気でマドンナが鳴りました。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

輪郭がクッキリして、音に力が出ます。やや行き過ぎていたボーカルのしっとり感が、オレンジペコらしいカラリとした声に変わりました。

 ウッドベースやビブラフォンも前に出ますが、楽器とボーカルが横一列になっています。

録音の癖もあるのですが、もう少し前後方向への立体感が欲しいと感じました。

FS407にAETのスパイク、HS-M838HVを取り付け、スパイクベースにAET SH-3046A(軽合金)を使った状態で試聴。

   

FS407側のねじ穴の誤差が多いのか?HS-M838HVをねじ込んでいったときに「底付きする深さ」がねじ穴によって5mm以上の差がありました。そこで最も深く入らない(刺さりが浅い)ねじ穴に合わせてHS-M838HVをセットし、試聴を開始しました。

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー)

今回聞いたFS407のセッティング中、最も自然でまとまりのある音です。

全帯域で癖が消え、自然にスピーカーが「歌い」ます。バイオリンの音も生楽器のような雰囲気で鳴りますし、コントラバスやチェロのパートとの分離も向上、低域による音の速度も完全に一致しています。

 最初に聞いた癖のある音が、Elac FS407の特長だとすれば、今聞いている音はFS407といえないのかも知れませんが、普通に音楽をしっかりと楽しめる良いバランスに変化しました。私はこの音が好きです。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

このスパイクを試そうと思ったのは、付属品よりも剛性が高いと感じられたからですが、その狙いは的中しました。足下の剛性を上げたことで、ユニットの応答性が上がっていることが感じ取れます。高域の付帯音も完全に消えました。その効果は想像したよりも遙かに大きく、FS407で気になっていたネガティブな癖がほぼ完全に消えてしまいました。

ベースラインは骨格がシッカリして力強くなり、シンバルにも芯が出ました。ボーカルはさっぱりとして、艶はやや不足しますが、快活で明るく楽しい声です。何よりも求めていた、エネルギー感が拡大したのが最大のポイントです

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

音場がグンと濃くなり、大きく広がります。ウッドベースは一歩後に下がり、求めていた前後方向の奥行きが出ました。

低音の量感がアップしますが、音の収束は僅かに遅く、若干膨らみます。シンバルの音には金気が出ました。ボーカルは細部にわたって歌い手が声をコントロールしている感じが出て、プロっぽくなりました。樹脂キャップの音には「かわいらしい艶」が感じられ、ボーカルが実年齢よりもかなり幼く感じられましたが、スパイクをAETに変えたことで、それが本来の実年齢に近づき、本人の声になりました。

音楽の組み立てが緻密になり、表現が深まります。ようやくFS407が大人の試聴に応えられる、良い音になったように感じられます。

FS407にAETのスパイク、HS-M838HVを取り付け、スパイクベースにAET SH-3046B(真鍮)を使った状態で試聴。

 

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー)

スパイクベースの材質が「軽合金」から「工業用真鍮」に変わると、音場の密度感が向上します。密度感・情報量が向上しましたが、高域の反応の早さとさわやかな明るさは「軽合金」を使うSH-3046Aが魅力でした。音調や帯域のバランスに変化はありません。しかし、この曲ではSH-3046Bがもたらす複雑な響きが、伴奏のバイオリンの台数が増加させ、演奏が重厚で落ち着いたムードに変化しました。個人的には、SH-3046Bがこの曲によりマッチすると感じます。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

マドンナの声と低音に厚みが出て、音の立ち上がりに「粘り」が出ます。立ち上がりの変化により重量感や低域バランスも変化しますが、音の音色は変わらず自然で、違和感ない音でマドンナが鳴ります。

カッターナイフですぱっと切った鋭さが「軽合金/3046A」の持ち味でした。工業用真鍮を使用する「3046B」は、より重厚なムードでこの曲を鳴らしますが、この曲に関しては、より快活でスピード感のある「3046A」が良かったと思います。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

音の立ち上がりが僅かに遅くなったことで、音楽の情緒やニュアンスが深まります。昔のMark Levinsonが独特の味わいを感じさせたのは、その立ち上がりの微妙な遅れと響きの収束の遅さに秘密があったと思うのですが、3046Bはそういう「たおやかな」ムードでFS407を鳴らします。

ボーカルは3046Aのプロっぽさに艶やかさが加わり、バラードらしい濃密なムードが出ました。ビブラフォンや伴奏の楽器も同様に色彩感が増し、大人のライブの感覚でこの曲が鳴りました。

FS407にAETのスパイク、HS-M838HVを取り付け、スパイクベースにAIRBOW Metal Base Lを使った状態で試聴。

 

AET SH−3046Bに比べ、AIRBOW Metal Base Lは高域がより柔らかです。中低音はグッと厚みが出て色彩が濃くなりました。弦楽器の胴の木の音が伝わるような鮮やかな色彩感が出ます。FS407本来の華やかさが少し抑えられますが、落ち着いた雰囲気の濃い音で情報量も豊富、自然で深みのある生演奏を彷彿とさせる音に変わりました。だFS407との組み合わせでは高域の抑制感がやや過剰で、音の広がりや音量が若干削がれたように感じられます。AET SH-3046A/Bが持っていた明解なサウンドも良かったと思います。

そこでスパイクとスパイクベースをより確実に固定して高域を伸ばすために、スパイク先端に「ラ・ミューズ」を塗布しました。音の立ち上がりが早くなり、高域がスッキリと伸びます。AETのSH-3046A/Bほどの「早さ」はまだ感じられませんが、音をこうしたいと考える方向に確実に変化しました。

とりあえずこの状態でマドンナ、オレペコと聞き進み一応の評価を下した後、音を出したまま「試聴後感想」を書いていると徐々に高域が伸びて、明瞭度が向上しました。スパイクベースの音が安定するのに30分程度鳴らさなければならないというのは、今まで経験したことがありませんが、Metal Base Seriesを御購入いただいたお客様からも同じような声を頂戴していますから、Metal Baseは少し鳴らすことで本来の性能を発揮するのかもしれません。一度書き上げたレポートを白紙に戻し、初期馴染みが出た状態からもう一度レポートを書き直す事にしました。

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー)

AETと比べて、馴染みが出てもAIRBOWの高域は穏やかです。高次倍音の最高域までぐいぐい伸びるのではなく、徐々にそして自然にドロップする感じです。この高域の減衰感が、コンサートホールで生演奏を聴いている雰囲気に近いのでしょう。また、高域を無理に伸ばさないことで「ソフトの粗(録音の善し悪し)」を過剰に反映しないという、家庭用として優れた性格を持っていると思います。

Metal BaseがAETよりも優れるところは、楽器の色彩感が濃くなることです。中低音の密度感が大きく向上し、楽器の厚みと表現力の濃さが増します。特に弦楽器の音が持続するスローなパートでその良さはずば抜けて発揮され、演奏者が僅かに変化を加えた弓使いが再生音に鮮やかに反映され、非常にしっとりと情緒深く演奏が聞こえました。楽器の密度感(情報量)も高く、音が美しく弦楽器の持続音の変化の再現性、演奏の躍動感(運動)の再現性の大きさは圧巻でした。

FS407との組み合わせではややスローな音ですが、表現力は大きく高まりました。このディスクでは、トラック1はAETの速度感と理知的な解釈が、トラック2ではAIRBOWの厚みと密度感、情緒的な解釈がマッチしました。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

高音はやはりスローですが、一つずつの音が切れ切れに鳴らず、音が流麗に繋がります。ボーカルは表現力が大きく心に何かを訴えられるような鳴り方をします。伴奏とボーカルの関係も密接で、打ち込みの音ですら人間が演奏しているかのように感じられました。

AETは速度感と明るさ、AIRBOWは密度感と情緒感、それぞれに特長があり、どちらもなかなか良いと思いますが、FS407との組み合わせでROCK/POPS感をより強く出すのは、AETだと思います。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

Metal Base Lの重厚で濃密な雰囲気がこの曲には、実に良くマッチします。電子楽器ではややスローに感じた立ち上がりも、アコースティック楽器では楽器の存在感と色彩感を高める良い方向に働きます。

付け加えられる柔らかな響きが楽器の色彩感を濃くして、ボーカルの表現力を大きく高めます。また、弱音部のデリケートな表現が、音が消える部分で心にその余韻が残るほど濃密に再現されます。

私がFS407で不満を感じた、軽薄(軽すぎる、表面的な)感じが完全に消えました。この音なら、バラードで泣けます。時間を忘れて浸りたくなる、そんな魅力を感じさせるボーカルでオレペコが歌いました。

FS407にAETのスパイク、HS-M838HVを取り付け、スパイクベースにAIRBOW Metal Base Kingを使った状態で試聴。

 

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto” (CDレイヤー)

基本的な音調は「L」と変わりませんが、高域にメリハリが出てバイオリンの音がさわやかになりました。中低音も速度が速くなり、「トラック1」らしい快活な感じが良く出ます。

中域には「King」「L」には共通する良さが感じられます。バイオリンの1/2弦と3/4弦の音の太さや音色の違いがはっきりと再現され、チェロとコントラバス、コンサートマスターと伴奏に使われる楽器に質やサイズの違いが明確に音に再現されました。

音楽を司る楽器の音量の大小や強弱だけでなく、さらに大切な音色の変化が克明に描かれるため、音楽そのものの表現力と質感が大きく向上することを感じます

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

Metal Base 「L」の重厚感に速度感が加わります。

「King」はサイズと重量で「L」を上回りますが、音速は逆に早くなっています。しかし、これはあくまでもAET SH-M838HV/FS407の組み合わせでそうなるだけで、私が開発段階で感じていた「King」と「L」の違いと変化が少し異なるように思います。

本来「L」も速度は決して遅くありませんし、「L」と「King」で高域の明瞭度もそれほど変わりません。開発テストでは、「King」は「L」に比べ高域倍音がさらに伸び、低音もそれと同じだけ伸びることを経験しています。「King」は「L」よりもさらに、中音の密度が向上し色彩感も一層濃くなります。

しかし、FS407にSH-M838HVを装着すると、中低域の変化は開発意図通りですが、高域がスローになるのは想定外でした。たぶんSH-M838HVが「長い(共振が大きい)」ことが、Metal Base Series本来の能力が発揮できない原因になっておるのかも知れません。

「King」は、「L」よりも快活にこの曲を鳴らします。高域に若干の粘りと湿気を感じますが、ほとんど問題にならない範囲です。ボーカルはLよりもっくっきりしています。高域と低域への再生周波数レンジの拡大に加え、明解さが改善されました。

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

「King」は「L」に比べ、一つずつの音がクッキリして感じられます。

ボーカルの絡みつくような艶やかさは後退しましたが、声の大小の変化はより大きくなりました。音場の立体感もさらに改善しています。
開発段階で「King」は「L」よりもさら情緒的な音を出すことが特長でした。しかし、SH-M838HV/FS407との組み合わせでは、「L」よりも「King」が少しさっぱりして大人の客観的なムードが出ます。

FS407自体が個性的な性格の強いスピーカーと言うことで、アクセサリー本来の「音質」が性格に反映されたとは言い難い結果ですが、スパイクやスパイクベースの変更でFS407の音質が大きく変わる、変えられることをはっきり確認できました。

試聴後感想

Elac FS407は特長のあるスピーカーです。高域が繊細ですが、アタックがやや弱い癖を持っています。アタックが弱いと低音楽器の音に輪郭(隈取り)が形成されず、低音部の音階とリズムがやや不明瞭になります。 この癖をどのように生かすか?あるいは、生かせないかでFS407の評価は大きく変わります。そのため組み合わせるアンプやCDプレーヤー、あるいはソフトとの兼ね合わせで善し悪しが左右されます。また、スピーカーに近い距離で試聴する場合と、そうでない場合で印象ががらりと変わる特徴も持っています。

今回はウェルフロートボードにFS407を乗せた状態でスパイクと、スパイクベースの音質をテストしました。ウェルフロートボード下のカーペットの分厚く、足下がかなり「柔らかい」状態だったためか、AETのベースとAIRBOWのベースを比較すると、AIRBOWの音がやや柔らすぎる印象になりました。

今回の「スピーカーの置き方=スパイク/スパイクベース」によるFS407のチューニング実験では、付属品のスパイク(ゴム脚)は剛性が低くFS407の能力を伸ばしてバランスを整えるのではなく、高域の癖を削ってバランスさせるような方向に働きました。結果として、スピーカーの癖はより抑えられ汎用性が高くなる反面、スピーカーの能力自体が拡大したかどうかには疑問を感じました。

AET SH-M838HV、SH-3046A/Bは、見た目の簡単さとは違って高い実力を持ち「スピーカーの鮮度を高める」のに大きな働きを持っています。FS407との組み合わせでは、その良さはそのままに「至らない部分を補う」ことにより、スピーカーとしてのトータル性能が大きく高められたように思いました。

AIRBOW Metal Base Lは自信を持っている製品ですが、FS407との組み合わせでは「高域が若干柔らかすぎる」ミスマッチを感じました。しかし、その状態で30分ほど鳴らしていると、高域がどんどん伸びてその魅力を発揮し始めました。お客様からからも声がありましたが、設置してからしばらく鳴らすと音はどんどん良くなるようです。形状もそうですが、今までに例のない不思議な性格を持つスパイクベースだと思います。

今回のテストで度々感じた「高音の柔らかさ/茹で過ぎたスパゲティーのような」は、FS407本来の性格がかなり影響しているように思います。FS407を設置するときには、足下は人造大理石のようなリジッドなボードを使う方がマッチするかも知れません。

ELAC BS312 + Stand LS-70/2

 

形式

2Way・バスレフ方式

ユニット

高域:JET5×1
低域:115mm AS XR CONE ×1

クロスオーバー

3200Hz

定格/最大 入力

75W/100W

周波数特性

42-50kHz

サイズ

W123×H208×D282(mm)

重量

7.0Kg(1台)

希望小売価格

270,000円(ペア・税別)

専用スタンド LS-30 (ハイグロス・ブラック仕上げ)

希望小売価格

60,000円(ペア・税別) 専用スタンド生産完了

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今回の試聴は、ELAC製品拡販の「お薦めモデル」を決める目的で行いました。そこでトールボーイ型のFS407との比較のため、てブックシェルフ型BS312を手配しました。BS312は専用スタンドのLS-30と共に、FS407の3日遅れで届きました。すでに3日間じっくり聞き続けたFS407をウェルフロートボードから下ろし、専用スタンドにBS312を乗せて設置し出た音を聞いた瞬間、FS407であれほど苦労した「音の調整」が嘘のように素晴らしい音が出て驚きました。

BS312とFS407は同じメーカーの製品とは思えないほど「完成度」が違います。FS407で苦労した、ユニット間の音の繋がり、立体感、ツィーターの癖・・・、あらゆる問題がBS312では完全に解決しているばかりか、このサイズでは最高と思えるほどの音が何のセッティングもせずいきなり出ます。

このサイズには100万円を超える高価な木曾アコースティック HB-2がありますが、BS312の魅力(もちろん音質は違いますが)はそれに引けを取らないと感じるほど素晴らしいものです。のっけから結論を書いてしまいましたが、BS312の音はそれほど良かったのです。では、どのように音が良かったのかを具体的にレポートします。

音質テスト

Violin Concertos (Hybr) (Ms) Hilary Hearn “Bach Concerto”

ヒラリー・ハーンを聞いてFS407で容認できなかった高域の癖、弦楽器の立ち上がりの緩さがまったく感じられません。聞き耳を立てれば弦楽器高域の「芯が弱い」感じはほんの少し残っていますが、それは完全に容認できる範囲です。

ウーファーとツィーターの繋がりも素晴らしく全帯域で速度感、音色が統一され、実にすがすがしく心地よい音でヒラリー・ハーンが鳴ります。ELACらしい高解像度で明瞭度の高いクッキリした音ですが、FS407のように柔らかすぎず、さりとて固くはなく、温度感も暖かすぎず、冷たくもなく、本当に自然でニュートラルな音が出ます。

BS312の美点は、JET5がもたらすドーム型ツィーターとは違ったテイストを持つ中高域の細かさとすがすがしさ、そしてそれを生かせるレスポンスの良いウーファの歯切れ良い音にあります。Focal New Chorus 700の試聴リポートにツィーターとウーファー(スコーカー)口径の関係を少し書きましたが、JET5に組み合わせるウーファーの口径は、FS407の150mmは少し大きすぎて、BS312が搭載する115mmがよりマッチするように感じます。また、ウーファ小口径化に合わせてクロスオーバーが3200Hzに高められていることも効いているようです。

それはFS407のユニット毎の音を聞いたとき、JET5の低域を2500Hzまで伸ばすのは少し無理があると感じたからです。ウーファーとツィーターを比べた場合、当然高い周波数を専門とするツィーターの方が高音は良いのですが、ツィーターに余り低い周波数まで入力すると無理が生じてせっかくの高音が濁る、立ち上がりが鈍くなる、などの問題が生じることがあります。FS407の2500Hzは少し低すぎて、JET5が無理をしているようにも聞こえました。しかし、BS312でクロスオーバーが一気に3200Hzまで高められたことで、負荷が軽くなったJET5はより生き生きと清々しく鳴ります。また、そのJET5のハイレスポンスに負けないレスポンスを115mmのウーファーは持っています。もし、FS407がBS312の2Way構成に150mmのウーファーが追加された3Wayで作られていたら、その印象は大きく変わったはずです。

さらにBS312にはキャビネット(バッフル)からの反射を防ぐ目的で、前方投影面積が小さく奥行きが深いキャビネットが使われていることも、JET5の指向性の軽減や立体感の改善に効いているようです。奥行きで容量を稼ぐキャビネットを使うBS312は、見た目のサイズよりも低音が出ます。もちろんFS407などのトールボーイに比べると絶対量は不足していますが、少なくともこの曲を聴く限りでは「低音が不足する」とは感じません。BS312はこのクラスのスピーカーが苦手とする、チェロ、コントラバスの違いと、それぞれのパートの音階、音量の差をきちんと再生します。

BS312一つ注文を付けるならデザインから感じられる「硬さ」ほど、音の輪郭が「硬く」ないことです。弦楽器を生で聞いたときに感じる、弓と弦が引っかかるゴリゴリした強い(キツイ)音が出ません。ただ、それはごく僅かな部分ですし、逆にそれが出ないことで音楽に艶が出て聞きやすくなっていますから、それを欠点とは言えないでしょう。
想像を大きく超える良好なバランスと、細かい音でヒラリー・ハーンを鳴らすBS312は、このサイズでベスト10に入る名品だと思いました。

ウルトラ・マドンナ ~グレイテスト・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200) Madonna “The Immaculate Collectiono” から Like a Virgin

低音が得意なBS312でもさすがに、この曲のベースラインは十分に再現されません。もちろん、低域の量感はスピーカーのキャビネットサイズに比例しますから、物理法則を覆さない限りそれは難しい話です。

弦楽協奏曲ではBS312の指向性はほとんど気になりませんでしたが、高域がより明瞭に録音されたこの曲ではスピーカーの中心から±30度、上下角で±15度の角度から外れると高域若干鈍くなり、響きが濁り始めます。この性格は通常のリスニングではまったく問題になりませんが、店舗などで広いエリアを一本のスピーカーでカバーしようとするときには、注意が必要かも知れません。

音が細かく、レスポンスが早く、ウーファーとツィーターの音の繋がりの良さがBS312の魅力です。小型スピーカーらしく音の広がり(立体感)にも優れています。低域も適度に出ますから、比較的小さめのパーソナルな空間で音楽を楽しみたいとお考えなら、BS312はそのお洒落な外観と共に注目すべきモデルになると思います。

明るく楽しく弾む音で、マドンナが聞けました。

 

10th Anniversary Best Album SUN&MOON orange pekoe ”10th Anniversary Best Album SUN&MOON “ から やわらかな午後

マドンナではちょっと低域に苦戦したBS312ですが、この曲では低音が不足しません。良くできた小型スピーカーは、アコースティックな音源では低音不足を感じさせません。それは高域と低域の音色と速度感がピタリと合っていると、楽器の高域部分を聞いて「人間の脳が低域を脳内で作り出す(錯覚する)」ため、物理的に再生されている以上の低音が聞こえるようになるからです。Stirling Broadcast LS-3/5aやMusikelectoronic ME25がそういう能力を持つ優れた製品ですが、BS312もそれに匹敵する低域再現能力を持っています。

ただ性能(音質)的にはLS3/5aやME25に拮抗する能力を持つBS312ですが、それらよりもセッティングは難しいと思います。なぜならばJET5が、それらの製品よりも強い指向性をBS312に与えているからです。ツィーターを中心にほぼムラなく音が広がるドーム型ツィーターと違って、JET5のように平面から音が出るツィーター(リボンツィーターなどを含む)は、高音の広がりが平面的になる傾向があります。また、その影響で左右のスピーカーの位置関係で高音の切れ味や透明感が大きく左右される傾向も強く持っています。このような場合は、AIRBOW レーザーセッターを使って左右のスピーカーの位置関係を完璧に整合させ、音のピントを合わせれば、間違いなく音質が一気に高まります。

レーザーセッターを使うセッティングの効果は結果が明らかなので今回そのテストは行いませんが、Elac製品をお使いで「究極の音」を引き出したいとお考えなら、是非一度AIRBOW レーザーセッター(無料貸出機があります)をお試しください。目から鱗が落ちる!そういう経験をなさること間違いなしです。

試聴後感想  

ELAC製品の特長は搭載する平面ツィーターの音質に尽きますが、ドーム型ツィータよりも音が細かく、エコーの透明感が高いという長所と同時に短所も存在します。それは「指向性の強さ」です。JET5の持つ指向性の強さが、リスニングエリアやセッティングに影響を与えます。JET5は上下左右±15度程度が最も音の良いエリアです。リスニングポジションをスピーカーから1.5〜2.0mの近接した位置に設定なさるなら、JET5とリスニングポスジションを正三角形を描くようにスピーカーを設置し、できればAIRBOW レーザーセッターを使ってセッティングしていただければ、ELAC製品は最大の能力を発揮するでしょう。

ELAC BS312はとても良くできた小型スピーカーです。BS312の魅力は、きめ細かくそして自然な鳴り方です。高性能でHiFiですが、音が冷たく分析的にならずに音楽が命を持って躍動します。音楽を聞いたときの「楽しさ」という評価では、BS312はFS407を大きく上回ります。

2014年3月 逸品館代表 清原 裕介

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