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昨秋にプロトタイプを発表し、その後遅々として生産化に手間取っていたAIRBOWのGPS 10MHzクロック発信器の発売にようやくめどが立ち始めたこの秋に突如InfranoiseからGPSを使ったクロック・ジェネレーターが発売されました。クロック・ジェネレーターにGPSを使うメリットは、安価で安定した高精度なクロックが得られることです。デメリットはアンテナの設置が必要なことと、アンテナを設置できなければ高精度のクロックが得られないことです。しかし、アンテナを設置できない特殊な環境はそれほど多くなく、またルビジウムのように寿命が尽きる(発信のためルビジウムにレーザー光を当てるため、ルビジウムが蒸発しやがて尽きてしまいます。寿命は5-10年程度といわれています。寿命が尽きるとルビジウムを交換しなければなりませんが、交換費用は数十万円近いといわれています)ことがなく、長期間安心して使えます。
今回は、Infranoiseから発売されたGPSクロック・ジェネレーターのGPS-777と5年前から発売されている水晶発信子を使ったクロック・ジェネレーターCCG-525、逸品館がお薦めしている水晶をオーブンで温めて使う恒熱式クロック・ジェネレーターAntelope
Audio Isocrone OCX、そしてGPSを使って0.1ppb以下の精度で10MHzのクロックを発信するAIRBOW
GPS-10MH(試作機)をEsoteric K-01で聞き比べてみました。
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試聴後感想 |
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この試聴テストは、逸品館のU streamチャンネルに録画を残しています。詳しくはそちらをご覧いただければ、豊富な情報が得られると思います。今までの経験から、クロック・ジェネレーターの音質について次のような感想を持っています。
今回のテストでもその感想を裏付ける結果が得られたように思います。音質はOCXが最も柔らかくアナログ的で、メーカーの説明その通りの音でした。自然で心地よく聴き疲れしません。Infranoiseの2機種はどちらも全く同じ音質で(もしかするとGPS-777はCCG-525を10MHzのGPS信号で高精度化しているのかも知れないと思えるほどに)K-01との組み合わせでは、音は細かいのですがエッジが硬く前後方向への奥行きも小さく、あらゆる音が細かく鋭くなる印象で聴き疲れしてしまいました。この傾向は搭載されるアウトプット・セレクターのポジションを変えても大きくは変わりませんでした。しかし、これはK-01の持つ音色がそのまま強調されたからかも知れません。AIRBOW GPS-10MHは音質改善効果の感覚はGPS-777ほど派手ではありません。S/Nが高まって個々の音が寄り研ぎ澄まされて細かくなるような印象で、OCXほどではありませんが滑らかで立体感も改善されました。効果の出方としては最も自然で無理がない(色づけが皆無)感じがしましたが、それは供給するクロックの周波数が飛び抜けて高い(10MHz)からかもしれません。また、AIRBOW GPS-10MHをOCXに繋いでからK-01にWord Clockを入力すると、OCXの音色のままで性能が格段に向上したことからも、AIRBOW GPS-10MHの色づけが少ないことが伺えました。 最後に開発中のAIRBOW GPSクロック・ジェネレーターについて少し触れたいと思います。この製品はInfranoiseのGPS-777と同じようにGPSを使って高精度なクロックを発信するところは同じですが、発信する周波数がGPS-777:Word Clock(44.1-192KHz)に対しAIRBOW GPS-10MH:Atomic Clock(10MHz)と周波数が全く異なります。伝送的には周波数の高い10MHzの方が音質的には有利だと思われますが、組み合わせる機器との相性で結果が変わるかも知れません。搭載する水晶発信子は、Antelope Audioと同じように恒温度型で温度が安定するまでに約1時間ほどかかります。さらにGPS衛星を捉えて動作が安定するまでには、そこから数時間以上かかるなど、電源を投入してから精度が最高に達するまでに12-24時間と長い時間が必要です。GPS-777の説明書には安定化までの時間が15分と記されていますから、内容は随分違うと思われます。インフォメーション(表示機能)は、ランプだけのGPS-777に対し、GPS-10MHには動作状況と出力するクロックの「ジッター」を表示する機能を搭載しています。発表から発売までに長い時間がかかっているのは、このような細かい部分の開発と各種のオーディオ機器と実際に繋ぎ動作確認をしていたからです。アンテナはGPS-777ほど高級ではありませんが、アンテナやアンテナケーブルは音質にさほど大きな影響を与えなかったので、使い勝手の向上と発売価格を下げる目的であえて小さいアンテナと細いケーブル(窓から引き込みやすい)を採用しました。発売時期は2012年春を予定しています。発売価格は15-18万円を目指していますのでGPS-777よりはわずかに安くなると思います。
2011年11月 逸品館代表 清原 裕介
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